第1節 女性の教育・学びの進展

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第1節 女性の教育・学びの進展

平成11(1999)年6月に基本法が制定されるに至ったのは,従前からの国内外における様々な取組の積み重ねの成果である。

特に,昭和50(1975) 年は,「国際婦人年」1を契機に女性の地位向上のための国内本部機構として婦人問題企画推進本部が設置されるなど,女性の地位向上の流れが大きく加速した年であり,昭和50(1975)年頃は男女共同参画社会の形成の草創期であるとされる。

また,女性の社会進出を経済状況との関係で見ると,我が国では,バブル経済崩壊後に日本型雇用慣行(トピック1参照)が変容する中で女性の社会進出が進んだ。

そこで,本節では,戦後の高度経済成長期から現在に至るまでの時代を,高度経済成長期から国際婦人年(昭和50(1975)年)頃まで,昭和50(1975)年頃からバブル経済崩壊後(平成5(1993)年頃)まで,平成5(1993)年頃から現在までの3つに区切って,高等教育機関2への進学状況を中心に,女性の教育や学びの進展を振り返る。

1昭和50(1975)年は国際連合により「国際婦人年」とされ,6月19日から7月2日までメキシコシティにおいて「国際婦人年世界会議」が開催されたことを始め,世界各地において婦人問題をめぐって活発な議論が行われた(総理府「婦人の現状と施策-国内行動計画に関する報告書」(第1回)-」(昭和53年)2頁)。

2高等教育機関とは,高等専門学校(以下「高専」とする),専修学校(専門課程),短期大学,大学(学部),大学院等を指す。

トピック1

当時の時代背景~経済や働き方,女性のライフコースを中心に~1

【高度経済成長期~昭和50(1975)年頃】

高度経済成長2は我が国の産業構造を第1次産業中心から,第2次産業,第3次産業にシフトさせ,サービス経済化や就業構造の変化をもたらした。その後,我が国の経済は,1970年代前半に安定成長期へと移行した。

企業は必要な労働力を確保するために,主として男性を「終身雇用」,「年功序列賃金」,「企業別組合」といった日本型雇用慣行により正社員として処遇してきた。サービス経済化が進み,女性の働く場も広がり始めたが,ほとんどの企業では,基幹的業務は男性が従事し,女性は補助的業務に従事するという性別役割分担が慣行として行われていた。安い労働力として女性をパートタイムとして雇用しつつ,女性の正社員についても,若年定年制,結婚・妊娠退職慣行など,女性の早期退職を促す雇用管理を行う企業が多く見られた。

女性の年齢階級別労働力率についてM字カーブ(第2章第1節参照)が出来上がったのも高度経済成長期である。M字カーブは,高度経済成長期以前はそうした形状であったわけではなく,この時期に出来上がったものであり,出産・育児のためにいったん労働市場から退出し,その後パート等の家計補助的な働き方で再び労働市場に戻るという動きが増えてきたことが背景にあると考えられる。

この時期(昭和50(1975)年)の女性の平均初婚年齢は24.7歳,平均第一子出生年齢は25.7歳3であり,M字カーブの底は25~29歳(42.6%)及び30~34歳(43.9%)の2つの年齢階級となっていた。

【昭和50(1975)年頃~平成5(1993)年頃】

1970年代半ば以降は安定経済成長が続き,1980年代半ばには,株価や地価などの資産価値が急騰し後にバブルと呼ばれる状況を呈したが,1990年代に入ると,いわゆるバブル崩壊によって状況は一変し長期にわたって経済が低迷した(「失われた20年」)。

この間,女性の就業状況も大きく変容していくこととなる。

M字カーブについては,25~29歳の労働力率は次第に上がって平成5(1993)年には64.3%となり,M字の底は30~34歳のみとなった。また,昭和50年代にはいわゆる専業主婦世帯が多かったが,平成に入ると共働き世帯の数と拮抗するようになった(I-3-4図参照別ウインドウで開きます)。

