第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

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第9章 貧困,高齢,障害等により困難を抱えた女性等が安心して暮らせる環境の整備

第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

1 就業・生活の安定を通じた自立に向けた取組

内閣府では,地方公共団体及び民間団体等の配偶者暴力被害者支援の関係者を対象に,配偶者からの暴力の被害者の自立支援に関する情報提供を行っている。

2 ひとり親家庭等の親子が安心して生活できる環境づくり

厚生労働省では,母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)等に基づき,(ア)保育所等の優先利用,日常生活支援事業等の子育て・生活支援策,(イ)母子家庭等就業・自立支援センター事業,母子家庭等自立支援給付金等の就業支援策,(ウ)養育費相談支援センター等による養育費の確保策,(エ)児童扶養手当の支給,母子父子寡婦福祉資金の貸付けによる経済的支援策といった総合的な自立支援策を展開してきた。

しかしながら依然として,経済的に厳しい状況に置かれたひとり親家庭や多子世帯が増加傾向にあり,これらの方の自立のためには,支援が必要な者に行政のサービスを十分に行き届けること,複数の困難な事情を抱えている者が多いため一人一人に寄り添った支援の実施,ひとりで過ごす時間が多い子供達に対し,学習支援も含めた温かい支援の実施,安定した就労による自立の実現が必要である。

このため,平成27(2015)年12月に「すくすくサポート・プロジェクト」を策定し,就業による自立に向けた支援を基本としつつ,子育て・生活支援,学習支援などの総合的な支援の充実を図ることとした。

具体的には,(ア)支援につながる,(イ)生活を応援,(ウ)学びを応援,(エ)仕事を応援,(オ)住まいを応援,(カ)社会全体で応援という6つの柱に沿って,地方公共団体の相談窓口のワンストップ化の推進,放課後児童クラブ等の終了後にひとり親家庭の子どもの生活習慣の習得・学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくりの実施,児童扶養手当の機能の充実,ひとり親家庭等への保育料軽減の強化,高等職業訓練促進給付金の充実など就職に有利な資格の取得の促進,「子供の未来応援国民運動」の推進等をしている。

児童扶養手当については,平成30(2018)年8月分より,全部支給に係る所得制限限度額を収入ベースで130万円から160万円(扶養親族等が一人の場合)に引き上げた。また,児童扶養手当の支払回数を現行の年3回から年6回(奇数月)とするための関連法が,平成30(2018)年6月に成立した。

さらに,ひとり親を含む生活困窮者等の就労を支援する生活保護受給者等就労自立促進事業を実施するほか,マザーズハローワーク事業として,ひとり親への支援の充実を図るため,専門相談員の配置や,地方公共団体等と連携した就職支援を実施している。

貧困の世代間連鎖の解消等を目指し,政府は「子供の貧困対策に関する大綱」(平成26年8月閣議決定)等に基づき,子供の貧困対策を総合的に推進している。

内閣府では,子供の貧困対策が国を挙げて推進されるよう,官公民の連携・協働プロジェクトとして「子供の未来応援国民運動」を展開している。具体的には,国や地方公共団体の支援情報を検索できる総合的な支援情報ポータルサイトの運営や支援を必要とするNPO等と支援を行う企業等とのマッチング促進,民間資金を活用した「子供の未来応援基金」によって草の根で支援を行うNPO等に対する支援等が挙げられる。本基金については,平成30(2018)年度末時点で約10億7,600万円の寄付が寄せられ,平成31(2019)年1月に,申請のあった358団体から71団体を審査・選定し,同年4月から実施される活動を支援することが決定された。

文部科学省では,誰もが,家庭の経済事情に左右されることなく,希望する質の高い教育を受けることができるよう,例えば,以下のような取組により,教育の無償化・負担軽減に向けた取組を進めている。

