国連婦人の地位委員会合意結論等

婦人の地位委員会は、

第4回世界女性会議のフォローアップに関する1995年12月22日の国連総会決議50/203を想起し、

1994年12月19日の国連総会決議49/110及び開発途上国における貧困の撲滅のための国際協力に関する、その他の関連総会決議も想起し、

さらに「貧困撲滅の国際年」の挙行及び第1次「貧困撲滅の10年」の宣言に関する1995年12月20日の国連総会決議50/107も想起し、

1995年9月4日から15日まで北京において開催された第4回世界女性会議の成果並びに1990年以降に開催された国連の主要な会議及びサミット、特に1995年3月にコペンハーゲンで開催された「社会開発サミット」の成果の重要性を再確認し、

貧困を撲滅するためには、第4回世界女性会議で採択された「行動綱領」(注50)のすべての問題領域における国内及び国際レベルの戦略の実施と統合が必要となることを認識し、

第4回世界女性会議のフォローアップにおける貧困に関する事務総長報告(注51)、及び第40回婦人の地位委員会の会期中にこの問題について行われた審議に留意し、

「国連人権教育の10年」(1995年ー2004年)に関する1995年12月22日の国連総会決議50/173、及び、各自の人間としての可能性を完全に実現するためには、一人一人の女性、男性及び児童が開発の権利を含む自らのすべての人権及び基本的自由を知らされなければならない、という確信を総会が表明した1994年12月23日の決議49/184を再確認し、

貧困の中で暮らす人々の大多数が女性であることに鑑みて、貧困との闘いを目的とするすべての政策及び計画の主流にジェンダーの視点を取り入れることがきわめて重大である点を認識し、

また、あらゆる人権及び基本的自由の不可侵、不可欠かつ不可分な一部としての女性及び女児の人権を完全に実施することが女性の向上にとり不可欠である点も認識し、

さらに、貧困との闘い及び男女の生活状況の改善に当たっては、政府の関与が基本的な重要性を持つことを認識し、

貧困撲滅のための国内的及び国際的取組みには、ジェンダーの視点を全面的に考慮に入れるとともに女性が開発における完全なパートナーになることを可能にする政策の策定及び実施への女性の完全かつ平等な参加が必要であることを認識し、

女性が貧困の中で暮らす人々の大多数を占め、かつ家庭、地域社会及び職場での有償・無償双方の労働を通じて経済及び貧困撲滅に寄与している以上、女性の力をつけることが貧困撲滅におけるきわめて重大な要素である点を強調し、

貧困はすべての国に影響を及ぼしている世界的な問題であり、女性化を含むその複雑性ゆえに、貧困の中で暮らす女性の状況を特別に優先扱いし、収入、教育、保健及びその他の資源への彼らのアクセスを改善する必要性を認める国内及び地域レベルの広範な施策と行動が必要であることを認識し、

また、絶対的貧困の中で暮らす人の数は男性より女性が多く、かつその不均衡は増大の途をたどっており、その結果、すべての開発途上国、特にアフリカ及び後発開発途上国において収入、資源、教育、保健、栄養、住居及び安全な飲料水への女性のアクセスが限られたものになっている点を認識し、

さらに、移行期にある経済体制の国々でも多くの女性が貧困の影響を被っていることを認識し、

開発途上国では農村部・都市部双方で貧困の中に暮らす女性の数が増加に向かっている事実に対し、第4回世界女性会議で採択された「北京宣言」(注52)及び「行動綱領」の枠組みの中で貧困撲滅に向けた国内及び地域レベルの行動及び施策を支援する国際社会の行動が必要であることに留意し、

とりわけマクロ経済政策の策定及び実施における協力、貿易自由化、並びにあらゆる利用可能な資金提供源及び機構を利用して十分かつ予測可能な新規及び追加的財源を持続可能な開発のために最大限に利用できる方法で動員及び/又は提供することを通じて支援的な外部経済環境を創出するための政策を促進・実施し、財政の安定性を高め、世界市場、生産的投資及び生産技術、並びに適切な知識への開発途上国のアクセスの増大を保障する必要性を強調しつつ、

