女子差別撤廃条約実施状況第4回報告(仮訳)

10. 第11条 2(c)

(1)育児・介護期における条件整備の充実
1)育児休業法の改正

介護休業制度の創設等を内容とする「育児休業等に関する法律の一部を改正する法律」が、1995年6月5日に成立し、6月9日に公布された。この改正法により、育児休業法は、育児や家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立を支援することを目的とした総合的な内容の育児・介護休業法となった。

この法律の概要は、以下のとおりである。

(i)介護休業の権利の創設

労働者は、事業主に申し出ることにより、連続する3月の期間を限度として、要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族(配偶者、父母及び子(これらの者に準ずる者として、労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫を含む)、配偶者の父母)1人につき1回の介護休業をすることができる。事業主は、労働者が介護休業の申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者を解雇することはできない。

(ii)勤務時間の短縮等の措置

事業主は、介護休業期間と合わせて連続する3月の期間以上の期間において、勤務時間の短縮の措置その他の労働者が就業しつつ一定範囲の家族を介護することを容易にするための措置を講じなければならない。

(iii)育児又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置

政府は、育児又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続、再就職の促進を図るため、事業主等に対する相談・助言及び給付金の支給、労働者に対する相談・講習、育児又は介護により退職した者に対する再就職支援その他の支援措置を講ずる。

(iv)女子船員対策

女子船員についても同様の改正がなされ、1999年4月から施行される介護休業の申出の方法、事業主が講ずべき措置等を定めた運輸省令が1995年9月に公布された。

(v)施行期日

(i)及び(ii)のうち介護に関する部分については、1999年4月1日から施行される。それ以外の部分については、1995年10月から施行されている。ただし、事業主は、介護に関する部分の施行前においても、可能な限り速やかに、介護休業制度を設けるとともに、勤務時間の短縮等の措置を講ずるよう努めなければならない。

また、毎年10月を「仕事と育児を考える月間」として啓発活動を行って きたところであるが、育児休業法の改正に伴い、1995年より「仕事と家庭を考える月間」と改め、集中的に広報啓発活動を行っている。

2)育児休業給付の創設
1995年4月より、育児休業を取得した者が雇用保険法に定められた要件を満たしている場合には、育児休業取得前の賃金の20%の育児休業基本給付金が支給される。また、育児休業基本給付金の支給を受けることができる者が、育児休業終了後、引き続き同じ事業主に6ヵ月以上雇用された場合には、育児休業取得前の賃金の5%に休業月数を乗じた育児休業職場復帰給付金が支給される。
3)介護休業給付の創設(1999年4月より実施予定)
1999年4月より、介護休業を取得した者が雇用保険法に定められた要件を満たしている場合には、介護休業取得前の賃金の原則25%の介護休業給付金が支給される予定である。
4)介護休業制度の早期導入の促進
政府は、事業主、労働者に対する相談・指導や、介護休業制度導入奨励金(育児・介護雇用安定助成金)及び介護勤務時間短縮等奨励金(育児・介護雇用安定助成金)の支給により、介護休業制度及び介護のための勤務時間の短縮等の措置の早期導入を促進している。
5)育児休業制度の定着促進

労働省が、1996年度に実施した「女性雇用管理基本調査」によると、育児休業制度の規定がある事業所における出産者に占める育児休業取得者は、女性で44.5%、配偶者が出産した男性で0.16%で、育児休業取得者の男女比は女性99.2%、男性0.8%であった。

政府は、事業主、男女労働者に対する相談・指導や、育児休業給付の支給により、育児休業制度及び育児のための勤務時間短縮等の措置の定着を促している。

(2)子育て支援対策の充実
1)保育所の整備

児童福祉法により、保育所の創設、増築、改築などの施設整備費及び運営費に国庫補助を行うとともに、事業所内に設置する保育施設についても、児童手当法により、その整備について国庫補助を行っている。この結果、一部の地域では待機児童の数が入所児童の数を大きく上回るところも見受けられるが全国的に見ると、施設数はほぼ必要な水準に達しているものと思われる。

