第14回男女共同参画会議 女性に対する暴力に関する専門調査会議事録



1 日  時  平成14年7月17日(水) 9:30〜12:30

2 場  所  内閣府3階特別会議室

3 出席者
  島野会長、原会長代理、大津委員、垣見委員、北村委員、小谷委員、小西委員、
  住田委員、瀬地山委員、林委員、前田委員 若林委員

4 議 事
(1) 開会
(2) 女性のトラフィッキングについて
  <1> 女性のトラフィッキングについて
      林 陽子  弁護士
  <2> 国連国際組織犯罪条約人の密輸議定書について  
      島戸 純  法務省刑事局局付検事
  <3> 自由討議
(3) 売買春について
(4) 閉会

(配付資料)
資料1 トラフィッキング関係基礎資料
資料2 林氏説明資料
資料3 法務省説明資料
資料4 売買春関係基礎資料
資料5 第13回男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会議事録(案)

5 議事内容

○島野会長 ただいまから、男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会の第14回会合を開催いたしま す。
 議事に入る前に、本日の会議進行について御説明いたします。前回、6月14日の専門調査会で女性のトラフィッキング 以外の売買春について検討を行いましたが、時間が足りなかったこともあり、再度機会を設けて検討を行うということで委 員の皆様に御了承いただきました。原会長代理と相談した結果、委員の皆様もお忙しいので、新たに別の日を設けずに今 回の会合の時間の前後を延長し、前回の議論の続きを行った方がよいのではないかということになり、本日の会合の時 間を3時間に延長させていただきました。
 会議の前半に女性のトラフィッキングについて検討を行い、休憩を挟んで後半に女性のトラフィッキング以外の売買春に ついて検討を行うこととしたいと思います。
 それでは、議事次第に従いまして本日の議題を進めさせていただきます。
 議事次第2「女性のトラフィッキングについて」です。
 本日は内閣府からの簡単な説明の後、「女性のトラフィッキングについて」林陽子委員から、「国連国際組織犯罪条約 人の密輸議定書について」法務省刑事局局付検事の島戸純氏からそれぞれお話をお伺いすることになっております。御 説明に対する質問につきましては、お二人にお話いただいた後でまとめて時間を取ることといたしますので、その際にお 願いいたします。
 それでは、内閣府の村上課長お願いいたします。

○村上内閣府男女共同参画局推進課長 それでは、説明をさせていただきます。お手元の資料1−1をごらん下さい。
 「トラフィッキングとは」と書いてありまして、国際組織犯罪条約に、人の密輸に関する議定書がございます。これについ ては、後ほど法務省の担当者から御説明いただきますが、この議定書におきまして「trafficking in persons」(人の密輸) について定義されています。簡単に言いますと、売春等の性的搾取や強制労働などの搾取を目的として、強制力の行 使、誘拐、欺罔、権限濫用などの手段によって人を勧誘、移送、蔵匿、収受する行為であるというふうに定義されていま す。
 2番目に、「女性のトラフィッキングの流れ」ですが、説明の便宜上、仮の数字を入れて説明しておりますが、トラフィッキ ングの中で被害者が女性で強制売春が絡んでいるものについて、その流れを簡略化して示しております。タイやフィリピ ンなどで女性を言葉巧みに勧誘して日本に入国させて風俗店などに売り渡すというような例でございます。各段階で値段 が上がっていきまして、最終的には300万から400万の借金を女性に課すというようなことになるようです。
 「被害の実態」を3番目に書いておりますが、風俗店の経営者などを売春防止法違反や入管法違反、職業安定法違反 などで検挙した事例はあるものの、正確な被害実態というのは不明でございます。
 自由討議の参考とするための議論のポイントを2枚目にお付けいたしております。trafficking in persons(人の密輸)の 被害者は女性に限られておりませんが、女性に対する暴力の観点から女性のトラフィッキングに焦点を当てております。 ポイントとしましては、<1>どの部分を女性に対する暴力ととらえるべきか。売春を強制されている点か、人身売買されてい る点か。強制的に仕事をさせるというような意味での人身売買は女性に限られないわけですが、まず最初の問題はこの <1>でございます。
 それから、<2>のトラフィッキングという言葉がなかなか国民に浸透していないのではないか。このトラフィッキングに対す る認識を高める必要があるのではないか。トラフィッキングをわかりやすい日本語で表記する必要があるのではないかと か、これは一部の外国人が被害者だという認識があるのではないか。
 3番目に、各段階でどのような対策が必要か。送り出し国における対策もあるでしょうし、日本に入国するときにどのよう にこれを捕捉するかというような対策の問題、それから受入者、暴力団等への対策、風俗店など経営者等への対策、被 害外国人女性への対策、いろいろな段階での対策があると思いますので、この辺の御議論もいただければと思います。
 4番目に、国際組織犯罪条約及び人の密輸議定書の批准を早急に行うべきできはないか。この4つの論点が、事務局 として考えられるのではないかということでお示しいたしております。以上でございます。

