女子差別撤廃条約実施状況第4回報告(仮訳)

10. 第11条(c)

(1)女性の職業能力開発の推進

国際化の進展等を背景とした経済・産業構造の転換、情報通信技術をはじめとした技術革新の進展等の中で、女性が専門職・管理職等幅広い分野へ進出していくためには、個々の女性が力をつけていくことが必要であり、女性の職業能力開発の重要性が一層高まっている。その際、多様なニーズを持つ個々の女性が自らの能力に関心を持ち、その向上を図っていくという主体的取組を積極的に推進することが重要である。

このため、労働省では、各人の個性をいかしつつ変化への的確な対応を図るため、(1)ホワイトカラーの段階的・体系的な職業能力開発を支援する「職業能力習得制度(ビジネス・キャリア制度)」の実施、(2)労働者の自主的な能力開発の取組を促進するよう労働時間面での配慮等の環境を整備する事業主に対する助成等の支援策の充実等の施策を男女を差別することなく積極的に推進している。

(2)女性の社会参加の支援のための事業の推進

働くことを中心に女性が社会参加することを支援するため、女性の能力発揮を促す研修、セミナー、相談、展示及び情報提供等の事業を総合的に実施することとし、これらの事業を行う拠点施設を1999年度開館を目途として現在建設中である。

10. 第11条(d)

(1)男女間賃金格差解消のための取組

労働基準法第4条では、賃金について女性であることのみを理由とした差別的取扱いが禁止されているが、実際に支払われている平均賃金(パートタイム労働者を除く。)の男女間格差を見ると、徐々に縮小してきているものの、1997年において女性は男性の63.1%となっている。こうした男女間賃金格差は、前述の通り、職務(職種、職位・職階)、勤続年数、学歴構成等のちがいによるところが大きいと考えられる。

男女間の就業分野の違いについては、これまで女性に対し、男性と均等な機会が必ずしも与えられていなかったことにより生じている面もある。このため、募集・採用、配置・昇進における女性差別の禁止、女性の職域の固定化や男女の職務分離といった弊害が認められる「女性のみ」又は「女性優遇」の措置の禁止、男女労働者の間に事実上生じている差を改善するためのポジティブ・アクションの規定の新設などを含む男女雇用機会均等法の改正、女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制の解消等を行うなど、男女の均等取扱いと女性の職域の拡大が着実に実現されるよう努めている。

男女の勤続年数の差異については、男女労働者が育児や介護といった家族の一員としての役割を果たしながら働き続けることができるよう、育児休業制度、介護休業制度の定着をはじめとする職業生活と家庭生活との両立支援対策や、労働時間の短縮を積極的に進めている。

また、こうした男女の差異の解消を図るためには、その背景にある男女の能力や役割に対する固定的な考え方を改めることが重要であり、そのための広報啓発活動に取り組んでいるところである。

さらに、労働基準法については、従来からその履行確保につき指導を努めているところである。

(2)無償労働(アンペイドワーク)

経済企画庁では、家庭内での家事や社会的活動といった対価を要求しない無償労働についての貨幣評価額を推計し、1997年5月及び1998年5月に結果を公表した。

その最新時点の結果によると、1996年における無償労働の貨幣評価額(機会費用(OC)法*による)は、総額116兆円であり、国内総生産(GDP)比23%となった。このうち、女性が行った無償労働の評価額は98兆円で、総額の85%を占めている。

これを、無償・有償のそれぞれの労働時間でみると、女性一人1日当たりの無償労働時間は3時間50分、有償労働時間は2時間48分であるのに対し、男性一人1日当たりの無償労働時間は31分、有償労働時間は5時間36分と、女性の無償労働時間は男性の7.4倍となっており、かつ、男性は有償労働時間が長い反面、無償労働時間は極端に少なかった。

また、無償労働の一人当たりの年間評価額(OC法)は、女性が180万円で、男性35万円の5倍となっている。労働時間の男女差に比べ、評価額での格差が縮まるのは、OC法で使用する男女別平均賃金の格差が反映されるためである。

* 機会費用(OC)法とは、無償労働を行うことにより、当該無償労働者が市場に労働を提供することを見合わせたことによって失った賃金(逸失利益)で評価する方法である。

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