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8 女子差別撤廃委員会(第20、21回)報告

本年の1月及び6月に第20、21回女子差別撤廃委員会がニューヨーク国連本部で開催されました。去る8月3日に開催された「第20、21回女子差別撤廃委員会等について聞く会」(於:総理府講堂)において、多谷千香子女子差別撤廃委員から以下の報告がありました。


(条約採択20周年記念行事)

本年は条約採択20周年であり、第21回の委員会では条約採択20周年記念行事が行われました。この行事においては、元委員や関係するUN entitiesの代表、NGO代表等が、“条約がもたらした国際的・国内的効果についての回顧及び将来的展望”についてstatementを行いました。このstatementでは、国内的には、国籍、教育課程、雇用についての男女平等が立法措置によって達成され、特に途上国において条約の効果は大きかったが、未だ十分にimplementされていないこと、また制度面(ハード面)では一応の成果をみたものの、人々のものの考え方(ソフト面)ではあまり変化がないこと等が述べられました。国際的側面から見ると、条約が貧困問題に取り組む上で効果を発揮した点などが述べられました。しかし、条約の今日的課題(女性差別の撤廃と人口爆発や環境問題)については、発言がなく、選択議定書(optional protocol)の将来的展望についても殆ど発言はありませんでした。

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開発途上国では、健康・教育の分野における基本的な人材能力開発、マイクロクレジット(小口貸付)を始め女性による経済的資源の活用に便宜を与えるような諸制度の整備、貧困対策の政策やプログラムの実施に関心が高い。

数多くの国が共通して取組んでいる重大問題は、女性に対する暴力(及び一部地域では女性と子供の人身売買)、家族法、雇用法および特に女性に対する暴力に関連する刑法などの見直し・改正をはじめとする女性と法律の問題、HIV/AIDS予防など女性の健康に関する新たな問題、職業・専門訓練を含む女性・女児の教育と技能養成、政策形成・意思決定過程への女性の参画などであった。

ESCAP加盟の先進諸国にとって関心の高い問題領域は、家族と仕事の責任の両立、家庭支援、情報化時代に向けた訓練、および骨粗鬆症、癌、生涯を通じた健康、女性の高齢化などの健康問題であった。

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(選択議定書(optional protocol))

選択議定書(optional protocol)については、本委員会では国連婦人の地位委員会(CSW)で採択されたことの報告を受けるという形であり、本委員会で改めて審議したわけではありません。批准にあたっての考慮すべき点としては、以下の点が考えられます。

  1. final viewは勧告的効力しかないこと。
  2. final viewは、国内的な最終判断の当否、つまり、例えば最高裁の判決内容の当否を云々する内容でなく(B規約選択議定書の例などから)、ある事実の条約適合性(この場合は本条約)を判断の基礎として、違反と認めるときに“当該事実につき締約国のreconsiderを促す”といった内容となると予想され、特定の政策チョイスや法律判断を押しつけるものでないと予想される。
  3. 司法の独立、最高裁が終審である旨の規定は、先進諸国共通のものであって、EUは近く本条約のoptional protocolをブロック批准する予定である。

optional protocol批准については、さらに政策的考慮も必要です。communication及びさらに一歩進めてinquiryまで認めるについては、認めることによるmeritがなければなりません。国内においても、司法判断によって、立法が促され、又は法律解釈が変わるなど、類似した事象にプラスの進歩がもたらされるのは、決断が下された事例(leading case)が適切な事例であり、かつ裁判が適切な内容であることが必要条件です。このことは、国際的なcommunicationやinquiryにもあてはまるでしょう。この点はcountry reportにつき、重要な点にしぼったfocused reportを行い、それに議論を集中して、その内容を深め、適切なconcluding commentsを出すこととも似た性格のものと思われます。

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(一般的勧告)

第20回委員会で審議・採択された一般的勧告**)は、女性の健康に関する権利を扱った条約12条についてのものです。簡単に要約すると、締約国は、生物的な女性と男性との違い、社会経済的な立場を考慮し、かつ最も恵まれない女性(難民、少数民族、障害者等)の健康の権利に特別な留意をして、性別のデータを集め、予算・人員等の配分を考慮し、女性の健康の権利を尊重・保護・充足しなければならないという内容です。

