第4節 ポジティブ・アクションの推進等による男女間格差の是正

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第4節 ポジティブ・アクションの推進等による男女間格差の是正

実質的な男女労働者間の均等を確保するためには,男女労働者間に事実上生じている格差の解消を目指す企業の自主的かつ積極的な取組である,ポジティブ・アクションが不可欠である。また,女性の活躍推進に向けた企業の取組を,投資家,就業希望者,消費者等から「見える」ようにすること(見える化)は,当該企業の取組が市場で評価されることを通じ,他の企業にも自主的な取組が波及する好循環が期待される。

各界各層の自発的な取組を促進するため,女性活躍推進法に基づき働く女性の活躍状況の「見える化」を進めている。同法に基づき,国,地方公共団体,常時雇用する労働者数が301人以上の一般事業主(民間企業等)は,女性の採用・登用等の状況を自ら把握し,課題を分析した上で,その結果を踏まえ,数値目標の設定を含めた行動計画を策定・公表することや,女性の活躍状況に関する情報を公表することなどが義務付けられた。これらの情報は政府のウェブサイト(国,地方公共団体の状況については,「女性活躍推進法『見える化』サイト」,民間事業主の状況については「女性の活躍推進企業データベース」)において一覧化し,広く発信している。

また,女性活躍推進法附則に基づく見直しの検討を実施した。国,地方公共団体に関しては,実効性の高い行動計画の策定を促進し,情報公表の内容の充実を図ることを主な内容とする見直しの方向性を取りまとめた。一般事業主に関しては,一般事業主行動計画策定義務の対象の拡大や情報公表の強化等を内容とする報告書が労働政策審議会において取りまとめられた。これを踏まえて,「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」を第198回通常国会に提出した。

金融庁では,平成30(2018)年6月に改訂したコーポレートガバナンス・コードにおいて,取締役会における「ジェンダーや国際性を含む多様性の確保」を重要な要素の一つとして明記した。さらに,同コードの付属文書である「投資家と企業の対話ガイドライン」において,機関投資家と企業の間で重点的に議論することが期待される項目に,「取締役に女性が起用されているか」という点を記載した。

内閣府では,女性役員の登用や女性活躍の取組が様々な場面において評価されていること,女性役員割合の増加に向けた政府の取組,女性役員が活躍する企業として上場企業のうち女性役員比率が10%以上の企業を一覧化し「見える化」したリーフレット「女性活躍で企業は強くなる」を作成し,全上場企業等に周知することで,気運の醸成を図った。また,資本市場において女性役員の登用をはじめとする女性活躍を推進する企業が,ESG投資において評価される動きが広がっていることを踏まえ,我が国の資本市場で活動する機関投資家等を対象に,ESG投資における女性活躍情報の活用状況等を調査し,広く情報提供を行った。さらに,ESG投資に積極的な海外投資家に女性活躍推進企業をPRするため,「女性役員情報サイト」の英語化を行った。

加えて,内閣府では,女性の登用に関する取組及び実績並びにそれらの情報開示において顕著な功績があった企業を対象として「女性が輝く先進企業表彰」を実施し,平成30(2018)年12月に内閣総理大臣表彰2社,内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰5社の合計7社を表彰するとともに,政府広報の各種媒体を活用し,周知・啓発を行った。

厚生労働省では,女性活躍推進法に基づく指導等によりその履行確保を図るとともに,女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業に対しては,女性の活躍を推進している企業として「えるぼし」認定を行っている(平成31(2019)年3月末現在で838社を認定)。さらに,企業の取組を推進するため,必要な助言及び情報提供を積極的に行っている。

また,「中小企業のための女性活躍推進事業」において,説明会やアドバイザーによる電話相談,個別訪問支援等を実施し,中小企業による女性活躍推進の取組を支援している。

さらに,企業における女性の活躍を推進していくため,女性の活躍に積極的に取り組む企業に対して助成金を支給しているほか,ポジティブ・アクション等に積極的に取り組む企業に対する「均等・両立推進企業表彰」を実施した。

これらに加え,企業が自社の女性の活躍状況や,仕事と家庭の両立支援に係る情報を掲載できる「女性の活躍・両立支援総合サイト」内に女性活躍推進法に基づき企業が行動計画や女性の活躍に関する情報公表を行うツールとして「女性の活躍推進企業データベース」の運用を行うことにより「見える化」を促進し,企業の取組の推進を図った。

経済産業省では,平成24(2012)年度以降,女性をはじめ多様な人材の能力を活かして,イノベーションの創出,生産性向上等の成果を上げている企業を「ダイバーシティ経営企業100選」として表彰し,ダイバーシティ経営の裾野の拡大を図っている。平成30(2018)年度は,「1経営層への多様な人材の登用2キャリアの多様性の推進3外国人・シニアの活躍」の3テーマを重点テーマとして設定し,平成31(2019)年3月に24社(大企業13社,中小企業11社)を表彰した。

また,「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン(平成30(2018)年6月改定)」3をもとに,中長期的な視点からダイバーシティ経営を推進している企業を選定する「100選プライム」を2社選定した。

さらに,女性活躍推進に優れた上場企業を「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することを通じて,そうした企業に対する投資家の関心を一層高め,各社の取組を加速化していくことを目的に,平成24(2012)年度から経済産業省と東京証券取引所が共同して,「なでしこ銘柄」を選定・発表している。平成30(2018)年度は,従来の「なでしこ銘柄」を42社選定するとともに,女性活躍推進に優れた企業をより幅広い視点で評価した「準なでしこ」を22社選定し,さらに,女性活躍推進に積極的に取り組んでいることを対外的にアピールできる仕組みとして「なでしこチャレンジ企業」リストを作成した。

3「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」 http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180608001/20180608001.html