雇用の分野における男女均等取扱いを目的とする男女雇用機会均等法4が施行されたのは昭和61(1986)年である。これを機に男女別の雇用管理も大きく変化していくこととなる。男女別から総合職と一般職のコース別雇用管理が採用され,女性が基幹的業務に従事する機会が用意されることとなったが,実際は,企業で働く女性のほとんどは一般職であった。

仕事と家庭の両立については,平成3(1991)年に育児・介護休業法5が公布され,翌年施行された。徐々にではあるが,企業にも仕事と家庭の両立のための雇用管理制度が普及し始めた。

1970年代以降,平均初婚年齢が上昇し晩婚化が進行した。平成5(1993)年の女性の平均初婚年齢及び平均第一子出産年齢は,それぞれ26.1歳,27.2歳であった6。出生者数が減少し,平成元(1989)年には合計特殊出生率が「ひのえうま」であった昭和41(1966)年を下回る1.57となり,「1.57ショック」として注目され,この時期には少子社会への本格的な対応が求められるようになった。

【平成5(1993)年頃~現在】

バブル経済崩壊後のグローバル経済の中で,企業は競争に生き残るために人件費削減を含めたリストラを進め,日本型雇用慣行が変容してきた。男性の非正規労働者の割合も増加してきた。

M字カーブについては,昭和50(1975)年当時にM字の底であった25~29歳の労働力率が平成30(2018)年では83.9%と年齢階級別で最も高くなっている。この時期,M字の底は,上昇するとともに右にずれ,平成5(1993)年には30~34歳(52.7%)であったが,平成30(2018)年には35~39歳(74.8%)になり,M字カーブは台形に近づきつつある。また,共働き世帯が増加し,平成9(1997)年以降は専業主婦世帯を上回っている(I-3-4図参照別ウインドウで開きます)。

基本法が成立したのは平成11(1999)年である。同法の成立と前後して,男女雇用機会均等法及び労働基準法(昭和22年法律第49号)が平成9(1997)年に改正され,職場における均等待遇に関する整備が強化された。

女性の平均初婚年齢,平均第一子出生年齢はさらに上昇し,平成28(2016)年では29.4歳及び30.7歳である7

図表 女性の年齢階級別労働力率の推移別ウインドウで開きます
図表 女性の年齢階級別労働力率の推移

図表[CSV形式:1KB]CSVファイル

1「 平成16年版男女共同参画白書」序説・第1節,「平成19年版男女共同参画白書」第2章第1節,「平成28年版男女共同参画白書」特集第1節,「平成23年版厚生労働白書」第1章,「平成25年版厚生労働白書」第1章第2節をもとに作成。

21950年代半ばから1970年代半ばまでが高度経済成長期にあたる。

3内閣府「平成30年版少子化社会対策白書」15頁。

4「 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」(昭和47年法律第113号)。現在は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」。

5「 育児休業等に関する法律」(平成3年法律第76号)。現在は「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」。

6厚生労働省「人口動態統計」

7内閣府「平成30年版少子化社会対策白書」15頁。

1 高度経済成長期から国際婦人年(昭和50(1975)年)頃まで

(高等教育機関への進学率~女子の高等教育は短期大学で~)

昭和50(1975)年度の大学(学部)への進学率を男女別に見ると,女子12.7%,男子41.0%と男子の方が28.3%ポイント高いが,女子は20.2%が短期大学(本科)へ進学しており,これを合わせると女子の大学等進学率は32.9%となる。昭和35(1960)年度時点と比較すると,女子の短期大学進学率は3.0%から上昇しており,この時期の女子の高等教育機会の拡充において短期大学が大きな役割を果たしていたと言える。一方,男子の大学進学率は13.7%から上昇しており,男子の高等教育機会の拡充においては,大学が大きな役割を果たしていたと言える(I-特-1図)。

