女子差別撤廃条約実施状況第4回報告(仮訳)

5. 第6条

(1)売買春の現状
1)売春関係事犯の検挙実態、対策法

売春関係事犯については、売春防止法、児童福祉法、刑法、青少年保護育成条例等の規定の適用が可能であり、これらの規定を的確に運用している。

最近5年間における売春関係事犯の検挙状況は、統計資料50のとおりであり、増減はあるものの、概ね減少傾向にあるとみることができる。売春防止法違反の検挙状況についても、ほぼ同様の傾向がみられるが、これを態様別にみると、検挙件数は周旋が最も多く、次いで契約、勧誘の順、検挙人員では周旋、勧誘、契約の順となっており、これらの事犯が売春防止法違反の検挙総数全体の90%以上と、その大部分を占めている。

売春事犯の中でも周旋・契約が特に多くを占めており、これら事犯の多くは、デートクラブ等客の求めに応じて売春婦を派遣する形態のものであるとみられることから、売春の形態は、派遣型売春が主流をなしていることがうかがわれる。また、派遣型売春の手口については、公衆電話ボックス等に売春誘引ビラを貼付するなどの方法で公然と客を求めたり、客との連絡に転送電話や携帯電話を使用するなど、悪質・巧妙化が目立っている。

これら売春事犯に暴力団が介入するケースは、依然として後を絶たず、1996年中の売春防止法違反の検挙人員に占める暴力団員等の割合は、18.5%(264人)であり、売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。

また、1998年4月に、風俗営業等に関して行われる売春事犯等を防止するため、不法就労助長罪を犯したことを風俗営業の欠格事由とし、また、接待飲食等営業を営む風俗営業者や、いわゆるブローカーが、接客従業者に対して高額の債務を負わせたり、旅券を保管したりする等の行為の規制を内容とする風営適正化法の一部改正が行われた。

2)性教育及び啓発活動等

最近5年間における売春関係事犯に係る国籍別・稼働先別の外国人女性の状況は、統計資料52のとおりである。これら外国人女性の多くは、短期滞在、興行等の在留資格で入国し、バー・キャバレーを始めとする風俗営業店で働き、不法残留等の違法な状態下で売春関係事犯に関与している。こうした状況は、近年は地方都市にも広がりを見せており、その背後には、外国人女性の供給ブローカーとこれを受け入れる国内の暴力団や悪質雇用主の介在が認められ、中には、外国人女性がこれらブローカーに騙されて我が国に連れてこられ、多額の借金を背負わされて、売春を強要される例や本来受領すべき報酬から法外な額を天引きされている例もみられる。

このような状況を受けて、外国人芸能人の出演先施設を主たる対象として、その活動状況に関する実態調査を全国的に実施した結果、接待行為等の違反状況が認められたことから、外国人芸能人の興行活動を適正化し、業者による人権侵害を防止するため、出入国管理及び難民認定法に基づき定められている法務省令の一部を改正し(1996年9月3日施行)、例えば、外国人芸能人の出演先施設がいわゆる風俗営業店である場合には、専ら接客に従事する従業員が5名以上確保されていることに加え、当該芸能人が客の接待に従事するおそれがないと認められる場合に限って、その受入れを認めることとし、また、その他にも招へい機関及び出演先施設の経営者、常勤職員に関する欠格事項の明確化を図る等の措置も併せて行った。

また、 「1)売春関係事犯の検挙実態、対策法」のとおり、外国人女性に係る売春事犯を防止するため、風営適正化法の一部が改正された。

4)児童買春

少女を相手方とする買春行為は、少女の健全な育成を著しく阻害する行為であるばかりでなく、人権を侵害する行為にも当たることから、現行の関係法令(条例を含む)を最大限に活用した取締りに努めている。また、児童買春を許さない社会づくりに向け、児童の権利保護を図るための広報啓発活動についても、関係機関と協力した取組みを行っている。一方、児童買春の被害に遭った少女が安心して警察に相談したり届け出ることができる環境や体制を整備して被害の潜在化の防止を図るとともに、精神的打撃を受けた被害少女については、その打撃を軽減し、早期立ち直りを図るため、専門の職員がカウンセリングの実施等により継続的な支援を行う体制を整備している。