○島野会長 続きまして、「女性のトラフィッキングについて」林委員から御説明をお願いいたします。

○林委員 今の村上課長の御説明にもあったとおり、トラフィッキングという言葉は大変日本語になじんでおりません。私 は最近ある裁判で証人尋問をしまして、証人の方が、「私はジェンダー学を教えています」と言ったら裁判官が身を乗り出 して、「どういう漢字を書くんですか」と聞いたのです。ジェンダーもわからないくらいなので、トラフィッキングに至ってはか なり難易度が高いのではないかと思います。
 トラフィッキングの定義も、私は今日の発表のために自分で考えた定義でだれかが書いているものではありませんの で、このまま引用すると間違っていると思いますが、「性的搾取や強制労働など、違法な目的に従事させて自己が利益を 得るために他人に国境を越えさせる行為」であるという前提でお話をします。
 まず、「違法目的」というのは必要だと思います。次に、国内についても当然トラフィッキングという概念はあり得ますの で、国境を越えさせると入れる必要はないかもしれませんけれども、今、国際条約などで問題になっているのは国境を越 えた人口移動のことですので、それを前提に考えます。ここでは本人が移送ないし移動に同意をしていたかどうかというこ とは要件ではないと考えます。今日資料でお配りしていただいた関連条約規定の、私たちが「49年条約」と言っております 「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約」が資料1−2に入っておりますが、日本政府はこの「49年 条約」に加入するために国内法整備として売春防止法を制定したという歴史があります。この第1条を見ていただきます と、「この条約の締結国は、他人の情欲を満足させるために次のことを行ういかなる者をも処罰することに同意する。1. 売春を目的として他の者を、その者の同意があった場合においても、勧誘し、誘因し、又は拐去すること。2.本人の同意 があった場合においても、その者の売春から搾取すること」と同意の有無を問題にしておりません。ただ、この条約の一番 の問題だと言われている点は、人身売買とは何かという定義をしていないんです。そのためもあって、例えばイギリス政 府などは、人身売買の定義が不明確であるということで今日まで批准をしていません。レジュメに書きましたけれども、批 准が73か国というのは人権条約としてかなり少ない方だと思います。
 私のレジュメに戻りますが、文献を見ますと、94年に国連総会決議というのがございます。これも定義をちょっと短くして いますが、「犯罪組織等の利益のために、女性を性的・経済的に搾取的な状況におくことを目的とした不法な人の移動」を 対象としています。これは原文は、女性または女児となっていまして女性に限定した決議であるというところが注目に値す ると思います。
 この国連決議の後、98年5月のバーミンガムサミット以降、G8が共同コミュニケで連続して取り組んでおりまして、アメリ カは後に述べますように2000年にこのトラフィッキングに関する新しい国内法を制定しております。また、EUや欧州評議 会からもこの問題について多数の決議や指令が出されております。 
次に、このトラフィッキングを日本語に何と訳すべきかということですが、私はこの「49年条約」どおり「人身売買」でいいの ではないかと思っております。この「49年条約」は、「Suppression of the Traffick」、なぜかこれは「Trafficking」と、現在 進行形にしないで「the Traffick」なんですが、外務省はこれを「人身売買」と訳しております。
次に、95年の北京会議行動綱領の中にも政府やNGO、国際機関がトラフィッキング根絶に取り組む責務というのはたくさ ん出てきますけれども、当時の総理府の訳でも「人身売買の効果的な防止」ということで、トラフィッキングは「人身売買」 となっております。
 それがこの2000年のニューヨーク会議の成果文書から、「トラフィッキング(人の密輸)」と片仮名を使うようになったわ けです。私はこの2000年会議の委員会で、どうして「人身売買」と訳さなかったのですかという御質問をしたんですけれど も、余り明確なお答えはいただけないまま終わっていますので、是非法務省に、なぜ「人身売買」でいけないのかという御 説明を伺いたいと思います。
 そして、2000年に成立した、今日この後、島戸さんが御報告なさる国際組織犯罪条約の議定書は原文が「Protocol to  Prevent,Suppress and Punish Trafficking in Persons」となっていますが、今のところ公定訳は出ていないということ だと思います。しかし、今日の法務省の説明のテーマは、「人の密輸議定書」ですので、「人身売買議定書」というふうに は使っていないということです。
 では、次に日本にトラフィッキングの被害者というのは存在するのでしょうか。そういうことを公的に調査をした資料はあ るのでしょうか、ということに移りたいと思います。私がもともとこの問題に関心を持ったきっかけは、現在、大津委員がディ レクターをしておりますHELPというシェルターで1986年から、留学を挟んで2年くらい空白期間がありますが、10年くらい 顧問弁護士として外国人女性の救援活動に関わったという経験からきています。そこで接したタイ人、フィリピン人などの 女性たちで、例えば田舎に住んでいて自分の意思で、私は日本に行ってみようと思って自分で切符を買って自分でパス ポートを手に入れた人なんか一人もいないです。それは断言できるわけです。だれかやはり水先案内人がいて、中間で 搾取する人がいて、人に集められて来てみたら聞いていた話とは全然違っているという実態があるわけです。
 もちろんうまくいっている人たちはNGOに救援を求めたりしませんので、そういう被害に遭わないで本国にちゃんと送金 できたり、安全に家に帰れたりする人もいないわけではないと思うんですけれども、少なくともNGOの活動の中で接した 外国人女性というのは大変悲惨な目に遭っています。
 今日、多分これは大津委員が御準備いただいたんだと思いますが、茂原事件と市原事件の資料がお手元にあります。 あともう一つの下館事件という3大タイ女性事件をNGOで支援しました。それぞれ非常に搾取的な状況に置かれた結果、 ママさんを殺してしまったとか、加害者として訴追された女性たちを支援する一連の活動がありました。それで、一審の実 刑判決を控訴審で軽減したり、一定の成果を上げたのですが、これはいずれも80年代の活動だと思いますが、その後、 目に見えて何かドラマティックに日本の法律が変わったということは残念ながらなかったのではないかと思います。
 そして、NGOの調査以外にそこに書きましたように国際移住機関(IOM)が日本におけるフィリピン女性と、それから日 本におけるタイ女性のかなり大規模な調査を97年と99年に行っております。事務局にレポートを取り寄せていただいたん ですが、ボリュームがあるものですので皆さんに全部お配りするのはどうかと思って今日お手元にはお配りしておりませ んが、事務局の方にございますし、私も1部持っておりますので、御関心のある方はごらんになってください。
 ここでも最終的に調査した限りでは結論があって、日本政府への勧告、助言というのもあるのですが、後に述べます Human Rights Watchの勧告と非常に重なっている部分が多いと思います。
 今のは国際機関ですけれども、アメリカが2000年の7月に「Victims of Trafficking and Violence Protection Act」と いう法律を成立させました。これによってアメリカの国務省が毎年、これはアメリカらしいなと思うんですけれども、世界中 の国をトラフィッキングに関して3ランクに点数を付ける。ただし、アメリカのことはやらないという法律があるんです。それ で、3ランクというのは一応最低基準という人身売買を禁止する国内法があるかとか、犯罪の凶悪性について厳重な罰則 を定めているかというようなクライテリアを立てまして、それを完全に達成した国を第1位ですね。それから、基準を完全に 達成していないけれども努力は認めるという国を第2位、その基準に達していないし努力もしていないという国は第3位と 点数を付けられているわけです。日本は幸い3にはならないで2になって、努力を多とするという評価なんですね。
 そのコメントの部分で、これは多分もう一つ新しいのが出ていると思うんですが、私が手に入れたのが2000年のもので しかないんですが、「日本では主としてタイ、フィリピンや新しく独立した国からの性的搾取を目的として売買される女性た ちの目的地となっている。日本国内に取引されるこれらの女性たちは各国で募集され、人身売買組織と契約を結び、日 本の他の雇用者の下で強制的に働かされている。日本や、また中国や日本の犯罪組織が借金により拘束する資格外移 住者の中国からの不法入国の目的地でもある。また、東南アジアから旅行者として人身売買される多くの人々を外国へ 密入国させる主要な通過点となっている」ということが指摘をされております。
 同様に、アメリカ政府のレポートでは、「NGOが活動をしているけれども、NGOに対する財政支援というのは東京都を 除いて余りしていないのではないか。一定の児童買春などについての法改正があったということは多とするけれども、必 ずしも告訴、告発が適切になされていない」といった指摘がされています。
 また、トラフィッキングという観点からきちんと集めた政府の資料があるのかどうか、不勉強で私はきちんと調べていな いんですけれども、警察白書その他の警察が発表した資料や論文などでも、最近ではトラフィッキングあるいは外国人女 性移送事犯という言葉を使って、こういうような現象に言及をしております。例えば、そこに引用しました警察時報の中で、 「人のトラフィッキング問題の現状と対策について」と中で触れられておりますのは、「外国人女性は、入国、就労の過程 で多額の借金を負わされ、返済の名の下にスナック、売春クラブなどにおいて売春の強要や搾取をされている状況にあ る。」、警察の人が書いた論文の中でもそういう現状の認識が出てきています。
 では、次にそういう日本国内の状況に対して現在の法律が対応しているのかいないのかということを話したいと思いま す。お配りした資料の中に吉田容子さんという京都の弁護士の方ですけれども、「ヒューライツ大阪」というのは大阪府に ありますアジア太平洋人権情報センター(大阪府、大阪市が助成金を出して運営しているNPOです)の機関紙に「日本 の人身売買の実態と法的課題」という大変まとまった論文を書いていらっしゃいます。このAPT(Asian People  Together)というNGOの人たちが中心になって、この吉田さんが書かれた問題点について、より詳しくは明石書店から 『人身売買と受入大国ニッポン』という単行本になって出ています。吉田さんの「処罰の実効性に乏しい日本の法制度」と いうところはかなり詳しく展開されておりまして、私も今日の報告をするのに大変参考になりました。
 ざっと読みますと、まず日本では「目的や被害者の年齢を問わずおよそすべての人身売買を禁止し処罰する規定はな い。」例外的に、刑法226条に国外移送罪というのがありますし、児童福祉法34条や児童買春・ポルノ禁止法があります けれども、これらに該当されない場合には当然人身売買として処罰されないわけです。それで、国外目的移送罪について は(たしか今日、法務省でお配りいただいた資料の中に条文が入っていると思いますが)、要するに日本人を国外に移送 するときだけ罰するんです。2年以上の有期懲役なんですけれども、外国人を国内に略取、誘拐してもこの226条の適用 はないという大変片面的な規定になっています。これは刑法ができた当時、日本人の女性が海外に売られてしまうのが 問題だったという立法理由があったんだと思いますが、今日的にはそぐわない条文だと思います。
 それから、吉田さんの資料の(2)ですけれども、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」というのがあり ますが、そこに書いてありますとおり、実際には規制し、適正化するのが目的で、罰則も最高で1年以下の懲役もしくは 100万円以下の罰金にすぎず、莫大な利益を生み出す風俗営業の抑制にはほど遠いという現状にあると思います。この 風営法も私も今回つぶさに読んで大変問題だと思ったのですが、私のレジュメに戻っていただきまして、1枚目の最後に 労働基準法の中間搾取の禁止、強制労働の禁止、前借金相殺の禁止、それから職業安定法、労働者派遣法というのを 入れました。
 そして、90年でしたか、入管法が改正された際に73条の2で不法就労助長罪というのが新設されました。これは、<1>事 業活動に関して外国人に不法就労をさせる、<2>不法就労をさせるために外国人を自己の支配下に置く、<3>業としてこれら をあっせんするという者に対して3年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処するという罪が新設されました。これを 受けてこの風俗営業適正化法は、この不法就労助長罪、入管法73条の2の刑に処せられ、その執行や、または執行を 受けることがなくなった日から5年以内については、営業を許可しません。
 ただ、これと別に18条の2というので、接客業者に対する拘束的行為の規制というのを入れております。この1つは、従 業員に対し支払い能力に比して不相当に高額な債務を負担させること。2として、同じく従業員に不相当に高額な債務を 負担させた従業員の旅券等を保管すること。これは解釈基準の通達で、旅券のほかに外国人登録証とか運転免許証、 パスポート、いろいろな例示を書いております。ただし、この18条の2の債務負担行為とパスポートの没収については刑事 罰規定がないんです。しかも、免許不許可事由でもないわけです。仮にこういうことをしたら、不法就労助長罪の方は前 科があると許可されないのですが、パスポートを没収することと債務負担行為と、それ自体非常に悪質だと思うんです が、そういうことについての直罰規定はなくて、解説書にも行政処分の対象となるということしか記載されておりません。こ の点はHuman Rights Watchなどの外国のNGOからのレポートの中でも風営法の18条の2は大変甘いのではないかと いう批判が出ております。
 以上、大急ぎで現行法に触れました。そのような現状で、日本に必要な制度というのはどういうことなのだろうかというこ とを考えてみたいと思います。
今までの法律は、どうしても不法就労者という形でトラフィッキングされた人々を被害者として認識する観点に弱いのでは ないかと思います。だから、その人たちの権利回復を支援していくことが必要だと思います。これは後の島戸さんの御報 告に出てくることだと思いますけれども、今度の人の密輸議定書の中では人身売買被害者の保護、(法務省訳では恐らく 人の密輸被害者となるんでしょうか)、その人たちの医学的、心理学的、物質的支援ということをうたっておりまして、適切 な住居を含む雇用の機会や訓練の機会を人身売買の被害者に与えること、それからこの議定書の締約国は被った損害 の賠償を得る機会を人身売買の被害者に提供する措置を含むという条文が入っています。これは、実は「49年条約」の 第5条を見ていただきますと、「被害者が国内法に基づきこの条約に掲げるいずれかの違反行為に関する訴訟の当事者 となる権利を有する場合には、外国人は内国人と同一の条件でその権利を有するものとする」となっていて、すでに日本 が批准している条約に含まれているのです。
 外国人の被害者支援をしていて一番難しいのは実はこの点で、売春を強要されたとか、ぴんはねをされたという訴えを 受けてこちらが労基法違反ですとか、売春防止法違反で告訴状を出しても、捜査している間に本人が強制送還されてし まうというケースが非常に多いわけです。だから、まだ大津さんがHELPにいらっしゃる前の松田ディレクターの時代に、 私たちもテストケースで非常に頑張って長野県警に告訴した事件がありました。加害者を管理売春として告訴した事案 だったんですが、「刑事手続で被害者本人が出廷する場合はあるのだから、強制送還をすぐしないでくれ」と検察官と大 分交渉しました。本人もタイに帰りたいと言っているので、別に日本にずっとこのままいる訳ではないんだから、とにかく刑 事裁判が終わるまでは日本にいさせてくれということを随分交渉したんですけれども、「それは入管だからうちとは関係が ない」みたいな言い方をされて、「別に法廷でも検事の調書を出す方法がありますから、それはいいですよ」というようなこ とをおっしゃって、結局裁判に間に合わずに強制送還されてしまったという例がありました。
 その彼女は結局、その後、私が怒り狂ってその話をアメリカ人のジャーナリストにしたものですから、アメリカのフォックス テレビジョンがその彼女を追いかけてタイでインタビューをして、日本はやはり人身売買についてちゃんと制度が整ってい ないのではないかというようなことで、アメリカで放映されたという話を私は大分後になってから知りました。やはり一つで もそういう事例があるとどうしてもほかで一生懸命やっていた例があったとしても、それは足りないのではないかという批 判を当然受けなければならないと思いますので、私はこの被害者の訴追の権利の保障ということはもう少しケアをしていく 必要があるのではないかと思っております。              
2つ目に、同じく今の議定書の中でも国際協力ということをうたっておりまして、トラフィッキングの原因となっている貧困で あるとか、開発されていない状態あるいはその平等な機会の欠如など、送り出し国が持っている問題の解決に協力をす るということが大前提となっています。ただし、私はやはり日本人がそういう問題に取り組む以上は、日本国内での貧困の 女性化ですとか、日本の女性が置かれている平等な機会の欠如というのを私たちもやっていますという努力を見せなが らそういう協力をしないと、それは相手方から反発されたり拒否されたりという援助になってしまうのではないかと思いま す。
 また、加害者や犯罪組織についての政府間での情報交換、これは既に政府レベルではなされていることなのかもしれま せんけれども、必ずしもNGOに情報は入ってきておりません。特にフィリピン、タイなど、被害者が多い特定の地域、国と のより密な連携が必要なのではないかと思います。
 御参考までに、先ほどのヒューライツ大阪のニュースレターですけれども、3枚目に平野裕二さんという方が「南アジア で女性と子どもの人身売買に関する地域条約が誕生」という寄稿をされています。これは詳しく御紹介している時間があ りませんけれども、特定地域の中での国際的な売買春のネットワークを撲滅する政府間での取り組みというのがアジア で始まっているという新しい動きだと思います。
 それから北京行動綱領で、これは重大問題領域ごとにそれぞれ戦略目標というのが最後に付いておりますけれども、そ こではこのトラフィッキングの問題について何が強調されているかといいますと、「女性の人身売買を根絶するために加害 者の処罰を目的として既存の法律を強化することを含め、売春その他の形態の性の商品化の根本原因に対処する施策 を実施する。セックスツアー及び人身売買の防止を目的とする法律の制定を考慮する。」となっております。私はニュー ヨーク会議の成果文書とのきちんとした整合はしていないんですけれども、このラインを今も国連文書として維持している ことは間違いがないと思います。
 それで、私自身はこの2000年の組織犯罪条約の議定書ができたのは大変いいことだと思うのですけれども、これは組 織犯罪条約本体を批准しないと人の密輸議定書も批准できません。組織犯罪条約自体については私は不勉強で自分の 定見はありませんけれども、いろいろな人権の観点から、弁護士会などは必ずしも批准に前向きではありません。常に弁 護士会というのは在野勢力ですので、それが日本の市民社会の声を直ちに反映しているとまでは言えないんですが、い ろいろな点で本体条約について批判がまだたくさんあるということは間違いありませんので、この専門調査会ですぐに本 体条約に加入して、なおかつ議定書の方にも加入しようというふうに議論していくことに私個人としては大変躊躇を覚える ということだけ申し上げておきます。
 最後に、お配りした資料だけ簡単に説明をいたします。このHuman Rights Watchの方は訳が日本キリト教婦人矯風会 から出されておりまして、英文のレポートもありますけれども、これはもともとアメリカに本部がある国際人権NGOで、国連 の人権委員会などでも常に発言をして大変高いレベルの活動をしているNGOです。ここが1980年代の初めにタイにおけ るビルマ女性の人身売買の調査をやって、次のプロジェクトとして日本におけるタイ女性の人身売買を取り上げまして、 日本政府に対してのさまざまな提言をしております。また、送り出し国であるタイ政府に対しての提言もしております。これ が1つです。
 2つ目は、木下薫さんの「人身売買…もう「強制」の証明はいらない」というのは、これは松井やよりさんが代表を務めて おります「アジア女性資料センター」が出している「WOMEN'S ASIA 21」という機関紙に載ったものです。細かいところで 若干余り正確ではないのではないかと思う点があるんですけれども、最後のところで2つ、人身売買に関する活動をして いる団体のホームページが紹介されています。これは瀬地山委員などは私よりお詳しく御存知だと思いますけれども、 今、売買春をめぐっては女性の権利派と、そうじゃなくて人権侵害派だという意見と2つがあるんですが、「Coalition  Against Trafficking in Women」というのは、非常に大ざっぱな言い方をすると、売買春禁止派、フィリピンのオーロラ・ ディディオスさんというフィリピン選出の女子差別撤廃委員をされている方が中心になってやっていらっしゃるNGOです。 それで、下の方の「The Global Alliance  Trafficking in Women」というのがセックスワーカーの権利ということを強く主 張されるタイに本部があるNGOで、大体国連の会議に行くとこの2つの代表の人たちが激しく意見を闘わせるという場面 に遭遇することが多いです。
 次に書きましたのは、もうかれこれ10年近く前に「売春防止法をめぐる問題点」という、その当時の私の問題意識で書い たものを一つ入れさせていただきました。
 それから、これもちょうど10年前なんですけれども、当時49年条約批判というのが今、挙げた「Coalition Against  Trafficking in Women」とか、「The Global Alliance  Trafficking in Women」といった海外のNGOから意見が出てきた ときに日本でどういうふうに考えるかというディスカッションを持ったことがありまして、そのときの講演録を一つ入れまし た。
 それから、欧州評議会のサイバー犯罪条約というのは、これは前回の宮本さんの御報告に関連するんですが、児童ポ ルノに関する犯罪が入っておりますので、事務局にお願いして今日追加で資料を入れていただきました。
 最後に、ラディカ・クマラスワミの「女性に対する暴力」についての報告書があります。クマラスワミ報告書と言うと、残念 ながら日本では慰安婦について報告を書いた人というイメージが大変強いんですけれども、実際には大変すばらしい活 動をしておりまして、人身売買についても詳しい報告をしています。今、国際的に何が問題なのか、「49年条約」は何が足 りないのかといった点も触れられておりますので、御参考にしていただきたいと思います。以上でございます。

