NEWSLETTER(第2号)

1 特集 ―ESCAPハイレベル政府間会議について―

2000年6月の国連特別総会「女性2000年会議」のアジア・太平洋地域における地域準備会議として、標記会議が10月26日から29日までタイのバンコクで開催されました。本会議では各国の経験を踏まえ、北京行動綱領(第4回世界女性会議において採択)の実施促進を目的とする勧告が採択されました。以下に本会議についての概要をご報告します。

(出席者)

この会議には、ESCAPメンバー国等の政府関係者、NGO、国会議員ら579名が出席し、12名の女性担当大臣が出席しました。日本からは、馬渕睦夫ESCAP常駐代表(団長)、目黒依子国連婦人の地位委員会日本代表の他、総理府、外務省、文部省、厚生省、農水省、労働省から11名が出席。この他、NGOとして国会議員2名の他、約15名が出席しました。

* * * * * *

(役員)

議長はホスト国であるタイの女性問題担当大臣。副議長には、本会議に参加している閣僚全員(タイを除く11ヶ国)が任命されました。ラポルトゥール(議事記録責任者)はサモアから、勧告を作成するために設置された起草委員会の委員長はフィリピンから選ばれました。

* * * * * *

(主な議題)

北京行動綱領の実施状況についての総合レビューとして、政府代表が各国の実施状況について演説をしました。また、テーマ別のパネルディスカッションが行われました。テーマは4つあり、1) 女性の経済的エンパワーメント、2) 人権の視点からの女性のエンパワーメント、3) 女性の政治的エンパワーメント、4) 女性のエンパワーメントへの戦略です。会議最終日には、来年の女性2000年会議に向けて、アジア・太平洋地域としての勧告が採択されました。勧告の内容は多岐にわたっており、女性の経済活動への参加促進、女性の人権擁護、女性の意思決定への参加促進等の提案が含まれています。

* * * * * *

(その他の地域の動き)

なお、アジア・太平洋地域以外の4地域準備会議(アフリカ地域、西アジア地域、欧州地域、ラテンアメリカ・カリブ地域)が本年度内に随時実施される予定です。

注)ESCAP=アジア太平洋経済社会委員会(ESCAPについての詳細はNEWS LETTER創刊号をご覧下さい)


(1)出席者・会議日程

(出席者)

[加盟国等] 域内42及び域外5:(閣僚が参加した国はアンダーラインの12ヶ国) 豪、アジェルバイジャン、バングラデシュ、ブータン、ブルネイ、カンボディア、中国、フィジー、仏、インド、インドネシア、イラン、日本、カザフスタン、キルギスタン、ラオス、マレイシア、モルディブ、ミクロネシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、オランダ、ニュージーランド、パキスタン、パプア・ニューギニア、フィリピン、韓国、ロシア、サモア、シンガポール、スリ・ランカ、タジキスタン、タイ、トンガ、米、ウズベキスタン、バヌアツ、ヴェトナム、クック諸島、香港、マカオ、カナダ、ドイツ、ローマ法王庁、ハンガリー、イスラエル

[国連機関]9:(UNAIDS、UNCHS、 UNICEF、UNDP、UNEP、UNIFEM、 UNHCR、 UNFPA、 WFP)

[専門機関]5:(ILO、FAO、UNESCO、WHO、世界銀行)

[その他政府間機関]7:(アジア開発銀行、APDC、APO、FORSEC、CIDA、IOM、MRLC)

[NGO] 約90団体 約250名

(会議日程)

10月26日(火)

議題1.開会

議題2.役員の選出

議題3.議題の採択

議題4.北京行動綱領の実施状況についての総合レビュー(各国、NGO、国際機関等のステートメント)

10月27日(水)

議題4.(続き)

議題5.テーマ別パネル・ディスカッション

(a)女性の経済的エンパワーメント

10月28日(木)

(b) 人権の視点からの女性のエンパーワメント

(c)女性の政治的エンパワーメント

(d)女性のエンパワーメントへの戦略

 1) ジェンダーの主流化のためのキャパシティ・ビルディング

 2) パートナーシップの構築

 3) アカウンタビリティ、モニタリング及び評価

起草委員会

10月29日(金)

起草委員会 (続き)

議題6.レポートの採択

議題7.閉会


(2)北京行動綱領の実施状況についての総合レビュー

議題4の「北京行動綱領の実施状況についての総合レビュー」では、各国代表・国際機関等から、様々な問題領域に対し実施されてきた取組に、何らかの進展がみられたとの報告がありました。しかしながら、総合的に見て引続き努力が必要であることも併せて報告されました。議題4で行われた演説の主な共通点を以下にご紹介します。

