第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

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第10章 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備

第1節 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

(働きたい人が働きやすい中立的な税制・社会保障制度・慣行)

税制に関しては,平成29年度税制改正における配偶者控除等の見直しについて,平成30年分の所得税から適用されている。

社会保障制度については,厚生労働省では,平成29年4月からの中小企業等で働く短時間労働者への被用者保険の適用拡大の途を開いたほか,更なる適用拡大に向けて必要な取組を進めていく(第2章第5節参照)。

公務員の配偶者に係る扶養手当については,国家公務員における見直しを踏まえ,地方公務員においても,ほとんどの地方公共団体で見直しが行われたところであり,今後も適切に対処するよう各地方公共団体に要請していく。民間企業における配偶者手当についても,上記の税制や社会保障制度等の動きも踏まえ,「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について引き続き広く周知を図り,労使に対しその在り方の検討を促していく。

旧姓使用の拡大に向けて,総務省では,希望する者に係る住民票やマイナンバーカード等への旧姓併記が可能となるよう,平成30年度以降速やかに,関係法令の改正を行うとともに市区町村の既存住基システム等の改修を進める。また,外務省では,旅券について,31年度を目途に,本人からの届出によりの旧姓併記が可能となるよう,検討を進める。

また,政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響等について,調査検討を行う。

(男女の多様な選択を可能とする育児・介護の支援基盤の整備)

「少子化社会対策大綱」(平成27年3月閣議決定)に基づき,子育て支援施策を一層充実させることとしている。

子ども・子育て支援新制度においては,小規模保育等,地域のニーズに応じた幅広い子育て支援分野において,子供が健やかに成長できる環境や体制が確保されるよう,その担い手を確保する必要があることから,育児経験豊かな地域の人材を対象として,保育や子育て支援分野の各事業等に従事するために必要となる知識や技能等を習得する子育て支援員研修事業を実施するとともに,それら支援の担い手の資質向上等を目的として,職員の資質向上・人材確保等研修事業及び指導者養成等研修事業を実施する。加えて,保育士等の処遇改善として,平成29年人事院勧告に準拠した,1.1%の処遇改善を実施する。

女性の就業率の上昇や,保育の利用申込者数の伸びが加速している中,平成29年6月に「子育て安心プラン」を策定し,34年度末の女性就業率80%に対応する約32万人分の保育の受け皿を整備することとしている。さらに,29年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」では,保育の受け皿拡大をより速く実現するため,この「子育て安心プラン」を前倒しし,32年度末までに32万人分の保育の受け皿整備を進めることとした。

加えて,保育の受け皿拡大に伴い必要となる保育人材の確保のため,処遇改善や新規資格取得者の確保,就業継続支援,離職者の再就職支援など,引き続き総合的な対策を講じる。

共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに,次代を担う人材を育成するため,平成26年7月に文部科学省と厚生労働省が共同で策定した「放課後子ども総合プラン」に基づき,31年度末までに,放課後児童クラブについて約30万人分を整備し,合計で約122万人分の受け皿を確保するとともに,全小学校区(約2万か所)で放課後児童クラブ及び放課後子供教室を一体的に又は連携して実施し,うち1万か所以上を一体型で実施することを目指している。さらに,「新しい経済政策パッケージ」に基づき,「放課後子ども総合プラン」に掲げる放課後児童クラブの31年度末までの約30万人分の新たな受け皿の確保を1年前倒しして,30年度までに達成することとしている。

平成30年度は,放課後児童クラブについて,施設整備費の国の補助率を1/3から2/3への引上げを継続するとともに,放課後児童支援員等の処遇改善などの人材確保対策等を推進することとしている。

子育て家庭等の不安感や負担感を軽減するため,子育て親子が気軽に集い,交流することができ,子育てに関する相談・援助を行う場の提供や地域の子育て関連情報の提供,子育て及び子育て支援に関する講習を行う「地域子育て支援拠点事業」を促進し,平成31年度末までに8,000か所での実施を目指す。

子ども・子育て支援の推進に当たって,子ども及びその保護者等,又は妊娠している方がその選択に基づき,教育・保育・保健その他の子育て支援を円滑に利用できるよう,情報提供及び相談・助言等を行うとともに,関係機関との連絡調整等を行う「利用者支援事業」(基本型・特定型)を促進し,平成31年度末までに1,800か所の実施を目指す。

厚生労働省では,高齢化が一層進展する我が国において,介護保険制度が将来にわたり国民生活の安心を支え続けることができるよう,介護保険法(平成9年法律第123号)の着実な実施を図る。

また,全国の主要なハローワークに設置された「人材確保対策コーナー」において,福祉分野等のきめ細かな職業相談・職業紹介,求人者への助言,指導等を実施するとともに,支援を一層充実させるため,事業拠点の拡大等を行う。

介護人材の確保のため,中高年齢者等の介護未経験者に対する入門的研修の創設や介護福祉士養成施設における人材確保の取組に対する支援などを地域医療介護総合確保基金に新たに位置付ける。また,介護職の魅力や社会的評価の向上を図り,介護分野への参入を促進するため,介護を知るための体験型イベントの開催など,多様な人材の確保等に向けた取組を推進する。

さらに,介護労働者の雇用管理改善を促進する「介護雇用管理改善等計画」(平成27年厚生労働省告示第267号)に基づき,介護労働者の身体的負担の軽減に資する介護福祉機器や賃金制度の整備をはじめとした雇用管理制度を導入する事業主への助成,介護労働安定センターによる雇用管理改善の相談援助及び実践力を備えた介護人材の育成を図るための介護労働講習を実施する。また,介護労働者の雇用管理全般に関する雇用管理責任者への講習に加え,先進的な取組を行う事業所の雇用管理改善の好事例把握やコンサルティング等を行う事業を実施する。

国民が可能な限り住み慣れた地域で暮らすことができるよう,地域包括ケアシステムの実現を目指す。

また,改正後の育児・介護休業法に基づき,子が2歳に達するまで育児休業の延長を可能とする等の制度改正について,施行に向けた周知を図る。

国土交通省では,公的賃貸住宅等における保育所等の子育て支援施設の一体的整備や,職住近接で子育てしやすい都心居住,街なか居住を実現するため,良質な住宅供給や良好な住宅市街地等の環境整備を行う。

また,平成30年度から,既存の公営住宅や改良住宅の大規模な改修と併せて,子育て支援施設等の生活支援施設の導入を図る取組に対して支援を行う。

さらに,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備,無電柱化,交通安全施設等の整備を推進するほか,公共交通機関,公共施設等におけるバリアフリー化を踏まえ,ベビーカーの利用等,子育てしやすい環境づくりに向けた取組を行う。

消費者庁では,「不慮の事故」が子供の死因の上位を占めている現状を踏まえ,関係府省庁と連携し,「子どもを事故から守る!プロジェクト」を推進し,子供の事故防止に取組む。平成28年6月に設置した「子供の事故防止に関する関係府省庁連絡会議」において,子供の事故の実態及び事故防止に向けた各種取組等について情報交換し,効果的な啓発活動の実施等についての検討を引き続き進めていく。29年5月に関係府省庁連絡会議の取組として新たに定めた,「子どもの事故防止週間」を30年度も実施し,集中的な広報活動を関係府省庁が連携して実施する。

また,事故予防の注意点などを「子ども安全メールfrom消費者庁」や「消費者庁 子どもを事故から守る!公式ツイッター」で発信する。そのほか,シンボルキャラクター「アブナイカモ」が各地の子供関連イベントに参加するなど,子供の不慮の事故予防に関する啓発活動を行っていく。