I-特-1図 学校種類別進学率の推移別ウインドウで開きます
I-特-1図 学校種類別進学率の推移

I-特-1図[CSV形式:4KB]CSVファイル

(専攻分野別に見た男女の偏り~薬学・看護学等,人文科学,教育以外の分野に女子大学生はまれ~)

昭和50(1975)年度の大学(学部)の女子の割合を専攻分野別に見ると,薬学・看護学等,人文科学,教育においては過半数を占めている。一方,社会科学においては7.8%,理学,医学・歯学及び農学は1割前後,工学においては1%にも達していない(I-特-2図)。

I-特-2図 大学(学部)学生に占める女子学生の割合別ウインドウで開きます
I-特-2図 大学(学部)学生に占める女子学生の割合

I-特-2図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(有業者に占める大学等卒業者の割合~大学・大学院卒の女性有業者はわずか数%~)

女性有業者の学歴別の構成を見ると,昭和57(1982)年時点では,大学・大学院卒業者の割合が3.9%,短期大学・高専卒業者の割合も10.1%にとどまっている。他方,男性有業者は大学・大学院卒業者の割合が17.8%となっており,男女差が大きい(I-特-3図)。

I-特-3図 教育別有業者の構成割合の推移(男女別)別ウインドウで開きます
I-特-3図 教育別有業者の構成割合の推移(男女別)

I-特-3図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(新規学卒者の職業別就職状況~女性は大卒なら教師か事務職,高卒なら事務職~)

この時期(昭和49(1974)年度)の大学卒業者の就職先を職業別に見ると,女子は専門的・技術的職業従事者が52.7%と最も多く,次に多いのが事務従事者(40.4%)である。専門的・技術的職業従事者の内訳を見ると,教員が72.3%を占めている。男子についても専門的・技術的職業従事者(36.1%)が最も多く,事務従事者(34.5%)が次に多い。しかし,男子の専門的・技術的職業従事者や事務従事者の割合は女子より低く,販売従事者の割合が22.7%と女子(3.1%)を大きく上回っている。

短期大学の卒業者(女子)の就職先について見ると,事務従事者が過半数(54.8%)を占め,次に多いのが専門的・技術的職業従事者(38.6%)となっている。

一方,高等学校卒業者の就職先を見ると,女子は事務従事者が60.7%と過半数を占めているのに対して,男子は技能工・生産工程作業者,採鉱・採石作業者が半数近くに達し(47.7%),最も多くなっている。女子において最も多い事務従事者は男子においては13.8%に過ぎず,男子において最も多い技能工・生産工程作業者,採鉱・採石作業者は女子においては10.5 % に過ぎない(I -特-4図)。

I-特-4図 大学等卒業者・高等学校卒業者の職業別就職者の構成比(昭和49(1974)年度)別ウインドウで開きます
I-特-4図 大学等卒業者・高等学校卒業者の職業別就職者の構成比(昭和49(1974)年度)

I-特-4図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(子供の性別による親が期待する進路・育て方~親が女子に大学(大学院)までを期待する割合は男子の半分以下~)

親が子供に期待する進路は, 昭和51(1976)年時点では,女子については「本人の意思にまかせる」が30.2%,男子については「大学(大学院)まで」が56.8%で最も多い。女子について,大学(大学院)進学を期待する割合は24.8%である3

子供の育て方における性別についての考え方を見ると,昭和47(1972)年に「男の子は男らしく,女の子は女らしくしつけたほうがよい」と考える者は女性74.8 %4, 男性78.3%5に達している(I-特-5図)。

I-特-5図 「男の子は男の子らしく,女の子は女の子らしく育てるべき」と考える人の割合別ウインドウで開きます
I-特-5図 「男の子は男の子らしく,女の子は女の子らしく育てるべき」と考える人の割合

I-特-5図[CSV形式:1KB]CSVファイル

コラム1 就学前教育・義務教育・高等学校への進学状況

3総理府「教育に関する世論調査」(昭和51年8月実施)。大学生以下の子供をもつ親に対して質問を行っている。

4総理府「婦人に関する世論調査-女性対象-」(昭和47年10月実施)

