女子差別撤廃条約実施状況第4回報告(仮訳)

2. 第3条

先に本報告第1部7において、我が国の現在の男女共同参画推進本部機構のあらましについて述べたが、ここでは第3回報告審査以降の同機構充実のための我が国の取組みを報告する。

(1)国内本部機構の充実
1)男女共同参画推進本部の体制

我が国は、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の円滑かつ効果的な推進のため、1994年7月に男女共同参画推進本部を設置した。この本部は、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官(男女共同参画担当大臣)を副本部長とし、本部員は全閣僚で構成する。これは、従来総理府に置かれていた婦人問題企画推進本部を改組し、内閣に置いたものであり、構成員も事務次官から閣僚へ格上げした。また、1994年6月に総理府に男女共同参画室を設置した。

なお、1997年9月に発足した第2次橋本改造内閣において、従来の女性問題担当大臣に代わり男女共同参画担当大臣が置かれることになり、村岡兼造内閣官房長官が指名された。

2)男女共同参画審議会

1994年6月、政令に基づき、内閣総理大臣の諮問に応じて、男女共同参画社会の形成に関する基本的かつ総合的な事項を調査審議し、及び当該諮問に関連する事項について、内閣総理大臣に意見を述べることを所掌とする男女共同参画審議会が設置された。この審議会は1997年3月31日までの時限の審議会であったが、1997年3月に男女共同参画審議会設置法が成立し、同年4月には、この法律に基づき、存置期限を付さない男女共同参画審議会が設置された。この審議会は、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的かつ総合的な政策及び重要事項を調査審議すること、それら諮問に関連する事項について、内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。

1997年6月、男女共同参画審議会は内閣総理大臣より (1)男女共同参画社会の実現を促進するための方策に関する基本的事項について、(2)男女共同参画社会の実現を阻害する売買春その他の女性に対する暴力に関し、国民意識の変化や国際化の進展等に伴う状況の変化に的確に対応するための基本的方策について、の2つの諮問を受けて、「基本問題部会」「女性に対する暴力部会」を設け、それぞれ調査審議をしているところである。

現在、「基本問題部会」では、男女共同参画社会の実現を促進する基本的な法律について、調査審議中である。

なお、この審議会は男女のいずれか一方の委員の数は、委員の総数(25人以内)の十分の四未満であってはならないと法律上定められており、現在、女性の委員は約6割を占めている。

3)男女共同参画推進連携会議

1996年9月には、男女共同参画社会づくりに関し広く各界各層との情報及び意見の交換並びにその他の必要な連携を図り、もって男女共同参画社会づくりに向けての国民的な取組を推進するため、男女共同参画推進連携会議が発足した。同会議は、内閣官房長官が依頼した13名の有識者と、女性団体、経済界、教育界、メディアなどの団体を代表する67名から構成されている。

同会議の企画委員会は1997年8月26日に、本報告書に盛り込むべき事項について、広くNGO等から直接意見を聞く会を主催し、また女子差別撤廃委員会の報告会を毎回開催するなど、NGOとの連携を図っている。

4)行政改革会議最終報告

1996年11月、複雑多岐にわたる行政の課題に柔軟かつ的確に対応するため、必要な国の行政機関の再編・統合の推進に関する基本的・総合的な事項を調査審議するため、行政改革会議が設立された。本会議が1997年12月に提出した最終報告では、男女共同参画の推進に関する機能は、新たに置かれる内閣府に位置づけられた。現在の男女共同参画審議会に替えて、内閣官房長官を会長とする男女共同参画会議が内閣府に置かれ、自ら必要な意見を述べるとともに、施策の実施状況を調査、監視する機関となるとされた。また、内閣府の調整部局のうち男女共同参画に関する施策の総合調整に当たる部門が会議の事務局となる。この部門は、会議事務局の機能を担うほか、総合調整及びこれに伴う事務を行うこととされた。

