コラム17 多世代交流と子育てサロンの活動と学び

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コラム17

多世代交流と子育てサロンの活動と学び


(NPO法人ねっこぼっこのいえ代表理事)

「ねっこぼっこのいえ」は,札幌市豊平区を拠点に多世代交流と子育て支援の場として広く地域に開かれた活動をするNPO法人である。「ねっこぼっこのいえ」という名称は公募で決めた。「ねっこ」は木の根っこ,「ぼっこ」は東北地方の方言で子供の意。活動を開始した幼稚園に大きなクルミの木があったことから,木が根っこから大地の栄養を吸収するように,集まった多世代の多くの人たちから子供たちがいろいろなことを吸収して大きく育って欲しいという思いからこの名称とした。

「ねっこぼっこのいえ」の代表は,出産後,子育てサークルに参加し,お母さん仲間との学習会(子育てに関する本の読み合わせ会)で,地域による子育て支援が大切であることに気付いた。それまでは良いお母さんになるためには個人の資質を高めなければならないと思っていたのだが,個人の資質の向上には限界があり,地域の応援が必要だということに思い至ったのである。そして理想とする既存施設(そこは多世代交流と子育てサロンの活動を行っていた。)のスタッフとなり,活動のための知識とスキルを学んだ。その施設で働いている人々が自分のロールモデルとなった。

その後,自分の子供の通っていた幼稚園から「子育てひろば」活動のスタッフとなるよう依頼を受けたのを機に,その幼稚園と近くの教会から提供される場を活動の拠点に,お母さん仲間たちが主体となって運営する形式で,平成19(2007)年に「ねっこぼっこのいえ」を立ち上げた。多世代交流の活動も併せて行う場としたのは,子育ては多世代により行うものとの考えに基づいている。

学びや活動を通じて形成されたネットワークにより,いろいろな団体とのコラボレーションが可能となった。団体には得意,不得意な分野がある。お互い補い合うことによって限界を超えられたし,情報・モノのやり取りや学び合いもあり,活動を継続できたという。

「ねっこぼっこのいえ」で活動する女性の写真

行政の支援も活動の継続には重要であった。平成23(2011)年に札幌市より常設子育てサロン(地域子育て支援拠点事業)に指定されたのは,活動が資金的に行き詰りかけた時だった。この指定により団体としての活動は軌道に乗ったが,その頃代表は自分の活動を疑問に思うようになっていた。「ねっこぼっこのいえ」を訪れる,生活困窮者,DV被害者,一人親世帯などの多くの人たちから色々と相談を受けても,ただ頷いて話を聞くだけしかできなかったからだ。

「もっと自分にできることはないか。もっと専門知識があれば」と探しあぐねていたとき,社会福祉士という国家資格の存在を知った。社会福祉士こそ今の自分が望んでいる仕事であると気付き,平成26(2014)年から通信教育で社会福祉士の資格取得のための勉強を始めた。平成28(2016)年3月に社会福祉士の資格を取得し現在に至っている。

「ねっこぼっこのいえ」は,平成30(2018)年1月にNPO法人となった。NPO法人化した後も,様々な事情・背景を有して訪れる人たちのニーズや悩み事に向き合い寄り添うことを代表は大切にしている。

最近は,サロンを訪れる人の中にメンタル疾患,不登校など心の問題を抱える人が多くなってきた。このため,代表は精神保健福祉士の資格取得のための勉強を開始した。資格を取得しそれにより活動の幅を更に広げていくことが今後の抱負だという。