大問題領域に関する合意結論等

重大問題領域に関する合意結論

(総理府仮訳)

婦人の地位委員会は、

「北京行動綱領」、特に女性への暴力に関する第IV章D項、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」、及び「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」を再確認する。

「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の締約国に対し、女子差別撤廃委員会への第一次報告及び定期報告の際に「女性に対する暴力に関する一般的勧告19」及び女子差別撤廃委員会第11会期において採択された「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」を考慮に入れるよう要請する。

国際人権諸条約の締約国に対し、家庭内暴力及び有害な伝統的慣行をはじめとする女性に対する暴力の程度及び表われ方、並びにその撤廃のために取った施策について情報と報告を集めて「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の下での報告に含めるとともに、他の条約機関への報告にもそのような情報を加えることを要請する。

第IV章D項の戦略目標の実施を促進するために、以下の事項を提案する。

A.統合され、全体論的な視点に立ったアプローチ

政府及び国際社会が取るべき行動

  • 女性及び少女に対するあらゆる形態の暴力を根絶するための、包括的で各分野の枠を越えた国内計画、プログラム及び戦略をよく調整の上、策定して広く普及するとともに、対象及び実施のためのタイムテーブルを設定し、女性組織との協議をはじめ、すべての関係者を巻き込んだ監視メカニズムによる効果的な国内施行手続きを定めること。
  • 国際社会に対し、あらゆる形態のテロリズムと示威行動、特に女性や子どもに影響を及ぼすそれを糾弾し立ち向かうよう求めること。
  • 女性及び少女の人身売買、特に女性及び少女の売春や搾取を含む経済的及び性的搾取を目的としたそれを防止し根絶するための強力かつ効果的な国内、地域及び国際協力を推進すること。
  • メディアに対し、女性や子どもに対する暴力映像を放映しない措置を講じるよう奨励すること。
  • 女性及び少女に対する暴力の根絶への全体論的アプローチを統合・促進するために、非政府機関及びすべての関係機関との効果的な連携関係を強化すること。
  • 女性に対する暴力に終止符を打つための効果的な行動を公的・私的生活のあらゆる領域に組み込み、人種、言語、民族、貧困、文化、宗教、年齢、障害、社会経済的階級といった要因ゆえに、あるいは先住民、女性移住労働者を含む移住者、避難民女性または難民であるがゆえに女性が直面する暴力と差別の克服に努めること。
  • レイプ被害者の社会復帰のための包括的プログラムが世界規模のプログラムに組み込まれるよう保障すること。

B.すべての女性への暴力と闘うための資源の確保

政府、非政府機関並びに公共部門、及び適当な場合、民間部門が取るべき行動

  • 女性に対する暴力を防止し、これと闘い、根絶する活動について非政府機関の活動を支援すること。
  • 女性団体、ヘルプライン、電話緊急相談センター、及び信用貸付、医療面、心理面その他のカウンセリング・サービスを含むその他の支援サービスに十分な資源を提供するとともに、暴力の被害女性が生計手段を得るための職業技能訓練にも焦点を合わせること。
  • 女性及び少女に対し暴力行為を犯す者を訴追するための法的機構の強化と被害者の社会復帰のために諸資源を提供すること。
  • 人身売買の被害者を癒し社会復帰させるためのプログラムを含む、暴力被害女性に対する安全で繊細かつ統合された対応を提供するために、国内ネットワークの確立に向けた協力体制を支援・奨励し、女性と少女のための緊急避難施設や救済支援に諸資源を提供すること。
  • 女性に対する暴力及びその原因と結果に関する国連人権委員会の特別報告者、並びに国連婦人開発基金「女性に対する暴力撤廃のための国連婦人開発基金信託基金」への寄与を含む、女性への暴力と闘う国内、地域及び国際行動への寄与を強化することを検討すること。
  • 当該女性が保護や安全確保を受けやすい支援サービスの提供など、障害を持つ女性及び少女が暴力行為を認識し届け出るのを助ける特別なプログラムを開発すること。
  • ジェンダーに基づく暴力、その防止及び暴力からの女性の保護に関する事柄について、司法機関職員、法執行機関職員、保安職員、ソーシャル・ケア・サービス及び保健サービス担当並びに学校及び移民管理機関の職員に訓練を施すことを奨励し、その資金を供給すること。
  • 女性及び少女への暴力の根絶に関し十分な国家予算を組むこと。