  1. 貧困撲滅に女性が果たす中心的な役割を認識し、ジェンダーの視点を全面的に考慮するとともに女性が開発における完全なパートナーとなることを可能にする政策の、策定及び実施に女性が完全かつ平等に参加する必要性を強調する。
  2. 貧困撲滅のためには女性のエンパワーメントと自立並びに女性の社会的、経済的及び政治的地位の向上が不可欠であり、また、あらゆるレベルにおける意思決定への女性の完全かつ平等な参加がその過程の不可欠要素であることを強調する。
  3. 貧困の撲滅は複合的かつ多面的な問題であり、男女平等の促進並びに平和の強化及び持続可能な開発の達成の基本であることを認識する。
  4. 開発の権利を含む、普遍的にして不可分、かつ相互に依存し関連し合う女性の人権及び基本的自由の推進、擁護並びに尊重を貧困撲滅のためのあらゆる政策及び計画の中心に据えるべきである点を再確認するとともに、経済的、社会的、文化的及び政治的開発に参画し寄与し、かつそれを享受する権利をすべての人に保障するための措置を講じる必要性も再確認する。
  5. ジェンダーの視点を主流化することには、男女双方の貧困からの影響の受け方、この問題の対処に発揮される、男女双方の互いに異なる長所、そして男女それぞれの寄与及び潜在能力を検討することが含まれている点を強調する。
  6. また、主流化と他の積極的措置(ポジティブ・アクション)の双方を、女性及び男性の開発可能な潜在能力の完全な発現を可能にすること、及び貧困を撲滅することを目指す相互補完的な戦略と見なすべきである点も強調する。
  7. 「行動綱領」中のコミットメント(公約)を実行し、目標及び監視基準を定め、ジェンダーの影響分析を行うための資源を含む実施のための資源の配分又は再配分の提案を伴う、貧困全般の減少及び絶対的貧困の撲滅にも焦点を合わせた国内実施戦略又は行動計画をなるべくなら1996年末までに開発するようすべての政府に強く要請する。必要な場合には、資源を含めて国際社会の支援を得ることができる。
  8. すべての政府、ブレトンウッズ機関を含む国連システム及び市民社会に対し、「行動綱領」全体を実施するよう強く要請する。
  1. 「社会開発サミット」の「行動計画」(注53)及び第4回世界女性会議で採択された「行動綱領」にその要点が述べてある貧困撲滅に関するコミットメント及び勧告に加え、貧困の女性化に対処し、貧困撲滅のためのあらゆる政策及び計画の中心にジェンダーの視点を据えるための、「行動綱領」に沿った具体的な施策に着手すべきであることを強調する。その中には、とりわけ下記のための施策が含まれる。
    (a)
    女性及び少女のための教育、訓練及び再訓練政策を開発し実施すること。
    (b)
    土地及びその他の財産の相続権並びに所有権、信用、天然資源及び適切な技術を含む経済資源への完全かつ平等なアクセスを女性に与えるための立法及び行政改革に着手すること。
    (c)
    意思決定のあらゆるレベルへの女性の参画を促進すること。
    (d)
    女性のための所得創出を目的として、起業手腕及び組織能力を含む、雇用及び自営を促進するための国内戦略を開発すること。
    (e)
    失業、病気、出産及び育児の期間、寡婦になったとき、障害を持ったとき、及び高齢になったときの十分な経済的・社会的保護をすべての女性に保障し、また、女性、男性及び社会が児童及びその他の被扶養者のケアの責任を分担することを保障するための政策を採用すること。
    (f)
    公共支出の配分を再編成して、女性の経済的機会及び生産資源への平等なアクセスを促進する目的、並びに女性、特に貧困の中で暮らす女性の基本的な社会ニーズ、教育ニーズ及び安全な飲料水へのアクセスを含む保健ニーズに対処する目的に振り向けること。
    (g)
    女性の有償・無償双方の労働を通じた経済への寄与のすべてを認識及び評価し、貧困の女性化、特に無報酬労働と女性の貧困への陥りやすさとの関係に対処するためのより効果的な政策の立案に利用するために、ジェンダーに基づく方法論を開発して調査を行うこと。
    (h)
    すべての開発途上国、特にアフリカ及びLDC(後発開発途上国)における経済への女性の寄与、貧困の女性化、並びに債務及び構造調整計画の経済的・社会的影響に対処するために、ジェンダーに基づく方法論を開発して調査を行うこと。
    (i)
    ジェンダーの視点から、マクロ及びミクロ経済政策並びに公共支出の配分を分析すること。これらの政策及び公共支出の配分は、貧困の中で暮らす女性へのマイナスの影響を回避するために、女性の完全かつ平等な参加の下に立案及び実施すべきである。
    (j)
    社会・経済開発のための資源を増加するために、適切かつ国家安全保障の要件に抵触しない範囲内で、過度な軍事支出と武器の生産・取得への過度な投資を削減すること。
  1. 貧困撲滅に関するその他のすべての主要な国連会議及びサミットの成果を実施するよう要請する。
