第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

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第10章 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備

第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

(働きたい人が働きやすい中立的な税制・社会保障制度・慣行)

税制に関しては,平成29(2017)年度税制改正における配偶者控除等の見直しについて,平成30(2018)年分の所得税から適用されている。

社会保障制度については,厚生労働省では,適用拡大が短時間労働者の働き方や企業経営に与える影響を踏まえつつ,公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律附則第2条に基づき,令和元(2019)年9月末に向けて検討していく(第2章第5節参照)。

民間企業における配偶者手当については,「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について引き続き広く周知を図り,労使に対しその在り方の検討を促していく。

旧姓使用の拡大に向けて,総務省では,希望する者に係る住民票やマイナンバーカード等への旧姓併記が可能となるよう,関係法令の改正を行った(令和元(2019)年11月5日施行)。

外務省では,旅券について,令和元(2019)年度を目途に,本人からの届出によりの旧姓併記が可能となるよう,検討を進める。

また,政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響等について,調査検討を行う。

(男女の多様な選択を可能とする育児・介護の支援基盤の整備)

政府は,「少子化社会対策大綱」(平成27年3月閣議決定)に基づき,子育て支援施策を一層充実させるとともに,同大綱の見直しを行い,令和元(2019)年度中に新たな大綱策定を目指している。

子ども・子育て支援新制度においては,小規模保育等,地域のニーズに応じた幅広い子育て支援分野において,子供が健やかに成長できる環境や体制が確保されるよう,その担い手を確保する必要があることから,育児経験豊かな地域の人材を対象として,保育や子育て支援分野の各事業等に従事するために必要となる知識や技能等を習得する子育て支援員研修事業を実施するとともに,それら支援の担い手の資質向上等を目的として,職員の資質向上・人材確保等研修事業及び指導者養成等研修事業を実施する。加えて,保育士等の処遇改善として,平成30年人事院勧告に準拠した,0.8%の処遇改善を実施するとともに,平成31(2019)年4月から更なる1%(月3,000円相当)の処遇改善を実施する。

女性の就業率の上昇や,保育の利用申込者数の伸びが加速している中,平成29(2017)年6月に公表した「子育て安心プラン」に基づき,令和2(2020)年度末までの3年間で女性就業率80%に対応できる約32万人分の保育の受け皿の整備を進めている。

加えて,保育の受け皿拡大に伴い必要となる保育人材の確保のため,処遇改善や新規資格取得者の確保,就業継続支援,離職者の再就職支援など,引き続き総合的な対策を講じる。

また,内閣府・文部科学省・厚生労働省では,幼児教育・保育に係る保護者負担の軽減を段階的に推進してきたところだが,令和元(2019)年10月からこれまで段階的に推進してきた取組を一気に加速し,3歳から5歳までの子供及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供についての幼稚園,保育園,認定こども園等の費用を無償化することとしている。

厚生労働省と文部科学省は,共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに,次代を担う人材を育成するため,平成30(2018)年9月に「新・放課後子ども総合プラン」を策定した。「新・放課後子ども総合プラン」では,令和3(2021)年度末までに計約25万人分の受け皿を整備し,待機児童解消を目指し,その後も女性就業率の上昇を踏まえ令和5(2023)年度末までに計約30万人分の受け皿を整備する。また,全ての小学校区で,放課後児童クラブと放課後子供教室を一体的に又は連携して実施し,うち小学校内で一体型として1万箇所以上で実施することを目指している。そして,基本的な生活習慣づけや異年齢児童等との関わりを通して,自主性,社会性を身につけられる場として放課後児童クラブを位置づけ,今後,放課後児童クラブでこうした役割が実行されるよう支援していく。令和元(2019)年度は,放課後児童クラブについて,施設整備費の国の補助率を1/3から2/3への引上げを継続するとともに,放課後児童支援員等の処遇改善などの人材確保対策等を推進することとしている。

厚生労働省では,子育て家庭等の不安感や負担感を軽減するため,子育て親子が気軽に集い,交流することができ,子育てに関する相談・援助を行う場の提供や地域の子育て関連情報の提供,子育て及び子育て支援に関する講習を行う「地域子育て支援拠点事業」を促進し,令和元(2019)年度末までに8,000か所での実施を目指す。