  • ほとんどの国が、北京行動綱領を盛り込んだ国内行動計画を採択し、法の整備を進めている(タイにおける売春防止法、セクハラ禁止法、韓国の女性発展法等)。
  • 女性に対する暴力やセクハラが社会問題として認識され始め、一部諸国では女性に対する暴力やセクハラを防止する法律が制定された。
  • 小規模起業家支援等、女性の経済的エンパワーメントの強化が行われた。
  • 政策決定、マスメディア等への女性の参画状況に若千の改善があったものの、基本的には依然として大きな男女格差が存在している。
  • 各国とも政策の決定過程等において政府とNGOとの連携強化に努めている。
  • 各国とも女性に対する教育・訓練等が促進され、初・中等レベルでの男女差は縮小され女性の教育へのアクセスは進んだ。しかし、高等教育の段階においては非伝統的分野で依然としてハンディを有している。
  • 女性の貧困を防ぎ女性の自立を促すために女性の為の職業訓練等が行われた。
  • 保健分野の充実を目的として、女性のリプロダクティブ・ヘルスの確保、保健サービスへのアクセス促進に努めている。
  • 政策形成者に女性に対するステレオタイプ又はネガティブな捉え方が根強く残っており、性別データーも不足している。ジェンダーに配慮した政策決定がなされていない。
  • 多くの途上国にとって、女性の地位向上に対する最大の障害は貧困であり、特にアジア金融危機が男性に比較し、女性・子供に甚大な影響を及ぼした。
  • アジアにおける女性・女児の人身売買は深刻であり、国内的・国際的取組が必要となっている。

日本政府代表スピーチ

議題4では馬渕ESCAP常駐代表が日本政府を代表して演説を行い、1995年の北京会議以降に日本が実施してきた下記の取組について紹介しました。

* * * * * *

(1)我が国は、男女共同参画2000年プランによる施策の実施に加え、男女共同参画社会基本法が成立、さらに2001年からの国内本部機構の強化が予定されている。

(2)また、男女雇用機会均等法等改正による職場における女性の能力発揮のための環境整備、児童福祉法や育児・介護休業法改正による職業生活と家庭生活の両立の支援、児童売春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律施行、農業者年金基本法改正による農村女性の地位向上などを行っている。

(3)さらに「女性2000年会議日本国内委員会」、「東アジア女性問題国内本部機構上級担当官会議」の開催を通して政府間・政府と市民社会とのパートナーシップを促進している。

(4)男女平等を障害する要因である性別による固定的役割の観念を克服するため、家庭教育についての調査研究や社会教育プログラムの開発に取組んでいる。

(5)我が国は、途上国の女性の地位向上の為にWIDイニシアティブを実施。又、アジア金融危機後、各国における経済の回復を支援するための協力を行っている。


(3)テーマ別パネルディスカッション

議題5では、テーマ別のパネルディスカッションが行われました。テーマは前出のとおり、1) 女性の経済的エンパワーメント、2) 人権の視点からの女性のエンパワーメント、3) 女性の政治的エンパワーメント、4) 女性のエンパワーメントへの戦略の4つです。これらのテーマはESCAP地域において特に関心が高い分野として、本会議に先立って今年4月に開催されたESCAP専門家会議で選定されました。ここでは、ディスカッションの導入として、各テーマ毎にパネリストが個人の立場または機関を代表して発表した内容をご紹介します。

■■女性の経済的エンパワーメント■■

(1)Jayati Ghosh:Jawaharlal Nahru大学教授 「アジア太平洋地域における女性の経済参加と貧困の傾向」

北京行動綱領では、女性の経済的自立促進、および貧困の構造的原因の解決、農山漁村の女性を含む全ての女性の生産財、機会および公共サービスへのアクセス確保を目標に掲げていた。そして、この目標達成のため教育、読み書き、プライマリー・ヘルスケアといった人間を中心に据えた持続可能な開発及び国際協力等の必要性が強調されていた。しかし途上国とりわけアジア太平洋地域における女性の全体的な状況にはそれほど変化は見られないし、性差の大幅な改善は見られない。それどころか、90年代後半に地域を襲った金融危機は女性の雇用状況を直撃し、急速に進んだグローバル化は不平等という旧弊を助長した感さえある。家父長制の文化の根強い地域でも同様である。こうしたことを踏まえると、北京会議から数年で劇的な変化を期待するのは現実的ではないし常識的でもない。政策ガイドラインの遵守状況およびそれが女性のエンパワーメントの風潮を作り出すのにどれほどの効果を上げているかを調べることが重要である。

