女子差別撤廃条約実施状況第4回報告(仮訳)

11.第12条

(1)女性の生涯を通じた健康支援

政府では、女性の生涯を通じた健康を支援するため、思春期から妊娠・出産まで一貫してサービスの提供が受けられるような母子保健の推進を図る一方、中年期以降の女性に対しては、更年期障害の軽減、肥満の予防などを重点とした健康教育、健康相談、健康的な食生活の確立や適切な運動習慣の普及などの推進、乳がん、骨粗鬆症検診の一層の推進などを図っている。

さらに、1996年度から女性の生涯を通じた健康管理のための「健康教育」、女性特有の健康問題に対応するための「一般相談」、不妊に悩む夫婦に対し的確な相談指導を行う「不妊専門相談」からなる「生涯を通じた女性の健康支援事業」が保健所、女性センター、医療機関等で実施されている。

(2)妊娠と出産に関するサービスの提供

母子保健活動は、結婚前から妊娠、分娩周辺期、新生児、乳幼児期を通じて一貫した体系のもとに総合的にすすめられることを目指しており、それぞれの時期に最もふさわしいサービスが提供されるよう、体系化が図られている。

母子保健法の改正によって、1997年4月より、住民に身近な市町村が、妊娠の届出から就学前まで一貫して基本的母子保健サービスを実施することとなった。これによって市町村では、従来から実施している学校保健、労働衛生、老人保健との連携を図っていくことで、生涯を通じた健康づくりの体制の整備が可能となっている。

(3)周産期医療の充実

1996年の妊産婦死亡数は72人、死亡率は6.0(出生10万対)とこの数年横ばいである。乳児死亡率は3.8、乳児死亡の53.6%を占める新生児死亡の率(出生千対)は2.0、また周産期死亡率(妊娠満22週以降の死産数+早期新生児死亡数/出生数+妊娠満22週以降の死産数×1000)は6.7と、年々低下している。

少子化、35歳以上の妊婦の増加、出生体重1500g未満児の増加のなかで、安心して子供を産み育てる環境づくりの一環として、妊娠時期から出産、小児期にいたるまでの高度な医療を提供するための周産期医療施設(PICU)、小児医療施設(NICU)を全国的に整備しつつ、1996年より都道府県単位で妊婦及び新生児に対する周産期医療についてのシステム体制の構築を推進している。

(4)家族計画

我が国の出生率は、1975年以降急激に低下し、1996年の合計特殊出生率は1.43と将来人口の減少が予測され、さまざまな少子化対策が講じられている。そのような中で家族計画の考え方及びさまざまな利用可能な方法については、性に関する学習の一環として学校教育や家庭教育学級においてその充実が図られているとともに、地域保健サービスとしても専門的な相談指導が行われている。1996年に行われた調査によると、既婚女性の56.3%が現在避妊を実行しており、過去に実行した者も合わせると77.8%であった。また、未婚女性の避妊実行率は42.2%、うち性交渉経験者の実行率は90.7%であり、既婚者の場合と同じく未婚者の間でも避妊が普及している。

人工妊娠中絶は母体保護法によって、妊娠の継続または分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れがある場合、あるいは暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶できない間に姦淫されて妊娠した場合で、本人及び配偶者の同意によって、妊娠22週未満に限り行うことができる。その件数は、1955年の117万件をピークとして年々減少し、1980年には60万件を下回り、1996年は約33.8万件であった。年齢階級別の実施件数をみると、20歳未満は28,256件(8.3%)であるが、女子人口千対実施率は1980年以降横ばいで推移し、1996年は前年に比べ数、率ともに増加している。1996年の20歳未満の母親からの出生数は15,621(全出生の1.29 %)と年々減少傾向にある。20歳未満の妊娠は、6割強が人工妊娠中絶という結果である。

(5)HIV/エイズ

1994年度を初年度とする「エイズストップ7年作戦」を策定し、西暦2000年までの目標として、①特効薬及びワクチンの開発、②我が国におけるエイズの流行阻止、③アジア地域におけるエイズの流行阻止のための支援を掲げ、施策の推進に取り組んでいる

具体的な取組みは次の通りである。

1)エイズストップ7年作戦
(i) 医療体制の充実

エイズ患者・HIV感染者の増加に伴い、エイズ患者等が安心して医療を受けられる体制を整備するため、各都道府県においてエイズ治療の拠点病院を、また、全国を8つのブロックに分け、それぞれにブロック拠点病院を整備するとともに、国立国際医療センターに設置したエイズ治療・研究開発センターを中心に医療関係者への研修等を実施している。

