コラム1 日本パラリンピック委員会(JPC)女性アスリートの相談窓口の設置

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コラム1

日本パラリンピック委員会(JPC)女性アスリートの相談窓口の設置


月経に伴うコンディションの低下や疾病が競技に影響を与えるのは障がい者アスリートにおいても同様である。日本障がい者スポーツ協会・日本パラリンピック委員会(JPSA/JPC)が,2016年リオパラリンピックに出場した女性アスリートを対象に行った調査では,72%の選手が,月経痛が競技に影響すると回答し,91%の選手が,月経前症候群(PMS)が競技に支障を及ぼすと回答した。しかしながら,月経対策のために婦人科を受診したことがある選手の割合は27%と,リオオリンピック出場選手の半分以下にとどまる。

障がい者アスリートの場合,これまで月経と競技との関係についてのデータがなく,対策も本人や家族任せになっていたという。こうした問題を背景に,JPCは平成29年4月,産婦人科医の能瀬さやか氏を委員長として,「JPC女性スポーツ委員会」を発足させた。同委員会は,日本障がい者スポーツ協会が主催するジャパンパラ競技大会の会場の一角に「JPC女性アスリート相談窓口」を設置し,女性特有の相談に乗る取組などを実施している。

能瀬医師によると,障がい者アスリートは健常者と比べて引退年齢が高いため,月経に限らず,出産後の競技復帰に関する相談や,更年期障害に関する相談などもあるという。また,月経対策についても,一般的に使用される機会が多い低用量ピルは血栓のリスクを伴うため,下肢の不動部位がある選手には使いにくいこと,脊椎損傷等により月経痛の感覚がない選手もいることなど,障がいの部位や程度に応じた個別の対応が求められる。

相談窓口には,選手本人のほか,親やコーチも訪れる。知的障がいを持つ選手の親の中には,選手の月経対策について,選手が頼れるのは親である自分だけという思いで,長年,独自に対処してきたケースもあるという。競技大会という身近な場所で,アスリートの診療経験を豊富に持つ医師に体の悩みを相談できることは,選手本人にとってだけでなく,親やコーチにとっても大きな支えとなっている。なお,競技大会での相談状況や利用者の声を背景に,東京大学医学部附属病院女性診療科・産科の「女性アスリート外来」では,メールで常時医師等に相談できる障がい者女性アスリート専用の相談窓口も設置している。

〈ジャパンパラ水泳・陸上競技大会での相談の様子〉

〈ジャパンパラ水泳・陸上競技大会での相談の様子〉

〈ジャパンパラ水泳・陸上競技大会での相談の様子〉