第4章 戦略目標及び行動 E 女性と武力紛争

E 女性と武力紛争

131.
国連憲章に言明された,領土保全又は政治的独立に対する武力による威嚇又は武力の不行使の原則,及び領土主権尊重の原則に従って,世界平和を維持し,人権,民主主義及び紛争の平和的解決を促進し保護する環境が,女性の地位向上のための重要な要因である。平和は,女性と男性の平等及び開発と解き離しがたく関連し合っている。武力その他の紛争及びテロリズム並びに人質を取る行為は,世界の多くの地域で未だに持続している。侵略,外国の占領,民族紛争及びその他の形態の紛争は,ほぼすべての地域で女性と男性に影響を及ぼしている進行中の現実である。目に余る組織的な人権の侵害と,人権の完全な享受を阻む重大な障害となる状況が,世界のさまざまな地域で起こり続けている。そのような侵害及び障害には,拷問及び残虐で非人道的で品位を傷つける扱い又は処罰,即決で恣意的な処刑,失踪,恣意的拘禁のほか,あらゆる形態の人種優越主義及び人種差別,外国の占領及び支配,外国人排斥,貧困,飢餓その他の経済的,社会的及び文化的権利の供与拒否,宗教的不寛容,テロリズム,女性への差別,並びに法律による統治の欠如が含まれる。文民に対する攻撃を禁じた国際人道法はそれ自体,時として組織的に無視され,人権は,文民,特に女性,子ども,高齢者及び障害者に影響を及ぼす武力紛争の状況と関連してしばしば侵害される。武力紛争下における女性の人権の侵害は,国際人権法及び人道法の基本原則の侵害である。特に集団虐殺,戦争の戦略としての民族浄化及び結果としの,戦争状況下における女性への組織的なものを含むレイプの形で,難民及び避難民の大量退去を生む重大な人権侵害は,強く非難され,また直ちにやめさせなければならない忌まわしい慣行である一方,そのような犯罪の加害者は処罰されなければならない。このような武力紛争状況のいくつかは,一国に対する他国による征服又は植民地化と,国家及び軍隊による抑圧を通じた,植民地状態の永続化に起因する。
132.
1949年の「戦時における文民の保護に関するジュネーブ条約」及び1977年のその追加議定書(注24)は,女性は特にその名誉へのいかなる攻撃,とりわけ,屈辱的で品位を傷つける扱い,レイプ,強制売春又はいかなる形の下劣な攻撃からも保護されるものとすることを規定している。世界人権会議で採択された「ウィーン宣言及び行動計画」はさらに,「武力紛争下における女性の人権の侵害は,国際人権法及び人道法の基本原則に対する侵害である」(注25)と述べている。特に殺人,組織的なものを含むレイプ,性的奴隷化及び強制的妊娠を含めた,この種のあらゆる侵害には,格別に効果的な対応が必要である。人権の完全な享受に対する深刻な障害をなす集団的,組織的侵害及び状況は,引続き世界の各地に発生している。それらの侵害及び障害は,拷問,冷酷で非人間的な,また,下劣な取扱い,又は略式及び恣意的拘禁やあらゆる形の人種的偏見,差別,外国人嫌い,経済的,社会的及び文化的権利の否定や宗教的不寛容を含んでいる。
133.
武力紛争及び軍事占領下における人権侵害は,国際人権文書並びに1949年のジュネーブ条約及びその追加議定書に具体化されている国際人権法及び人道法の基本原則の違反である。戦争に引き裂かれ,占領された地域における目に余る人権侵害と民族浄化政策が,引続き行われている。これらの慣行は,なかでも,大量の難民及び国際的保護を必要とするその他の避難民,並びに国内避難民を生み出してきたが,その大半は女性,思春期の少女及び子どもである。殆どが女性と子どもである文民犠牲者は,しばしば戦闘員の死傷者の数を凌ぐ。加えて,女性は負傷兵の看護者になることが多く,また,紛争の結果として,思いもよらず一家の唯一の管理者,ひとり親及び高齢の親族の介護者の立場にさせられる。
134.
