APECにおいては、首脳は全体的な戦略的政策の方向性を提示し、進捗状況を監視し、APECのその地域のビジョンと目標にふさわしい分野の変化の道筋を設定する。首脳の合意に至るAPECのプロセスは、新たな状況や増大する経済的及び社会的問題に取り組む必要性に対応して、時を経るうちに作り上げられてきた。首脳の合意の影響は、エコノミー及び地域全体のマクロからミクロのレベルに至るまで感じ取ることができるだろう。

以下のアプローチはAPEC向けのものであり、WG議長から、上級行政官、閣僚、首脳に至るまでAPECの中での意志決定レベルに対して構築されている。それは、効果的で公平な政策の方向とコミュニケーションに必要な情報を広範に理解させるものである。

I.委員会議長とWG議長のレベルにおける報告と勧告

議長、WG議長及びその他の行政官は、SOM、閣僚及び首脳に対して、自分たちの委員会やWGからの提案、評価及び勧告について完全で適切な情報を確実に提供するという責任を負う。

このプロセスを促進するために、委員会、WGその他のメンバーは、以下のことを確実に行うこと:

• 女性問題担当大臣会合(1998年)の共同声明を考慮にいれ、APECにおける女性の統合のためのフレームワークを実行すること。
• APECジェンダー分析ガイドを全作業にわたって適用すること。

以下を考慮すること:

• ジェンダーの観点や配慮を全体的に統合することを支援するために、委員会とWGはジェンダーに関する専門的知見を得ることができるだろうか?委員会やWGのプロセス及び扱う材料はジェンダーの主流化や、SOM、閣僚、首脳に対する効果的で公平な勧告の形成につながるだろうか。
• 優先事項、作業計画、活動及び資源配分は女性と男性にとって公平であり、APECのプロセスにおける女性に対する障壁の除去と、女性の役割と経済的貢献の強化について首脳や閣僚によってなされたコミットメントと整合的であるか?
• 会合のアジェンダ、付属の背景書類及び報告書を通じて“ジェンダー"がどれくらい目に見えるものとなっているか?情報は性別であるか?女性と男性の貢献、現実、異なる影響を不用意に隠しているジェンダー中立的な用語が使われていないか?
• プロジェクトの提案、評価、報告のための様式は、ジェンダーに関する示唆を考慮する機会を与えているか?
• 報告及び勧告は女性と男性の長期的成果に焦点を当てているか? それらは、APECの目標に向けての前進に対する女性と男性の貢献についてそれらが決定した結果について、閣僚、首脳の側がよりよく理解できるものとなっているか?

例:

• ビジネス機会の拡大:女性によって所有され経営されている中小企業の成長は過去数年の世界的な現象である。1998年の女性問題担当大臣会合においては、金融、市場、技術及び訓練へのアクセスにおいて、女性の所有する企業が不当に経験した障壁が明確にされた。
• 市場の拡大のためのAPECの優先事項は、女性に所有された企業が直面している特異な課題を考慮に入れているか? 女性が所有するビジネスが直面している障壁を除去し、その成長や輸出能力を高めることに特別な努力がなされているか?官僚主義の排除は女性に所有されている企業よりも男性に所有されている企業により影響を与えるか?委員会やWGの報告、アクションプラン、手法(例:マトリックス、書式、マニュアル)、測定手法・指標及び勧告は、ジェンダーに関する相違と影響についての認識を反映しているか?SOM、閣僚、首脳は女性問題担当大臣会合のフォローアップやフレームワークの実行に着手することを意識づけられているか?

Ⅱ.APECアジェンダの調整とSOMレベルにおけるモニタリング

SOMは、首脳、閣僚から出された指示や、首脳や閣僚に向けられた勧告や提案に関するAPECのアジェンダを調整する枢要かつ横断的なメカニズムである。それは、予算管理を含む、APECの効果的で効率的な管理運営を確保するものである。それはまた、進捗状況と成果を監視し、行動の道筋を勧告する。

ジェンダーをAPECにおける横断的テーマとして認識することは、APECにおいては相対的に新しい進歩である。SOMの支持を得て、女性問題担当大臣会合は1998年に開催され、APECにおける女性の統合のためのフレームワークがSOMに報告を行うアドホックタスクフォースにより作成された。

このモメンタムを維持するために、以下を考慮すべきである。

• SOM、閣僚及び首脳のために準備された背景書類、報告書、その他の情報は女性と男性の異なる現実を描いているか?情報は性別となっているか?例えば、貿易の自由化と円滑化のような分野における女性と男性に対して予期される影響についての情報が含まれているか?
• SOMのアジェンダとサマリーコンクルージョンは、APECの作業のあらゆる局面におけるジェンダーの主流化の実行に関するその責任を明確に反映しているか?
• 分野別の“成果物"の発展は、ジェンダーの主流化を進めるための機会をどの程度提供するか?成果物はまた、ビジネス、貿易、電子商取引、科学技術及び人材養成といった分野における女性の経済的な貢献に対する障壁に取り組むイニシアティブを通じて、AEPCのアジェンダを前進させるのか?

