NEWSLETTER(最終号)

5 採 択 文 書

会議の成果として、「政治宣言」及び「北京宣言及び行動綱領実施のための更なる行動とイニシアティブ」(いわゆる「成果文書」)が採択されました。以下にその概要をお知らせします。

なお、本会議で採択した際の文書は未定稿のものであり、7月11日現在、最終文書は未だ国連から公表されておりません。最終文書に内容の変更はありませんが、「北京宣言及び行動綱領実施のための更なる行動とイニシアティブ」(いわゆる「成果文書」)については、パラグラフの番号等が違ってくる見込みです。

また、両採択文書の和訳については、現在未定稿の文書をもとに総理府男女共同参画室で準備しています。国連による正式文書の確定後、和訳が出来上がり次第、このホームページに掲載する予定です。

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政 治 宣 言

(Political Declaration)

「政治宣言」は、会議に参加した政府による「北京宣言」及び「行動綱領」並びに「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」の実施の決意を再確認する宣言です。

先進諸国によるODAの国際目標の達成や女子差別撤廃条約の完全批准、男女平等の推進に向けた男性の関与と共同責任の強調、NGO及び女性団体の役割と貢献の再認識、2005年に行動綱領等の実施状況を評価する会合を必要に応じ開催することにも言及しています。

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北京宣言及び行動綱領実施のための更なる行動とイニシアティブ

(いわゆる「成果文書」)

(Further actions and initiatives to implement the Beijing Declaration and the Platform for Action)

この「北京宣言及び行動綱領実施のための更なる行動とイニシアティブに関する文書」(以下「成果文書」という。)は、行動綱領の実施状況を分析するとともに、北京会議以降に出現した新しい課題を踏まえ、行動綱領の更なる実施にむけて各国政府、国際機関、市民社会が行うべき行動とイニシアティブを提言した、各国の行動指針の参考となる文書です。単純に行動綱領の文字数と比較しますと、3割強程度にあたります。

以下の4つの章、サブパラグラフまで入れて約250のパラグラフから構成されています。(7月11日現在)

第1章:前文

第2章:行動綱領12の重大問題領域実施に関する成果と障害

第3章:北京宣言及び行動綱領実施に際して直面する新たな課題

第4章:行動綱領の完全かつ更なる実施及び障害克服のための行動とイニシアティブ

○ 第1章:前文

行動綱領及び「国連婦人の地位委員会」で採択した合意結論及び勧告は21世紀における男女平等・開発・平和の達成に向けての更なる取組の基礎となる文書であること、行動綱領は全ての女性のエンパワーメントを目的としたものであること、全ての女性による人権と基本的自由の完全な享受が女性のエンパワーメントの基本条件であり、その遵守は国家の義務であること、行動綱領の目標達成に、政府は一義的な責任を有することを確認するとともに、男女平等の実現は女性と男性のパートナーシップが不可欠であること、様々な状況にある女性の多様性が尊重され、人権が確保されるべきことの確認が謳われています。

○ 第2章:行動綱領12の重大問題領域実施に関する成果と障害

行動綱領の実施状況についての各国政府からの報告や、各種国際機関・さまざまな国際会議の勧告等を踏まえて国連の事務局が分析を行ったものを基に、協議が行われました。

この第2章ではそれぞれの問題領域別の分析が行われていますが、全体として各国の取組に一定の成果が見られたことが評価される一方、完全実施にはなお多くの課題が残されていることが指摘されました。

○ 第3章:北京宣言及び行動綱領実施に際して直面する新たな課題

北京会議以降に台頭した新たな課題として、グローバリゼーションの進展が女性に新たな可能性をもたらす一方で、一層の経済格差を生み「貧困の女性化」を更に加速させたこと、科学技術の進歩は雇用創出を生む一方で、世界の多くの女性は情報技術(IT)を始めとするこれらの新しい分野への参入の機会に恵まれないこと、高齢女性の問題及び思春期の女性に対する取組への関心が高まっていること、HIV/AIDSが深刻化し女性に多大な影響を与えていること、また男性と女性の関係及び役割についての問い直し、及びその関連で無償労働の評価の必要についての認識が高まってきたこと、等が指摘されています。

○ 第4章:行動綱領の完全かつ更なる実施及び障害克服のための行動とイニシアティブ

「国内レベルの行動」、「国際レベルの行動」、「国内及び国際レベルの行動」という柱立てに沿って、今後取るべき様々な行動指針が提示されています。その点では、行動綱領が12の重大問題領域別に提言されているのとは異なった組立て方となっています。

この第4章については、行動綱領の表現をさらに具体化・強化するような踏み込んだ提案を盛り込むことを目的として審議が行われましたが、結果的には12の重大問題領域の扱いに疎密があった面も否めません。しかしこのことは同時に、課題の争点がはっきりしてきたとも見ることができます。会議では行動綱領の実施状況を踏まえ、実行可能性を視野に入れた協議が展開されました。