不安定と暴力が継続する世界では,平和と安全への協同のアプローチの実施が早急に必要である。権力構造への女性の平等なアクセスと完全な参加,並びに紛争の予防及び解決に向けたあらゆる取組みへの女性の完全な関与が,平和と安全の維持及び促進にとって不可欠である。女性は,紛争解決,平和維持,及び防衛・外交機構において重要な役割を果たし始めているものの,意思決定の地位には未だ参加が不足している。もし女性が平和の確保及び維持に平等な役割を果たそうとするならば,政治的,経済的に力をつけて,あらゆるレベルの意思決定に十分に参加しなければならない。
135.
地域社会全体が武力紛争及びテロリズムの結果に苦しむが,女性及び少女は社会における地位と自らの性ゆえに格別に影響を被っている。しばしば,紛争当事者は処罰されることなく女性をレイプし,ときには戦争やテロリズムの一戦術として組織的なレイプを用いる。強制移住,家及び財産の喪失,近親者の死亡又は不本意の失踪,貧困,家族の別居及び離散という目に合い,また,特に民族浄化政策やその他の新たに台頭しつつある暴力形態の結果としての,武力紛争下における殺人,テロリズム,拷問,不本意の失踪,性的奴隷化,レイプ,性的虐待及び強制的妊娠の犠牲になるあらゆる年齢の女性たちが,そのような状況における女性に対する暴力及び女性の人権侵害の影響を被っているのである。この事態に,武力紛争並びに外国の占領及び支配が生涯にわたって残す社会的,経済的及び心理的なトラウマが加わる。
136.
何百万人にも上る世界の難民その他の国内避難民を含む避難民の約80パーセントは女性と子どもである。彼らは,財産,物資及びサービスの剥奪,故郷へ戻る権利の剥奪とともに,暴力と不安定にも脅かされている。恐怖と脅迫の組織的な作戦における迫害の一方法として用いられ,特定の民族,文化又は宗教グループのメンバーに故郷からの逃亡を強いる,根なし草の女性及び少女に対する性暴力に特別な注意が払われるべきである。女性はまた,性暴力又はその他のジェンダーに基づく虐待を通じた迫害を含む,1951年の「難民の地位に関する条約」及び1967年の議定書に挙げられた理由による迫害への十分に根拠のある恐怖の結果として逃亡を強いられることもあり,逃亡中も庇護国や再定住国で,又は本国へ帰還する途中及び帰還後も,引き続き暴力と搾取を受けやすい。庇護国によっては,女性がそのような迫害を根拠として難民の認定を申請しても,なかなか認められない場合も多い。
137.
難民,避難民及び移住女性はほとんどの場合,強さ,耐久力及び機略を発揮し,再定住国,又は帰還後は本国に積極的に寄与することができる。彼らは,自らに影響する決定に適切に関与する必要がある。
138.
多くの女性非政府機関が,世界的な軍事費の削減,並びに兵器の国際的な取引,売買及び拡散の削減を求めてきた。紛争や過剰な軍事支出によって最も悪影響を受けるのは,基本的サービスへの投資の欠如の故に恵まれない貧困層に属す人々である。貧困の中で暮らす女性,とりわけ農村女性もまた,特に殺傷力の強い兵器又は無差別な被害を与える兵器の使用によって苦しんでいる。今,世界の64か国において,1億個以上の対人地雷が散在している。過度な軍事支出,武器取引,並びに武器生産及び獲得のための投資が開発に及ぼす悪影響に対処しなければならない。同時に,国家安全保障及び平和の維持が,経済成長及び開発,並びに女性のエンパワーメントにとって重要な要因である。
139.
武力紛争と地域社会の崩壊の時期の,女性の役割はきわめて重大である。武力その他の紛争の真っ只中にあって,彼らはしばしば社会秩序の維持のために働く。女性は,家庭においても社会においても,平和教育者として,重要であるにもかかわらず,多くの場合認知されない寄与を行う。
140.
恒久的な平和の達成には,すべての国家及び国民に対する公正と寛容を守る平和の文化を育てる教育が不可欠であり,しかも,早い年齢で始めるべきである。その中には,紛争解決,仲介,偏見の緩和及び多様性の尊重の要素を盛り込むべきである。
141.
武力又はその他の紛争に対処するに当たり,決定が下される前に,それらが女性及び男性のそれぞれに及ぼす影響の分析がなされるよう,あらゆる政策及び計画の中心にジェンダーの視点を据える,積極的で目に見える政策を促進すべきである。