(2)Jeanne Frances I. Illo:フィリピン女性学協会 会長「アジア金融危機が女性に与えた社会・経済的影響の分析」

金融危機はより早い段階から労働市場に強い影響を与え、金融危機に遭遇した諸国は、戦後最高の失業率を記録した。多くの国でインフォーマルセクターに従事する女性の労働力が増加したが、女性は男性よりも失業や収入減といった影響を大きく受けた。また、この金融危機により世帯主である女性労働者の負担が増大したが、これに対する政府の関心は低い。また、経済状況の悪化により、女性や児童の売買、女性の売春等の問題がより深刻化した。

(3)堀内光子:ILOアジア・大平洋地域事務所長 「企業の発展を通じた女性の経済的エンパワーメント~ILOの視点~」

世界の雇用状況が厳しい現在こそ、雇用の創出は、より一層その重要性を増しており、貧困に対する最善の策となっている。多くの国で、雇用は小規模企業から生まれているが、中には生産性の低いものや、社会的保護が与えられていないものもある。ILOはこれらの職に従事している女性労働者の保護に取り組んでいる。また、小規模企業は非常に多様であり、潜在的に発展する可能性を秘めているため、今後とも効果的な雇用政策を進め、小規模企業を発展させる必要があると考えている。女性起業家の養成についても、強い関心が持たれているが、雇用の創出の観点からも重要な課題である。


■■人権の視点からのエンパワーメント■■

(1) Savitri Goonesekere:コロンボ大学教授「人権の視点からのエンパワメント」

アジア太平洋地域は、幅広い文化、宗教、伝統が混在する地域であり、その背景から「女性の問題」を「人権」の視点から論じるのに違和感を持つ文化があった。「人権」という概念は西欧文化が標榜するものであり、社会生活における和のために、時には個人主義的考え方は譲歩すべきであるといった「アジアの価値観」と、西欧の価値観とにズレがあり、西欧とアジアの国家や研究者に溝を生んでいた。

しかし女子差別撤廃条約、子どもの権利条約、そして北京行動綱領の採択の過程で、女性の権利と人権が表裏一体となり、上記のような論争は以前ほどの重要性を失いつつある。域内では現在「女性の権利は人権である」という考え方を支持する風潮になっている。

しかしながら、多くの国では、未だ人権の観点から問題を分析し、政策を策定するといった全体的なアプローチはとられていない等、人権に対する取組は不十分であり、女性の権利実現とエンパワーメントを推進するために、次の取組が必要である。1) 女子差別撤廃条約及び子どもの権利条約の遵守、2) 男女平等を規定した憲法の条項強化、積極的是正措置の導入、3) 国際的な取り決めに矛盾しない国内法改正、4) 権利認識を法律改正、政策立案、資源配分に組み入れるための制度構造の構築、5) 人権に関する啓発プログラムの充実、6) 女性団体による紛争解決及び交渉への取組強化、7) 市場経済政策が女性にもたらした影響評価、8) 域内の情報共有促進等。

(2)Regina Boucault:国際移民機関(IOM)タイ事務所長 「アジア・太平洋地域おける女性移住者の最近の動向及び北京行動綱領」

難民の多くは女性で、90年代のアジアでは地域の経済成長に呼応するように、域内、域外へのメイド、エンターティナー(タイやフィリピンからの日本への入国等)、人身売買等による労働移動が増えた。これらに伴い、多くの人権侵害等の問題が無視できない規模となり、国際的に対応を考える必要がでてきた。

(3) Gayle Nelson:太平洋コミュニティ事務局(SRC)ジェンダー問題アドバイザー「女性に対する暴力への太平洋地域における統合的・協同的アプローチ」

太平洋地域は、多様な文化を有するしているが、女性に対する暴力は文化の違いを越えた共通の課題である。女性に対する暴力は人権侵害であると同時に、開発を阻害するものであるため、人権教育・法識字教育、法の整備、家庭内暴力の被害者保護、女子差別撤廃条約及び子どもの権利条約の遵守等の取組が必要である。


■■女性の政治的エンパワーメント■■

(1)Gabriele Bruns :フリードリッヒエーベルト財団女性(FES)女性プロジェクトマネージャー「女性の政治的エンパワーメントに向けての地域ワークショップ」

女性の政治参加を促進するためには、1) 指導的な法的フレームワークづくり、2) 法的フレームワークの効果的な実施、3) 女性の能力開発の重要性について政府、政党からの支持獲得(政治参画のための特別プログラム等の実施)、4) 国、地域レベルにおける女性組織の強力なネットワーク化、といった戦略の組み合わせが有効である。