C.女性に対する特定の形態の暴力に対処するための連携協力の推進

政府が取るべき行動

  • 適当な場合には、移住労働者、特に女性及び少女の権利を推進・擁護するための二国間、小地域及び地域合意の策定を検討すること。
  • あらゆる形態の女性及び少女の人身売買と闘い、かつ売春及び人身売買による暴力の被害者を支援するための、二国間、小地域、地域及び国際合意並びに議定書を開発すること。
  • 女性及び少女の人身売買に関する国際的な情報交換を改善するため、適当な場合、国際刑事警察機構や地域法執行機関、及び国内警察隊にデータ収集センターを設置するよう勧告する。
  • 性的搾取目的及びポルノグラフィ目的のものを含む、組織的及びその他の形態の女性及び少女の人身売買を根絶するために、すべての関係人権規律の実施を強めること。
  • 各地域委員会のジェンダー・フォーカル・ポイントは、ジェンダーに基づく女性への暴力を緩和するための加盟国の能力作りとジェンダーの主流化を助けることによってすでに重大な寄与をなし、女性の人権推進に積極的に貢献してきたが、このジェンダー・フォーカル・ポイントを強化し、ジェンダー・バランスのとれた開発政策への寄与をさらに高めること。

D.法的措置

政府が取るべき行動

  • 刑事規定、民事規定、証拠規定及び手続規定を含め、女性に対する複合的な形態の暴力に十分に対処する統合的な枠組みをジェンダーに配慮して開発するよう保障すること。
  • 女性に対する複合的な形態の暴力に十分に対処する統合した包括的な法的枠組みを開発するためのあらゆる適切な措置を講じること。
  • 必要な場合、女性に対する暴力行為を罰する地方立法の調和を促進すること。
  • 証人保護プログラム、加害者に対する禁止命令、危機センター、電話緊急相談センター、緊急避難施設、経済的支援と生計支援の準備など、女性及び少女に対する暴力の被害者のニーズに応じ、完全な回復と社会への再統合を助けるための十分なインフラストラクチャー及び支援サービスを提供すること。
  • 女性に対する暴力が発生した際に警察及び検察の適切な対応を確保するためのガイドラインを開発すること。
  • 女性への暴力に関する訴えについて女性を支える非政府機関の支援など、適用可能なさまざまの方法及び手段を通じてジェンダーに基づく暴力に関する被害申し立てを行う女性及び少女に法的援助及び支援を提供するプログラムを創設し支援すること。
  • ジェンダーに基づく暴力から女性を守るための政策の実施に対する関係法執行機関の説明責任を確保すること。
  • 公務員によるものを含む、女性及び少女に対するあらゆる暴力行為を調査し、国内法に従って処罰すること。
  • 国連総会が1997年12月12日に採択した決議52/86「犯罪防止及び刑事裁判の分野における、女性への暴力に関するモデル戦略及び実践措置」及び同別添内容を考慮に入れて、戦略及び実践措置を講じること。
  • レイプを含む家庭内暴力など女性及び少女に対するレイプ及びあらゆる形態の暴力を法的に完全に禁止し、また暴力から女性と少女を守る法律が効果的に実施されることを保障するために、国内法を見直すこと。
  • 性的搾取を目的としたあらゆる形態の女性及び少女の人身売買を有罪とし、すべての人身売買業者を処罰すること。
  • 人身売買の被害者となった女性が警察に告訴することや、刑事裁判制度による要請がある場合に応じることができるようにするための措置を講じるとともに、その間、女性が社会支援、医療支援、財政支援及び法的支援へのアクセスを有し、また適当な場合には保護を受けられるよう保障すること。
  • 女性及び少女の人権の侵害であり、彼女たちが自らの人権と基本的自由を完全に享受することを阻む障害である有害な習慣的または伝統的慣行を禁止する国内法及び政策を開発し、実施すること。
  • セクシャル・ハラスメントまたはその他の暴力のない職場環境の創出を推進し、すべての使用者に対し、女性へのハラスメントを根絶し、職場で起こった場合にはいつでも効果的に対処するための方策を整備するよう奨励する施策を支援することによって、職場における女性の安全を確保すること。
  • ジェンダー・バランスを達成するために、法執行機関への女性の参画を奨励すること。