5総理府「婦人に関する世論調査-男性調査-」(昭和47年10月実施)

2 国際婦人年(昭和50(1975)年)頃からバブル経済崩壊後(平成5(1993)年頃)まで

(高等教育機関への進学率~女子は微増,男子は低下傾向~)

この時期の高等教育機関への進学率の推移を見ると,大学(学部)への進学率は,女子が横ばいから若干の上昇傾向,男子は若干の低下傾向にある。女子の短期大学(本科)への進学率はほぼ横ばいである(I-特-1図参照別ウインドウで開きます)。

(専攻分野別に見た男女の偏り~理学,農学及び医学・歯学で女子割合が2~3割に~)

平成5(1993)年度の,大学(学部)の女子の割合を専攻分野別に見ると,人文科学及び薬学・看護学等は6割半ば,教育は5割半ばで高止まりしている。この時期に自然科学系や社会科学においても女子の割合が大きく上昇しており,特に農学,医学・歯学及び理学では2割を超えている(I-特-2図参照別ウインドウで開きます)。

(有業者に占める大学等卒業者の割合~女性有業者のうち,短期大学・高専卒は大学・大学院卒の2.7倍~)

女性有業者の学歴別の構成の変化を見ると,平成4(1992)年時点においては,大学・大学院卒業者が6.3%と,昭和57(1982)年時点の3.9%から上昇してはいるものの,男性の23.0%を大きく下回っている。一方で,この時期の女子の高等教育機関への進学率の上昇に寄与しているのが短期大学であることを反映して,短期大学・高専卒業者の占める割合は, 平成4(1992) 年時点で16.8%と,大学・大学院卒業者の2.7倍となっている(I-特-3図参照別ウインドウで開きます)。

(新規学卒者の職業別就職状況~大卒は男女とも事務職が最多~)

この時期(平成4(1992)年度)の大学卒業者の就職先を職業別に見ると,女子は事務従事者が47.4%と半数近くを占め最大になっており,次に多いのは専門的・技術的職業従事者(38.2%)となっている。専門的・技術的職業従事者の内訳を見ると,教員39.8%,技術者33.5%6と,両者合わせて7割以上となっている。男子も女子と同様に,事務従事者が36.9%と最大で,次に多いのは専門的・技術的職業従事者(36.7%)となっている。また販売従事者が22.1%と女子(11.2%)の約2倍となっている点にも特徴がある。

短期大学の卒業者(女子)の就職先を見ると,事務従事者が61.0%で過半数を占め,次に多いのが専門的・技術的職業従事者(26.0%)となっている。

一方,高等学校卒業者の就職先を見ると,女子は事務従事者の割合が最大(43.9%)であるが,男子は技能工,採掘・製造・建設作業者及び労務作業者に就職する者が過半数(52.8%)に達している(I-特-6図)。

I-特-6図 大学等卒業者・高等学校卒業者の職業別就職者の構成比(平成4(1992)年度)別ウインドウで開きます
I-特-6図 大学等卒業者・高等学校卒業者の職業別就職者の構成比(平成4(1992)年度)

I-特-6図[CSV形式:1KB]CSVファイル

6「技術者」には,「科学研究者」,「農林水産業・食品技術者」,「鉱工業技術者」及び「その他の技術者」を含む。

(子供の性別による親が期待する進路・育て方~女子にも大学(大学院)進学を期待する親が増加~)

親が子供に期待する進路は,平成6(1994)年には,女子についても大学(大学院)進学を期待する割合が最も多くなっている(大学32.6%,大学院1.8%)7

子供の育て方における性別についての考え方を見ると,平成6(1994)年に15歳以下の子供を持つ母親又は父親に「男の子は男らしく,女の子は女らしく育てるべきである」という考え方について尋ねた調査においては,母親72.3%,父親84.9%が「そう思う」,「どちらかと言えばそう思う」としている(I-特-5図参照別ウインドウで開きます8