  • ア 幼稚園の入園料や保育料に係る経済的負担を軽減する「幼稚園就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,その所要経費の一部を補助している。
  • イ 経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者への就学援助を実施する市町村に対して,生活保護法(昭和25年法律第144号)に規定する要保護者の就学援助にかかる経費を補助している。なお,要保護者に準ずる程度に困窮している準要保護者の就学援助にかかる所要の経費については,地方財政措置が講じられている。
  • ウ 後期中等教育段階における取組としては,授業料を支援する「高等学校等就学支援金」等や授業料以外の教育費を支援する「高校生等奨学給付金」を実施している。高等学校等就学支援金は,年収目安910万円12未満の世帯の生徒に,年額約12万円支給される。私立高校に通う生徒であれば所得に応じて年額最大約30万円まで加算支給される。また,高校生等奨学給付金は,低所得世帯(生活保護受給世帯・住民税非課税世帯)を対象に支給され,平成30(2018)年度には住民税非課税世帯の第一子の給付額を約5千円増額した。なお,いずれも返済不要の支援である。
  • エ 高等教育段階における取組として,意欲と能力のある学生等が経済的理由により進学等を断念することがないよう,独立行政法人日本学生支援機構が本格実施する大学等奨学金事業の充実については,平成29(2017)年度に創設した給付型奨学金制度の実施,及び無利子奨学金における引き続きの貸与基準を満たす希望者全員への貸与を行った。また,各大学が実施する授業料減免等への支援を行うとともに,学生等に対し,自らが次の社会の担い手であることの気づきを促す各大学等の取組を奨励している。また,大学院生に対しては,給与型の経済的支援として,ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)の業務に対する給与を各大学が自主的に支給している。

また,地域学校協働活動の一環として,経済的な理由や家族の事情により,家庭での学習が困難であったり,学習習慣が十分に身についていない中学生,高校生等への地域住民の協力による原則無料の学習支援(地域未来塾)を推進している。

このほか,身近な地域において,全ての親が家庭教育に関する学習や相談ができる体制が整うよう,家庭教育支援チームの組織化等による相談対応,保護者への学習機会や親子参加行事の企画・提供等の家庭教育を支援する活動を推進している。また,「教育と福祉の連携による家庭教育支援事業(訪問型家庭教育支援等)」を全国の6地方公共団体に委託して実施し,家庭教育支援チーム等による訪問型の家庭教育支援体制の構築を図った。

また,平成30(2018)年度は,地域で家庭教育支援チームを立ち上げる際,チームの組織作りが円滑かつ効果的になされるよう必要な視点等を整理した「家庭教育支援チーム」の手引書を作成した。

法務省では,平成27(2015)年12月に子どもの貧困対策会議において決定された「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト」における決定内容等を踏まえ,(ア)養育費に関する法的な知識を分かりやすく解説したパンフレット及び合意書のひな形を作成し,離婚届用紙の交付を求める当事者に離婚届用紙と同時に配布する取組を平成28(2016)年10月から開始している。また,(イ)債務名義を有する債権者等が強制執行の申立てをする準備として債務者の財産に関する情報を得やすくするために,財産開示制度等に係る民事執行法(昭和54年法律第4号)の改正の検討をし,平成31(2019)年2月,所要の改正案を国会に提出した。

12年収は両親のうちどちらか一方が働き,高校生1人,中学生1人の4人世帯の目安。

3 子供・若者の自立に向けた力を高める取組

文部科学省では,後期中等教育修了までの子供たちへのキャリア教育を推進している。また,困難な状況に置かれた児童生徒の相談等に適切に対応できるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を推進するなど,学校における相談体制の充実を支援している。

また,高校中退者等の高卒資格の取得に向けた学びの支援を実施するため,地方公共団体における高校中退者等の学習相談・支援を可能とする体制のモデル構築を行う事業を実施している。

厚生労働省では,地域の若者支援機関から成るネットワークの拠点となる「地域若者サポートステーション」を全国に設置し,職業的自立に向けての専門的相談支援,就職後の定着・ステップアップ支援,若年無業者等集中訓練プログラムを実施した。

また,各都道府県,指定都市において,ひきこもりに特化した第一次相談窓口としての機能を有する「ひきこもり地域支援センター」による支援を推進した。

内閣府では,社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供・若者に対し,教育,福祉,保健,医療,矯正,更生保護,雇用等の様々な機関がネットワークを形成し,それぞれの専門性を生かし,発達段階に応じた支援を行うための「子ども・若者支援地域協議会」の設置及び活用を推進するため,地方公共団体を対象に,各地域の実情に応じて講習会等を行う事業を実施している。また,アウトリーチ(訪問支援)に関する研修を始めとする各種研修を実施している。

さらに,平成27(2015)年度に満39歳以下の者を対象にひきこもりに関する調査を行ったところ,ひきこもりの長期化傾向が見られたことから,満40歳以上の者を対象に調査を実施し,平成31(2019)年3月に結果を公表した。