○島野会長 ありがとうございました。引き続き、法務省の島戸検事から御説明をお願いいたします。

○島戸検事 法務省の島戸でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日説明させていただきますのは、女性に対する暴力に関しまして国際組織犯罪条約、「人身取引」と申しましょうか、 「人の密輸」と申しますか、いろいろ呼び方はございます。呼び方も含めまして、この議定書につきましてお話をさせていた だきます。
 時間が限られておりますのでごく簡単になろうかと思いますが、刑事法の分野では国際組織犯罪に対処するための方 策が最近、特に問題となってまいりました。こうした犯罪について各国それぞれが取り組もうとするのでは処罰のすき間が 出てきておりまして、条約によってある特定の行為について国内法で犯罪として処罰することを義務付ける、こういう条約 を幾つか設けているところでございます。
 その一つとして、国際組織犯罪条約が一昨年、2000年の11月の国連総会で採択をされました。この国連国際組織犯罪 条約というものを補足するという議定書が3つございます。補足すると申しますのは、特に特定の分野につきまして更に 詳しい内容を設けようとするものですが、この国連国際組織犯罪条約につきましては2000年に今回の「人身取引」(人の 密輸)の議定書、それから「不法移民」の議定書、それから2001年に「銃器」の議定書の3つがそれぞれ採択されました。 時間の関係がございますので、この「人身取引」(人の密輸)の議定書について説明を申し上げます。
 訳については、林委員からございましたが、我が国としましては署名をしておりませんし、まだまだ部内で検討していると ころでございます。どうしても条約となりますので、外務省の方でいろいろ調整を図っているところでございます。個人的に は林先生がおっしゃるとおり、「人の密輸」ということでしっくりとイメージがくるものかどうか、そこは疑問ですが、ただ、売 買と言うほど実際金銭を伴うような授受に限られないものですから、売買という言葉が適当かどうかも含めまして、今後 更に検討してまいりたいと考えております。
 以後「人身取引」と呼ばせていただきますが、大まかに申しますと、この「人身取引」の方は国際的な誘拐行為、例えば 女性ですとか児童などがその人の意思に反するか、あるいは何らかの不法な手段を用いて取引の対象とされるという場 面が典型的に想定されるかと思います。これと似て非なるものに、先ほど「不法移民」と一言で申しました。「陸路、海路 及び空路による移住者の密輸に対する国際的な組織犯罪の防止に関する議定書」というものがございます。この2つの 議定書がなかなか区別がつきにくいという問題があります。いずれも国際的な人の流れに関わる犯罪行為を国際的に規 律していこうというものですが、一言で申し上げれば1つ目の今回問題となっております「人身取引」が組織犯罪の被害 者、「不法移民」の方が組織を利用して行うものと大ざっぱに分類することもできるかと思います。
 とは申しますものの、完全に分けることができるかと問われますと難しい問題があります。例えば、被害者自身が国外 へ行くこと自体は承諾し、不法なあっせん組織に依頼して国外に移動したけれども、当初説明を受けたよりも劣悪な環境 であったという場合に、「人身取引」となる「不法移民」となるか、非常に難しい問題になります。また、最終的な解決としま しても到着国と申しましょうか、送られてきた国での保護を図るか、元の国に送還するか、最終的にどのような形で保護 するかという問題もあろうかと思います。
 ただ、いずれにしましても、この問題について我が国が取組をしなければいけないだろうと、検討しているところであること は間違いございません。
 我が国の立場としましては、先ほど申しました本体条約につきまして既に署名を済ませております。条約によって義務付 けられる犯罪をどのように処罰するかということにつきまして、2003年に向けて検討しているところでございます。こちらの 議定書につきましては本体条約を前提とするものですので、まだ見通しは立っておりません。ただ、国内法との関係を検 討しておるところですし、また2002年の12月が一応署名の期限となっておりますので、我が国が置かれた立場に照らしま すと、検討を急がなければならない問題だということは感じているところでございます。
 それでは、「人身取引」の議定書の内容に入ってまいりたいと思います。議定書の原文が参考資料の中でございます。 まだ訳というものが外務省の方でも特に確定されているわけではありませんので原文で恐縮ですが、先ほどの配布資料 の中にございますので、適宜御参照いただければと思います。
 資料1−2の「女性のトラフィッキング関係条約規定」の中の10ページからになっております。こちらの方から大体その 概要を口頭で簡単に申し上げますと、本文が20か条からなっております。全体の構成といたしまして、まず一般的な規 定、日本で申し上げれば総則に近いと思われます。それから、被害者の保護に関する規定、また3番目に防止、協力そ の他の措置に関する規定、それから最終条項という構成で大きくできております。
 まず最初の第1条から第5条までの一般規定としましては、先ほどの本体条約との関係ですとか用語、例えば、人身取 引Trafficking in Personsの定義もございます。
 それから、この議定書の適用の範囲、また犯罪化に関する規定というものがございます。
 その後、第6条から第8条までの被害者の保護の規定としましては、被害者のプライバシーの保護、それから被害者に 対する情報及び援助の提供、また被害者が発見された国における被害者の地位、更に被害者の本国への送還に関する 規定がございます。
 そしてまた、第9条から第13条までの防止、協力その他の措置の規定といたしまして、人身取引の防止のために締約国 が講ずべき措置、締約国の法執行機関の間の情報の交換、法執行機関等の職員の訓練、国境管理の強化、それから 旅行証明書や身分証明の濫用の防止、こうした規定がございます。
 最後の14条以降は直接大きく効力に関わるものではありませんので、今は省かせていただきます。
 この「人身取引」の議定書の目的など、大ざっぱな総則の部分、一般的な規定の部分について概略申しますと、第2条 において目的を定めていますが、女性及び児童に特別の注意を払いつつ人身取引を防止したり、これと闘うことですと か、それから人権を十分に尊重しつつ人身取引の被害者を保護し援助すること、その目的の達成のため、締約国間の協 力を促進すること、こうしたことが目的とされております。つまり、処罰ということも、これはもちろんございますが、その反 面、被害者の人権に配慮した措置などが規定されているということでございます。
 さて、刑事の分野として、犯罪化ということが問題となっておりますし、先ほど林先生からございましたものも一部その犯 罪化をどうするかということが問題だという御指摘をいただいたかと思います。それで、この「人身取引」をどのように定義 をして、どのように処罰をするかということを申し上げますと、3条と5条で規定されているところでございます。
 3条の中で非常に複雑ではございますけれども、一応この3条の定義はお話ししておかなければいけないと考えており ます。11ページのArticle3の最初の部分をごらんください。ここで「人身取引」ということについて定義をしております。まず その対象者が18歳以上か、また18歳未満の児童かによって分かれている規定の仕方となっております。対象者が18歳 以上である場合には人身取引を、行為、そのために用いた手段、その目的の3点からくくりだしておるところです。まず目 的のところから申しますと搾取という言葉、「exploitation」というところがございます。これが非常に抽象的でございまして、 この議定書の中では少なくとも人を売春させて搾取すること、及びその他の形態の性的搾取、強制労働、奴隷及びこれ に類似する慣行、隷属及び臓器摘出を含むといろいろ複雑になっておりますけれども、こちらではかなり広い目的だとい うことを考えております。
 私どもからの参考資料として挙げました刑法の中に「営利の目的」という文言がございます。この「営利の目的」で大体 はカバーされるのではないかと考えているところですが、ただ、一部漏れが生じると思いますので、その辺りの検討を今し ているところでございます。
 それから行為についてですが、4段階に分けておよそそのプロセスを考えることができると思います。まず人の対応とし て「recruitment」、それから次に運搬、そして蔵匿、見つかりにくいところにかくまってしまうというイメージになろうかと思い ます。そして、最後に受領という4段階に分かれて定義がされております。これもかなり人身取引の一連のプロセスすべ てを対象にされているというふうに雑駁にお考えになってもよろしいかと思います。
 それから、そのために用いた手段としましてもいろいろ複雑な規定がございます。暴力もしくはその他の形態の強制力に よる脅迫もしくはそれらの行使とか、略取もしくは誘拐ですとか欺罔、権力の濫用、そして最後に他人を支配下に置く者の 同意を得る目的で行う金銭などの授受ということで、これもかなり広く規定されているところでございます。一つひとつの言 葉の意味につきましてなかなか時間の関係で申し上げられませんけれども、単に無理やり連れて来るというだけではなく て、例えば騙して連れて来るとか、それから相手の弱い地位に付け込むですとか、そういったものが対象になってこよう かと考えております。
 以上が成人についてでしたが、若干児童の場合にはこれが更に広がっております。先ほど行為と目的、手段、この3つ から定義付けをしているということを申し上げたところですが、児童の場合には手段によって限定するということをしており ません。したがいまして、先ほどの手段の中で申しました暴力ですとか、あるいは欺罔、弱い立場に付け込む、そういった ことには特に限定がないということで、児童の方が若干広くなっているということでございます。
この3条でおおよそTrafficking in persons「人身取引」という言葉の定義付けをいたしまして、この第5条の中で故意に行 われた行為を犯罪の対象として処罰すると、そうしたことが規定されております。大まかに申しましたのが、以上の犯罪化 についての条項でございます。
 その後の方で、更にまた被害者の保護ですとか、例えば被害者の保護の中には医学的な援助を与えるとか、法律上の 助言を与えるとか、そういうことが規定されております。
また、その後ろの方の防止、協力というところですと予防措置、各国間の情報交換ですとか、更に旅券やビザなどの国際 的な人の移動に使われる文書につきまして簡単に偽造ができないような措置を講じたりする、また、人身取引に関係があ ると疑われる文書について本物かどうかという照会をした場合に直ちに回答することというようなことが内容とされており ます。
 以上が概略ですが、現在、先ほど申しましたとおり国内法との関係などを検討しているところでして、具体的な法整備を どうするかということはまだ十分固まっておりません。ただ、参考資料の2ページと3ページにある「人身取引」に関する現 行の刑罰法規の規定がどこまでカバーできているのかということがもちろん検討の対象になってこようかと思います。そ の具体的な中身につきまして、林先生から御紹介がありましたとおり、例えば国外への移送につきましてなかなか現在の 国際的な動向に合っていないというところも指摘を受けているところでございます。また、実際に先ほど「人身取引」の一 連のプロセスすべてにまたがって規定をされているということを御紹介いたしましたけれども、刑法がそこまで対象として いるのかどうか。取引、授受といったところまでが対象になっているかどうかにつきましても、まだ不十分な点があると指 摘されているところも中にはございます。具体的な方向性というところまでなかなかお話はできませんが、以上のとおりで ございます。
 ただ、18歳未満の児童につきましては、子どもの買春の問題として前回話題になったと伺っておりますけれども、その中 で児童の権利条約に関する選択議定書というものがほかにございますし、また先ほど御紹介がありましたサイバー犯罪 条約というところで児童ポルノに関する規定もございます。そうした児童に関しましては、また別に保護が必要ではないか という問題がございまして、こちらの方も児童買春、児童ポルノ法というものが3年前に制定されたところですが、3年後を 目途に見直しをするということになっておりまして、ちょうどその見直しの目途が今年になっております。自民党の先生方 にも勉強会などでいろいろ御検討いただいているところでございますが、こちらの内部でも現在その運用状況ですとか施 行状況などを踏まえまして、こうした国際的な動向に合うように検討はしなければいけないと認識しているところでござい ます。
 以上、簡単でございましたが、議定書に関する説明をさせていただきました。

○島野会長 ありがとうございました。それでは、お2人の御説明に対する御質問等がございましたら、どうぞお願いいた します。

○林委員 補足ですが、このトラフィッキングの件は、女子差別撤廃委員会での日本政府報告書審査でも、私は94年の 前回の審査のときに国連で傍聴いたしました。かなり議場で議論があって、その年から政府報告書審議が終わった後、コ ンクルーディング・オブザベーションズという最終勧告を出すようになりましたが、その中でも特に日本における外国人女 性の状況についての改善をするようにということが出ておりますので、来年の報告書審査でも必ずこれは出てくる問題だ と思います。ですので、児童買春の問題ですとか、国内法整備が進んでいることは間違いないですけれども、他方でこう いう新しい議定書ですとか新しい国際スタンダードの方もどんどん高くなってきていますので、それに対応した取組をして いるのかどうかという点は大変厳しく問われると思います。

