岩男壽美子首席代表演説

議長

世界の女性および男性にとって重要なこの会議において発言することは私の光栄とするところであります。日本政府を代表して会議の準備に献身した全ての関係者に心から謝意を表します。

変化する社会経済情勢に対応し、21世紀を真に平和で豊かな世紀とするためには、女性と男性がその個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会を形成することが求められています。我々は、法律上のみならず事実上の男女平等の実現に向けて行動しなければなりません。行動に当たっては、特に「女性のエンパワーメント」、「女性の人権尊重」、「パートナーシップに基づく強い政治的意志と行動」を指針にするべきであると考えます。

議長

女性のエンパワーメントは、男女平等の実現において中核的な役割を果たします。我が国では、1999年6月に制定された男女共同参画社会基本法において積極的改善措置が明記されました。また、ジェンダー視点の主流化の一環として性別データの整備や、無償労働の評価を推進するとともに、政府の施策のジェンダー・インパクトの調査手法の開発に着手しています。

女性のエンパワーメントのためには、女性の政治参加を含む意志決定過程への関与は特に重要な意義があります。 我が国では、北京会議以降、国内及び地方選挙で多数の女性が選出された他、本年初めて2人の女性知事が誕生しました。これらは女性の政治的エンパワーメントに向けて新たな突破口を開いたものであり、喜びに耐えません。

経済的エンパワーメントのためには、女性が男性と対等な経済活動に参加するための支援が重要です。我が国では、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を進めるとともに、職業訓練の充実や女性起業家支援を行っています。農山漁村では女性の農業経営参画や女性の能力開発を支援しています。また、急速に進む少子高齢化に対応すべく、男女がともに育児や介護等の役割を果たし、家庭生活における活動と他の活動との両立が可能となるような対策を進めています。

9年連続でODA供与実績第1位である我が国は、女性のエンパワーメントが貧困を始め、人間の尊厳と生活を守るうえでのあらゆる課題に係わる極めて重要な要素であると考えます。我が国は、人道支援及び開発援助過程にジェンダーの視点を取り入れ、女性の教育、健康、経済社会活動への参加を重点分野として途上国女性を支援しており、 今後もその支援を続けてまいります。また、先般、我が国は国際的な枠組みの下で重債務貧困国に対するODA債権のみならず非ODA債権についても100パーセント削減することを決定するとともに、世界銀行の債務救済基金に既拠出分と合わせ2億ドルまでの追加拠出を決定しました。 我が国は、債務救済を受けた途上国が、これを貧困削減のために有効に活用することを期待します。女性のエンパワーメントのためには、女性が教育・学習を通じて力をつけていくとともに、社会に根強く残る性別役割に関する固定観念を克服することが長期的な課題となっています。我が国では、個人の意識改革を促進するために男女平等の視点に立った生涯にわたる教育を推進しており、今後も推進してまいります。

議長

女性の人権の尊重なしには、真の男女平等の実現はありえません。近年、国際的に女性に対する暴力が女性の安寧に対する深刻な脅威となっており、その取り組みを強化することの必要性が広く認識されています。

我が国では、女性に対する暴力やセクシャル・ハラスメントを根絶するための調査、防止と被害者保護、適切な法執行、更なる法整備の検討を通じて、引き続き一層努力する考えです。また、リプロダクティブ・ヘルス/ライツが女性の生涯にわたって確保されるよう、ライフステージに応じた適切な保健医療サービスの提供に努めていきます。

国連婦人開発基金(UNIFEM)の下で1996年に設立された女性に対する暴力撤廃のための信託基金の活動が各国の支援を得て一層効果をあげていくことも期待します。

児童の権利条約の2つの選択議定書が採択されたことを、児童の安寧に貢献するものとして高く評価します。我が国では、昨年11月に児童買春・児童ポルノ法が施行され、対応を強化しています。また、我が国は、児童の性的搾取の撲滅へのコミットメントの証として、国連児童基金(UNICEF)及びECPATと協力して2001年12月、横浜において第2回児童の商業的その他の性的搾取に反対する世界会議を開催することを決定しました。

議長

男女平等の実現のためには、パートナーシップに基づく政府の強い政治的意志と行動が必要不可欠です。政府は、男女共同参画社会基本法に基づき、本年中に基本計画を策定し、1月から大幅に強化される国内本部機構によりこれを強力に実施していく考えです。

我が国は、1998年12月に特定非営利活動促進法を施行し、NGO活動の促進に努めており、今後ともNGOとのパートナーシップを重視していきます。特にこの会議においては、日本のNGOが各国NGOとの交流を通じて特総の成功に向け貢献していることを歓迎します。

議長

現在、グローバライゼーションや通信技術の進展により我々の生活や仕事のあり方、社会制度などが大きな変革期を迎えています。また、人や知識の交流促進により、過去にとらわれない新たな発想や価値観が生み出されています。究極的には、個人が社会の主役であり、個人が社会を変えていくことを考えれば、現在は、長い年月かけて形成された男女不平等を個人レベルから変革していく好機と言えましょう。

男女共同参画社会の実現は、事務総長のミレニアム・レポートにもあるように人間を中心とするアプローチを推進するという意味からも非常に重要であると考えます。この会議がミレニアム・サミットとともに、女性の未来に向けた大きな跳躍の契機となることを強く期待し、我が国としても本会議の成功に向け貢献を行うことを誓います。

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