子ども・子育て支援の推進に当たって,子ども及びその保護者等,又は妊産婦がその選択に基づき,教育・保育・保健その他の子育て支援を円滑に利用できるよう,情報提供及び相談・助言等を行うとともに,関係機関との連絡調整等を行う「利用者支援事業」(基本型・特定型)を促進し,令和元(2019)年度末までに1,800か所の実施を目指す。

厚生労働省では,高齢化が一層進展する我が国において,介護保険制度が将来にわたり国民生活の安心を支え続けることができるよう,介護保険法(平成9年法律第123号)の着実な実施を図る。

また,全国の主要なハローワークに設置された「人材確保対策コーナー」において,福祉分野等のきめ細かな職業相談・職業紹介,求人者への助言,指導等を実施するとともに,支援を一層充実させるため,事業拠点の拡大等を行う。

介護人材の確保のため,介護に関する入門的研修を受講した者等に対する職場体験や,介護施設,介護事業所への出前研修の実施に対する支援などを地域医療介護総合確保基金に新たに位置付ける。また,介護職の魅力や社会的評価の向上を図り,介護分野への参入を促進するため,介護を知るための体験型イベントの開催や,介護助手等多様な人材の参入を促し,機能分化による介護の提供体制や,地域の事業者間・他職種連携による介護業務効率等について,先駆的に実施される取組を支援し,その全国展開を図るなど,多様な人材の確保等に向けた取組を推進する。

さらに,介護労働者の雇用管理改善を促進する「介護雇用管理改善等計画」(平成27年厚生労働省告示第267号)に基づき,介護労働者の身体的負担の軽減に資する介護福祉機器を導入した事業主や,賃金制度の整備等を行った事業主への助成,介護労働安定センターによる雇用管理改善の相談援助及び実践力を備えた介護人材の育成を図るための介護労働講習を実施する。また,介護労働者の雇用管理全般に関する雇用管理責任者への講習に加え,介護事業所の雇用管理改善に係る好事例把握やコンサルティング等を行う事業を引き続き実施する。国民が可能な限り住み慣れた地域で暮らすことができるよう,地域包括ケアシステムの実現を目指す。

また,改正後の育児・介護休業法に基づき,子が2歳に達するまで育児休業の延長を可能とする等の制度について,周知徹底を図る。

国土交通省では,公的賃貸住宅等における保育所等の子育て支援施設の一体的整備や,既存の公営住宅や改良住宅の大規模な改修と併せて子育て支援施設等の生活支援施設の導入を図る取組への支援,職住近接で子育てしやすい都心居住,街なか居住を実現するため,良質な住宅供給や良好な住宅市街地等の環境整備を行う。

さらに,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備,無電柱化,交通安全施設等の整備を推進するほか,公共交通機関,公共施設等におけるバリアフリー化を踏まえ,ベビーカーの利用等,子育てしやすい環境づくりに向けた取組を行う。

加えて,全国の高速道路のサービスエリア及び国が整備した「道の駅」において,概ね3年以内に,24時間利用可能なベビーコーナーの設置,屋根付きの優先駐車スペースの確保等を完了させるなど,高速道路のサービスエリアや「道の駅」における子育て応援の取組みを推進する。

消費者庁では,「不慮の事故」が子供の死因の上位を占めている現状を踏まえ,「子どもを事故から守る!プロジェクト」を推進し,子供の事故防止に取組む。具体的には,保護者等に向けた注意喚起を行うとともに,事故予防の注意点などを「子ども安全メールfrom消費者庁」や「消費者庁 子どもを事故から守る!公式ツイッター」で発信する。そのほか,各地の子供関連イベントに積極的に参加するなど,子供の不慮の事故予防に関する啓発活動も行っていく。

平成28(2016)年6月に設置した「子供の事故防止に関する関係府省庁連絡会議」において,子供の事故の実態及び事故防止に向けた各種取組等について情報交換し,効果的な啓発活動の実施等についての検討を引き続き進めていく。また,関係府省庁連絡会議で取組んでいる「子どもの事故防止週間」を令和元(2019)年度も実施し,関係府省庁が連携して集中的な広報活動を実施する。