コラム2 学習指導要領における技術・家庭,保健体育の変遷

7日本女子社会教育会「家庭教育に関する国際比較調査報告書」(平成7年。調査は平成6年2月実施)135頁。12歳以下の子供と同居している親,またはそれに相当する人に質問を行っている。

8総務庁「子供と家族に関する国際比較調査報告書」(平成8年。調査は平成6年11~12月実施)39頁。

3 バブル経済崩壊後(平成5(1993)年頃)から現在まで

(高等教育機関への進学率~女子の大学進学率は倍増,短期大学進学率は1/3に~)

女子の高等教育機関への進学率は引き続き上昇している。しかしながら,女子の高等教育機関への進学率の上昇に大きく寄与していた短期大学(本科) への進学率は平成6(1994)年度の24.9%をピークに下落し,平成30(2018)年度には8.3%に低下している。一方,大学(学部)への進学率は上昇を続け,平成30(2018)年度には50.1%となっている。また,若干の低下傾向だった男子の大学(学部)への進学率は平成3(1991)年度から再び上昇し,平成30(2018)年度には56.3%となっている(I-特-1図参照別ウインドウで開きます)。

(専攻分野別に見た男女の偏り~工学の女子学生割合は増加するもなお15.0%~)

平成30(2018)年度の大学(学部)の女子の割合を専攻分野別に見ると,昭和50(1975)年度時点で過半数を超えていた薬学・看護学等,人文科学及び教育は,平成5(1993)年度に引き続き高止まりしている。

この時期に3割を超えたのは農学,社会科学及び医学・歯学である。理学,工学も大きく増えているが,理学27.8%,工学15.0%にとどまっている(I-特-2図参照別ウインドウで開きます)。

(有業者に占める大学等卒業者の割合~大学・大学院卒と短期大学・高専卒を合わせた割合は男女とも5割に~)

女子の高等教育機関への進学率の上昇を反映して,女性有業者に占める大学・大学院卒業者の割合がこの時期に大きく伸び,平成29(2017)年時点では21.8%となっている。しかし,男性有業者に占める大学・大学院卒業者の割合は38.4%であり,依然として男女差が見られる(I-特-3図参照別ウインドウで開きます)。

(新規学卒者の職業別就職状況~高等教育卒業者は男女とも専門的・技術的職業従事者が最多~)

平成29(2017)年度の大学卒業者の就職先を職業別に見ると,女子は専門的・技術的職業従事者が39.0%で最大になっており,事務従事者が30.8%と次に多い。最大の就職先である専門的・技術的職業従事者に関して内訳を見ると,保健医療従事者40.8%,技術者20.0%9,教員18.4%と,就職先が多様化していることがうかがわれる。一方で男子は専門的・技術的職業従事者の割合が最大である(36.2%)点は女子と同様であるが,販売従事者が28.0%で次に多くなっている。

短期大学の卒業者(女子)の就職先を見ると,専門的・技術的職業従事者が過半数(62.8%)に達している。

高等学校卒業者の就職先を見ると,女子は就職先が分散している。サービス職業従事者が25.5%で最大であるが,次に多い生産工程従事者,建設・採掘従事者も25.2%を占めている。さらに第3位の事務従事者も23.2%となっている。他方で男子の就職先を見ると,生産工程従事者,建設・採掘従事者が過半数に達している(57.6%)(I-特-7図)。

I-特-7図 大学等卒業者・高等学校卒業者の職業別就職者の構成比(平成29(2017)年度)別ウインドウで開きます
I-特-7図 大学等卒業者・高等学校卒業者の職業別就職者の構成比(平成29(2017)年度)