  2. 各国に対し、各自の貧困撲滅の取組みに当たって、「社会開発に関するコペンハーゲン宣言」(注54)のすべてのコミットメント(誓約)を、コミットメント2及び5並びに両者の関連を考慮しつつ実施するよう要請するとともに、すべての関連行為者に対し、「社会開発サミット」の「行動計画」に挙げられている貧困撲滅のための行動及び施策(注55)を早急に実施するよう要請する。
  3. 行政調整委員会が設置する貧困撲滅に関するすべてのテーマ別特別研究班の仕事にジェンダーの視点を全面的に組み入れる必要性とともに、提案されている第4回世界女性会議のフォローアップに関する機関間委員会の設置の重要性を強調する。
  4. 既存の指標を見直し、経済改革計画の立案及び実施のジェンダー影響分析を強化し、補完的な質的評価を開発し、及び基準を統一してそれらの実施を促進するための国連システム全体にわたる取組みに着手するよう勧告するとともに、この取組みには効果的な調整が必要である点を強調する。
  5. また、ブレトンウッズ機関を含む国連システムの各事務局に対し、ジェンダーの視点の主流化と男女平等を達成するための具体的なジェンダー・プログラムの双方を国連システムの現行事業、職員配置部門及び意思決定部門に組み入れる一貫した方法を具体化するよう勧告する。
  6. 開発途上国、特にアフリカ及び後発開発途上国が「北京宣言」及び「行動綱領」に述べられているように貧困撲滅の目標を達成し、あらゆる政策及び計画の主流にジェンダーの視点を組み入れる取組みを行うこと、特に貧困撲滅の目的を達成するために取り組むことに対する財政的・技術的支援及び援助の増進に、ブレトンウッズ機関を含む国連システムが中心的役割を果たすべきである点を強調する。
  7. 移行期の経済体制の国々における「行動綱領」の実施も、国内の取組みを支援する継続的な国際協力及び援助を必要とするであろうことを認識する。
  8. 貧困撲滅の目標に寄与し、貧困の中で暮らす女性を対象にするために、あらゆる利用可能な資金提供源及び機構を利用することの重要性を強調する。
  9. 政府開発援助の20パーセントと国家予算の20パーセントを基本的な社会計画に振り向けるというイニシアティブを約束した国に対し、国連総会決議50/203のパラグラフ16で求められているように、その実施にはジェンダーの視点を全面的に組み入れることを要請する。
  10. すべての国、ブレトンウッズ機関を含む国連システム、関連国際機関、非政府機関、民間部門及びその他のあらゆる部門に対し、貧困撲滅を目的とした計画の実施に寄与するよう要請する。
  11. ジェンダーの視点を全面的に考慮する貧困撲滅の国内計画又はプログラムの実施に当たっては、開発におけるすべてのパートナー間の一貫し、かつ調整のとれたアプローチが必要であることを強調する。
  12. また、国連機関の支援を得て、開発政策及び計画の策定及び実施に責任のある者たちにジェンダーに配慮する訓練を施す必要性を強調する。
  13. さらにまた、貧困撲滅のプログラムを通して女性に届くよう立案された、政策に関する意見交換に草の根レベルの行為者として関与する非政府機関が果たす重要な役割を強調し、それらの非政府機関がそのような計画の実施に寄与できる方法を特定するためのさらなる取組みを求める。
  14. 経済社会理事会に対し、1996年度実質会期の調整セグメント会合のテーマとして「貧困撲滅のための国連システムの事業の調整」を検討する際に、国連システムの関連諸機関が各自の貧困撲滅事業にジェンダーの視点を全面的に考慮することを保障するよう勧告するとともに、理事会もまた総会に対して第1次「国連貧困撲滅の10年」に関連するすべての活動及び文書に貧困のジェンダー面を盛り込む勧告を行うことを要請する。
  15. 主要な国連会議及びサミットに対する調整のとれたフォローアップにジェンダーの視点を全面的に組み入れる必要性を強調し、経済社会理事会に対し、すべての関連機能委員会の勧告の中でジェンダー要素がどの程度まで考慮されているかを定期的に調べるよう勧告する。
  16. 事務総長に対し、この他のすべての重大問題領域に関する報告の実施及び見直しに当たっては貧困の多面的な性格に留意して、貧困の撲滅と貧困以外のそれら重大問題領域との多くの関連性を考慮することを要請する。
  17. また事務総長に対し、第1次「国連貧困撲滅の10年」の準備に当たって取る予定の行動に関する事務総長報告の枠組み内における本決議の実施について、報告を行うよう要請する。

注:

注50
第4回世界女性会議(北京、1995年9月4日ー15日)報告(A/CONF.177/20 及びAdd.1)、第I章、決議I、付属文書II
注51
E/CN.6/1996/CRP.3.
注52
第4回世界女性会議(北京、1995年9月4日ー15日)報告(A/CONF.177/20 及びAdd.1)、第I章、決議I、付属文書I及びII
注53
社会開発サミット(コペンハーゲン、1995年3月6日ー12日)報告(A/CONF.166/9)、第I章、決議I、付属文書II
注54
同書、付属文書I
注55
同書、付属文書II、第II章
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