例:

• APECの運営のレビュー:良い統治の原則として、組織の目標、構造、政策、優先順位、活動、プロセス及びメカニズムが、効果的に組織の目標の達成に繋がり、また、それを支援することが求められる。これは“横断的テーマとしてのジェンダー"及びジェンダーの主流化に関する閣僚と首脳の指示を実行する際にAPECに適用される。

APECのプロセスとメカニズムは、閣僚や首脳によるジェンダーの主流化についてのモニタリング及び説明責任の要求に対し、適切かつ効果的なものであるか?現行のプロセスとメカニズムはジェンダーの主流化に関するAPECの作業を確実に長期的に持続させるものとなっているか?APECの優先事項と資源配分は、その地域の経済成長における女性の貢献と関与を強化するコミットメントをどの程度考慮し反映しているか?

Ⅲ.閣僚及び首脳レベルの意志決定とコミュニケーション:

首脳が、ジェンダーをAPECにおける横断的なテーマであると認識し承認していることはAPECの転換点を表すものである。課題は、システム全体にわたってこの原則を確実に実行させることである。閣僚及び首脳が結果及び長期的な影響についての説明責任を果たすためには、ジェンダーの主流化が組織の全域、また、あらゆるレベルで行われることが必要である。

APECのアジェンダは、大臣共同声明や宣言に表されている閣僚や首脳の指示を主要テーマとしている。声明や宣言は、APECの作業の内容及びその業績を様々な人々に伝達する主要な手段となっている。

閣僚や首脳の結果に対する説明責任を支援することにおいて、以下を考慮すべきである。

• 閣僚や首脳は、自らの決定の基とするための完全な情報を持っているか?女性と男性の状況の相違、決定が男女に与える異なる影響、経済成長と社会的安定へのそれぞれの貢献を確証するために、データは性別となっているか?
• どのような戦略、優先事項、活動が、APECの目標の達成に向けて女性と男性の能力と貢献を最大化できるか?APECにふさわしい分野におけるジェンダーの相違に取り組むためにどのような措置が必要か?
• WTOのような多国間交渉に対するAPECのインプットがジェンダー分析の結果を反映し、また、このような様々な国が関係する機関が、自らの決定が女性と男性に与える異なる影響について考慮することを促すことを、APECとそのメンバーエコノミーがどの程度確実に行うのか?
• APECがAPECに対する幅広い理解と支持を求める際、大臣声明や首脳宣言は現実の影響と成果に焦点が当てられているか?それらは人々の顔を映し出しているか?それらは女性と男性の生活の異なる現実についての理解を反映し、それに関しての活動を提示しているか?ジェンダーの専門家、女性の企業家、女性の職業組合、女性指導者ネットワークその他の意見が求められ、反映されているか?

例:

• ソーシャルセーフティネットの強化:APECの女性問題担当大臣会合(1998年)と世界銀行(1999年)は、金融及び経済危機が女性と男性に与える異なる影響について認識した。それらは、食料、薬品などの供給が不足し、また、雇用が全般的減少にしている場合と同様、特に教育、訓練、保険、社会サービスに費やす支出が減少している場合に、女性に不均等に負担がかかっていることに懸念を表明している。結果として、ソーシャルセーフティネットの強化にAPECが関わることは、女性に直結することなのである。

大臣声明と首脳宣言をどのようにリンクさせるか?声明や宣言が女性の組織を含むAPECの様々な人々とのコミュニケーション手段としてどれくらい有効であるか?それらは危機が女性と男性に与える異なる影響をどのように表しているか?それらは、女性の生活の現状に鑑みた場合の、女性に対するセーフティネットの重要性についての大臣と首脳の理解を反映しているか?それらは適切な行動を提示しているか?それらはAPECのビジョンと目標に対する人々の理解と支援を得るための貢献をしているか?