戦略目標E.1. 紛争解決の意思決定のレベルへの女性の参加を増大し,武力又はその他の紛争下に暮らす女性並びに外国の占領下で暮らす女性を保護すること

取るべき行動

142.
政府,国際及び地域政府間機関により:
(a)
国連憲章第101条に従って公平な地理的分布に十分配慮しつつ,国連事務局も含め,あらゆるレベル,特に意思決定レベルにおけるあらゆる会議の場及び平和活動への女性の平等な参加と平等な参加機会を促進するための行動を取ること。
(b)
武力又はその他の紛争及び外国の占領の解決にジェンダーの視点を組み込むとともに,旧ユーゴスラビア並びにルワンダのための国連国際戦争犯罪法廷及び国際司法裁判所のようなあらゆる関係国際機関,及び平和的紛争解決に関わるその他の機関における裁判官及びその他の地位へ候補者を指名若しくは抜擢する際に,男女比率の均衡を目指すこと。
(c)
武力紛争下におけるレイプ及び強制妊娠,テロリズムを含む武力紛争下における猥褻な暴行その他の形の女性に対する暴力を伴う事件の取扱いに当たり,適切な訓練を検察官,裁判官その他の職員に提供することによって,これらの機関がジェンダーの問題に適切に対処し,その仕事にジェンダーの視点を組み込むことができるように保障すること。

戦略目標E.2. 過剰な軍事費を削減し,兵器の入手の可能性を抑制すること

取るべき行動

143.
政府により:
(a)
適当な場合,国家安全保障に配慮することを条件に,軍事的資源及び関連産業の開発及び平和目的への転換を増大し,促進すること。
(b)
社会・経済開発,特に女性の地位向上のために追加資金の配分ができるよう,国家安全保障の要求を考慮に入れつつ,なかでも世界の軍事費,兵器取引,兵器生産及び獲得への投資を含む,過度な軍事費の妥当な削減を通じて,公共及び民間の新財源を生み出す新たな方法の模索に着手すること。
(c)
武力紛争下で女性に対する暴力行為,国際人道法違反及び女性の人権侵害を犯す警察,保安隊,軍隊その他の隊員を取り調べ,処罰するための行動を取ること。
(d)
正当な国家防衛の必要性を認める一方で,武力紛争と,過度な軍事費,武器,わけても殺傷力の特に強い武器又は無差別な被害を与える武器の取引,並びに武器生産及び獲得への過度な投資のマイナス影響が社会にもたらす危険を認識し,対処すること。同様に,不法な武器取引,暴力,犯罪,不法な薬物の製造,使用及び取引,並びに女性及び子どもの人身売買と闘う必要性を認識すべきである。
(e)
対人地雷の無差別使用によって,女性と子どもが特に被害を被っている点を認識して:
(1)
1981年の「過剰殺傷あるいは無差別的効果を及ぼすと見なされるような通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約」(注26),特に「地雷,偽装爆弾その他の装置の使用の禁止及び制限に関する議定書(議定書Ⅱ)」の2000年までの普遍的な批准のために,まだ行っていない場合は,批准に向けて積極的な努力を開始すること。
(2)
地雷の無差別使用によって文民に対して引き起こされた死傷と極度の苦しみの減少を促進するために,同条約の強化を熱心に検討し始めること。
(3)
特に地雷の除去手段に関し,とりわけ情報交換,技術移転,及び科学的研究の促進を助長することによって,地雷除去に対する支援の推進に着手すること。
(4)
国連の環境の中で,地雷除去を不必要な差別なく支援する共同対応プログラムを調整する取組みの支援に着手すること。
(5)
多くの国が対人地雷の輸出,移転又は売却の一時停止を既に宣言していることに満足をもって留意しつつ,まだ行っていない場合は可能な限り早い時期に,非政府組織への輸出を含めた対人地雷の輸出の一時停止を採用すること。
(6)
実行可能で人道的な代替手段が開発されるに伴い,国家はこの目標に向かって最も効果的に動くことができる点を認識し,対人地雷の究極的な廃絶を目指して,対人地雷によってもたらされる問題の解決を求める,更なる国際的取組みの奨励に乗り出すこと。
(f)
平和運動に女性が果たしてきた主導的な役割を認識して:
(1)
厳格かつ有効な国際的管理の下における全般的で完全な軍縮に向かって,積極的に努力すること。
(2)
そのあらゆる面において核軍縮及び核兵器拡散防止に寄与する,普遍的であり,かつ多国間で効果的に確認できる包括的核実験禁止条約の遅滞なき締結に関する交渉を支援すること。
(3)
包括的核実験禁止条約の発効まで,核実験に関して最大限の抑制をすること。

