コラム6 「女性社員の一言が生んだ新たな道」

本編 > コラム6 「女性社員の一言が生んだ新たな道」

コラム6

「女性社員の一言が生んだ新たな道」


(勇心酒造株式会社)

勇心酒造株式会社の外観の写真

勇心酒造株式会社は,香川県綾川町にある安政元(1854)年創業の酒造会社である。当初は日本酒の造り酒屋であったが,昭和49(1974)年に現社長が米の総合利用研究を開始したことを皮切りに,米の発酵エキスの開発に力を入れ,現在では,日本酒造りだけでなく,米の発酵を生かした化粧品素材等の開発・販売を中心に事業を展開している。当初の研究は,入浴剤の開発を中心に進められていたが,日本酒の売上だけではなかなか新規事業の研究を継続させることが厳しい苦しい時期もあった。そのような状況の中,ある女性社員からの「エキスの浸透力が高く,従来のものとは一線を画す化粧品が開発できる」との一言により,化粧品への活用という方法を見出した。その結果,当時,米の発酵エキスの化粧品への使用は他に例がなかったこともあり,売上を伸ばすことができた。

勇心酒造株式会社の女性研究員の写真

勇心酒造は,現在1,112名の社員のうち男性社員が52名,女性社員が60名と男女の割合がほぼ同じである。日本酒造りが事業の中心であった頃は,男性社員が大半を占めていたが,事業の中心が化粧品に移るに連れて,化粧品の開発にあたって,実際の使い心地が大切であり,女性社員の意見が重要であったこと,優秀であれば男女問わずに積極的に採用を行ってきたこと,育児休業を利用して働き続ける社員も増え,離職する社員も少ないことが相まって,結果として現在の均衡がとれた状況となっている。同社の働き方,取組は各所で評価をされており,平成30(2018)年5月には,「えるぼし」2の最高段階に認定された。香川県内で,えるぼしへの認定は3社目,最高段階への認定は2社目である。

勇心酒造では,多くの女性研究員も活躍している。一般的に企業で働く研究員はまだまだ長時間勤務を強いられることが多いが,勇心酒造では,そのような状況を改善するために,研究を効率的に行うことができる最新の分析機器の導入や研究員個々の就業状況を考慮した目標管理制度を取り入れた。このような取組の結果,時間の制約があっても働き続けることが可能となり,女性研究員だけでなく,研究員全体にとって働きやすい職場環境が実現している。

地方では優秀な人材を確保することが難しいことも多々あるが,勇心酒造の研究内容や職場環境に魅力を感じ,地元の香川県を中心に就職を希望する者は多い。女性社員達からは,「地元である香川県で働きたい」,「研究内容や商品に興味を持った」ことをきっかけに同社に就職し,「自身が開発した素材の商品化」,「愛されるロングセラー商品をつくりたい」等の目標をもって仕事をしているといった声が多数聞かれた。

同社では,日本酒造りから化粧品等事業へ事業の中心が変わったこともあり,男女ともに若い世代の社員が多く活躍している。今後の活躍にも期待したい。

1平成31(2019)年1月現在

2「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づく認定表示。行動計画の策定・届出をした企業のうち,一定の基準を満たし,女性の活躍推進に関する状況などが優良な企業は,都道府県労働局への申請により,厚生労働大臣の認定を受けることができる。認定は,評価項目を満たす項目数に応じて3段階設けられている。