コラム16 「自立を目指す女性のための“学び直し”を通したキャリア形成支援」

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コラム16

「自立を目指す女性のための“学び直し”を通したキャリア形成支援」


(仙台市男女共同参画推進センター「エル・ソーラ仙台」)

仙台市男女共同参画推進センター「エル・ソーラ仙台」を運営するせんだい男女共同参画財団は,母子家庭相談支援センターを併設しているという運営形態を生かして,母子家庭相談支援センターで把握した問題意識を背景に,平成30(2018)年8月から「自立を目指す女性のための“学び直し”を通したキャリア支援事業」(文部科学省「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業」における実証事業)を実施している。10代で十分な学びの経験を得ることができず,就職活動等においても影響を受けている女性を対象に,性別役割分担意識を固定化しないよう配慮したキャリア支援とカスタムメイドで伴走型の学習支援を提供し,生きる力を養い再チャレンジできるようになることを目指す。

母子家庭相談支援センターでは,シングルマザーの就業支援をする中で,収入の安定した仕事に就きたいという希望で資格取得等に向けた勉強を始めるものの,勉強のやり方がわからず,独学で進めることが難しいというようなケースが複数見られていた。また,仕事が続かない,人間関係に悩んで引きこもりとなっているなどの若年無業の未婚女性の自立支援事業の対象者にも,不登校の経験などを原因として同様の状況が見られていた。

本事業では,キャリア支援と個別の学習支援を並行して行う。母子家庭相談支援センターとエル・ソーラ仙台がキャリア支援を,一般財団法人学習能力開発財団が学習支援を担当し,双方が連携をとりながら実施している。学習能力開発財団は,地元で発達障害児や震災遺児の学習支援を行っている実績から,対象者の状況に合わせて柔軟に対応することができている。

平成30年度の参加者は13名。最初に,それぞれの状況に合わせたキャリア目標の明確化と就業に向けたキャリアカウンセリングを実施し,そのキャリア目標に向けて学習目標・学習計画を設定して学習支援を行う。約半数が就業・転職に向けた資格取得やスキルアップをキャリア目標としたが,想定外だったのは,「日常生活を円滑に進めるための力の向上」を目標とする方が4名いたことである。例えば,子どもの大学入学に関する資料の読み込みや,消費税の計算,割増しの概念など,基礎学力の不足が就業だけでなく日常生活にも影響を及ぼしている状況が見られた。参加者のうち8名の最終学歴が高卒だったが,実際には小中学校レベルの学習に取り組んだ。学習科目としては8名が国語の学習をしており,職場での報告書の書き方や言葉遣い,人とのコミュニケーションなど,日常生活を送る上での課題を学習科目に変換した結果,国語の学習につながったものだ。特に,読解力は他の科目の基礎でもあり,国語・読解力がついていないことが学習全般に影響していることが伺われた。学び直しによる学習意欲の上昇が自己肯定感の高揚や就業意欲の向上につながり,参加者のキャリア選択の幅が広がったり,次のステップへ進む契機となるなど,さまざまな好影響が見られている。

「自立を目指す女性のための“学び直し”を通したキャリア支援事業」の案内

受講者の募集に当たっては,困難な状況にある対象者が自ら参加を決定するのは難しいと思われたため,DV被害者やその子どもを支援している団体や子ども食堂運営団体,ジョブカフェ等の支援団体に,対象となる方への情報提供と参加への後押しを依頼した。

本事業を通じて,男女共同参画センターが持つリソースやネットワークを活用することで,女性の困難な状況や直面する課題を顕在化し,課題解決に向けて新たな視点で取り組むことができるという可能性に気付くこととなった。