第2節 男女共同参画の視点に立った国際貢献

本編 > II > 第1部 > 第16章 > 第2節 男女共同参画の視点に立った国際貢献

第2節 男女共同参画の視点に立った国際貢献

1 「開発協力大綱」に基づく取組の推進

我が国は,公正で持続可能な開発の実現に女性が参画し,開発の恩恵を受けられる「女性が輝く社会」の実現を目指し,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」策定に係る国際的な議論でも女性のエンパワーメントとジェンダー平等の重要性を訴え,議論に貢献した。その結果,2015(平成27)年9月に国連サミットにおいて策定された同アジェンダにおいてゴール5として「ジェンダー平等と女性と女児のエンパワーメント」が明記されただけでなく,すべての目標達成において必要不可欠であるとの重要性が明示された。

また,2015(平成27)年2月に閣議決定した,我が国の開発協力方針を定める「開発協力大綱」では,開発協力の適正性確保のための原則の一つとして「女性の参画の促進」を挙げており,開発協力のあらゆる段階における女性の参画を促進し,女性が公正に開発の恩恵を受けられるよう一層積極的に取り組むことを明記している。

2015(平成27)年4月にはUN Womenの日本事務所を東京に開設するとともに,UN Womenへの拠出を2013(平成25)年からの3年間で14倍に増加するなど,国連との連携を一層強化している。また,2013(平成25)年9月,安倍総理大臣が第68回国連総会において表明した,女性の地位向上を主眼とした3年で30億ドルを超す支援についても,日本は,2014年までの2年間でこれを実施した。

開発協力の実施機関として,独立行政法人国際協力機構(JICA)は,ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを目的とする協力事業を実施している。この一環として,各セクター・課題における事業のインパクトが男性・女性の双方に及ぶよう,それぞれが抱える問題やニーズの違い等の把握に努めており,その結果が協力事業の計画・実施・評価サイクルにおいて適切に反映されるように,執務参考資料や国ごとのジェンダー情報の収集を行うとともに,事業の各段階におけるジェンダー視点からのモニタリング等を行っている。

また,開発協力事業の実施に当たって,女性等社会的に弱い立場にいる者が負の影響を受けることがないように,環境社会配慮ガイドライン等に基づいて配慮している。さらに,各部署(在外事務所,国内機関を含む。)に配置している「ジェンダー責任者」,「ジェンダー担当者」を通じて,開発途上国におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントに貢献する協力事業の実施を促進している。また,ジェンダー平等の視点を組み込んで効果を上げた協力事業の成功例の収集,各開発セクター・課題と男女格差との関係を説明する具体例の収集,他援助機関との積極的な連携・意見交換を通じた事例・手法の研究,職員その他援助関係者に対する研修等といった取組を行っている。

我が国は人間の安全保障を推進すべく,二国間及び多国間協力を通じ,開発途上国におけるジェンダー平等と女性の地位向上に向けた取組を支援している。具体的には,無償資金協力(草の根・人間の安全保障無償資金協力及び日本NGO連携無償資金協力を含む。),有償資金協力,専門家の派遣等の技術協力,国連人間の安全保障基金や日・UNDPパートナーシップ基金等,様々な援助枠組みを活用し,より効果的な事業の実施を図っている(二国間協力についてはII-16-1表,多国間協力については本節3参照)。

II-16-1表 様々な枠組みを活用した援助の実施別ウインドウで開きます
第II-16-1表 様々な枠組みを活用した援助の実施

また,我が国は,人間の安全保障に直結する地球規模の課題として,保健分野における取組を重視している。我が国が2015(平成27)年12月に発表した「平和と健康のための基本方針」を踏まえ,UHCを通じた女性の医療アクセスの改善を目指し,栄養改善,母子健康手帳の普及等の母子継続ケアの支援,医師や看護師,助産師等保健人材の育成,国際機関等を通じた性と生殖の健康サービスの提供等を行っている。