また新しい内容を盛り込もうとする場合やその表現を巡って協議が紛糾した場合には、行動綱領の表現をそのまま採用することとしましたが、表現に折り合いがつかないものについては、対象となったパラグラフそのものを削除することで決着を見ました。

行動綱領に比べて、強調された点及び注目すべき点としては、例えば以下の事項が挙げられます。

北京会議以降、女性に対する暴力は女性の人権の侵害であるという認識が高まったことから、女性に対する暴力に関する取組が多く提案されました。

例えば、ドメスティックバイオレンスに関連する犯罪に対処する法律の整備や適切な仕組みの強化、トラフィッキング(人の密輸)への総合的対策、女性に対する暴力に関する啓発活動の実施などが提案されています。

トラフィッキングについては、行動綱領では暴力の一形態として取り扱われる傾向にあり、トラフィッキングに特化した提案はあまりありませんでした。しかし、今回の「成果文書」では、例えば、トラフィッキングへの総合的な取組の強化等、トラフィッキングに焦点をあてた提案が多く盛り込まれています。

また、新たにいわゆる「名誉犯罪」が女性に対する暴力の一形態として取り上げられました。「名誉犯罪」とは女性が家族にとって不名誉な行為をした場合に、家族がその女性に対し暴力をふるい、殺人等を起こしたとしても、罪に問われないというような慣行が一部の国では未だ残っており、このような慣行を指します。

また、女性に対する差別の撤廃を目的とし、可能であれば2005年までに、女性に差別的な条項の撤廃のための法律の見直しが提案されています。

教育に関する取組としては、特に男性及び少年のための、固定的な性別役割分担意識に基づく行動の解消のための教育やプログラム、政策を推進することが挙げられました。行動綱領でも、固定的な性別役割分担意識の解消については提示されていますが、今回はとりわけ男性及び少年を対象とすることが強調されました。

健康に関する取組としては、HIV/AIDSその他の疾病を含む健康上の問題へのジェンダーの視点に立った政策の実施、HIV/AIDSや性感染症の患者の差別からの保護・プライバシーの尊重、思春期女性に対する健康教育や情報提供・サービス等の必要性が強調されました。

セクシャル・ライツ(性的権利)及びリプロダクティブ・ライツについての議論が紛糾しましたが、結局、行動綱領のリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する記載の部分をそのまま引用することで決着しました。

また、タバコの健康影響に関する予防措置等に関し、WHOの「たばこ枠組条約」の支持が明記されました。

農山漁村の女性については、農業生産に従事する女性の仕事が認識、評価されるような施策を採択し、また、彼女たちの経済的地位を高めるための対策を講じることが挙げられています。

女性の地位向上のための制度的な仕組みとしては、必要に応じて、女性のエンパワーメントを強化し、また監視・評価に関する分析・方法論を開発するための予算配分を目的として、あらゆる予算編成の過程にジェンダーの視点を取込むことが挙げられました。

影響調査のための対策としては、影響調査に関する研究開発の振興や、影響調査に必要なデータの整備のために、国の統計部局へ制度的及び財政的に支援するという、具体的な行動が提案されました。

これは特に途上国の女性を対象とした取組ですが、グローバリゼーションのもたらした影響に対応するため、国際経済の政策決定の過程に途上国の女性が参画できるよう保証することや、グローバリゼーションがもたらす利益を享受するために、女性に技術訓練を提供すること等が挙げられました。

また、紛争の防止・解決、平和構築等の、開発活動や平和へのプロセスにおける政策決定や実施段階における女性の全面参加を確保・支援することが提案されており、平和構築におけるジェンダーの視点の導入の必要性が更に強調されました。

北京会議以降に出現した問題への対応としては、情報技術(IT)への平等なアクセスを確保するために、女性に対する情報技術等、新しい技術教育への支援等が挙げられています。

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「成果文書」の協議の際の議論

「成果文書」の協議では、女性に対する暴力や教育への取組については、重要な課題として多くの国の意見が一致しました。

一方、セクシャル・オリエンテーション(性的指向)及びセクシャル・ライツ(性的権利)や、一方的強制措置及び経済制裁が当該国の女性の状況を悪化させたとの分析の明記については、一部の諸国間で深い対立があり、「成果文書」全体の協議の進捗に影響を及ぼしました(前者については明記されず)。

また、家族の概念についても、伝統的な家族の形態を重んじる国と多様な形態の家族を認める国との間で、最終段階まで協議が紛糾しました。

なお、我が国は、我が国の経験や政策を踏まえて、女性に対する暴力に関する啓発活動、生涯学習、職業訓練、農山漁村における女性の働きに応じた収入の確保等について具体的提案を行い、「成果文書」に盛り込むことができました。

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