E.調査及びジェンダー別データの収集

政府が取るべき行動

  • 女性に対する暴力に関し、多くの学問領域に渡り、また売春及びその他の形の性的搾取を目的とした女性及び少女の人身売買を助長する外的要因を始めとする根本要因にふみこむような調整のとれた調査を促進すること。
  • 暴力の性質、程度及び原因を調べることを目的とする調査を奨励し、暴力の経済的・社会的コスト及び結果に関するデータと統計を集め、女性に対するあらゆる形態の暴力との闘いに与えるすべての関連法の影響を調査すること。
  • 女性への暴力に関するデータと統計の収集のために共通の定義とガイドラインを開発するとともに関係行為者を訓練して、最初の通報先が警察であれ保健サービスや社会サービスであれ、女性に対する暴力事件が系統的かつ適切に記録されるよう保障すること。
  • 障害を持つ女性、移住女性労働者、避難民女性及び人身売買の被害女性といった特別の女性グループに重点を置いた、分野データの収集を含む女性への暴力に関する地域調査及び全国調査を後援すること。
  • よい慣行や学んだ教訓を特定して交換するという観点から女性への暴力に対処し、介入・防止プログラムに着手するために、特に立法法、証拠法及び手続法の改正に関し、施策及び政策の影響評価を支援すること。
  • 国内、地域及び国際レベルにおける最善の慣行に関する情報を含む調査結果の共有を促進すること。
  • 女性に対する暴力、特に女性及び少女の人身売買の規模、その防止策及びそれとの闘いについて政府に報告する国内報告者のような仕組みの可能性を調べること。

国連が取るべき行動

  • よい慣行や学んだ教訓を共有する方法を検討し、女性に対するあらゆる形態の暴力に関するよい慣行や教訓の、容易に利用できるデータベースを設けること。

F.態度の変更

政府、非政府機関並びに公共部門、及び適当な場合、民間部門が取るべき行動

  • 少女及び少年をはじめとする全年齢層の女性及び男性のための、人権、紛争解決及び男女平等に関する参加型教育プログラムを実施することにより、暴力のない社会を作り出すよう努めること。
  • 学童に適用できる仲間同士の仲介及び紛争解決プログラム、並びに協力及び多様性やジェンダーの尊重を奨励できる教員を養成するための特別訓練プログラムを支援すること。
  • 非暴力の紛争解決を促進することでジェンダーに基づく暴力への認識を高めるための革新的な学校内教育及び訓練、並びに男女平等を達成するための短期、中期及び長期の戦略的教育目標を奨励すること。
  • 女性への暴力を許容できないものとする「zero tolerance(暴力を我慢しない、許さない)」のような包括的な国民の意識啓発キャンペーンを導入し、それに投資すること。
  • 協力して育児に当たる完全なパートナーとして描く肯定的な男女像の促進をメディアに奨励するとともに、否定的なイメージの女性及び少女描写をやめさせること。
  • 女性に対する肯定的な表現・描写、描出、及び女性に対する暴力の報道に関するメディアの国際的な自主倫理綱領の開発を行って、女性に対する暴力の防止に協力して当たるきわめて重要な行為者としての男女の肯定的なイメージを創出するよう、メディアに奨励すること。
  • 女性及び少女の人権を侵害し、その健康に悪影響を及ぼす、女性器の切除及びその他の有害な伝統的、文化的及び習慣的慣行の撤廃に向けて、国民の意識を高め、世論を動員すること。
  • 女性に対する差別及び暴力のための利用や女性及び少女の売春搾取を含む性的搾取を目的とする女性人身売買のための利用を防ぐ措置の奨励を含め、新しい情報技術、特にインターネットの責任ある利用を促進すること。
  • レイプを含む、女性に対する暴力の加害者の態度変化を促す政策及びプログラムを作り、そのようなプログラムの影響と効果を監視し評価すること。
  • 女性に自らの権利と法の下での保護を求める方法への認識を高めさせるための法識字プログラムを設けること。
  • 障害を持つ女性及び少女、移住女性、避難民女性及び少女が特に暴力の影響を受けやすいことを認識し、彼女たちを支援するプログラムの開発を奨励すること。
  • 女性が情報を得たうえで決定することができるようにするため、また人身売買の被害者になることを防ぐために、移住した場合の機会、限界及び権利を明らかにすることを目指すキャンペーンを奨励すること。
  • 女性及び少女に対する暴力を防止・根絶するための女性組織の取り組みを補う、男性自身の先導的取り組みを奨励し支援すること。
  • 家庭内及び社会の中で女性に暴力を振るう加害者の態度及び行動に関する調査を行い、そのような態度・行動を変えるための政策及びプログラムを作ること。
  • 法執行官、警察職員、司法職員、医療従事者、ソーシャル・ワーカー及び教員のジェンダー分析の能力作りとジェンダーに配慮する訓練を実施することによって女性への暴力に対する知識と理解を増すことを目指す施策を積極的に奨励し、支援し、実施すること。
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