(2)Khunying Supatra Masdit:列国議会同盟(IPU)タイ議会委員 「女性の政治参加に関するIPUのモニタリング」

IPUは、北京行動綱領のフォローアップとして、各国の女性の政治参加状況についてモニタリングを実施した。国会議員の割合は増加してはいるものの、国連の目標値である30%を達成しているところは少ない。女性の政治参加を進める為には、パブリックオピニオンの形成、メディアとの連携が必要である。

(3) Rosa Linda Tigalgo Miranda:アジア太平洋政治と女性センター(CAPWIP)事務局長「アジア太平洋における女性の政治的エンパワーメント」

女性のエンパワーメントのためには、1) 女性の政治参画促進の為の環境づくり及び2) 女性が力を得るための組織作りが必要である。それらを実現するためには、政府だけではなく、その他の社会システム(政党、メディア、教育機関、ビジネスセクター、労働組合、協同組合)による取組が必要である。また、女性の政治参画促進の為には、女性のリーダー育成が必要であるが、このことは男性の既得権をおびやかすものではなく、女性、男性両者にとってそれぞれの潜在力を発揮するための好機となり得る。


■■女性のエンパワーメントへの戦略■■

(1)Lorraine Corner:国連婦人開発基金(UNIFEM)東南アジア地域事務所地域プログラムアドバイザー「ジェンダーの主流化のための能力開発」

「主流化」には、「ジェンダーの主流化」及び「女性の主流化」という関連する2つの観点があり、両者とも重要である。「ジェンダーの主流化」は専門性の高いアプローチであり、ジェンダー分析やジェンダー統計などの手法を駆使し、政治やプログラムなどあらゆる面で男女に及ぼされる影響の差を明らかにし、不平等を無くすことを目的としている。「女性の主流化」は、とりわけ政治、指導層、統治など、主流の活動へ女性がより一層積極的に参加することを重視するアプローチである。

男女平等を目標とした現在の主流化では、男性優位と女性の代表者不足(女性の積極的役割の不足)が問題である。主流にいる男女の人数がほぼ同数であれば、意思決定の段階で政策やプログラムが男女に及ぼす影響の違いが必然的に考慮される。なお、意思決定者が女性であっても男性と同様に男女差に理解がなければ、ジェンダーの主流が女性不在で進められることもあり得る。女性の参加促進のために、男性と同等の知識、技能を身につけることができるよう能力開発を進めることが重要。また、男女が家庭や地域社会の一員としての義務を果たしながら、経済や政治に平等に参加するという観点から、女性のみならず、男性にも能力開発(例えば家事)をすることが必要である。

(2)Vanessa Griffen:アジア太平洋開発センター(APDC)GAPコーディネーター「北京行動綱領の実行のための協力関係の構築」

多くの国が指摘したように、政府とNGOとの協力関係を強めていくことが必要。一般的に、NGOは組織力が弱い、継続性がないという問題を持っているため、政府側から継続的な関係、対話を持つよう努めることが必要。更には、NGOとの間の連携が求められる。

女性のエンパワーメントへの戦略には多面的なアプローチが不可欠である。女性のエンパワーメントの進展は、国家全体はもとより、地域間、国家間、男女間の枠組みにおいても女性が下位に置かれる状況に対し、改善を図るものである。

(3)Patricia Licuanan:東南アジア監視組織(SEAWATCH)議長「女性のエンパワーメントのためのモニタリング及び評価のための戦略」

モニタリング及び評価は単にプログラムやプロジェクトの実施に役立つツールであるばかりではなく、女性のエンパワーメントのための主要な戦略である。北京会議から4年経過し、北京行動綱領を実施するための政府による明確な政策、行政機関の設立、国内行動計画の策定や既存の計画の見直しに進捗があった。しかし、多くの場合、モニタリングやその内容のとりまとめの努力は依然として不十分である。


(4)パネル展示

会議では、第4回世界女性会議後の各国の成果をパネル(文章、図表、写真等)で説明するための展示コーナーが設けられました。日本はパネル6枚を用意し、以下の内容を展示しました。

(1) 北京行動綱領を踏まえた日本における政策の進展(施策年表:1995~1999年)

(2) 男女共同参画社会基本法の施策の仕組

(3) 男女共同参画社会形成に向けた体制図

  (国内本部機構図)

(4)WIDイニシアティヴの実績

1) 概要・実績

2) アジア太平洋地域における識字教育事業

3) アジア女性労働交流事業

4) 日本人女性専門家によるフィリピン農村女性への技術指導

(5)各分野における主な成果・活動

1) 男女雇用機会均等法の制定等

2) 農村における女性の起業

3) 男女平等教育


また、展示コーナーでは以下の英文資料を配布しました。

男女共同参画社会基本法、「北京行動綱領実施状況に関する質問状」への回答、Women in Japan Today, January 1999、国立婦人教育会館(NWEC)に関するリーフレット及びニューズレター、ユネスコアジア文化センター(ACCU)に関するリーフレット


