第2節 妊娠・出産等に関する健康支援

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第2節 妊娠・出産等に関する健康支援

厚生労働省では,リスクの高い妊産婦や新生児等に高度な医療が適切に提供されるよう,周産期医療の中核となる総合周産期母子医療センター及びそれを支える地域周産期母子医療センターを整備し,地域の分娩施設との連携体制の確保等を図っている。平成29年度からは分娩施設が少ない地域において,新規に分娩施設を開設する場合などの設備整備や,産科医の不足する地域の医療機関への産科医の派遣に対する財政支援を行っている。また,「妊娠と薬情報センター」(国立成育医療センター(現国立研究開発法人国立成育医療研究センター)に平成17年度に設置)において,薬が胎児へ与える影響等最新のエビデンス(研究成果等)を収集・評価し,その情報に基づいて,これから妊娠を希望している人や妊婦の方の相談を行っている。

さらに,平成21年以降,産科医療補償制度により,分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児及びその家族への補償や,原因の分析,再発防止に資する情報の提供等により,紛争の防止・早期解決及び産科医療の質の向上を図っている。

加えて,子供が地域において,いつでも安心して医療サービスを受けられるよう,小児初期救急センターや小児救急医療拠点病院,小児救命救急センター等の整備を支援することなどにより,小児救急医療を含め,小児医療体制の充実を図っている。

さらに,21世紀における母子保健分野の国民運動計画である「健やか親子21(第2次)」(27~36年度)では,10年後に目指す姿として「すべての子どもが健やかに育つ社会」を掲げ,その実現に向けて取組を進めている。

出産育児一時金については,引き続き,支給額を原則42万円とし,出産に要する経済的負担を軽減している。

また,不妊で悩む者が正しく適切な情報に基づきその対応について自己決定できるよう,全国66ヵ所(平成29年度)の不妊専門相談センターで,不妊に関する多面的な相談・情報提供を実施している。さらに,高額の医療費がかかる配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成する特定不妊治療費助成事業について,平成28年1月から早期の受診を促すため,出産に至る割合が多い初回治療の助成額を15万円から30万円に拡充するとともに,不妊の原因が男性にある場合に精子回収を目的とした手術療法を実施した場合,高額な医療費の負担を軽減するため,更に15万円を上限に上乗せして助成している。

加えて,日常生活圏において,妊娠,出産,子育てまで一貫して,健康診査,保健指導・相談対応等のサービス等が受けられるようにするための施策の推進を図っている。具体的には,妊婦健診に対する支援については,妊婦が必要な健診を受けられるよう,市町村による公費負担が行われている。また,平成28年度に母子保健法の改正を行い,妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対して切れ目なくきめ細かな相談支援を提供する子育て世代包括支援センター(母子健康包括支援センター)を法定化(平成29年4月1日施行)し,32年度末までに全国展開を目指すとともに,地域の実情に応じて,退院直後の母子に対する心身のケア等を行う産後ケア事業等を実施している。さらに,産後うつの予防や新生児への虐待予防等を図る観点から,29年度より,産婦健康診査の費用を助成することにより,産後の初期段階における母子に対する支援を強化することとしており,妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供する体制の構築に向けた取組を推進している。(子育て世代包括支援センターの実施自治体数525市区町村(1,106箇所)。平成29年4月1日現在)

さらに,男女雇用機会均等法に基づいた母性健康管理の措置(健康診査の受診等に必要な時間の確保及び医師等の指導事項を守るために必要な措置を講じること)及び労働基準法(昭和22年法律第49号)の母性保護規定(産前産後休業,危険有害業務の就業制限等)について,事業主,女性労働者,医療関係者等に対し周知・徹底を図っており,その一環として企業や働く女性に対し,母性健康管理に関する情報を提供する支援サイト「妊娠・出産をサポートする 女性にやさしい職場づくりナビ」7の運営を行っている。

また,都道府県労働局雇用環境・均等部(室)において,労働者及び企業等からの相談に応じており,母性健康管理に関して必要な措置を講じないなど男女雇用機会均等法違反の企業に対し,指導を行うとともに,労働者と事業主の間の紛争については,都道府県労働局長による紛争解決の援助及び機会均等調停会議による調停により,紛争の円滑かつ迅速な解決を図っている。

加えて,事業主が母性健康管理の措置を適切に講ずることができるように,女性労働者に対して出された医師等の指導事項を的確に事業主に伝えるための「母性健康管理指導事項連絡カード」の利用を促進している。

7「妊娠・出産をサポートする 女性にやさしい職場づくりナビ」 http://www.bosei-navi.go.jp/