戦略目標E.3. 女非暴力の紛争解決の形態を奨励し,紛争状況における人権侵害の発生を減少させること

取るべき行動

144.
政府により:
(a)
1949年の「戦時における文民の保護に関するジュネーブ条約」,同条約への「国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(第Ⅰ議定書)」及び「非国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(第Ⅱ議定書)」(注24)を含む,武力紛争における女性及び子どもの保護に関する条項を含んでいる国際文書の批准又は加入を検討すること。
(b)
武力紛争においては,国際人道法の規範を十分に尊重し,特にレイプ,強制売春その他の形の猥褻な暴行から女性及び子どもを保護するために必要なあらゆる措置を講じること。
(c)
事務総長が「事務局における女性の地位向上のための戦略的行動計画,1995年―2000年」(A/49/587,第Ⅳ節)の中で行った特別勧告に留意しつつ,女性の役割を強化し,平和維持,予防外交及び関連活動に係る事柄に関する政策を策定し,又は政策に影響を及ぼす可能性のある国内及び国際機関のあらゆる意思決定レベル,並びに和平仲介及び交渉のすべての段階への女性の平等な代表参加を保障すること。
145.
政府,並びに国際及び地域機関により:
(a)
なかでも「世界人権会議」で採択された「ウィーン宣言及び行動計画」(注2)に言明されているように,すべての民族,特に植民地又はその他の形の外国の支配若しくは占領下にある民族の自決権,及びこの権利の効果的な実現の重要性を再確認すること。
(b)
国連憲章,特に第2条第3項及び第4項に則って,外交,交渉及び平和的な紛争解決を奨励すること。
(c)
女性に対するレイプ及びその他の形態の非人道的で屈辱的な扱いの組織的実施を,戦争及び民族浄化の計画的手段であると認め,非難するように促し,そのような虐待の犠牲者に対し,身体的及び精神的な社会復帰のための十分な支援が提供されるよう保障するために措置をとること。
(d)
武力紛争遂行中のレイプは戦争犯罪であり,また,特定の状況の下では人間性に背く犯罪を構成し,「大量虐殺の犯罪の防止及び処置に関する条約」(注27)に定義された集団虐殺行為を構成することを再確認すること。そのような行為から女性及び子どもを保護するために必要なあらゆる措置を取るとともに,責任のある者すべてを調査し,処罰し,並びに加害者を処断するための仕組みを強化すること。
(e)
武力その他の紛争状況下における女性に対するあらゆる暴力行為を防止するために,国際人道法及び国際人権文書に記述された基準を支持及び強化すること。戦争中に犯された,レイプ,特に組織的レイプ,強制売春その他の形の猥褻な暴行及び性的奴隷化を含む,女性に対するあらゆる暴力行為の完全な調査に着手すること。女性に対する戦争犯罪に責任のあるすべての犯罪者を訴追するとともに,被害女性に対して完全な補償を提供すること。
(f)
国際社会に対し,あらゆる形態及び表現のテロリズムを非難し,対抗して行動するよう求めること。
(g)
すべての関係職員のための国際人道法及び人権意識に関する訓練プログラムの開発に当たって,ジェンダーに配慮した問題を考慮に入れ,また,特に女性に対する暴力を防ぐために,国連の平和維持及び人道援助に携わっている者にそのような訓練を奨めること。
(h)
影響を被る国の国民,特に女性及び子どもの経済的・社会的開発の完全な達成を阻み,彼らの安寧を妨げ,健康と安寧にとって十分な生活水準に対するすべての者の権利,並びに食糧,医療及び必要な社会サービスへの権利を含む,彼らの人権の完全な享受に対する障害を生み出す,国際法及び国連憲章に違反した,一方的な措置の採用をやめさせ,またそのような措置を差し控えること。この会議は,食糧や薬品を政治的圧力の手段に使ってはならないことを再確認する。
(i)
経済制裁が女性及び子どもに与えるマイナスの影響を軽減するため,国際法に従った措置を取ること。

