第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

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第9章 貧困,高齢,障害等により困難を抱えた女性等が安心して暮らせる環境の整備

第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

(就業・生活の安定を通じた自立に向けた取組)

厚生労働省では,適用拡大が短時間労働者の働き方や企業経営に与える影響を踏まえつつ,公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律附則第2条に基づき,令和元(2019)年9月末に向けて検討していく(第2章第5節参照)。また,複合的な課題を抱える生活困窮者について,第196回通常国会で成立した生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律(平成30年法律第44号)による改正後の生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)に基づき,相談支援,就労支援,家計改善支援等の実施を着実に推進し,生活困窮者に対する包括的な支援体制を強化していく。

(ひとり親家庭等の親子が安心して生活できる環境づくり)

内閣府では,子供の貧困対策が国をあげて推進されるよう,地域の実情に即した施策に取り組んでいる地方公共団体への支援を行うとともに,引き続き官公民の連携・協働プロジェクトである「子供の未来応援国民運動」を発展させていく。令和元(2019)年度においては,地域における連携ネットワークの構築を加速させることで,支援が必要な子供や家庭に確実に支援を届けるため,地域に根差した,地方公共団体,NPO等支援団体といった関係者の連携体制の整備・顔の見える交流や企業の経済活動等と絡めた多様な形態による国民運動への参加の促進などを更に展開していく。また,政府は,令和元(2019)年度中を目途に新たな「子供の貧困対策に関する大綱」案を作成することとしている。

厚生労働省では,母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)等に基づき,ひとり親家庭等の実情に応じた自立支援策を総合的に展開していく。また,母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法(平成24年法律第92号)等に基づき,施策の充実や民間事業者に対する協力の要請等を行う。さらに,平成27(2015)年12月に決定された「すくすくサポート・プロジェクト」(すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト)に基づき,就業による自立に向けた支援を基本にしつつ,子育て・生活支援,学習支援等の総合的な支援を実施する。

具体的には,ひとり親家庭の相談窓口において,子育て・教育・生活に関する内容から就業に関する内容まで,ワンストップで寄り添い型支援を行うことができる体制を整備するとともに,児童扶養手当の現況届の時期等に,子育て・生活,就業,養育費の確保など,ひとり親が抱える様々な問題をまとめて相談できる体制を整備する。さらに,ひとり親家庭の子供の生活習慣の習得・学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくりや,ひとり親家庭に対して生活支援員(ヘルパー)の派遣等を行うひとり親家庭等日常生活支援事業,高等学校卒業程度認定試験合格支援事業を引き続き実施する。また,就業に結び付きやすい資格取得のため養成機関に通う際の生活費の負担軽減を図る高等職業訓練促進給付金や,地方公共団体が指定した教育訓練講座を修了した場合にその経費の一部を支給する自立支援教育訓練給付金等の支給を実施する。また,児童扶養手当や母子父子寡婦福祉資金貸付金による経済的支援を実施する。児童扶養手当については,令和元(2019)年11月支払分より支払回数を年3回(4月,8月,12月)から年6回(1月,3月,5月,7月,9月,11月)に増やす。

文部科学省では,誰もが,家庭の経済事情に左右されることなく,希望する質の高い教育を受けることができるよう,教育の無償化・負担軽減に向けた取組を行う。

例えば,初等中等教育段階における取組として,経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して,各市町村において行われる学用品費の支給等の就学援助事業に対する助成を行い,予算単価の増額など制度の充実を図る。

後期中等教育段階における取組としては,年収目安910万円未満の世帯の生徒の授業料を支援する「高等学校等就学支援金」等や低所得世帯(生活保護受給世帯・住民税非課税世帯)を対象に授業料以外の教育費を支援する「高校生等奨学給付金」を実施する。特に,「高校生等奨学給付金」については,給付額の増額により更なる制度の充実を図る。

また,高等教育段階における取組として,独立行政法人日本学生支援機構が実施する大学等奨学金事業について,平成30(2018)年度に本格実施した給付型奨学金制度を着実に実施する。また,平成29(2017)年度に希望者全員に対する貸与を実現した無利子奨学金について,引き続き貸与基準を満たす希望者全員に貸与する。大学院生に対しては,給与型の経済的支援として,ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)の業務に対する給与を各大学が自主的に支給する。

また,地域学校協働活動の一環として,経済的な理由や家族の事情により,家庭での学習が困難であったり,学習習慣が十分に身についていない中学生,高校生等への地域住民の協力による原則無料の学習支援(地域未来塾)を推進する。

このほか,様々な問題を抱えながらも地域から孤立し,自ら相談の場にアクセスすることが困難な家庭やその親子に対する支援を強化するため,家庭教育支援チーム等と子育て支援などの福祉関係機関との連携体制の構築や訪問型家庭教育支援の充実に向けた取組を推進する。

法務省では,養育費に関する法的な知識をわかりやすく解説したパンフレット(合意書ひな形を含む。)を離婚届用紙の交付を求める当事者に離婚届用紙と同時に配布する取組を引き続き行うとともに,財産開示制度に係る民事執行法の改正案が平成31(2019)年2月に通常国会に提出されたことを受け,養育費の履行を確保するための取組を引き続き行う。

(子供・若者の自立に向けた力を高める取組)

内閣府では,社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供・若者に対し,教育,福祉,保健,医療,矯正,更生保護,雇用等の様々な機関がネットワークを形成し,それぞれの専門性を生かし,発達段階に応じた支援を行うための「子ども・若者支援地域協議会」について,地方公共団体における設置及び活用を引き続き推進する。また,アウトリーチ(訪問支援)に関する研修を始めとする各種研修を引き続き実施する。

文部科学省では,生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を培うキャリア教育及び後期中等教育以降における実践的な職業教育を推進する。

また,困難な状況に置かれた児童生徒の相談等に適切に対応できるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を推進するなど,学校における相談体制の充実を支援する。

さらに,高校中退者等の高卒資格の取得に向けた学びの支援を実施するため,地方公共団体等における高校中退者等の学習相談・支援を可能とする体制のモデル構築を行う事業を実施する。

厚生労働省では,若者が充実した職業人生を歩んでいけるよう,「新卒応援ハローワーク」等を拠点に,新規学校卒業者や中途退学者,未就職卒業者に対する正社員就職の支援を実施するとともに,フリーター等の非正規雇用で働く若者に対しては,「わかものハローワーク」等を拠点に正社員就職に向けた支援を引き続き実施する。

また,「地域若者サポートステーション事業」について,高校中退者等の支援を更に充実させるため,学校等関係機関と連携し,切れ目のない支援アプローチを強化する。

さらに,各都道府県,指定都市において,ひきこもりに特化した第一次相談窓口としての機能を有する「ひきこもり地域支援センター」による支援を引き続き推進する。