(ii)相談指導体制及び検査体制の充実

エイズに関する各種相談事業を実施するとともに、医療機関やNGO(非政府組織)における相談等の充実を図るため、カウンセラーの養成研修、ボランティア指導者の育成事業等を実施している。また、全国の保健所で無料・匿名検査を実施するとともに、検査前後のカウンセリングの充実を図っている。

(iii)研究の推進及び国際協力の推進

国内の大学、研究機関等を中心としたエイズ対策の研究、エイズ医薬品等の開発の研究を推進するとともに、海外との研究協力を進めている。

また、国連合同エイズ計画への拠出、国際エイズ会議への参加等を通じ、世界のエイズ対策への協力を行っている。

(iv)正しい知識の啓発普及

国民に対してポスター、リーフレット等によるエイズに対する正しい知識の普及啓発、患者・感染者に対する偏見の除去に努めるとともに、12月1日の「世界エイズデー」に合わせて街頭キャンペーン事業を実施し、エイズ予防対策の推進を図っている。

(v)都道府県等によるエイズ対策促進

地域の実情に応じたきめ細かな施策を総合的に推進するため、都道府県等におけるエイズ対策推進協議会等の設置や、医療従事者の実地研修事業及び各種広報活動、検査・相談事業等を推進するための費用に対する補助を行い、地域における総合的なエイズ対策の促進を支援している。

2)学校教育・社会教育における取り組み

学校教育において、HIV/エイズに関して若年期から正しい理解を深めるとともに、患者・感染者に対する偏見や差別を払拭する教育が極めて重要であることから、①エイズに関する小・中・高校生用教材の作成・配布を1992年度から、②教師用指導資料の作成・配布を1992年度に、③教職員の研修を1993年度から、④エイズ教育推進地域の指定による実践研究を1993年度から行うとともに、エイズ教育情報ネットワーク整備事業を1995年度から実施し、エイズ教育情報の全国的な普及と活用を図るなど、エイズ教育の充実を図っている。

社会教育においては、地域におけるHIV/エイズ問題に関する学習機会の充実とHIV/エイズの正しい知識の普及、啓発の促進を図っている。

(6)女性に特有な疾病に関する予防対策

骨粗鬆症検診、乳がん検診、子宮がん検診については、いずれも老人保健事業の一つである健康診査であり、市町村が実施している。費用は、国、都道府県、市町村がそれぞれ3分の1ずつ負担している。

1)骨粗鬆症検診

骨粗鬆症は骨折等の基礎疾患であり、高齢化の進展によりその増加が予想されることから、骨量が減少している者を早期に発見し、骨粗鬆症を予防することが必要である。

1995年より、閉経前後である40歳、50歳の女性に対する骨粗鬆症検診を老人保健法の総合検診のなかに位置づけ、骨粗鬆症の早期発見に努めている。1996年度の骨粗鬆症検診受診者の総数は、10,624人であった。

2)乳がん検診

1996年の我が国における女性の乳房の悪性新生物による死亡者数は7,900人であり、年齢調整死亡率の推移をみると、昭和40年代より上昇しており、女性の悪性新生物による死亡数全体に占める割合は、同年で7.4%となっている。

現行法が夫婦は婚姻の際に定めるところにより夫婦のいずれかの婚姻前の氏を夫婦共通の氏として称するものとしているのを改め、夫婦は、婚姻の際に、夫婦のいずれかの氏を夫婦共通の氏として称するか、又は各自の婚姻前の氏を引き続き称するか選択することができるものとする。

3)子宮がん検診

1996年のわが国における女性の子宮の悪性新生物による死亡者は4,963人であり、年齢調整死亡率の推移をみると、1955年頃から低下しており、当時のおよそ4分の1になっている。女性の悪性新生物による死亡者数全体に占める割合も1950年には26.3%であったが、1996年には4.7%になっている。

子宮がん検診については、子宮頸がん検診が1983年度から、体がん検診は1982年から老人保健法によるがん検診の一つに加えられた。子宮頸がん検診の対象者は、30歳以上の女性である。子宮体がん検診の対象者は、子宮頸がん検診の対象者のうち、問診等の結果、一定の条件に該当するものである。

1996年度の子宮頸がん検診の受診者の総数は、3,847,779人、要精検者数は38,012人で、2,538人の子宮頸がん患者が発見された。また、子宮体がん検診の受診者(頸部の再掲)の総数は、247,264人、要精検者は4,476人で259人の子宮体がん患者が発見された。

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