I-特-7図[CSV形式:1KB]CSVファイル

9「保健医療従事者」には,「医師,歯科医師,獣医師,薬剤師」,「保健師,助産師,看護師」,「医療技術者」及び「その他の保健医療従事者」を含む。また「技術者」には,「研究者」,「農林水産技術者」,「製造技術者(開発)」,「製造技術者(開発除く)」,「建築・土木・測量技術者」,「情報処理・通信技術者」及び「その他の技術者」を含む。

(子供の性別による親が期待する進路・育て方~女子にも大学・大学院卒を期待する親が過半数に~)

親が子供に期待する進路は, 平成26(2014)年においては,女子は「大学まで」が56.7%,「大学院まで」が2.0%,男子は「大学まで」が65.5%,「大学院まで」が3.6%と,過半数の親が女子にも大学・大学院までの進学を期待している。また,「専門学校(専修学校)・各種学校まで」は,女子12.2%,男子9.6%と,女子の方が高くなっている。さらに,高校までの進学は,女子10.0%,男子12.6%となっており,男子の方が高くなっている10

子供の育て方における性別についての考え方について,平成26(2014)年の調査によると,「男の子は『男の子らしく』,女の子は『女の子らしく』育てるべきである」という考えに賛成する者の割合は,母親40.4%,父親64.1%に減少している(I-特-5図参照別ウインドウで開きます)。特に,女性(母親)において,子供の育て方において性別により方針を変えるという考えが支持を得られなくなってきていることが推察される。

10内閣府「平成25年度 小学生・中学生の意識に関する調査」(平成26年2月実施)。平成25年4月1日時点で,満9~14歳の子供の両親(保護者)に質問を行っている。

4 女性の教育・学びの状況の推移

(女子の高等教育は短期大学から大学へ)

女子の大学等進学率は,年々上昇している。昭和35(1960)年度の時点では,女子の高等教育機関への進学率は,大学,短期大学ともに5%に満たなかったが,高度経済成長期には短期大学を中心に進学率が大きく上昇し,昭和50(1975)年度の時点では,大学進学率は1割,短期大学進学率は2割を超える。その後,バブル経済崩壊期までは高等教育機関への進学率がやや停滞するが,バブル経済崩壊以降は再び高等教育機関への進学率が上昇する。

しかし,バブル経済崩壊以降の女子の高等教育機関への進学率の上昇の内訳は,高度経済成長期と異なり,大学への進学率が大きく上昇し,平成30(2018)年度現在では5割を超えているが,依然として女子の大学進学率は男子を下回っている。一方で,高度経済成長期に女子の高等教育機関への進学率の上昇に大きく寄与した短期大学への進学率はこの時期には低下し,平成30(2018)年度時点では1割を下回っている。

世代ごとに18歳時点での進学先の割合を推計すると,現在70歳の女性は,54.5%が高等学校卒業,8.5%が短期大学進学,4.9%が大学進学となり(昭和41(1966)年度時点18歳),現在60歳の女性は,45.3%が高等学校卒業,20.7%が短期大学進学,13.3%が専修学校(専門課程)進学,12.6%が大学進学(昭和51(1976)年度時点18歳)ということになる。現在40歳の女性になると,27.0%が高等学校卒業,22.9%が短期大学進学,20.9%が専修学校(専門課程)進学,26.0%が大学進学(平成8(1996)年度時点18歳) であり, 平成29(2017) 年度に18歳になった女性は,半数の50.1%が大学へ進学している(I-特-8表)。

I-特-8表 女子の進学率の推移(推計)別ウインドウで開きます
I-特-8表 女子の進学率の推移(推計)

I-特-8表[CSV形式:1KB]CSVファイル

(大学における専攻分野に男女の偏り,工学,理学でなお女子割合低い)

大学(学部)における専攻分野にも,男女の偏りが見られ,現時点でも,高等学校卒業時点の進路選択に男女の相違があると言える。薬学・看護学等や人文科学,教育等を専攻する学生は,昭和50(1975)年度時点で女子が過半数を占めており,その後も同様の傾向が続いている。一方,理学,医学・歯学,農学や社会科学においては,昭和50(1975)年度時点では女子の割合が1割前後であったが,平成5(1993)年度時点では農学,医学・歯学や理学において2割を超え,平成30(2018)年度時点では農学や社会科学,医学・歯学では3割を上回っている。