教育支援分野では,2015(平成27)年9月に国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されるタイミングにあわせ,我が国の新しい教育協力政策である「平和と成長のための学びの戦略」を発表した。同戦略では,重点的な取組の一つとして,女子教育支援を挙げており,女性・女児のエンパワーメントとジェンダー平等に配慮した教育協力を実施していくこととしている。

2015(平成27)年3月にミシェル・オバマ米大統領夫人が訪日した際には,安倍昭恵総理夫人と同大統領夫人が出席する共同行事が開催され,その機会に日本政府は女児・女性のエンパワーメントとジェンダーに配慮した教育関連分野において,同年からの3年間で420億円以上のODAを実施することを表明し,支援を実施している。

法務省では,国連と共同で運営する国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)で2015(平成27)年4月に実施された第13回国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)において,女性犯罪者の社会的統合と処遇についてのワークショップを開催した。

2 女性の平和への貢献

我が国は,平和を推進する国際機関の役割の重要性及び紛争時において最も支援を必要とする者は女性や子供であることを考慮し,人間一人ひとりに着目し人々の保護及び能力強化を行う人間の安全保障の視点から,女性に対する支援を行っている。

2013(平成25)年9月より,「女性と平和,安全保障に関する安保理決議第1325号」(2000(平成12)年)及び関連決議の履行に向けた女性・平和・安全保障に関する「行動計画」の策定に向けて市民社会と意見交換を実施し,安保理決議第1325号の採択から15年目となる2015(平成27)年に我が国も「行動計画」を策定し,同年9月に発表した。同行動計画は,国内外双方の取組に対応していること,紛争関連事態のみならず自然災害時における女性の役割にも言及していることなどが特徴となっている。

また,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国連児童基金(UNICEF),国連開発計画(UNDP),国連人口基金(UNFPA)等の国際機関を通じての協力も積極的に実施している。

防衛省・自衛隊では,国際平和協力活動の現場に女性の自衛隊員を含む部隊等を派遣している。平成27年度には,国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)において,27年6月から同年12月までは13人,同年12月以降12人の女性の自衛隊員を含む部隊を派遣している。司令部要員として,25年6月以降,延べ2人の女性の自衛隊員を派遣している。また,連絡調整要員として,25年8月以降,延べ3人の女性の自衛隊員を派遣している。

また,2014(平成26)年5月の安倍総理大臣のNATO本部訪問時のラスムセンNATO事務総長(当時)との会談において,女性・平和・安全保障分野における日NATO協力として,NATO本部への我が国の女性職員の派遣について合意されたことを受け,同年12月より,女性自衛官1名をNATO本部に派遣している。当該女性自衛官はNATO女性・平和・安全保障担当特別代表のオフィスにおいて,NATOが実施する様々な活動について,女性の視点を盛り込み,女性の参画を促す助言等を行っている。

内閣府国際平和協力本部事務局では,国際平和協力隊の隊員派遣前研修を実施しており,安保理決議第1325号の要請を反映し,ジェンダーに関する講義を行っている。一般的なジェンダーに関する知識の付与だけでなく,派遣先国のジェンダー特性を含め,現地でのより効果的な活動に結び付くよう,教育を実施している。

防衛省では,国連平和維持活動における女性将校の役割の重要性に鑑み,UN Womenと国連PKO局が実施する女性将校訓練コースに対して,これまでに3名の女性自衛官を派遣している。

3 国際機関・研究機関等との連携・協力推進

2015(平成27)年は第4回世界女性会議で採択された「北京宣言」及び「北京行動綱領」の採択から20年に当たる(「北京+20」)ことから,同年9月の第70回国連総会では,「北京+20」を記念し,ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに関するグローバル・リーダーズ会合が開催され,我が国からは安倍総理大臣が出席し,我が国の取組を紹介するとともに,女性活躍促進の分野で日本が世界をリードしていく決意についてステートメントを行った。UN Womenにおいては,我が国は2011(平成23)年から2期連続で執行理事国を務めている(一期3年)。平成27年度には,UN Womenに対して2,757万ドルの拠出を行った。

