はじめに 平成30年度を振り返って

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第1部 平成30年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

はじめに 平成30年度を振り返って

1 女性活躍加速に向けた施策の着実な推進

「第4次男女共同参画基本計画」(平成27年12月閣議決定。以下「第4次基本計画」という。)策定から既に3年が経過した。この間,女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)の制定・施行による各界各層の自主的な取組や女性活躍状況の「見える化」の促進を始め,政治分野の女性の参画状況の「見える化」,保育の受け皿確保に向けた取組など,女性活躍加速に向けた施策は着実に推進されている。このような中,女性を始めとする多様な労働者が活躍できる就業環境を更に整備するため,女性活躍推進法附則に基づく見直しの検討を実施し,一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大,情報公表の強化,ハラスメント対策の強化等の措置を講ずることを内容とする「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」を第198回通常国会に提出した。

政治分野における女性の参画拡大については,衆議院等の議員の選挙において男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指して行われるものとすることなどを基本原則とする政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(平成30年法律第28号)が平成30(2018)年5月23日に公布・施行された。

また,平成30(2018)年6月には,経済分野の女性活躍の後押しにもなる,長時間労働の是正,多様で柔軟な働き方の実現,雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等の措置を講ずる働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号。以下「働き方改革関連法」という。)が成立している。

女性に対するあらゆる暴力の根絶については,性犯罪・性暴力被害者のための,行政が関与するワンストップ支援センターの設置について,令和2(2020)年度までに各都道府県最低1か所設置するとの目標を前倒しし,平成30(2018)年10月に全都道府県への設置を達成した。また,平成29(2017)年度に創設した性犯罪・性暴力被害者支援交付金を活用して,センターの安定的な運営が可能となるよう,各都道府県の実情に応じた取組の支援の充実を図っている。

また,児童虐待と密接な関係があるとされるDVの被害者の適切な保護が行われるよう,相互に連携・協力すべき機関として児童相談所を法律上明確化すること等を内容とした,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」という。)の一部改正を含む「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案」を第198回通常国会に提出するとともに,平成31(2019)年3月に決定した「児童虐待防止対策の抜本的強化について」(児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定)において,DV対応と児童虐待対応との連携強化に係る施策が盛り込まれた。

2 男女共同参画に関わりの深い制度改革の動き

平成30(2018)年度は,働きたい女性が不便さを感じ,働く意欲が阻害されることのないよう就業調整を意識しなくて済む制度等の整備が進められた。

税制については,所得税法(昭和40年法律第33号)等の改正により,平成30(2018)年1月から,配偶者控除等について,配偶者の収入制限を103万円から150万円に引き上げるなどの見直しが適用された。社会保障制度については,被用者保険の適用拡大を進めることとしており,大企業で働く短時間労働者を対象とした被用者保険の適用拡大に加えて,平成29(2017)年4月からは,中小企業等で働く短時間労働者についても,労使合意を前提に企業単位で適用拡大の途を開いた。平成30(2018)年4月には,社会保障審議会年金部会において次期年金制度改正に向けた議論を開始し,その中で被用者保険の更なる適用拡大に向けた検討も行っている。民間企業における配偶者手当については,平成30(2018)年1月に改訂されたモデル就業規則を活用しながら,「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」(平成28年5月9日付基発0509第1号)について広く周知を図り,労使に対しその在り方の検討を促した。

また,教育の無償化・負担軽減に向けた取組に関して,「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月閣議決定)において,令和元(2019)年10月から,3歳から5歳までの子供及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供についての幼稚園,保育園,認定こども園等の費用を無償化することとされた。

ひとり親家庭等の親子が安心して生活できる環境づくりに関しては,養育費の確保にも資する債務者財産の開示制度の実効性の向上等を内容とする「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案」を第198回通常国会に提出した。

婚姻年齢の男女統一に関しては,成年年齢を18歳に引き下げるとともに,婚姻開始年齢を男女とも18歳とすること等を内容とする民法の一部を改正する法律(平成30年法律第59号)が成立した。

3 国際的な動向への対応

カナダG7議長国の下,平成30(2018)年6月にG7シャルルボワ・サミットが実施された。全トピックでジェンダー平等が取り上げられ,首脳宣言で,女性の労働市場への参加・リーダーシップの推進に引き続き取り組むとし,2つの女性関連の文書が合意された。

同年9月,パプアニューギニアのポートモレスビーで開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)女性と経済フォーラムでは,APEC域内で共通して取り組むべき課題について議論が行われ,フォーラムの結果は「APEC女性と経済フォーラム2018声明」として採択された。

また,アルゼンチンG20議長国の下,同年12月にG20ブエノスアイレス・サミットが実施され,ジェンダー平等は,経済成長及び公正で持続可能な発展に不可欠であり,労働参加率の性別格差を令和7(2025)年までに25%減少させるブリスベン・コミットメント(平成26(2014)年11月)の達成に向け,更なる取組が必要であることや,女性や女児への差別・暴力を無くす取組の推進が重要であることが表明されたほか,女性の労働環境の改善やSTEM及びハイテク部門への参画の拡大等を通じた,女性のエンパワーメントの促進が発表された。

そして,平成31(2019)年3月,第5回となる国際女性会議WAW!(World Assembly forWomen)を,女性の経済的活躍を目的として,G20に提言を行う民間主導のグループ「W20」(Women20)の会合と同時開催し,我が国における女性活躍推進の取組を世界に広くアピールした。

その他に,平成30(2018)年11月,ジェンダー統計の作成及び活用に関する能力の向上や知識の共有を目的として,国連統計部が隔年で各国と共催する「ジェンダー統計グローバルフォーラム」の第7回会合を,東アジア地域では初めて日本(東京)で開催した。