2)保育需要に対応した保育対策の充実

女性の社会進出、就労形態の変化に伴う保育需要の多様化に対応して、子育てと就労の両立を支援するため、政府は1994年に「当面の緊急保育対策等を推進するための基本的考え方」(緊急保育対策等5か年事業)を策定し、これに基づき、1995年度から乳児保育(0歳児を保育すること)、延長保育(概ね午後6時以降の保育を行うこと)等を推進している。

3)児童保育施策の見直し

児童と家庭を取り巻く環境の変化等を踏まえ、子育てしやすい環境の整備を図るとともに、次代を担う児童の健全な成長と自立を支援するため、児童保育施策等の見直し、児童の自立支援施策・母子家庭施策の充実を内容とした児童福祉法の改正を1997年に行った。

保育所については、夫婦共働き家庭の増加により保育所利用が一般化するとともに、就労形態の多様化等により、低年齢児の保育、保育時間の延長や一時的保育(緊急時や一時的な保育を行うこと)など多様な保育需要に応じることが求められている。このため、多様な保育需要に即応して質の高い保育サービスが柔軟に提供されるような保育制度を確立することとしている。

また、これまで保護者が前年に支払った所得税額等に応じた応能負担の保育料負担方式を改め、保育料は保育費用を基礎として保育費用を徴収した場合の家計に与える影響を考慮して児童の年齢等に応じて定める額とした。

(3)職業生活と家庭生活との両立支援事業

政府は職業生活と家庭生活との両立を支援するため、以下の施策を実施している。

1)育児休業、介護休業を取得しやすく職場復帰しやすい環境の整備

育児休業取得者に対し、休業前賃金の25%相当額の育児休業給付金を支給する(育児休業給付の創設については10 第11条 2(c) 2)を参照)他、第3回報告において報告した「育児休業者職場復帰プログラム奨励金」制度を、介護休業の法制化とともに「育児・介護休業者職場復帰プログラム奨励金」と改め、育児休業、介護休業を取得しやすく職場復帰しやすい環境の整備を図っている。

2)育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備

第3回報告において報告した「事業所内託児施設助成金」の活用を図るとともに、1995年10月より、育児や家族の介護を行う労働者の雇用の継続を図るため、労働者の育児・介護サービス利用に要する費用を援助する事業主に対し、「育児・介護費用助成金」を支給している。

また、「フレーフレー・テレフォン事業(育児、介護を行う労働者のための相談援助事業)」を拡大し、1997年現在25地域で実施している他、仕事をしながら育児又は介護を乗り切ることに役立つ知識や心構え等を身につけるため、今後、育児や介護と仕事との両立の問題に直面する可能性のある労働者を対象とした両立支援セミナーを1995年より実施している。さらに、急な残業や子供の病気の際など、既存の保育施設では応じきれない変動的、変則的な保育需要に対応するため、育児の援助を行う者と育児の援助を受けたい者からなる会員組織による地域における育児の相互援助活動を組織化する「ファミリー・サポート・センター」事業を1994年度より実施している。

3)育児、介護等のために退職した者の再就職に対する支援

妊娠、出産、育児又は介護の理由で退職した労働者を再雇用した事業主に対し給付金を支給することにより、再雇用制度の導入を引き続き促進している。

また、再就職希望者に対する支援としては育児、介護等のために退職し将来的に再就職を希望する者が円滑に再就職できるよう、これらの者に対するセミナー、情報提供、自己啓発への援助を実施している。

さらに、女性の職業紹介を取り扱う公共職業安定所(レディースハローワーク)において、きめ細かな職業相談・職業紹介により再就職を援助している。

10. 第11条 2(d)

(1)母性保護

女性労働者が妊娠中、出産後の期間を通じてその健康が保持できるよう、労働基準法の母性保護規定の遵守を徹底している。また、男女雇用機会均等法では母子保健法に基づく保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間の確保がで きるようにすることや、医師等の指導事項を女性労働者が守ることができるようにするために事業主が配慮すべき措置について定めている。

1997年6月に男女雇用機会均等法を改正し、これらの規定を従来の努力義務規定から義務規定とした。また、労働基準法の改正により、多胎妊娠の場合の産前休業期間を現行の10週間から14週間に延長した(1998年4月1日より施行)。

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019