はじめに 平成29年度を振り返って

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第1部 平成29年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

はじめに 平成29年度を振り返って

1 女性活躍加速に向けた施策の着実な推進

「第4次男女共同参画基本計画」(平成27年12月閣議決定。以下「第4次基本計画」という。)策定や女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)の全面施行により,女性活躍加速に向けた施策は着実に推進されている。

平成29年3月に働き方改革実現会議において取りまとめられた「働き方改革実行計画」(以下「実行計画」という。)に基づき,同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善,罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正,柔軟な働き方がしやすい環境整備,女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備等の実現に向けた検討を行っている。現在,実行計画に基づき,雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向け,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。以下「パートタイム労働法」という。),労働契約法(平成19年法律第128号),労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)の改正を含む「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」を第196回通常国会に提出した。

平成29年6月には,今後も女性の就業率の上昇や,保育の利用希望の増加が見込まれる中,「子育て安心プラン」を公表し,2022年度末までの5年間で,女性就業率80%にも対応できるよう,約32万人分の保育の受け皿を整備することとした。さらに,同年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」に基づき,「子育て安心プラン」の早期実現を図るため同プランを前倒しし,2020年度末までに32万人分の受け皿整備を行うこととしている。同プランの実現に必要な企業主導型保育事業と保育の運営費については,事業主拠出金の法定上限の引き上げ(0.25%→0.45%)による3,000億円を充てることとし,そのために必要な措置を講ずるため,30年3月,子ども・子育て支援法の一部が改正された。

2 男女共同参画に関わりの深い制度改革の動き

平成29年度は,社会における活動や個人の生き方が多様化する中で,働きたい女性が不便さを感じ,働く意欲が阻害されることのないよう,女性活躍の視点に立った制度等の整備が進められた。

税制については,所得税法(昭和40年法律第33号)等の改正により,平成30年1月から,配偶者控除等について,配偶者の収入制限を103万円から150万円に引き上げるなどの見直しが適用されている。社会保障制度については,被用者保険の適用拡大を進めることとしており,大企業で働く短時間労働者を対象とした被用者保険の適用拡大に加えて,29年4月からは,中小企業等で働く短時間労働者についても,労使合意を前提に企業単位で適用拡大の途を開いた。

国家公務員の配偶者に係る扶養手当については,平成28年11月に一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)が改正され,29年4月から,段階的に配偶者に係る手当額を他の扶養親族と同額まで減額するなどの見直しが行われている。地方公務員の配偶者に係る扶養手当についても,ほとんどの地方公共団体で見直しが行われた。民間企業における配偶者手当については,30年1月に改訂されたモデル就業規則を活用しながら,「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について広く周知を図り,労使に対しその在り方の検討を促した。

仕事と育児等の両立支援については,保育所に入れない等の場合に最長で子が2歳に達するまで育児休業を延長できることとされた育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)の改正が平成29年10月に施行され,周知や事業所訪問等による行政指導の実施により,着実な履行確保に取り組んでいる。

女性に対するあらゆる暴力の根絶に向けては,平成28年9月の法制審議会の答申を踏まえて立案した,強姦罪の構成要件及び法定刑の見直し等並びに強姦罪等の非親告罪化を内容とする刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)が29年6月に成立し,同年7月に施行された。

3 国際的な動向への対応

2017(平成29)年5月に,イタリアG7議長国の下,G7タオルミーナ・サミットが実施された。首脳宣言で首脳はジェンダー間の平等をあらゆる政策において主流化することに引き続きコミットし,また,女性及び女児の経済的エンパワーメントを促進するため,「ジェンダーに配慮した経済環境のためのG7ロードマップ」を採択した。同年9月,ベトナムのフエで開催されたアジア太平洋経済協力(以下「APEC」という。)女性と経済フォーラムでは,「変わりゆく世界における女性の包摂及び経済的エンパワーメントの強化」をテーマに,APEC域内で共通して取り組むべき課題について議論が行われ,フォーラムの結果は「女性と経済に関するハイレベル会合声明」として採択され,我が国からは内閣府,民間からの代表者等が参加し,我が国がAPEC及び国内にて実施している女性の活躍推進の取組等について発言を行った。同年11月にイタリアのタオルミーナで開催されたG7男女共同参画担当大臣会合には,内閣府大臣政務官が参加した。また,同月,女性が輝く社会を実現するための取組の一環として,4回目となる国際女性会議WAW!2017(World Assembly for Women)を開催した。(第13章第2節5参照)。