○大津委員 島戸さんの話では、無理やりに連れて来られる、だまして連れて来られる、それから相手の弱みに付け込 んで連れて来られるといったものは人身売買として認めるということでした。しかし、もしその人がそれはわかっていて来た 場合においてもそれをそういうふうにされるのかどうかということをちょっとお聞きしたいんです。日本に来ることがわかっ ていて、なおかつ売春をするということを既に言われていて、それでも連れて来られて日本に来たときに、その人たちが 思ったような条件ではなかった。そういうことがわかったときに、それは同じように人身売買と見られるんでしょうか。

○島戸検事 今、御質問いただきましたことは非常に難しい問題でございまして、正直なところ今、私どもが現在の状況で これは当たります、当たりませんとなかなか申し上げることは難しい問題がございます。
 ただ、もし1点言えるとすれば、単にわかっているということだけで、それのみをもって人身取引に当たらないということに は直ちにはならないということは言えようかと思いますが、今の御指摘の問題につきましてはちょうど先ほど申し上げたよ うに難しい問題がございまして、現在検討をしているところでございます。

○住田委員 今日は検討中ということで個人的な御見解をかなりいただいたと思いますが、実際に政府として、又は法務 省としてこの条約について法制審議会などの公の場でどんなふうに今やっておられるのか。そして、12月が期限のようで すけれども、具体的にスケジュールとしてどういうふうに動いておられるのか、その辺りを教えていただけますでしょうか。

○島戸検事 その辺りは恐縮でございますけれども、現在部内で検討し、関係省庁間で連絡を取って協議をしているとこ ろです。

○住田委員 法制審議会はやっていらっしゃるんですか。

○島戸検事 法制審議会は開いておりません。

○住田委員 条約批准のためには全然まだ動いていらっしゃらないんですか。

○島戸検事 本体条約のことで申しますと、法制審議会は開くことが必要になってくるかもしれませんが、議定書につきま して法制審議会の審議が必要かどうかというところはまだ検討しているところでございます。一般的に刑事法を改正する 場合に、すべてが法制審議会を必要とするものではございませんが、ただ、法制審議会が必要かどうかということなども 含めまして、現在検討をしているところでございます。

○住田委員 私は2つに分けてお聞きしたつもりなので、条約の方についてはもう署名済みなので批准をどうするかという ことと、特に犯罪の法制化というのはきちんとやらなければいけないとしたら法制審議会は必要な措置だと思うのですが、 それもやっておられないということなんですか。

○島戸検事 本体条約の部分につきましては2003年の通常国会に法案の提出が目標とされておりますので、本体条約 につきましては所要の手続が必要になってこようかと思います。では、具体的にその諮問などをどうするか、法制審議会 を開くかどうかというところは現在検討しているところでございます。
 そして、こちらの議定書につきましてはまだそうした段階、法制審議会について具体的なところまでの検討には至ってお りません。

○原会長代理 先ほど林さんがおっしゃいました、女子差別撤廃委員会(CEDAW)で恐らく来年日本がまたどうなってい るのというのを聞かれてお返事をしなければいけないという、そういうときにはこの件に関してはやはり法務省の方からも 御説明なさる方がニューヨークまでお出かけになるという段取りになるのでしょうか。

○林委員 どうなんでしょうか。今まで余りいらっしゃっていないと思うんですけれども。

○坂東局長 法務省は一度も代表団に加わっていただいたことはないですね。

○島戸検事 部内に持ち帰りまして、検討させていただきます。

○原会長代理 いろいろな省庁の方がそういう国際的な場に出席されますと、その度に省庁の方の御認識とか御対応が 変化するような気がします。他の国に関する審議なども御覧になれば、なるほどこういうことはやはりこういうふうに考え なければいけないんだということがもう少し具体的にお感じ取りいただけるようになると思います。

○大津委員 HELPでは一番はっきりと数字として見える人たちを保護し、そして帰国させているわけです。そのときに、 例えば具体的に誰が人身売買に関与していたのか名前がわかっていても、なかなかその人たちを罰するというところまで いかないのです。そこら辺のところをきちんとやっていかないと、いつまでたっても女性たちが送り込まれてくる。警察のす ばやい対応を望みます。

○前田委員 私は、やはり風適法なども林先生のおっしゃるように不十分だと思うのです。明らかにパスポートを隠したよ うなものまで直罰にできない。それは風適法改正のときもやはり営業の自由の側から、要するにその処罰側に対しては 非常に厳しい議論があって、なるべく行政処分で押さえるようにという形でやらざるを得なかったところはあったと思うので す。
 ただ、全体として風適法とか、そういうところでやれる部分でなるべく早く対応して、先ほど島戸検事から御説明があった ものを本格的にやるならば刑法改正になってしまいますよね。これをやるとなると、当然先ほど御指摘になったように法 制審議会とか、大変な時間を使って誘拐罪の根本的な見直しになってしまいます。だから、それが相当な時間をかけてや るのが合理的なのか、実質的な実効性のある形でこういう女性を搾取するグループを撲滅できるのであれば即効性のあ る手段をとる方がいいのか。
 ただ、ゆっくりお考えくださいと言っている時間はないわけで、是非法務省と警察庁と両方が知恵を出し合ってうまくやっ ていただきたいと思いますが、風俗営業に関しては本当は警察庁だって前に出たいところはいっぱいあるんだと思いま す。ただ、こういう場の発言とか、世論とか、そういうものの後押しがあるかどうかというところが大きいと思います。刑法改 正に持っていくと、なかなか時間がかかるだろうという気がします。

○島野会長 そうすると、行政処分あるいはそれに至る前の対応と。

○前田委員 そうですね。風俗営業者に対しての規制をもっと厳しくやる。それから、売買春に関しての規制、ちょっとした ところで前に出るかどうかで直罰規定が設けられるかどうか。現実には立法作業は非常に難しい御苦労があると思いま すが、もう一歩前に出ていただければうまくいくところもある。
 ただ、先ほどの議論に出てきましたけれども、売春に対しての基本的な考えに対立が残っていたり、要するに売春は全 部悪であると言い切れるかどうかとか、あとは営業の自由の問題、売春も営業であるみたいな議論もないわけではない ので、その辺の議論はどこかである程度詰めないといけないと思うのです。

○林委員 私は1つは今、行政処分でやっているものを直罰主義にしてもっと風適法を強化していく方向には賛成です が、それと同時に被害者が訴追する権利ということをもう少し強めていって両面で、国もやるし、被害者が個人として加害 者を訴追していく。例えば刑事告訴するとか、民事で賠償請求するということの仕組みというのをつくる必要があるのでは ないかと思っています。
 人身売買被害者保護に関してはベルギーが大変進んだ施策をとっていると言われています。もし将来、委託研究ですと か調査研究の予算が国に付くようになれば、是非一度ベルギーを研究していただきたいのですが、クマラスワミ報告書の 30ページの94項でベルギーの実践について簡単に触れています。ベルギーでは人身売買された人は4、5日間の休暇 を与えられ、その間に人身売買業者を告発するかどうかを決めることができる。訴訟を進める決心をした女性は3か月の 暫定的在留許可が与えられ、その間に働き口を見つけられない場合は社会保障手当を得ることができる。この許可は裁 判が3か月以上に及んだ場合、更に6か月更新することが可能である。それで、シェルターについても資金援助をしてい るということが書いてあります。
 それで、先ほど御紹介した弁護士の吉田容子さんたちが書いた『人身売買と受入大国ニッポン』の本も、最後に人身売 買の被害者保護のためのコーディネートセンターをつくって国家的に取り組むようにという定義をしているんですが、それ はベルギーをモデルにしていますので、かなり進んだ取組をしていることは間違いないようです。大津委員もHELPの活 動をしていて、被害者もいろいろな日本の法律を犯しているということは十分私たちはわかっているわけです。ただ、その 事実によってあらゆる人権が否定されるというのはおかしなわけで、彼女たちも入管法違反とか外国人登録法違反とか、 多分あるんでしょう。けれども、そのことによってその奪われたものを取り返す権利というのはなくなるはずがないので、逆 にそれを取り返していく。犯罪によって利益を得た人に利益を保持させないということが、最終的にはこういうものをなくして いく方策だと思いますので、法律扶助の適用なども含めて考えていくべきではないかと思います。

○北村委員 トラフィッキング、被害者の保護の問題は非常に重要でしょうけれども、同時にHIV/エイズの日本への侵 入というか、そういう問題が当然あるだろうと思うんです。それをいかに水際で防ぐかという問題もこういうものと非常に深 い関わりがあると思うのですが、この件における厚生労働省などとの関わりというのは一体どうなっているんですか。そう いうことを含めた議論というのはあるんですか。

○島戸検事 実際に私どもがそうした方々の処遇ですとか、被害者の保護に直接携わっているわけではございませんの で、私どもは厚生労働省さんとそういうお話はしておりません。犯罪化をどうするか、あるいは法務省全体で見ましても入 国管理をどうするかといった問題とは若干観点が異なるのではないかという気はしております。

○瀬地山委員 基本的な質問が1つと、それからもう一つあります。まず現行法でなぜだめで何が必要なのかというのを もう一度端的に教えていただきたいんです。
 2点目に前田先生がおっしゃったことと関係するんですが、刑法の改正まで踏み込むのは時間がかかるから風適法で 何とか対応するべきではないかと。もちろんできれはそれでいいんですが、風適法というのは風俗営業をやっている人に しか適用されないわけで、まさにこの問題というのは必ずしも性労働に関する、あるいは性的搾取に関するもののみには 限らないはずで、まさに強制労働全体に対してカバーすべき問題であったはずで、そうなると風適法で何か対応するとい うことでは、やはりカバーし切れないのではないかなというふうに思ったのですが、その2点についてお教えください。

○島戸検事 まず1点目でございますけれども、現時点で申し上げるとすれば2点あろうかと思います。まず1点目につき ましては人身売買など、あるいは人身取引の手段を用いて人を支配下に置くということが現行の刑法の中で読み取れる かどうかということはひとつ問題となってこようかと思います。

○瀬地山委員 支配下と監禁は違うんですか。

○前田委員 誘拐でしょうね。ただ、誘拐に当たる余地はないことはないわけで、そういう場合もあるという感じなんでしょ うね。

○島戸検事 はい。それから、もう一点は現在の国外への移送の問題でございます。ちょっと細かい話になって恐縮です が、資料3の2ページの中の刑法第226条の第2項をごらんいただきたいと思います。この中で、日本国外に移送する目 的で、人を売買し云々と書いてございますけれども、これは日本から日本の外へ送り出すということについては対象となっ ておりますが、それ以外の類型については対象となっておりません。これはひとつ考えなければいけない問題なのかなと いう気はしております。以上、2点が問題となり得るのではないかと思います。

○瀬地山委員 そうすると、225 条との関係で言うと略取はどちらにしても225条で罪にできるのではないのですか。誘拐 は誘拐罪ですよね。略取もこれでカバーできるのではないんですか。

○島戸検事 この226条の2項の中の前半部分は売買の部分がまずひとくくりになっております。そして、「又は」の後で 略取、誘拐、若しくは売買された者を日本国外に移送するということがくくられております。まず、前段部分につきまして は、225条の略取、誘拐罪が成立しない者が売買、取引に及んだ場合が問題になります。それから226条2項の後段で申 し上げれば、日本国外への移送のみが対象となっているため、日本以外への移送や国内における移送が問題となりま す。ですので、若干そのずれが出てくるということはあり得ようかと思います。
 それから2点目ですが、刑事法規を改正するというのは非常に難しい問題で、従来で申しますと非常に時間がかかる問 題ではございます。もちろんそのスピード自体は早くしているところでございますし、それだけの体制をとっているところで ございますが、ただ、やはりいろいろな意見があり得るところでございます。特にこの議定書の前の本体条約につきまして さまざまな意見があるところでございます。それで、刑罰法規の場合には処罰の対象を明確にするということと、やはり必 要最小限にすること、これがどうしても必要となってまいりますので、その検討に当たって専門家の方々、有識者の方々、 あるいはそれ以外の方からも幅広く意見を聞かなくてはいけないという問題はあり得ようかと思います。

○島野会長 それでは時間がまいりましたので、ヒアリングはこの辺りで終了したいと思います。林委員、島戸局付検事、 誠にありがとうございました。
 続きまして、自由討議に入ります。まずは「女性のトラフィッキングについて」でございます。資料1−1の2枚目に当たる かと思いますが、「女性のトラフィッキングに関する議論のポイント」というペーパーがございます。これは一応の参考まで につくってあるものです。どうぞ御自由に御発言ください。