しかし,工学においては,女子の割合は昭和50(1975)年度の0.9%からは上昇しているものの,平成30(2018)年度時点においても15.0%にとどまっており,また理学においても3割に達していない。

(女性有業者の高学歴化が進むも,なお大学・大学院卒は2割)

有業者の学歴の構成を見ると女性有業者における高学歴化の傾向が見られる。昭和57(1982)年時点では,女性有業者において大学・大学院卒業者の割合は5%に満たなかった。一方,バブル経済崩壊後の平成4(1992)年には,女子の短期大学進学率の上昇も反映して短期大学・高専卒業者の割合が15%を超える水準に達するが,大学・大学院卒業者の割合は6%程度にとどまっていた。他方で,平成29(2017)年には,この時期の女子の大学・大学院への進学率の上昇を反映して,女性有業者の2割以上が大学・大学院卒業者となる。とはいえ,女性有業者に占める大学・大学院卒業者の割合は,男性有業者に占める割合を依然として下回っている。

(大卒者の仕事の男女差は縮小,高卒者の男女差はなお大)

学校を卒業して就く仕事(職業)は,昭和49(1974)年度の女子の学校卒業者においては,大学卒業者では専門的・技術的職業従事者が過半数を,短期大学・高等学校卒業者では事務従事者が過半数を占めていたが,平成4(1992)年度卒業者においては,学歴に関わりなく事務従事者が最も多く4~6割を占めるようになる。しかし直近の平成29(2017)年度では,大学・短期大学卒業者では専門的・技術的職業従事者が,高等学校卒業者ではサービス職業従事者が最大となっている。

昭和49(1974) 年度, 平成4(1992)年度と直近の平成29(2017)年度を比較すると,男女の相違が,大学卒業者では小さくなりつつあるが,高等学校卒業者の場合は,相違は引き続き大きい。進学先や専攻分野など,高等教育機関への進学の状況について男女の相違が小さくなると,学校を卒業して就く職業についても男女の相違が小さくなることが推察される。

また,専門・技術職は,事務職の場合と比較して就業継続につながる場合が多いとされ,再就職も容易で女性にとって安定的就業である傾向があるが,昭和49(1974)年度,平成29(2017)年度の大学卒業者の就職先を職業別に見ると,ともに女子は専門的・技術的職業従事者が最大となっている。しかし,就職した専門的・技術的職業従事者の内訳を見ると,昭和49(1974)年度は,教員が7割を超えていたのに対して,平成29(2017)年度は,保健医療従事者が4割強,技術者や教員が各々約2割となっており,就業分野が多様化している。

(「男の子は男の子らしく,女の子は女の子らしく育てるべき」と考える母親は最近20年で大幅に減少)

女子に大学・大学院までの学歴を期待する親は,昭和51(1976)年時点では4人に1人程度であったが,バブル経済崩壊後の平成6(1994)年になると3人に1人が期待するようになる。そして平成26(2014)年になると,女子に対しても過半数の親が大学・大学院までの学歴を望むようになる。しかし男子に大学・大学院までの進学を期待する親の割合と比べると低い。

子供の性別による育て方の考え方の推移を見ると,高度経済成長期の昭和47(1972)年時点では女性(母親),男性(父親)ともに7割以上が,「男の子は男の子らしく,女の子は女の子らしく育てるべき」と考えており,平成6(1994)年においても同様の傾向が見られた。しかし平成26(2014)年になると,「男の子は男の子らしく,女の子は女の子らしく育てるべき」という考えを支持する割合は低下し,女性(母親)においては4割程度しか支持していない。以前のような子供の性別による育て方の使い分けは,特に女性において評価されなくなってきていると言える。

コラム3 高等女学校における良妻賢母教育