また、長野県を除く全都道府県で制定されているいわゆる青少年保護育成条例においては、「青少年に対するみだらな性行為又はわいせつな行為」を規制する淫行処罰規定を盛り込んでいる。最近では、東京都で「東京都青少年の健全な育成に関する条例」を改正し、1997年12月16日から施行した。改正の大きな特徴としては、青少年との金品等の供与等を伴う性交又は性交類似行為(性交等)及び周旋による性交等(買春等)を禁止し、違反した大人を処罰すること等である。

「援助交際」とは、もともと金銭的対価を受けることを目的とした性的な交際を意味していたが、最近では、特に少女によるこうした行為を指す言葉として使用されており、いわゆる「援助交際」は近年急速に拡大し、少女の側の低年齢化の傾向もみられる。

警察では、相手方等の大人に対する取締りの徹底を図るとともに、こうした行為の温床となっているテレホンクラブ営業に係る規制条例の適切な運用、被害少女に対する継続的な指導等の実施、売春の誘引行為の厳正な取締り等を行っているほか、少女による性非行を防止するため、少女の規範意識の啓発と非行防止の世論形成を目的とした広報啓発活動を行っている。

5)テレホンクラブ

近年、電話回線を利用して不特定男女間の通信を媒介するテレホンクラブ、ツーショットダイヤル営業等が増加しており、女子少年が広告チラシを観る等により興味本位に電話をし、淫行等による性的被害、売春等の性的な問題行動の温床となるなどの問題が生じており、青少年に及ぼす影響が憂慮されている。このため、警察では、46都道府県においてテレホンクラブ営業を規制する条例が制定されたのを受け、その適切な運用に努めるとともに、各種違法行為の取締りの強化、関係機関・団体及び地域住民と連携したテレホンクラブの広告物の撤去活動、テレホンクラブに係る性的被害防止のための広報啓発活動等を行っている。

6)途上国へのセックス観光

本条項は国外における状況について措置をとること締約国に求めるものではが、我が国としては途上国へのセックス観光との関連で次の措置をとっている。旅行業法第13条第3項においては、旅行地の法令に違反する行為を行うこと及び旅行地の法令に違反するサービスの提供を受けることに旅行業者が関与することを禁止しており、更に、政府においては、日本人海外旅行者の不健全な行動に関与したことが明らかな旅行業者については業者名等を公表すること等を内容とした通達を発出している。

しかし、近年、日本人旅行者が東南アジア等の途上国において、児童買春のために逮捕されたり、帰国後告訴された例がみられる。1996年8月、スウェーデンのストックホルムで「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」が開催されたことをきっかけに、政府は各省庁連絡会議を開き、児童買春、児童のポルノの防止を目的として啓発活動を取り進めることとした。この一環として、日本ユニセフ協会の協力を得て、児童買春根絶を訴えるポスターを作成し、空港、港湾、旅券業務窓口等に広く配布し、旅行業協会においても、旅行業者及び旅行者に周知徹底を図っている。

政府としては、今後とも、日本人海外旅行者の不健全な行動に関与した旅行業者があった場合には、法令に基づき厳正に対処していくこととしている。

(2)売春をめぐる諸状況
1)性を売り物にする風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)について

我が国では、1980年代前半、性を売り物とする新しい形態の営業が次々と出現し、善良の風俗及び少年の健全な育成に多大の悪影響を与えるようになった。このため、1984年に風俗営業取締法(現、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)を改正して性を売り物とする5種類の営業(統計資料56参照)を風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)と定義し、届出制を導入するとともに、従前からの営業禁止区域等の規制に加え、18歳未満の者等に関する各種行為及び客引きを禁止し、広告、宣伝及び営業時間の制限等の規定を設けるなど規制を大幅に強化した。また、無店舗型の性を売り物とする営業が増加し、かつ、多様化している現状に鑑み、1998年4月、無店舗型性風俗特殊営業及び映像送信型性風俗営業に対する規制の新設を含む風営適正化法の一部改正が行われた。