○原会長代理 この「trafficking in persons」を「人身取引」という日本語にするのか、「人の密輸」という言葉にするのか という点ですが、両方が併記されているみたいですが、「密輸」という場合は国境を越えて物なり人が動くときを言うんで しょうか。それから、「人身取引」というのは国境を越えるか越えないかに関係なく、お金が絡めば取引なんでしょうか。

○林委員 是非法務省の御意見も伺いたいんですが、私の推測ではこの3つの議定書のうち1つ目が「trafficking」で、も う一つが「smuggling」なんです。「smuggling」は本来は訳としては「密輸」なんです。
 ところが、人の「smuggling」というのを「不法移民」という訳を付けているために密輸という言葉が「人身取引」と訳される ようになったのではないかと思います。そこで私は訳語が大変混乱があると思いますし、不法というのはそれ自体一つの 価値観で無価値な言葉じゃないですよね。不法という言葉に込められた意味がありますよね。だから、そこのところで「人 の密輸」という言葉がトラフィッキングに当てられたのは、もう一つの第2議定書との関連でどういう訳語を付けるかという ことで工夫をされたんだと思います。ただ、今の原先生の御質問の国境を越えるかどうかということとトラフィッキングとい うのは私は直接関連はしないと思いますし、国連決議の中でも国際的または国内の移動という言葉でトラフィッキングを 使っています。

○大津委員 韓国では、売春を「性売買」という言葉を使うようになっています。韓国人が漢字で書いてくれました。一応 人の移送とか輸入とかになりますと、性とは限らないわけです。それをはっきりさせるために韓国では「性売買」にするの だと聞きました。私は、人身売買というときに労働とは考えていません。セックスを通しての売春というふうに考えていまし た。この中で女性のトラフィッキングと言ったときに、女性の「性」を言っているのかはっきりしないといけないと思います。 漠然とここでは書かれていますが。強制労働、奴隷状態、はっきりと絞って議論していく必要があります。

○島野会長 それでは、この専門調査会がトラフィッキングに関してヒアリングをし、議論を進めようとしているわけですけ れども、我々の対象となるべき事柄をまず共通の認識にしておかなければいけないわけですが、この議論のポイントの冒 頭に書いてあります、女性に対する暴力の観点から女性のトラフィッキングに焦点を当てる。対象は女性です。それで 今、大津委員からありました性、売春のための女性のトラフィッキングというところに絞っていくかどうか、これは皆様どの ようにお考えでしょうか。広く売買春で、前回は児童の買春等を取り扱って、今日はトラフィッキングと一応くくって売買春 の中の2番目のテーマにしてあるわけですけれども、そのトラフィッキングという用語自体からは必ずしも直接に性のため のトラフィッキングとは限定されないということですが、ここでは限定して論じてまいりましょうか。

○瀬地山委員 今、会長がおっしゃったことは議論を限定するという意味なんでしょうか、それともトラフィッキングの定義 自体の話ですか。

○島野会長 議論です。トラフィッキングはもう国際的な用語ですから、その中の一部になるかもしれないけれども、議論 を限定していきましょうかということです。

○瀬地山委員 売買春というふうに限定をしてしまうと、性産業の広がりを考えたときにその他の形態の人身売買というの が私は抜け落ちるのではないかと、それを少し心配していまして、もう一つ言うと私は売買春というのは全体として女性に 対する暴力であるというふうには考えないという立場ですので、その点からしても売春で限定をするのではなくてむしろ人 身売買という点を限定の強調点にすべきだと考えています。

○島野会長 いかがでしょうか。議論は売買春という大きな項目を掲げて、前回は児童買春等にスポットを当て、今日はト ラフィッキングと称されるものにスポットを当ててきているんです。

○瀬地山委員 その中で人身売買兼売春になっているケースというものに今の議論を限定するという意味であったら、そ れは全く異論はありません。

○島野会長 ほかにございませんか。では、今、瀬地山さんが最後におっしゃったように売買春という大きな項目、その中 のトラフィッキングと言われるものの中での売買春の問題として、まずは今日やっているという共通の認識を持ちたいと思 います。
 そこで、ポイントの<1>でどの部分を女性に対する暴力ととらえるべきか。売春を強制されている点か、人身売買されてい る点かですけれども、売春と人身売買的なものがミックスされて実際に行われているので、この2つを分ける必要があり ますか。それはどうでしょうか。

○小西委員 私はこれはどうしてもよくわからないんですが、この2つはどうして選ばなくてはいけないのでしょうか。

○原会長代理 もう一つ、ここで先ほどの課長さんのお話のところで売春を強制されている点か、人身売買されている点 か、この2つのところで人身売買は女性に限らないというんだけれども、男の人でも強制されて売春をしている方があっ て、そして被害を受けている方はいらっしゃると思うのですが、ここは両方にかかっていたのでしょうか。

○村上内閣府男女共同参画局推進課長 男の人身売買の典型例は、明治時代から問題になった中国人の労務者をペ ルーにというようなケースがあるわけで、人身売買という場合の問題性は両方ありますよという趣旨で書いています。

○小西委員 トラフィッキングあるいは売春というのがそれぞれ違う内包を持っている中で、とりあえず今のところはトラ フィッキングの中で売春を強制される女性について議論をする。ただし、その中には人権を奪われるという点では売春の 問題と人身売買の2つの要素はあると、それでよろしいですか。

○島野会長 そのように私は理解いたしますし、異論はないと思います。では、そのように御理解ください。
 次に、トラフィッキングの意味を「人身売買」ととらえるか、「人の密輸」ととらえるか、今日「人身取引」という新しい言葉を 聞きましたけれども、そのとらえ方で内包するものが変わってくるでしょうか。

○林委員 ポイントで言う「強制」という言葉をどういうふうに理解するかにも関わってくると思うんですけれども、先ほど 島戸検事から解説があった3条の定義を見ても、「use of force」というのは一つの例示にすぎなくて、欺罔とか騙すとか 「position of vulnerability」というような言葉が出てきたり、力において上下であるということを利用するということが要件 になっていますね。だから、力において例えば優劣な関係があるものを利用する場合は日本語で言う売買ではない。そう いう強制ではないという立場を取るんだったら、新しい議定書に「人身売買」という言葉を使うのはふさわしくないということ になるのでしょうが、むしろ皆さんがそこをどういうふうに考えられるか、御意見を伺いたいと思います。

○島野会長 トラフィッキングという横文字でずっとこの専門調査会はやっていくのか、多少言葉の解説的な文章が必要 なのか、そのときにどういう日本語を当てるか、その辺の御意見はいかがですか。

○前田委員 言葉をどう使うかというのはいろいろな要請とかがあると思うのですが、私は「人身売買」という言葉を出して しまう方が国民にとってわかりやすいし、影響力を持つと思うのです。それで、法務省の効率的な観点からいくと、刑法で 「売買」という言葉が出てきますので、先に島戸検事が御説明になったところで「人を売買し」という概念があるんですね。 その「売買」を前提に考えてしまうと「人身売買」は外れてしまうんですが、必ずしも同じ「売買」という場合、刑法の世界で も同じ言葉を違うように使ったりしますので、法務省は非常にリジッドにお考えになるのはよくわかるんです。
 ただ、それとちょっと離れて、「人身売買」というのを象徴的な言葉として使って、売買には必ずしも厳密な意味の売買の ほかに欺罔などまで含む。それで、コントロールするものも含むというふうに定義をしながら、ただ国民一般にアピールし ていく言葉としてはトラフィッキングに対しての訳語としては「人身売買」が一番私は似つかわしいというか、いろいろな施 策にとっても使いやすい言葉で、それは決してマイナスになることはないのではないかと考えるんです。ただ、厳密に言葉 を扱う役所としては抵抗感はあると思いますが、そこは告知をするという形で何とか納得していただけないかという感じが します。

○住田委員 私は余り言葉にはこだわりたくなかったんですけれども、少なくとも片仮名よりは日本語にして、ある程度共 通の用語として使っていくということは賛成です。
 「人身売買」かどうかということですが、私は「売買」だけだと通常の典型契約の売買契約を想定しがちですので、「人身 売買」というような言葉をつくってしまえば非典型契約としての、こういう概念を含んだものとして定義付けられると思いま す。その中で特に大事なのは性の売買ということで、それが今までの売春とちょっと違った意味合いと思います。そして、 国外からの輸送ということもそこに込められるのではないかという感じがします。

○大津委員 「人身売買」というふうにしていただいた方が、よりわかりやすい。というのは、私たちの関係の中でもトラ フィッキングという言葉を使ったときにはそれは一体何ですかという答えが必ず返ってくる。ですから、例えば国際的な中 で使う必要があるならば「人身売買(トラフィッキング)」というふうな形でしていただきたいと思います。

○原会長代理 ホームページや何かで出すときには、日本語の人身売買(トラフィッキング)とするならばするで、そのこ とはこういうことを意味しますということをやはり1回ごとに書いてホームページで出すとか、ここで使う定義というのを次回 にでも言葉を練るというふうなことをすればいかがでしょうか。

○島野会長 それで、その際に被害者は外国人に限定しないニュアンスが注釈に出た方がよろしいわけでしょうか。余り そこら辺は限定的でない方がいいということでしょうか。

○小西委員 やはりきちんと説明していただく必要があると思うんです。というのは、私もこのことについては本当に素人 でよくわからないんですけれども、それでも「人身売買」というものがあるよと説明したときに返ってくる反応というのは、「ト ラフィッキング」と言えば多分それなりにと言われますが、「人身売買」と言うと、そんなの日本にあるのと言われて、例え ばアジアの女性のことなどを話すと、でもそれは契約でしょうと。今まであった議論の本当に非常に蒸し返しになりますけ れども、そこのところから一部の外国人の問題じゃないんだということも含めてかなり詳しく書いていただかないと、それで 定着していけば括弧いわゆる人身売買になっていけばいいんじゃないかと、それは伺ってとても納得したんですが、最初 のところで是非丁寧にやってもらわないとちょっとまずいのではないかという気がしました。

○大津委員 日本人の方が外国の女性と同じように借金という形とか、強制的にとか、管理されてというようなケースはあ るんでしょうか。前借金というのか、架空の借金という形で課せられる事例があるのでしょうか。

○垣見委員 日本人も同じような被害に遭っている場合があります。被害者は誘われて東京の風俗店に働くという約束を 一旦したのですが、結局断ったんです。それに対して、店が開店出来なくなったため損害が発生したので、損害金を支払 えと言われて、地方の売春施設に売られてしまったとのケースで、関係者は恐かつ罪容疑及び売春防止法容疑で逮捕さ れ起訴されました。
 私はトラフィッキング自体を案件として扱ったことはありませんけれども、トラフィッキングについての説明を伺うと、外国 から騙されて連れて来られるというところを除けば、風俗営業の管理の問題、あるいは売春防止法の問題など、日本人が 被害者の事案と共通する部分が多いと思います。

○住田委員 何年か前に経験した案件ですが、家出少女を、暴力団がある人から権利として買って性風俗店で働かせて いた、組織的にやっていたというものです。ああいう形態であれば今でもあり得るだろう、表に出るか出ないかだけの違い だろうなというふうな気がします。

○坂東局長 一応「人身売買」という言葉を使おうということでコンセンサスができたと思いますけれども、その場合、女性 の人身売買というふうに限定する必要はないでしょうか。トラフィッキング自体は先ほどからもお話が出ているようにもっと 範囲が広いわけですが、今ここで議論しようとしているのは女性の人身売買なんだと。その「女性の」というのを付けます か。

○島野会長 「女性の売春のための人身売買」と言うか。ちょっと長過ぎますか。

○大津委員 配偶者暴力防止法でも、配偶者というのは男性も女性も入っております。しかし、多くは女性が暴力を受け ていますから、この場合も同じように人身売買の場合には多くは女性が売買されているということになりますと、やはり女 性というのを入れていただかなくてもよいのではないでしょうか。