なお、ナショナルマシーナリーの充実・強化については、各種の団体等から多くの要望及び署名が寄せられた。

(2)地方公共団体における施策の充実

我が国には、女性に対する情報提供、女性グループ、団体の自主的活動の場の提供、相談、調査研究等を行う総合的な施設、いわゆる「女性センター」が1998年4月現在、都道府県又は政令指定都市によって全国に39施設、設置されており、地域の女性団体の活動の拠点となっている。

(3)障害を持つ女性のための施策
1)障害者プランの策定

政府は、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の「アジア太平洋障害者の十年」に呼応して、1993年3月に「障害者対策に関する新長期計画」を策定し、さらに、1995年12月に同計画の具体化を図るための重点施策実施計画として「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」を策定した。「障害者プラン」は、1996年度から2002年度までの7か年計画で数値目標の設定等の施策の具体的目標を盛り込んでおり、同プランに沿って、障害を持つ女性に対しても男性に対してと同様に、全員参加の社会づくりを目指して総合的な施策を推進している。

具体的施策としては、住まいの確保(グループホーム・福祉ホーム)、働く場の確保(授産施設・福祉工場、障害者雇用支援センターの指定)、介護サービスの充実(ホームヘルパー・ショートステイ等の在宅サービス、身体障害者療護施設等の施設サービス)等多くの分野で具体的な数値目標を明示し、計画期間中の達成に向けて関係省庁で取り組んでいるところである。

また、バリアフリ-化を目指して、幅の広い歩道の整備や、駅等におけるエレベーター等の計画的な設置・整備についても、具体的な施策目標を明記し推進し、進捗状況については、定期的にフォローアップを行っていくこととしている。

なお、住民により身近な行政主体である都道府県や市町村にも障害者施策に関する基本計画を策定するよう、1995年5月に政府として指針を示し、地方公共団体においても障害者計画に基づき施策の積極的な推進が図られるよう努めている。

2) 障害者週間

障害を持つ女性も男性も共に自らの自立と社会参加への意欲と国民の障害者問題に対する理解と認識を高めるための運動を展開する期間として、1995年度から毎年12月3日から9日までを「障害者週間」として設定した。

(4)高齢者女性のための施策

高齢者においては、女性の占める割合が高く、高齢者が直面する問題は女性により大きな影響を与える。

21世紀初頭の本格的な高齢社会を目前に控え、経済社会の健全な発展を図りつつ、高齢者が健康で、経済的にも自立し、社会の一員として充実した暮らしができる環境の整備をすることが、我が国の最重要課題となっている。このため、1995年に施行された高齢社会対策基本法の規定に基づき、政府が推進すべき基本的かつ総合的な高齢社会対策の指針として、高齢社会対策大綱が定められ、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進の各分野にわたる高齢社会対策が策定され、現在それに基づき様々な施策が展開されている。

1)介護保険制度の創設について

今後、高齢化の進展に伴い介護を社会的に支える仕組みの創設が必要であることから、1997年12月、介護保険法が成立し、これに基づき準備期間を経て2000年4月から介護保険制度が導入される。この制度により、65歳以上の寝たきりや痴呆の高齢者、40~64歳の老化に伴う疾病で介護が必要な人等に対し、在宅・施設両面にわたる介護サービスが総合的に利用できるようになる。サービス利用については、保険給付の対象費用の1割を利用者が負担する。また、施設入所者については1割負担に加え、食費のうち平均的な家計において負担する額は利用者負担となる。

今後は、2000年度からの制度の実施に向け、引き続き、新・高齢者保健福祉推進十ヶ年戦略(新ゴールドプラン)に基づき、介護サービス基盤の整備を推進するとともに、保険者である市町村が円滑に介護保険制度を運営できるようにするための、要介護認定のための体制づくり、介護保険事業計画等の策定のための国の基本方針の検討、保険者としての事務処理体制の細部にわたり医療保険福祉審議会等の意見を聞きながら検討を行っていくこととしている。

なお、家族介護に対する現金給付については、必ずしも適切に介護に結びつくものではなく、家族介護が固定化され、特に女性が家族介護に拘束されるおそれがあることや、現金給付を行うためにかえって介護サービスの拡大が十分図られないおそれがあること等から、介護保険制度においては当面は実施しないこととしている。

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