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(レポートの審査)

  • periodic report
    • 今回からpre-sessionalWGが6ヶ月前に開かれ、list of issuesに対する回答も本条約の審査前に書面で提供することになったことに伴い、審査の方法は以下のとおり変更されました。

      まず、第1段階として、closed meetingでcountry repporteurがcountry reportのみならず、NGOsのshadow report等も参照し、reportの概要、当該国にとって特に重要な問題領域、質問すべき事項などを紹介し、第2段階ではopen end meetingで審査対象国代表が補足説明(特にレポート提出時から審査までの変化、重要な領域についての補足)を行い、第3段階で本委員会がアルファベット順に質問し(各5分以内)、第4段階で審査対象国が答弁する方法がとられました。

  • initial report
    • 今回からpre-sessionalWGが6ヶ月前に開かれ、list of issuesに対する回答も本条約の審査前に書面で提供することになったことに伴い、審査の方法は以下のとおり変更されました。

      まず、第1段階として、closed meetingでcountry repporteurがcountry reportのみならず、NGOsのshadow report等も参照し、reportの概要、当該国にとって特に重要な問題領域、質問すべき事項などを紹介し、第2段階ではopen end meetingで審査対象国代表が補足説明(特にレポート提出時から審査までの変化、重要な領域についての補足)を行い、第3段階で本委員会がアルファベット順に質問し(各5分以内)、第4段階で審査対象国が答弁する方法がとられました。initial reportの審査方法と上記periodic reportの審査方法の違いは、上記3段階にあり、initial reportについては条文毎に審査するため、本委員会の質問が一回に限らず何回でも可能な点で、その他は同じです。

      審査で指摘された点をイギリスについて申し上げますと、イギリスでは中央政府が条約実施義務を負うものの、England、Wales、Scotland、Northern Irelandそれぞれの自治が認められ、法制度も異なるため、条約実施が各地方によって異なってくる可能性がある。また、Common Lawの体系をもつイギリスが、ヨーロッパ人権条約を国内法化してHuman Rights Act 1998を立法化したことは評価されるが、ヨーロッパ人権条約は本条約に含まれるindirect discriminationやAffirmative action及び条約第2条のようなprogrammatic natureの規定を含んでいない。従って、イギリス政府は、全国一律のunified strategyを作り、条約の実施を確保すること、及び本条約を国内法化することに努力すべきである。イギリスの特徴的な点は、西ヨーロッパで一番10代の妊娠が多いこと、異民族が雇用その他で差別を受け、多数の女囚が貧困を原因とする軽微な罪で刑務所に収容されていること、及び3対1の割合で老齢の女性が男性よりも多いことである。10代の妊娠についてはsex educationや男性の責任を含めた多角的アプローチで臨むべきであり、異民族については雇用についてのpositive action、trainingその他で臨むべきであり、老齢の女性問題については、医療、経済・社会的な措置を含む総合的施策で臨むべきである。また、軽微な罪は非収容処遇などを検討すべきであるというものです。

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(レポートの審査)

第22回:コンゴ、インド、ヨルダン、ミャンマー、ブルキナファソ、ルクセンブルグ、ベラルーシ、ドイツ。

第23回:リトアニア、モルディブ、モルドバ、イラク、オランダ、オーストリア、キューバ、ルーマニア。

  • *)条約締約国は、まず1年以内、それ以降は4年毎に、条約実施のために各国がとった措置をレポート提出の形で報告する義務がある。そのレポートは女子差別撤廃委員会で審査され、国別にコメントが出される。
  • **)女子差別撤廃委員会は締約国から得た報告及び情報に基づき、締約国が条約実施のための参考になるような提案及び一般的性格を有する勧告、いわゆる一般的勧告(General Recommendation)を国連総会に行っている。今回分を含めこれまでに24の一般的勧告が作成されている。

* 詳細な情報は以下のホームページをご参照下さい
Womenwatch

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