○島野会長 大津さんのおっしゃった「売春を意味する」という言葉は使わなくていいですか。

○大津委員 それは私は使った方が、よりはっきりするかなと思いますけれども、それを1行で書かなければならないとな ると。

○坂東局長 日ごろ、これからずっといろいろ使っていくときに定義をするときに、その定義の中にも「女性の」というのを入 れてしまうのか、それとも外へ出しておくのか。

○前田委員 もう一度整理していただいたわけですけれども、今度の議定書云々というような議論をするときのトラフィッ キングの訳としては、これは男女両方入りますよね。それで、恐らく世間でひとつ大きな動きとしては、この議定書をめぐっ ての動きというのが出てくると思うんです。そのときにもやはり広い意味で、ただそれに「人身売買」という訳を少なくともこ こで当てるということは全く問題ないと思います。
 それで、ここでの議論としては女性に対しての暴力の観点からそこに働きかけるなり、いろいろな議論を積み重ねてい く。そのときには女性の問題に絞るというのはいいわけですが、トラフィッキングの訳としてはやはり「女性の」は付けなくて もいいわけですね。それで一般的に使っておく。
 ただ、この委員会としては特にトラフィッキングの中で、女性が特に売春を中心にして被害に遭うものについて議論しま しょうと。それに関して具体的にこういう施策が必要ではないかとか提案をして、ただ、最終的に施策をつくるときにはここ から女性の側の光が当てられた論点があるでしょうが、総合的にほかの問題も含めてもうちょっと広いものに広げますと いうのはありだと思うんです。ですから、言葉として私は「女性の」というのは付けておかない方がかえって混乱しないん じゃないかという感じがしたんです。

○北村委員 蒸し返すようですけれども、密輸というイメージが国内における移動というか、こういう理解がどうも得られな いんですけれども、トランスファーという意味で国内でもあると。それはよくわかるんですけれども、密輸というイメージか らするとどうも外から日本に連れて来られるという、このトラフィッキングというのはむしろそちらの方が重視されるべきで あって、国内における問題というのは売買春の問題で扱うということにはならないんでしょうか。
 要するに、外国人に限ることではないという、これは当然だろうと思います。しかし、トラフィッキングという言葉からイメー ジするものは、外から日本に連れて来られるというイメージであって、国内における日本の女性の問題というのは売買春 というところでくくられるんじゃないんですか。

○島野会長 御指摘の点はわかりました。また整理していくときにそこをどう注記していくかというところで決めていきたいと 思います。
 それで、各段階ごとにどのような対策が必要か。「送り出し国における対策」、「入国時の対策」、「受入者(暴力団等)へ の対策」、「風俗店経営者等への対策」、「被害外国人女性への対策」、これらはまさに今の北村委員のおっしゃった、外 国人が外国から日本に連れて来られるということを想定した対策にはなっているんですが、これらのことについて御意見 を承りたいと思います。

○原会長代理 先ほどから日本の国内にもこのような現象はあるということで、一番初めの「送り出し国における対策」と 「入国時の対策」、これは外国から来る人たちのことですけれども、この先の「受入者への対策」からあとの項目について は日本の人にも該当し得るわけです。外国人だけではなくて被害日本人女性の対策とか、それから在日外国人でその被 害に遭った方はやはり外国人というふうに言っていいのかとは思うんです。だから、被害外国人以外の女性への対策とい うのもとりあえずは入れて考えるようにしておく方がいいのではと思います。

○林委員 先ほど北村委員が言われたことに関係するんですけれども、人身売買に関しては特に今日御報告のあった 議定書の関連で言うと、国としての施策の非常に大きな部分は入管体制に関わる部分が大きいわけです。被害者をただ 強制送還して終わりということではなくて訴追の権利を与えなさいとか、心理的、精神的なケアをしなさいとか、場合によっ ては住居も保護しなさいというような議定書を、果たして日本政府が批准できるのかどうかというのは非常に大きな問題 だと思うんです。だから、そこのところはやはり外国人女性の問題だという認識を強く持っていないとぼけてしまうのではな いかという感じがします。

○小西委員 特に20歳以下の女の子で国内で人身売買に近いようなケースというのは私も結構聞くんです。決して珍しく ないし、家出の子というのが非常に多いし、性的虐待と絡んでいることも多い。それで、もしかしたらこれは児童虐待の方 で実質的な議論に持っていくということも可能なのかなと思います。

○垣見委員 先ほど日本にも例があると申し上げたのは、トラフィッキングの議論のときに日本人被害の例をベースに議 論していただきたいという意味ではありません。先ほどお話がありましたように受入者の対策、風俗店経営者への対策、 更に被害女性の対策等は共通するので、外国人対象の人身売買を対象に議論をしていく中で当然、日本人被害にかか る人身売買等への対策に進展して行くものと思います。日本人被害の事案に焦点を当てて議論をする必要があるという 趣旨の発言ではありませんことを申し上げておきます。

○島野会長 外国人に関する固有の問題がある。それで、この条約及びこの人の密輸議定書で外国人の保護とか、ア シストと書いてありますね。そういうものが一つの大きなテーマであることがぼやけないようにする必要があるという御指 摘は重要だと思います。それで、日本人も全く無視するのではなくて、言及していく必要があるかなという感じを受けます。
 それで、あとは<4>の国際組織犯罪条約及び人の密輸議定書の批准を早急に行うべきではないかということに関しては いかがですか。

○小西委員 入管関係に関わっている医者や、こういうケースを持っている人などと話をすることがあるんですが、言葉 の問題というのが非常に大きくて、診察してもPTSDかどうかもわからないし、特に英語がしゃべれない方の場合は私たち の方も全然きちんと聞けない。そこが一番大きなネックになっていることがあるんです。それで、いろいろなことを考えます と、その人の権利を守るとか、さっき言われていた訴追の権利を保証するためにも情報が行くことは非常に必要なわけで すけれども、現実にはHELPみたいなものは非常に少なくて、ほとんど何もなされていないケースが全国にたくさんあるの ではないかと思います。その対策としてまず1つは言葉の問題の実情というのを知りたいなということを思ったのですが、 ここでお話ししていいことかどうかと思いますが、現場としては、多分それで非常に困るだろうと思っています。

○大津委員 現場から言えることは、全国で人身売買の被害者を受け入れられるところは、民間の機関では九州、横浜、 東京ぐらいです。実際その人たちがHELPなどに直接来るということはできないんです。というのは、どういう形でだれが 背後にいるのかわからないので、逃げてきたいと言っても一応警察か、それから大使館を通して受け入れています。そう いう形でつながっていく人たちはまだラッキーで、シェルターというところで帰国までの間、過ごすことができるわけです。
 ただ、様々な国から送られてきている人たちのことはどのように来ているのか、なかなか見えてこない。(HELPでは主 にタイ人、コロンビア人、たまに中国人。)
タイ、フィリピン、コロンビアの大使館は今、積極的に人身売買に関して動いています。その人たちへの保護とその人たち の言葉の問題があり、通訳の必要性、健康、心の問題などを何とかしようと努力していますが、HELPにこられる人だけ でわずかな人のように思います。そこら辺が私たちでも歯がゆいところなんです。ですから、HELPに来られた人に関して は徹底的にケアをしていくということで受け入れる。しかし、そのための輸送費というのは一切どこからも出ない。ですか ら、帰国費に関しては日本が一切出していません。どこからも出ない人に関しては、お金のない民間シェルターが宿泊費 はもちろん医療費、帰国費まで出すことがあります。国としてその責任を負っていただきたいと思います。

○若林委員 先ほど会長が言われたように、問題が非常に裾野が広くて多いわけですから、その点は焦点を絞らないと いけないと思うんです。その意味から、議定書の批准というのは時間的にもかなり差し迫った緊急を要する課題であるわ けですし、それから議定書の批准の効果というのは非常に強力なものがあると思います。それによって法整備が加速とい うこともありますし、行政的な整備もされるでしょうし、そういうメリットを考えますと、議定書の批准に向けて何が問題なの か、何が批准のネックなのかを洗い出す議論をするということが最も緊急を要し、重大ではないかと思います。

○住田委員 条約の批准と、それからそれに基づいての国内法の整備というのは、政府としては大変時間のかかる困難 な作業だというふうに私は考えております。今日も最初に法制審がどういう動きをしているかをお聞きしたんですけれど も、来年2003年の通常国会と言いながら今、法制審が全然動いていないというのはしようがないのでしょうか。そしてそれ が終わって初めて次の議定書に入るというようなことで、議定書にいけばまた法整備の話が次に出てくる、その前提とし てどうするかということすらまだ定まっていない。
 多分、条約関係、特に刑事法の条約関係については今後もそういう可能性はかなり高いと思います。そうしますと、条約 ができてから国内法整備を考えましょうなどというような政府のやり方を待つのではなく、この会では本当に今、必要なも のについてどういうふうな対策を講じるべきかというような提言を出すこと、特に大津委員や林委員がいらっしゃるわけで すから、そういう対策等の提言をするのが一番現実的かなという気がしているんですけれども、いかがでしょうか。
 要するに、<4>の批准を早急に行うべきであるが、これとは切り離して国際的にも我が国の立場としてきちんとしたポジ ションをとるためにもそういうふうな提言をする、今、緊急に必要な法整備をこのようにしてほしいというような意見を出す 方が私はよろしいんじゃないかと思っています。
 それからもう一点、そのときにこの必要性について性の問題だけ言いますと、売春そのものについても犯罪化について は疑義が生じている中で、特に外国人の問題についてきちんと一回認識しておく必要があると思います。今日そのお話が 当然の前提として出てこなかったんですけれども、外国人については、男女差別、女性という性の差別の上に情報が少な く、いろいろな意味での交渉力が弱く、それからこちらに来るために経済的な問題を抱えており、保護すべき弱者であると いう視点が根底にある。それに対して保護すべきである、救済すべきであるという声が挙げにくい中で、やはり国際的な 中では日本はそれではまずいんだというようなことをまずきちんと言って、その上でそれに基づいてどういう対策を講じる かという理念、目的を挙げた上で、その次の手段に移るのが私は順番ではないかなという気がしております。

○島野会長 それでは、恐縮ですが、ここで10分間休憩をして、あとは売買春一般について自由討議を進めたいと思いま す。お疲れ様でした。

                 (休  憩)
                
○島野会長 それでは、再開いたします。
 女性のトラフィッキングに関する議論は、今日のところはいろいろな視点を示していただきました。説明者からの説明と皆 様方の御意見を出していただいたのですが、具体的な対策までに議論は至らなかったわけです。というのは、その前提と なる知識がまだ我々委員に不十分なところがあると思います。議定書の日本語訳も見てみたい感じもいたしますし、その ほかのこともありますので、そういう対策について議論をする。議論をするのも白紙の状態からするのではなくて、何かた たき台のようなものをつくって議論をするか等、会長、副会長、事務局に宿題としていただきたいと思います。
 そもそも今、進行しておりますこの専門調査会は、来年2003年の6月に女性に対する暴力について一通り議論をして、 そこの議論を要約して男女共同参画会議に報告をするというスケジュールの下に動いております。ですから、トラフィッキ ングに関してもう一回何らかの形で対策について協議するとしても、それだけを特別に出してどこかに報告するということ には今のところなっていないことも御留意いただきたいと思います。それで、今日は残りの時間がわずかになりましたけれ ども、売買春について今から討議をしていきたいと思います。
 まず初めに、内閣府から売買春の類型について説明があります。村上課長、お願いいたします。

○村上内閣府男女共同参画局推進課長 資料の4−1と書いてあります横の表になっているものをごらんいただきたいと 思います。
 「日本国内における売買春の類型について」の整理を試みました。国内における売買春についてですが、行為者として 児童とそれ以外で分けています。下の欄で、18歳未満の児童と児童以外で整理しています。それからまた、横軸では第 三者の強制の有無で分けております。それで、一番左側が第三者の強制のある場合、強制がない場合について更に第 三者の関与の有無で分けて、第三者の関与がある場合を更に第三者の管理下に入るかどうかで分けております。
 それぞれの類型について簡単に説明しますと、まず第三者の強制がある場合、表のAとBの類型です。女性を完全に管 理下に置きまして強制的に売春をさせるものです。先ほど原因について御紹介がございましたが、売春の代金について はほぼ全額が搾取されるようです。借金などが原因であることが多いということです。ここの例に親の借金の肩代わりで すとか、家出少女ですとか、人身売買の被害者であるとか、これが先ほどのトラフィッキングで話題になったものです。あ とは自己の借金返済というのもあります。
 次に、第三者の強制はないが関与がある場合です。第三者が提供する見知らぬ男女を結び付けることを目的とする施 設や制度を利用して売春の相手方を探すものです。それで、自らの意思で第三者の管理の下に入る場合、表のCとDの 場合ですけれども、この例としては、いわゆるホテトルだとかデートクラブと呼ばれているものがあります。
第三者の管理下に入らない表のEとFとしては、テレホンクラブ、インターネットなどを使う出会い系サイトなどを利用する ものがあります。
それから、一番右側に第三者の強制も関与もない場合、表のGとH、強制も関与もないような事例もあるようでありまし て、街頭における個人的売春勧誘などでございます。
 それから、国外における買春としましては、この表でまとめた国内の売買春の他に、日本人男性による海外における買 春という形態も存在いたします。
 その次のページに、自由討議の参考とするための議論のポイントを付けてあります。
まずポイントとしましては、<1>の「すべての類型を女性に対する暴力と位置付けることが適当か。」例えば、第三者の強制 がない場合、週刊誌などで話題になった一流企業のOLの売春というのがあったりしたわけですけれども、この場合はど う考えるか。
 それから、<2>の「各類型に共通の対策は何か。」買う側の男性の問題をどうするか、背後の社会問題を考慮することが 必要ではないかということ。
 3番目に「類型ごとに特有の対策はあるか。」
まず、第三者による売春の強制がある場合、これが一番問題ですが、関係法令による厳正な取締り以外に何か効果的 な対策は考えられるか。
第三者の強制はないが関与はある場合、真ん中の類型ですが、関与する第三者をどのように位置付けるか、強制なく売 春を行う女性の問題をどうするか。
それから、第三者による強制、関与がない場合、これは発見が困難ですが、対策は何かあるかというようなことです。
 児童買春については、国内の問題としては前回も大変話題になりましたが、「援助交際」というようなあいまいな用語を あえて使用する必要があるかどうか。それから、国外犯としては旅行会社などへのさらなる対策が必要かどうか。
このような点について、事務局が考えたたたき台ですけれども、御議論いただければと思っております。

