APECにおける女性の統合のためのフレームワーク(仮訳)

APEC性別データ収集・利用ガイドとは何か?

このガイドはAPECジェンダー分析ガイドに付属するものである。ジェンダー分析のガイドにおいて概説されているプロセスには、性別データをいつどのように利用するかについて考慮することが含まれている。このガイドは、プロセスを遂行するためのさらなるステップを提供するのではない。その代わり、それはどのような性別データが有用であり、どこでさらなる情報や訓練を得るのかといったことに主眼をおいた情報を提供するガイドとなっている。APECのフォーラム及びメンバーエコノミーが自らの性別データの収集を改善するために利用でき、また、標準及び最良の取組を示しているような多くの良い出版物がある。これらは、参考文献のセクションに掲載されている。

何のためのAPEC性別データ収集・利用ガイドか?

性別データは、ジェンダー分析並びに女性と男性の経済的貢献、環境及び現状の差異の理解のための重要なインプットである。性別データは、女性が、有償・無償両方の能力において社会及び経済活動の全ての局面にどれだけ貢献しているかの情報も提供する。性別データの活用により、APECのフォーラムが、エコノミーにとってだけではなく男性及び女性にとって効率的で公平で有益な活動を決定し遂行することができ、そして、その仕事から最大の便益を得ることができる。

別データは、以下のことに活用できる。

  • 女性と男性の異なる状況を時間的な変化を含めて明確にすること。
  • APECの活動が女性と男性に与える影響を考慮し、その影響を追跡すること。
  • 問題を特定、又は明確化し、選択肢を開発し、女性と男性双方にとって最も効果的で有益な選択肢を選択すること。
  • 地域的な経済危機のような出来事の女性に与える影響をより完全に理解し、出来事に対応して活動を形成することを支援すること。
  • 資源と努力をより公平な形で配分すること。
  • 性別の結果と成果を評価し、監視すること。
  • 指標と定期的なデータの公表により女性の進歩や不足を示すこと。

性別データを用いたジェンダー分析がなされる場合に、より公正な結果を得ることが期待できる。経済上の進歩に対する男女の現在の又は潜在的なインプットの範囲が分かり、それが経済上の意志決定に活用される場合に、エコノミー、企業、人々すべてが便益を受ける。

どのような異なるタイプのデータが有用か?

性別データとは、性別に横断的に分類されたあらゆるデータを意味する。それは女性と男性、少女と少年とに分けて別々に提示される。

異なる目的には、それぞれに合った異なるタイプの性別データが有用である。

ジェンダー指標(Gender indicators)とは、特定の活動の目標、価値及び目的に関して女性と男性の地位の差異を示すために選択され、提示された特定の統計及びその他の形態の証拠である。

分野横断的データ(Cross-sectional data)とは、国勢調査や人口調査から一時点に関するデータとして収集されたもの。人口のあらゆるサブグループについての現状を計測する分野横断的データは、女性と男性の現況を確証し、現在のニーズを特定するためには最も有用なものである。

時系列データ(Time series data)は、異なる時点に収集されたものである。時系列は、人口全体あるいは人口のサブグループとしての集団についての時間を追った変化のパターンを示す。時系列データの主な利用の仕方としては、GDPの成長のようなマクロ経済のトレンドを示すことがある。それは、例えば、マクロ経済上の変化との関連において、教育への参加状況の変化パターンを見るためにも使うことができる。時系列データに関しては、利用者が変数間の関係について不適切な結論を導き出さないよう注意を払う必要がある。

追跡調査データ(Longitudinal data)は、ある一時点においてある単位(個人、会社、世帯など)から収集され、同じ単位による反復した調査が続くものである。例えば、生涯勤労所得と退職後に備えた貯蓄能力、女性が子供をもつことの有償・無償労働に与える影響、特定の政策の長期的な影響のような領域を調査するために、個人についてのそのようなデータが必要とされる。

分野横断的データ、時系列データ及び追跡調査データは、すべて定量的タイプのデータである。それらは、数字で適切に表現されうるデータである。

他方、定性的データは、しばしば数字で表現するのに適切でない情報に関するものである。そのようなデータを利用する研究者は、例えば、人々が自分の言葉で与える詳細な説明を知ることなどによって、状況、経験、プロセスについての新しい理解を得ようとしている。数字で表されない定性的データについては、また独自の体系及び分析手法がある。その収集方法は確率理論によらないので、定性的な調査データにデータ抽出理論を適用するのは適切ではない。そのような情報は、個人に違いをもたらす要素(例えば、有償労働で働く能力など)を理解するのに有用である。定性的なデータは、小規模ビジネスの発展という分野における女性に対する障壁を明確するために特に有用であろう。例えば、女性が経営し成功している企業から、成功に貢献した要素を特定するため、定性的事項について聞き取りをすることなどが考えられる。

APECの優先分野にとってどのようなデータがふさわしいか?

性別データはあらゆるAPECの分野において必要である。以下はAPECの優先分野における有用な性別データの例を選んだものである。

APECの優先分野にとってどのようなデータがふさわしいか?