戦略目標E.4. 平和の文化の促進に対する女性の寄与を助長すること

取るべき行動

146.
政府,国際及び地域政府間機関,並びに非政府機関により:
(a)
平和的な紛争解決,並びに特に若い女性のための教育,訓練,地域社会活動及び青年交流プログラムを通じた平和,和解並びに寛容を促進すること。
(b)
武力紛争が女性及び子どもに及ぼす影響,並びに国内,地域及び国際平和運動への女性の参加の性質及び寄与度を調べるため,女性の参加を伴う平和研究の更なる開発を奨励すること。研究を行い,広く一般に知らせ,女性及び男性の利用に供するため,暴力の抑止と紛争解決のための革新的な仕組みを確認すること。
(c)
紛争の結果に対処する政策及び計画を開発するため,武力紛争が女性,特に若い女性及び少女に及ぼす身体的,心理的,経済的及び社会的影響に関する研究を開発して普及すること。
(d)
非暴力的な手段による紛争解決と寛容の促進に焦点を合わせた,平和の文化を育てるための少女及び少年の教育プログラムの設定を検討すること。

戦略目標E.5. 難民女性その他国際的な保護を必要とする避難民女性及び国内避難民女性に保護,支援及び訓練を提供すること

取るべき行動

147.
政府,国際及び地域政府間機関,並びに非政府機関により:
(a)
難民キャンプ及び資源の管理を含む,難民女性その他国際的な保護を必要とする避難民女性及び国内避難民女性を支援するすべての短・長期のプロジェクト及びプログラムの立案,企画,実施,監視及び評価に,女性が十分に関与するよう保障するための措置を講じること。難民及び避難民女性・少女が,提供されるサービスに直接のアクセスを持つよう保障すること。
(b)
国内避難民女性及び子どもに対し,十分な保護と支援を提供するとともに,退去の事態を防ぐ観点からその根本原因の解決策を見つけ,適当な場合には帰還又は再定住を促進すること。
(c)
避難中及び元の地域社会へ帰還後も,難民女性その他国際的な保護を必要とする避難民女性及び国内避難民女性の安全と身体的保全を守るために,社会復帰訓練プログラムを含む措置を取ること。難民女性及び避難民女性を暴力から守るための効果的な措置を講じること。何によらずそのような侵害行為に対しては公平かつ徹底的な調査を行い,責任のある者を法に照らして処断すること。
(d)
ノン・ルフールマン原則(難民の追放・送還禁止原則)を全面的に尊重し,厳守する一方,難民女性及び避難民女性の,安全で尊厳を持った自発的な元の場所への帰還の権利,及び帰還後の保護を受ける権利を保障するために必要なあらゆる措置を講じること。
(e)
生地への自発的で安全な帰還の権利を含む,国内避難民女性の問題に対する永続的な解決策を見つけるために,国連憲章に従って,適当な場合,国際協力を得つつ国内レベルで措置を講じること。
(f)
緊急救済並びに難民女性その他国際的な保護を必要とする避難民女性及び国内避難民女性の特有のニーズ,資源及び潜在能力を考慮に入れた,その他の比較的長期の支援に対し,国際社会及びその国際機関が財政その他の資源を提供するよう保障すること。保護及び支援の提供に当たっては,適切かつ十分な食糧,水及び避難所,教育,並びに,リプロダクティブ・ヘルス,母子保健及び熱帯病対策を含む社会・保健サービスへの平等なアクセスを確保するため,女性及び少女に対する差別を撤廃するためのあらゆる措置を取ること。
(g)
難民及び避難民の子どもたちの学校教育の中断を最小限にするために,―緊急の状況においても―適切な言語による,教材の入手を容易にすること
(h)