○島野会長 それでは、続きまして自由討議に入ります。ひとまずこの議論のポイントに沿ってという形で御意見を承りた いと思います。
 まず<1>の「すべての類型を女性に対する暴力と位置付けることが適当か。」第三者の強制がない場合も暴力と位置付 けていいかということですが、いかがですか。

○瀬地山委員 これはかなり大幅に国の立場と私の意見の違うところですが、やはり全体を女性に対する暴力というふう に位置付けるというのは、自らの意思で働いている人がいるときにちょっとまずいのではないかと思っていまして、D、F、H に関しては女性に対する暴力というふうには考えない。それから、C、E、Gが18歳でいいのかという点については議論の 余地があって、でもどこかの年齢でいずれにせよやはりまずいというふうにしなければいけない問題だというふうに考えて います。私はそういう立場です。

○島野会長 自らの意思でそういう取引というか、売買春を行うということに暴力的要素がないと言い切ってしまいます か。そういう視点があるということはわかるんですけれども、本当に彼女の自由意思に基づいて行われているのであろう かということです。

○瀬地山委員 有形力の行使みたいな意味で暴力というものを使うのであれば、それはないケースの方が多いと言って いいと思うんです。それから広げて社会的な制約というふうになった場合には、それは当然あると思うんですが、逆に社 会的制約というのを条件に入れると、すべての職業選択は社会的制約を受けているわけで、売春のみを特別視する理由 はなくなるのではないか。つまり、お金がないからそういう産業で働くというのはよく言われる理由ですけれども、お金がな いから働くのは別の産業でもあり得ることで、ほかに就職先が限定されているというのもすべての職種においてそういうこ とが起きているわけで、そのことをもって強制があったというふうにとるのはやはり無理があるのではないか。逆に言うと、 それを強制だととるのであれば、すべての職業選択について強制が含まれるというような議論にならざるを得ないのでは ないかと私は考えています。

○島野会長 本人の自由意思に基づくと称するグルーピングの中の売買春という場面で、およそ暴力はないということで すね。

○瀬地山委員 当然身体接触を伴う労働ですから危険な労働であることは間違いなくて、そこで暴力が行われる瞬間が あるというのは当然というか、現実に起きていることで、暴力自体は取り締まるべきことであるというのは全く同感なんで すが、そのことと売春をするという経済行為自体を暴力ととらえるということとは違うということです。

○住田委員 最初に瀬地山先生がそれをおっしゃると思ったので、私はどういうポジションをとるかというのは非常に悩ん でおります。
 まず法律上、適法、違法という大きなくくりができますね。それは法律によって決まるわけで、そのときの社会的な背景、 国民意識に基づくものだというふうにまず考えます。その上で法律を除いたところで倫理的とか、社会的とか、道徳的と か、余り好きな言い方ではないんですけれども、その次のレベルで考えなくてはいけない問題があり、最初の段階が「容 認」、これが一番認めるということですね。その次は「黙認」、黙って認めるということ、その次に「放任」、放っておくという こと、認めはしないけれども、とにかく何もしない、手を掛けないということ。それらに対して、やはり放っておけないというこ とで「規制」する。それが倫理的規制か、道徳的規制かわかりませんが、少なくとも法律レベルではないところでの何らか のいけないことだというような段階が実はあると思うんです。
 それで、私は今どこにいるかというと「放任」に近いということを率直に申し上げたいと思います。しかし、社会的にも何ら かの形で望ましくないという風潮もある以上は、何らかの規制のようなものを考えなければいけないけれども、よくわから ないから放任しようという、すごく正直ですけれども、そこら辺なんです。
 そして「規制」するのであれば、社会的に呼び掛けるというような規制があり得るのかなと。そうしたら、本人に対する規 制ではない。本人に対しては、尊厳を持てるような形で、自分の生き方を大事にする生き方で、もっと大きな視点で、今は よくても将来どう思うかと、そういう意味での大きなところでの働きかけ、これは「規制」というより一種の働きかけかなと。 社会に対する呼び掛け、それが私にとっては一番近いポジションであるということを正直に申し上げます。

○瀬地山委員 これだと、Dでも今の売春防止法だと違法になるわけですから。

○住田委員 その視点をとりあえず外して、倫理的、社会的、道徳的にどう考えるかということです。法律とは別の視点で す。今の法律があるということは当然の前提です。

○林委員 言葉の使い方なんですけれども、売春防止法には「何人も売春をし、又はその相手方となってはならない。」と 書いてありますので、違法か合法かということで言えば違法だと思います。ただ、非犯罪化されていますので、犯罪化す るかどうかというところの議論だと思います。
 難しい問題ですけれども、私は今日トラフィッキングの方でお配りした資料に、9年前に、ある集まりで話をしたことをその 後、雑誌に頼まれて書いた原稿を入れているのですが、「売春防止法をめぐる問題点」という私のエッセイの中の129 ページのところで、これは国際文書で必ずと言っていいほど売春問題を論議する際に引用されるジャン・フェルナンド・ ローランというスイス人の学者の国連報告書がありますけれども、「売春において売り渡される人間性は、奴隷制におい て売り渡されるよりはるかに深刻である。なぜなら、奴隷が売り物にするのは労働力であって、性的交わりではないから である。」ということで、少なくとも1990年代の半ばまでの議論というのはこの特別報告者の報告に沿った形で議論されて きたと思います。
 ただ、北京会議の辺りから先ほど御紹介したようないろいろな新しいセックスワーカーの権利という人たちが出てきまし たので、クマラスワミ報告書などもその点は非常にごまかしていて、私から見るとトーンダウンした形で強制売春について だけ法律が介入するべきだという考え方で書かれています。私自身は今、瀬地山委員が言われたことにはくみしません ので、その次の130ページのところで、これは古い統計ですが、婦人相談員だった兼松左知子さんが1971年に新宿区の 売春女性の調査をした報告書が単行本で出ています。その中で、売春をやめられない理由に同居男性の存在を挙げる 人というのが60%いるわけです。そうすると、こういうものを強制じゃないからと言っていいのかどうか。やはりそこは自由 意思だと言いながら、自分のパートナーが売春をするのを放置している男性というのは一体どういう人なんだろうかと思う んです。
 結論から言うと、私は犯罪化自体には今の法律をあえて変えてまで単純売春を処罰するような法改正というのは必要 ないと思いますけれども、違法だというラインは今の法律でも違法とされているわけですので、はっきりさせていきたいと 思っています。

○前田委員 私は大体、林先生と同じような感覚なんですけれども、ここでグルーピングしていただいのは非常にわかり やすくなったと思うんですが、やはり第三者の強制があるようなものについて刑事罰が残っていくというのは当然だと思う し、だんだん軽いものについて、要するに処罰から外していって、しかも売春防止法で原則違法だと宣言することも外す べきだという議論もあり得ないことはないと思うんです。完全に同意の下でという議論はですね。
 それで、刑法学者の論文も林先生の引いた129ページに大先生の論文が引いてあるので単純売春はやはり処罰すべ きでないというのは理論的根拠があるんだという議論はあるんですけれども、これはやはり最後は国民が決める問題で、 この議論というのは大麻の自己使用だって自分が体が悪くなっても勝手なので処罰すべきでないというときと同じ議論な んです。その結果、アメリカなどで一番はやったその議論はどうなったかといったら麻薬国家になってしまった。もちろん それでも大麻を使った人が不幸になったかどうかというのは別かという議論はあると思うんですけれども、1つは自分で やるのと、それからそれに対して関与するのとは違って、関与するのは処罰していっていいというか、少なくとも処罰まで いかなくても規制していい。自殺するのは自由だけれども、自殺させたら処罰するというのは、いろいろ議論はありますけ れども、やはり国民の常識から言ってそんなにおかしくない法律だと思うんです。
 薬物を吸わせるのは吸う人間より重い。それはいいと思うんですが、純粋に売春をするだけでどういう害があるか。法 益侵害と言ってもいいんですけれども、何があるか。従来は、ずっと戦後の日本社会はどんどん法益侵害でないものは 処罰しなくていい。苦しむのも含めて個人の自己決定だという議論をしてきたんですけれども、それだけで割り切れるかと いうところなんです。やはり売春によって損なわれる自分の生き方で、それを外から見て規定してマイナスじゃないかと か、さっきの男がいるからやらなければいけない現状をどう見るかとか、いろいろなことがあると思うんですが、私は少なく ともいわゆる売春自体を処罰する必要が今の段階であるとは申し上げないんだけれども、だからといって正しい行為だと いうところまで評価するのは難しい。やはり現状の売春は違法な行為である。単純売春も違法な行為であるという線は維 持して、それに対して影響を及ぼすようなホテトルだとかテートクラブその他、そういうものを強制ではなくて、より誘発す るようなものも含めて、より規制を厳しくしていく。まして児童に対しての規制は厳しくしていくというのが現状のスタンスか ら言って常識的な線だし、大きな流れからいってそういう自己の倫理とか道徳の問題に法律が入り込んでいく方向に私は むしろ21世紀は動いていくんじゃないか。ここは個人の意見ですけれども、そうしないと社会の維持が非常に難しくなるん じゃないかという感覚を持っています。
 いずれにせよ、結論としては林先生がおっしゃったのとほとんど同じことなんですが、第三者の関与なしの単純売春は 違法である。けれども、刑事罰をそこまで広げる必要はない。ただ、買う側の男性に関してはもう一歩突っ込んだ規制み たいなものを、刑事罰ということではないと思うんですけれども、何か考えなければいけない可能性は買春ツアーなどの 問題を聞いていますとあるということなんですが、基本的なスタンスはそういうことです。

○小西委員 法律というのはすごい恐ろしいものだと思います。確かに自由意思のあるなしときっちり分けられればこうな ると思うんだけれども、例えば第三者の関与なしのHに入る人たちの実情というのは決して本当に自由にやっているとい うことではないし、非常に個人の健康を損ねていますよね。私は売春をしていて自分の健康を損ねていない人、精神的健 康も含めて、そういう人に会ったことがないです。個人の経験でこんなことを言うのはいけないかもしれませんけれども。
 けれども、少なくともそこで理念的に正しいところでこの法律を設定した場合に、恐らく起こってくることの影響も考えなく てはいけないのではないかと思うんです。それで、もし実態に合わせて法律を有効につくろうと思うならば、恐らく日本でそ ういう法律をつくった場合の影響がどういう形で出るのか。それは考えないといけないと思うんです。だから、余り理念的 に走ってしまってはいけないのではないかと思っているというのが私の気持ちです。

○北村委員 性をテーマにいろいろ仕事をしている側から言うと、買う男を擁護するつもりは全くないんですけれども、大 人の女性とつき合い、関わり、セックスをすることができないという男たちが実は現実に非常に目立つんです。そういう男 たちがある部分、恐らく金による支配によってのみしかいわゆる性行為を果たし得ないという事実があるんです。これは 男性に限らないことかもしれません。女性にも当然あるわけですが、この辺りの性をめぐる問題をどうとらえていくのかと いうのは、ひとつやはり視点として失ってはいけないだろうという気がするんです。
 買う買わないという意味では男だけではなくて、実は女性にもあるんです。
 それは一体どういう背景で、いわゆるまともな大人関係というか、大人同士の付き合いができないのかという、この辺り の分析がまだ十分できていないと思いますけれども、非常に短絡的に言えば社会の中で受ける種々さまざまなストレス、 そういうようなものもその一因として十分考えられることだろうと思います。