また,紛争下の性的暴力について,国連アクションや紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表事務所といった国際機関との連携や国際的な議論の場を重視し,一層積極的に取り組んできている。2015(平成27)年,コンゴ民主共和国及び中央アフリカにおける案件につき,紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表の専門家チームに255万ドルの財政支援を行った。

さらに,2014(平成26)年に国連平和維持活動に従事する女性保護アドバイザーに対する訓練教材の開発及び訓練の実施や派遣要員向けの性的搾取・虐待防止のためのEラーニング・プログラム開発のため,国連PKO局に対し約52.4万ドルの財政支援を行ったほか,国連PKO幹部に女性の登用を促進することを目的として国連が開始したシニア・ウーマン・タレント・パイプライン・プロジェクトに対し,約15万ドルの財政支援を行うことを決定した。防衛省からは,国連が軍隊向けに新たに開発した訓練教材を使用し,平和維持隊員が,紛争下における性的暴力に関する状況への対応能力を強化すること等を目的としたコース(2016年1月)へ訓練生を派遣している。

なお,我が国は,2014(平成26)年以降,国際刑事裁判所の被害者信託基金に拠出を行い(累計約65万ユーロ),紛争下における女性暴力対策や被害者支援にも力を入れている。

また,男女共同参画推進連携会議においては,「国際的に連携した女性のエンパワ―メント促進」チームを組織して,「女性のエンパワ―メント原則(WEPs)」23について,我が国の企業・団体等における理解促進に向けた活動を行うなど,UN Womenの取組との連携・協力を図っている。

さらに,我が国は,国連教育科学文化機関(UNESCO)に信託基金を設置し,アジア,アフリカを中心に世界各地においてジェンダーに配慮した教育プログラムの開発や女子に対する代替的学習機会の提供等に協力している。

また,国連開発計画(UNDP)に設置した日本信託基金(日UNDPパートナーシップ基金)を通じ,女性の社会的・経済的地位の向上を図るプロジェクト等に対して,支援を実施している。これらに加え,我が国が主導して国連に設置された人間の安全保障基金では,女性及びジェンダー平等に焦点を当てたプロジェクトを支援してきている。

さらに,2016(平成28)年3月8日の「国際女性の日」に内閣府特命担当大臣(男女共同参画)からのメッセージを寄せた。

国立女性教育会館では,アジア太平洋地域における男女共同参画を推進する女性教育の人材育成を目指して「アジア太平洋地域における男女共同参画推進官・リーダーセミナー」を実施するなど,途上国における女性教育の推進の支援等を実施している。また,海外の関係機関との連携協力として,協定を結んでいる韓国女性政策研究院,韓国両性平等教育振興院,カンボジア王国女性省,フィリピン大学機構等と互いに訪問し情報交換を行うなど交流を深めた。

また,2016(平成28)年2月には「ジェンダー平等と女性の経済的エンパワーメント」をテーマとして,「NWEC国際シンポジウム」を開催し,2015(平成27)年10月にはカンボジア,タイ,フィリピン,ラオス,ミャンマー,マレーシア及びベトナムの人身取引対策に携わるメンバーを対象としたワークショップ型研修を独立行政法人国際協力機構の委託事業として実施した。

232010(平成22)年3月に,国連と企業の自主的な盟約の枠組みである国連グローバル・コンパクト(GC)と国連婦人開発基金(UNIFEM)(当時。現UN Women)が共同で作成した7原則。
◯女性のエンパワーメント原則(WEPs)
1)トップのリーダーシップによるジェンダー平等の促進,2)機会の均等,インクルージョン,差別の撤廃,3)健康,安全,暴力の撤廃,4)教育と研修,5)事業開発,サプライチェーン,マーケティング活動,6)地域におけるリーダーシップと参画,7)透明性,成果の測定,報告(内閣府仮訳)