(5)女性2000年会議に向けての勧告

会議最終日には、来年の女性2000年会議に向けて、アジア・太平洋地域としての勧告が採択されました。

会議も終盤に差し迫った頃、今回の会議の成果を女性2000年会議に引き継ぐために勧告を採択することとなり、ESCAP事務局から出された案文をもとに、全ての参加国が自由に参加できる起草委員会において勧告案が検討されました。勧告という形で文書を出すには、参加各国による合意が必要となりますが、一文一文を細かく討議する時間がありませんでした。そのため、各国が比較的合意しやすくするために「討議の過程で各国より次のような戦略及び勧告が出された」という趣旨のパラグラフを一番頭に置き、その後に具体的な戦略、勧告と言えるようなパラグラフが続くという形式となりました。

そのような参加各国による努力の結果、最終日の夕刻、全体会において各国の合意により勧告が採択されました。しかし、その際、ESCAP事務局が作成した勧告案にかなりの修正が入り、その点について口頭のみで確認された部分も多く、その修正を加えた最終文書はまだ出来ておりません。現在、ESCAP事務局から最終文書が参加各国に送付されるのを待っている状況です。

以下に主な勧告の内容をご紹介します。

★勧告の主なもの★

○ 女性の経済活動への参加促進のための提案

  • 金融危機の影響を被った女性に対する技術研修、雇用促進、女性経営者による零細企業への支援、貸し付け等の対策実施
  • 女性移住労働者の差別的労働状況に関する対策実施
  • 無償労働価値の評価のための調査の実施及び無償労働の公的位置づけ
  • 農村女性、在宅就労女性の適正な労働報酬
  • 不況の影響を被った女性や特別な状況にある女性(難民女性、避難民女性、国内避難民女性、紛争下の女性等)への食料、その他の提供
  • 相続権、土地所有権、技術等への女性の完全かつ平等なアクセス
  • 男女差別を禁止するILO条約の批准

○ 女性の人権擁護のための提案

  • 政策上・法律上・慣習上、周辺化された女性(先住民女性、難民女性、避難民女性、国内避難民女性、紛争下の女性、高齢女性、障害を持つ女性、占領下の女性、植民地、外国政府統治下の女性等)への人権の視点からの特別な配慮の必要
  • ジェンダーの視点に立った包括的人権教育や法識字プログラムの徹底
  • 女性の健康に対する全体的・総合的サービスの提供
  • 男女平等を実現するための法律の整備
  • 女子差別撤廃条約及び選択議定書の批准、履行、留保の取り下げ等
  • 周辺化された女性(先住民女性、難民女性、避難民女性、国内避難民女性、紛争下の女性、高齢女性、障害を持つ女性、占領下の女性、植民地、外国政府統治下の女性等)の暴力からの保護
  • 女性に対する暴力対策の総合的・全体的取組(教育、法整備、セクハラ防止、暴力事犯のデータ収集、心理的医学的サービス等)
  • 国連婦人開発基金(UNIFEM)及び女性に対する暴力撤廃信託基金の活用
  • 人身売買の取り締まり、被害者保護、矯正プログラムの実施。取り締まりのための国際協力の一層の強化
  • 平和共存の気運の醸成、軍縮の実現
  • 民族自決権の確認
  • 女児の、児童としての人権確保、基礎教育の普及等
  • 高等教育における男女平等
  • 学校教育におけるジェンダー教育

○ 女性の意思決定への参加促進のための提案

  • 必要な場合における積極的是正措置(アファーマティブアクション)の提案
  • ジェンダーの視点に立った任命や指名
  • 政策・企画担当者へのジェンダー教育
  • 女性に対するリーダーシップ研修
  • 選挙制度の見直し
  • 女性のエンパワーメントに向けての性別統計の収集
  • 平和、紛争解決へ向けた対話への女性の貢献
  • 女性の管理職登用の阻害要因除去のための政策等の見直し
  • 政治参加を促進する枠組みの作成
  • 女性の地位向上、能力開発プログラムへの「ジェンダーの主流化」及び「女性の主流化」の取り入れ
  • 男性を対象とした研修、メディアキャンペーン等の実施

○ 各種戦略についての提案

  • ジェンダー指標の開発
  • NGOとのパートナーシップの確認
  • 女性2000年会議準備委員会に対するNGO参加についての検討要請
内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019