難民認定手続き及び庇護の付与における女性及び男性の平等なアクセス及び待遇を確保するために,なかんづく国の移住規定を関連の国際文書に準拠させることを通じた,ノン・ルフールマン原則の全面的尊重と厳守を含む国際規範を適用すること。また,性暴力を通じた迫害又はその他のジェンダー関連の迫害を含む,1951年の「難民条約」(注28)及び1967年の「難民議定書」(注29)に挙げられた理由による迫害に対する十分に根拠のある恐怖に基づいて難民の地位を主張する女性たちを,難民と認定することを検討するとともに,女性に対する性的暴行のような微妙若しくは苦痛な経験に関する聞き取りに当たっては,女性係官を含む特別に訓練された係官へのアクセスを提供すること。
(i)
明らかに女性を対象にした迫害への対応に関する基準及び指針を開発するための国の先導的計画についての情報を共有し,それらの公平かつ一貫した適用を確保するための監視をすることによって,そうした基準及び指針の開発に向けた国の取組みを支援し,促進すること。
(j)
難民女性その他国際的な保護を必要とする避難民女性及び国内避難民女性の自立能力を促進し,女性,特に若い女性のための,難民及び帰還者の共同体内における指導者訓練及び意思決定のための訓練プログラムを提供すること。
(k)
難民女性及び避難民女性の人権が保護され,彼らがこれらの権利に気づかされるよう保障すること。家族再会の重大さが認識されるよう保障すること。
(l)
難民と認定された女性に対し,適当な場合,語学訓練,小規模企業開発訓練及び計画,並びに女性に対するあらゆる形態の暴力に関するカウンセリングを含めた職業/専門職業訓練プログラムへのアクセスを提供すること。また,それらには,拷問とトラウマの犠牲者のための社会復帰訓練プログラムを含むべきである。各国政府その他の援助機関は,大量難民人口の増大する要求が受入れ国に与える影響,並びに援助機関の基盤を広げてより一層の負担の分担を達成する必要性を特に考慮に入れ,難民女性その他国際的な保護を必要とする避難民女性及び国内避難民女性のための支援計画に十分に寄与すべきである。
(m)
再定住した国に対して難民女性が行った寄与について一般の人々の意識を高め,彼らの人権並びにニーズ及び能力についての理解を深め,異文化間,異人種間の和合を促進する教育プログラムを通じて相互理解と受容を奨励すること。
(n)
テロリズム,暴力,麻薬取引,又は暴力の事態に関連するその他の理由の結果,生地を追われた女性に基本的及び支援のサービスを提供すること。
(o)
女性の人権に対する認識を高め,適当な場合,武力紛争地域及び難民のいる地域で任務を遂行している軍隊及び警察の隊員に人権教育及び訓練を実施すること。
148.
政府により:
(a)
難民女性と緊密に協力しながら,難民プログラムのあらゆる部門において,国連難民高等弁務官(UNHCR)の「難民女性の保護に関する指針」及び「トラウマ及び暴力の犠牲者の鑑定と世話に関する指針」を普及し,実施し,又は同様の指導を与えること。
(b)
家族の一員として移住した女性及び子どもを,保証人による虐待または人権拒否から守り,また,もしも家族関係が崩壊した場合,国内法の範囲内で滞在延長を検討すること。

戦略目標E.6. 植民地及び自治権を持たない地域の女性に支援を提供すること

取るべき行動

149.
政府,政府間機関及び非政府機関により:
(a)
指導者養成及び意思決定訓練のための特別プログラムを提供することによって,なかでも「ウィーン宣言及び行動計画」に言明されているように,すべての人民の自決権の実施を支援し促進すること。
(b)
植民地及び自治権を持たない地域の女性の状況についてよりよい理解を生み出すために,適当な場合,マスメディア,あらゆるレベルにおける教育及び特別プログラムを通じて,一般の人々の意識を啓発すること。
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