コラム7 乳がん治療と仕事を両立できる職場づくりに向けた取組~NPO法人ビーシーアンドミー古田代表の挑戦~

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コラム7

乳がん治療と仕事を両立できる職場づくりに向けた取組~NPO法人ビーシーアンドミー古田代表の挑戦~


古田 智子(ふるた ともこ)
NPO法人ビーシーアンドミー代表理事。
1965年生まれ。東京都出身。国・地方公共団体を事業領域としたシンクタンク等を経て,2013年2月,株式会社LGブレイクスルー設立。14年7月,乳がんと診断され,8月に温存手術,その後,放射線治療,抗がん剤治療を行い,現在はホルモン療法中。16年4月,NPO法人ビーシーアンドミーを設立し,企業研修のほか,東京都浴場組合と協力して,公衆浴場で乳がん検診を啓発する「おっぱい銭湯」等の取組を実施。

古田 智子(ふるた ともこ)

乳がん患者数は年々増加しており,平成25年現在,女性の11人に1人は一生のうちに乳がんと診断されると言われており,誰もが罹り得る病気である。また,乳がんの罹患のピークには,職場でも家庭でも多くの責任を持つ40代後半の働き盛り世代が含まれる。

官公庁ビジネスソリューション事業を経営する古田智子さんも,平成26年,起業直後に40代で乳がんに罹患した。自身が治療を行う中で初めて,乳がんは死に至る病でなく,治療後に日常生活を取り戻している患者が大勢いること,短期の入院や通院での治療が可能であり,罹患しても働き続けられるケースが多いことを実感したという。

古田さんは,自身の経験から,平成28年に,乳がん治療と仕事の両立ができる社会づくりを目指して,NPO法人ビーシーアンドミーを立ち上げた。古田さんのもとには,乳がんに罹患した方から多数の相談が寄せられるが,なかには,乳がんだと会社に告げたところ,望まない配置転換や契約解除をされたケースの他,治療と仕事の両立は無理だと考えて,本人が自発的に辞めてしまうケースもあるという。

40~50代の最も活躍する世代の女性が乳がんによりキャリアを絶たれることは,本人のみならず,人材育成に投資してきた企業にとっても大きな損失である。古田さんは,こうした思いで,乳がんに罹患した社員が働き続けられるよう,企業と協力して管理職向けの研修等の事業に取り組んでいる。

インターネット・通信関連事業を中心に,医療機関向けシステム事業,調剤薬局事業を展開する株式会社ソフィアホールディングス(東京都新宿区)は,平成29年11月,ビーシーアンドミーの企画により,「もしも上司が・部下が・同僚が乳がんになったら」と題する社員向けの研修を行った。同社の新村直樹社長によれば,医療関連の分野でビジネス展開する以上,自社においても,がん治療と仕事の両立に関するノウハウを持たなければいけないと考え,研修を実施したという。

研修への参加は任意であったにも関わらず,男性管理職も含め,社員の半数以上が参加した。参加した社員からは,仮に乳がんに罹患した場合でも,治療のサイクルに併せた仕事の段取りにより十分な成果を上げられることや,コミュニケーションの取り方などがん以外の疾患で療養している社員にも応用できることに気づいた,等との声が上がった。

ソフィアホールディングスは,現在でも,療養が必要な社員がいる場合,本人の状況を踏まえて,柔軟に対応しているが,今回の研修を一つの契機に,将来的には,治療と仕事の両立に向けた制度の整備も視野に入れているという。

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