性別データはあらゆるAPECの分野において必要である。以下はAPECの優先分野における有用な性別データの例を選んだものである。

  • 貿易と投資の自由化

    貿易自由化は人々と企業に対し、全般的に影響を及ぼす(輸出、輸入、国内市場向け製造に関わる者並びに原材料、機械及び最終消費財の消費者など)。女性と男性の問題は、これらの各分野における男女の役割と参画状況の違いから生じる。性別データなしにはこうした異なる役割を分析できず、影響を評価できない。有用なデータの例としては、産業別の輸出に従事する女性と男性の数があろう。

  • ビジネスの円滑化

    女性と男性は規制に応じて異なる問題(主に男性の組織を通じて利用されている情報を評価する事の困難さなど)に直面する。ビジネスの運営を円滑化するために必要な情報、例えば、輸出に対する障壁、ビジネスの拡大に対する障壁に関する情報などは性別にされる必要がある。

  • 人的資本の養成

    女性と男性は、教育と労働市場への参加に関して全く異なったパターンを示す。人的資本の養成は、これらの相違が認知され、活動が両性にとって適切に仕組まれる場合のみ有効となる。

    有用なデータには、性別の労働市場の動きと無償労働についてのものが含まれる。例えば、女性と男性の労働条件、職業の分離、賃金、生産性、キャリアを積む機会など、それから、性別の教育への参加についての基礎データ及びあらゆるレベルでの学力など。このようなデータは、人材養成の取組が必要な場面を特定することについては有用である。

    人材養成WGの労働市場情報データベースは、いくらか性別のデータを持っている。人材養成WG(HRDWG)、産業技術WG(ISTWG)、中小企業政策責任者会合(PLGSME)及び運輸WG(TPTWG)では女性についてのデータを収集するプロジェクトを行っている。

  • 安全で効率的な資本市場の育成

    女性は直接資産を所有することが少ないので、金融へのアクセスがはるかに困難である。女性は何が安全な投資であり、どこに資本を投下つもりであるかについて異なる見方を持つかもしれない。有用なデータとしては、性別の金融へのアクセス、ローンの額の大きさがある。

  • 経済インフラの強化

    経済インフラは、消費者、労働者、企業家、投資家としての女性と男性に影響を与える。経済インフラに関するいかなる作業も、開発が全ての人に効果的となるために、インフラの異なる役割及び利用について考える必要がある。この分野は非常に幅広いので、どこに性別のデータを使うことができるかといったことしか例示できない。有用なデータとしては、異なる形態の輸送の利用に関するデータ、通信施設へのアクセスに対する需要とその理由に関するデータ、観光の影響と女性と男性の観光産業への貢献に関するデータがある。定量的な情報と同様、多くの分野で定性的な情報が役に立つ。

  • 将来に向けた技術の活用

    有用なデータとしては、レベル別及び性別の科学及び科学技術の訓練への参加に関するデータ、ビジネス内での新しい技術の利用とアクセスに関する性別のデータがある。

    産業技術WGにおけるジェンダー、科学、技術アドホックグループでは、1998年にジェンダー、科学、技術に関する専門家グループ会合を開催し、科学技術における性別データに焦点を当てた。産業技術WGはまた、女性と男性の参加者の数を明らかにするために、承認されたプロジェクトすべてから状況をよく表すデータを収集している。

  • 環境面で持続可能な成長の促進

    家庭にいる女性は環境の影響について異なる経験をしており、小規模の消費者の間でエネルギー効率をいかに向上させるかについての実用的な情報を寄せることができる。有益なデータとして分野別、利用者の性別のエネルギー使用に関する情報、開発プロジェクトの焦点である産業及びそれに依存している産業において働いている女性と男性に関する情報がある。

  • 中小企業の成長の促進

    女性は広く、また、しばしば成功裡に中小企業に参画しているが、それは往々にして男性と異なる活動においてである。女性によって経営されているビジネスは異なる理由で成功しうるし、また、成長に対する異なる障壁に直面するかもしれない。中小企業に就業している女性と男性の規模別、都市/地方別及び活動別の性別データは、彼らの経済成長への貢献及び経済成長と繁栄に対する制約を理解するのに非常に重要である。

APEC地域における女性についてのデータ

経済成長、あらゆるレベルにおける労働市場の動き、教育への参加のような経済的及び社会的データを根本から性別化することは、APEC地域の経済及び社会の進歩をモニターし、問題や将来の優先順位を特定するために不可欠である。

例えば、貿易において女性が受ける影響、また、女性に関する貿易が受ける影響についての分析を補強するデータが必要である。公式及び非公式な雇用についての性別データ、域内での人口移動及び世帯所得に関する性別データ、並びに世帯構成の変化に関する性別の情報は、地域の金融危機が女性及び男性に及ぼす影響を浮き彫りにするのに役立つ。これは、以下のような問いに対する回答への一助となるだろう。公式、また、非公式な労働市場の変化により、男性と女性のどちらがより影響を受けるだろうか?このことはそれらの家族にどのように影響を及ぼすだろうか?地方の地域社会における女性と男性に対する影響の動向はどうか?復興計画は最も効果が上がるよう、ターゲットが設定されているか?

データの効率的な利用

データを効果的に利用することはジェンダー分析及びプロジェクトの成功のためには重要である。以下のような場合、データはより効果的に利用される:

  • 性別データが、公表物及び電子的媒体の表によって幅広く利用可能である。
  • 使用されているデータが適切かつふさわしいものであり、その長所、短所が十分に記され理解されている。
  • 利用者がデータ分析と解釈においてジェンダーを意識することを訓練されている。
  • 利用者がデータの提示に関し熟達している。

エコノミーの性別データ、基準及び最良の取組の収集及び利用を改善することに役立てることのできる多くの文献がある。

リソースリスト:
(省略 オリジナル(英文)参照)

トレーニングのためのリソース:
(省略 オリジナル(英文)参照)

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019