さらに、パソコンの普及等科学技術の進歩に伴う最近の風俗環境等をめぐる状況の変化に対応して、1996年に政令を改正し、アダルトショップで販売される専ら性的好奇心をそそる物品に、CD-ROM等の電磁的方法による記録に係る記録媒体を追加した。

最近5年間の風俗関連営業(風営適正化法改正後の店舗型性風俗特殊営業)の営業所数は、統計資料56のとおりである。

また、風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)として法で規制 されているもの以外で、いわゆる性を売り物としている営業のうち、専ら売春を 目的とした営業については、売春防止法等の規定を活用して徹底した取締りを行 っている。

2)多様化する売春形態

売春事犯の形態は、その主流をなしているデートクラブ等に係る派遣型売春をはじめとして、個室付浴場での売春、いわゆるピンクバー等における売春等の各種接客業を仮装した売春、さらには外国人女性等が飲食店等に稼働しながら行う売春や娼婦など多様なものがみられる。

3)売春に従事した女性に対する保護
(i)婦人保護施設等について

売春防止法の第4章では、性行又は環境に照らして売春を行うおそれのある女子(要保護女子)の保護更生に関する事項を規定している。

具体的には、売春防止法第34条に基づく婦人相談所、同第35条に基づく婦人相談員及び同第36条に基づく婦人保護施設がある。

この婦人保護事業においては、昨今の社会経済状況等の変化を踏まえ要保護女子の範囲について、売春経歴を有する女子のほか、家庭関係の破綻、生活の困窮、性被害等社会生活を営むうえで困難な問題を有しているなどの女子が、将来売春を行うことがないよう、その未然防止の見地から保護、援助している。

婦人相談所では、相談者に対し、婦人保護施設への入所、就職、家庭への送還、福祉事務所への移送等の指導・援助を講じており、要保護女子について、附属する一時保護所における一時的な保護を実施している。

婦人相談員は全47都道府県や市に設置され、婦人相談所と同様に指導・援助を行っている。

婦人保護施設は、全国に52ヶ所設置されており、入所者に対し、職業訓練等のサービスを提供している。また保護された女子は、就職・自営、帰宅・帰郷、結婚、他機関・施設への移送等の理由により退所している。

(ii)少女被害者の保護

心身ともに未熟な少女が売春に従事することは、少女の人権の侵害につながるばかりでなく、少女に大きな精神的打撃を与え、その後の健やかな成長に悪影響を及ぼすおそれがあることから、警察・法務省では、その精神的打撃を軽減し、早期の立ち直りを図るため、専門の職員がカウンセリングの実施等により継続的な支援を行う体制の整備を図っている。

(iii)外国人女性の保護

1996年中、我が国が退去強制手続を執った不法就労外国人女性のうち、売春に従事していた者の数は484人である。

不法就労外国人問題については我が国及び周辺諸国の経済情勢等から、今後もなお売春に従事する外国人を含め不法就労外国人の流入が継続すると思われるところ、これら外国人の人権に配慮しつつ、その定着化を防止し減少を図っていくとの基本方針の下に所要の体制を整備しつつ、厳正な入国審査の実施、関係機関との連携による悪質事案を中心とした摘発の強化、国内・国外に対する広報活動の強化等の対策を推進している。

また、売春行為が有する反道徳性や反社会性、風俗・社会・公衆衛生上の影響にかんがみ、その防止に努めるほか、売春を強要されている等の人権侵害事実が判明したときは所要の措置が執られるよう関係機関に通報するなど、その人権の保護に配慮を行っている。

なお、このような状況により危機に陥った女性を緊急に一時保護する目的で、民間の女性団体が設立したシェルターがあり、外国人女性も多く利用している。
(日本キリスト教矯風会が開設している「女性の家HELP」など)

4)売春対策審議会の男女共同参画審議会への発展的統合

1997年3月に成立、同年4月より施行された、男女共同参画審議会設置法に基づき設置された男女共同参画審議会は、従前の売春対策審議会を発展的に統合したものであり、男女共同参画審議会においては、売買春その他の女性に対する暴力に関する事項について、男女共同参画社会の実現という幅広い観点から調査審議を行っているところである。

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019