○小西委員 今の北村先生の議論というのは、そういうことがあるのはわかっているんですけれども、要するにそれは買 う側にもさまざまな事情があり、それは売る側にもさまざまな事情があるということと対比されるべきです。買う側にもさま ざまな事情があって需要があるというときに、それに対応する方は自由意思だからいいじゃないかという一種の人間が非 常に強くて理想的に選択できるということで、セックスワーカー論は私にはそのように聞こえるんです。強者の理論のよう に聞こえるのですが、片方にそれを使い、片方にそういう弱者の事情というのを言う。そこのところは問題があるように私 は思うんです。

○北村委員 つい数日前の朝日新聞報道で、高知県の小学6年生の女の子の売春、それを買う男たちということが話題 になっていましたけれども、多くは既婚者だろうと思います。

○小谷委員 この専門調査会で問題にしなければいけないのは、一番大事なA、B、C、D、E、Fと、この辺だろうと思うん です。売春防止法の何人も売買春をしてはいかぬという日本では道徳的な部分まで踏み込んだ規定がありますが、一般 的に世界の大都市では、G、Hなどというところは野放しになっているところが多いわけです。そういうところはむしろ日本 は非常に厳しいにもかかわらず、「援助交際」とか、今の話の小学生の売春みたいなものが放任されている。こういう国と いうのは非常に少ない気がするんです。やはり重点的にやっていかなければいけないので、先ほどの外国から連れてき てしまうとか、国内にも昔からいろいろな古い制度が残っていて、そういうものは確かにあるんだけれども、その部分よりも むしろ新たに出ている、ダンサーとか歌手になれるよとだまして連れてきて売春を強要するような、こういう部分が一番の 問題なわけです。
 要するに今G、Hの境界を議論しても私は余り意味がないというか、余りにも専門的な話であるので、強制のある場合に 本当に効果的な対策はどういうことがあるのかとか、関与の場合の法的な処罰の問題とか、もう少しそういうところに踏み 込んで議論をしないといけないような気がします。

○住田委員 前の男女共同参画審議会の暴力部会のときに、違法であるということ、そして、そのときはそれ以上踏み込 んで議論しなかった、そして今の林委員の御結論と同様のものになったわけなので、私はそれはそれで良かったと思って います。
違法ということはそうなんですけれども、女性に対して良い悪いは余り言いたくないなというのが本音です。それで「放任」 に近いという言葉が出たわけなんです。それに対して倫理的にあなたは間違っていますということを成人女性に対してあ まりいう必要はないのではないかと思います。
 それから今、小西先生は、こういう女性に対して皆さん傷ついているとおっしゃいましたが、私は逆に離婚の相談などで 主婦の生の話を聞いてみますと、彼もやったから私もやってお小遣いをもらっちゃってどこがいけないのと、非常に明るい んですね。そういうのを見ていると、よけい何も言えなくなってしまうわけです。暴力団も介在しないでお友達グループなど で紹介し合っているという話もやはりありました。そういうのはなかなか表に出てこないわけなんですけれども、そういう実 態を見ますと国民の意識というのはいいか悪いかはともかくとして大分変わってきていることは間違いないなと思っていま す。
 最後になりますが、この専門調査会の前の審議会がそもそもこういう売買春の関係で始まっています。女性運動の中 で売春防止法が制定されたいきさつを考えますと、そこはきちんと大事に置いておかなくてはいけない部分かなというふう な気がしています。

○瀬地山委員 関与しなくていいのかということと関わるんですけれども、2点あって、1点目は私は国民が性道徳を共有 する必要はないというふうに考えるんです。20代の女性と60代の女性が性道徳を共有するのは私は不可能だし、不要だ と考えます。ですから保護法益が道徳になるというのは私はまずいと思っているんですけれども、道徳を共有していなくて も暴力を減らせるような手立てが必要なのです。そして、それがまさに自己決定がきちんと保証されているのかということ に関するチェックを幾つもきちんと設けておくことだと思うんです。私は決して放任して勝手にやればいいと言っているので はなくて、自己決定が担保されるために幾つかのプロセスがあって、それをきちんと確認するものが必要だというふうに 考えているんです。
 それが1点と、もう一点は、私はどちらかというと単に非犯罪化すればいいというふうには考えていなくて、実際に暴力が 起きることはあるわけで、そのときにきちんと警察が入れるような仕組みが必要で、現在は産業自体が認められていない ために業者は通報しなくて、そのことがやくざを後ろに置く。つまり、何か暴力があったときに守ってくれるのは今は警察で はなくてやくざになっているわけです。そちらのことの方が問題で、それを解決するためにはやはり産業として認知をして、 認知はしなくてもいいのかもしれませんが、少なくとも暴力はどういうケースであれ暴力なのであって、そのことについては まさに警察がきちんと介入できるというようなシステムをつくってほしい。今やらなければいけないのは、現実に起きている 暴力を一つでも減らすということに関するピースミールな具体的な取組だと思っています。

○島野会長 それでは、<3>の「類型ごとに特有の対策はあるか」という中の第三者による売春の強制がある場合、関係 法令による厳正な取締り以外に、何か効果的な対策は考えられるか。

○林委員 <2>の買う側の男性の問題にちょっと戻ってしまう面があるんですけれども、今の単純売春であっても女性の方 は要保護女子という烙印を押されれば保護処分の対象にはなるわけですね。それで、買う側の男性は刑事罰も受けない し、保護処分も受けないわけですね。私が先ほどエッセイで指摘したのはその点なんですけれども、買う側の男性に対し て刑事罰ではなくてもう少し何か介入する方法があるんじゃないかということはNGOの間では言われながら、だれも取組 をしないままに終わっているわけです。だから、今まさに児童虐待ですとかドメスティックバイオレンスについても加害者と いうか、男性に対してどう取り組んでいくかということが大きな課題になっていますので、本当は男性への介入ということ、 第三者が介入するしないにかかわらずということをもう少しこの調査会で議論できればいいのではないかと思いました。

○住田委員 結局、瀬地山委員も問題視しておられるのは、暴力が介在してくる危険性があるものであるということです。 確かに売春は私の感じでいきますと組織的なものはほとんどやくざのつながりがあるというふうに言い切っていいのでは ないかと思っています。そうしますと、それに対しては厳正な取締り以外には効果的な手段はないと思っています。そのた めには、取締り側にもっと女性が入って、いろいろな女性の視点からの情報が入っていくというふうな形で実際に女性の 救済手段と結び付くということが望ましいと思っています。
 それで、実際に警察でこういう防犯とか、売春防止法とか、風適法とかの担当をしている部署にどのくらいの女性がい らっしゃるかを是非調べていただきまして、それは今後各部署に1人ずつでも配置されることが必要だと思っています。

○島野会長 では次の、強制はないが第三者の関与がある、こういう場合、関与する第三者をどのように位置付けるか。 小谷委員はA、BあるいはA、C、E、Gという問題であって、ここまで余り入らなくていいという御意見ですか。

○小谷委員 それは必要だと思います。入ってもらうのはいいと思うんですけれども、そういう意味で言ったのではなくて、 優先順位を与えるべきはAとかCとかEとか、上の児童の部分が大きい。それから、強制のF、D、Bとだんだん濃度が濃く なってくるんですよということだけでありまして、これらは取締りの強化もすべきです。暴力団関与のものは一般の住民の 人から摘発に協力を得られるかといってもほとんど別世界で接触できないわけですからわからないんだけれども、とにか く駆け込んで逃げてくる人を受け入れるような体制が先ほど東京・横浜そのほか幾らもないお話がありましたけれども、 手を打つべきはそういう面ですね。
 それからもう一つは、特定の国の名前を出した店ですね。何とか国パブと書いてあるような店は、通常の日本人のホス テスでは考えられないぐらいの差別的なことを中ではやっているわけです。当然そのホステスは売春を強要されている ケースが多い。そういうところへ行く理由はいろいろなことを言われている。嫁不足ですとか、そういうことと関連して同情 的に言われることもあるんです。これは地方の中都市ぐらいのところが多いんですね。実際にはひどいことをやっている んだという認識がないと、周りも中身をよく知らないものだから許してしまうところがあって、こういうところが近所にできたこ と自体が問題だという意識で住民も取り組まなければいけないと私は思います。
 そういう意味で、この第三者のホテトルとかデートクラブとかテレホンクラブとか、この辺は私は実態を余りよく知りませ んけれども、一見当事者同士の恋愛行為を装うというのは見え見えなわけで、こんなものをきちんと区別する必要もない ような気もするんです。もともとそういう不純な動機で始めるわけで、人の勝手な恋愛行為を助ける、そんな奇特な商売 あるはずもないわけで、当然売買春を想定していることは明らかなんです。それを法的に取り締まろうとするとなかなか大 変だけれども、これもそういう周辺の人たちがどういうことを実際にやっているんだと関心を持つべきです。
 それと、ひどいのはビラですよね。この数たるやすごい数で、渋谷だの新宿だのの商店主に聞いてもらえばわかるけれ ども、これはすさまじい数をまくわけです。こういうことから本当にあんなビラを、公衆電話をかけようとする人たちや外国 人などが見れば、どんな国なんだろうと思いますね。その辺が非常に恥ずかしいわけで、何とかならないかなといつも思 います。

○小西委員 第三者の関与なしのところで私がどうしても引っ掛かってしまうのは、DVのモデルなどを考えたときに、や はり逃れられないし、本人もそう思っていないんだけれども、非常に暴力を激しく受けている人がいるわけですね。そういう 人に対して通報ということに関しては今回、法律の中に規定があるわけです。
 そのことを考えると、例えばこれを売春する方から見ないで買う方の暴力性とか、買う方だけではなくてそれを提供する 方のさまざまな強制とか、そういう権利の問題から分類するということはできないんですか。要するに、売春防止法はDV や児童虐待防止法のような被害者の権利を守る法律と全然違う枠組みでできているので、私などは非常に混乱してしま うんだと思うんです。むしろ女性への暴力という観点で言うのであれば、売春と言われているその行為全体についてもう 少し加害者の暴力という点から、従来の自由意思ということではなくて分類するなどということはできないんでしょうか。

○瀬地山委員 単純な暴力というものに限らずに、第三者の強制がない場合に関しては合意をされていないような行為に ついてすべて何らかの形で問題視するというような方策が必要だと思うのです。一番具体的に多いのはコンドームの装 着で、店の規定とかでは一応付けることになっているんだけれども、客の圧力でそれが付けられないとかというような事 例があって、その客の圧力がかかるのは大体無許可店、いわゆる許可がないところで、つまり警察が怖いために客の圧 力に負けてしまうようなケースがよくあるとかいうことが言われるんですね。ですので、やはり合意されていない行為、セッ クスワーカーの側が合意していない行為というのはすべて犯罪行為であるというふうな立場で介入ができるようになると 私は一番いいと思っています。

○原会長代理 男女共同参画基本計画の64ページに「女性に対するあらゆる暴力の根絶」というのがございますね。結 局、私たちの専門調査会は幾つかのトピックスに関して作業をして、ここに書かれている基本計画を一歩進めるには今後 どういうことをしなければいけないかということを今後の報告書ではまとめるということになるのか、それとも、全然新しい視 点で何か出すということになるのでしょうか。

○島野会長 2つあると思います。今おっしゃったこと、それは例えば配偶者暴力防止法ができてこれを円滑に施行する ためにどうかというのはそれに入ると思いますけれども、この基本計画自体の見直し等も予定されていますから、新しい ものも入ってきていけないはずがないと考えますが、今やっているのは来年2003年の6月ごろにこの新しい委員で女性 に対する暴力全体を見直して整理して報告書を出そうとしているんです。
 基本計画を主にしますけれども、ものすごく欠落している部分があったら素通りというわけにはいかないと思います。

○林委員 今、原先生が言われたことに関連すると75ページ、今の基本計画で言うと売買春に関して3点あるうち2つと いうのはどちらかというと女性対策ですね。それから、やはり買春男性への介入ということが全然抜けているのでそれは 新しい論点として入れていただきたいというのが私の意見です。

○島野会長 では、とりあえず今日の検討はこれで終わらせていただきます。
そこで、資料5を御覧ください。事務局に第13回専門調査会の議事録案をまとめていただきましたが、これにつきましては このとおり決定し、内閣府のホームページ等で公開することとさせていただいてよろしいでしょうか。
[異議なし]
 それでは、第13回の議事録につきましては速やかに公開することといたします。
 次回以降の専門調査会の日程につきましては、事務局より既にお知らせしておりますが、ヒアリングや検討などを十分 に行うという観点から、それぞれ時間を3時間に延長してはどうかと思いますけれども、皆様いかがでございましょうか。
[異議なし]
それでは、次回以降しばらく3時間に時間を延長して会議を開催することといたします。大変と思いますが、御協力をお願 いいたします。
次回の専門調査会は9月2日(月)14時から17時で開催することといたします。
それでは、これで女性に対する暴力に関する専門調査会の第14回会合を終わりにいたします。本日はどうもありがとうご ざいました。

「(以上)」