第2節 配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進

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第2節 配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進

1 関係機関の取組及び連携に関する基本的事項

関係府省では,配偶者暴力防止法及び同法に基づく「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本的な方針」(平成25年内閣府,国家公安委員会,法務省,厚生労働省告示第1号)に沿って,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策を積極的に推進している。

全国の都道府県等には,配偶者暴力防止法に基づいて,262か所(平成28年3月現在)の配偶者暴力相談支援センターが設置されており,配偶者からの暴力に係る相談,カウンセリング,一時保護(婦人相談所のみ),自立支援等の業務を実施している。また,このうち市町村における配偶者暴力相談支援センターの数は89か所(27年12月現在)となっている。

内閣府では,配偶者からの暴力の被害者支援に役立つ法令,制度及び関係機関についての情報等を収集し,内閣府のホームページを通じ,外国語版も含め提供している。

また,地方公共団体及び民間団体等の関係者(配偶者暴力相談支援センター長,事業の企画等を担当する職員,相談員等)を対象としたワークショップ等を行う「女性に対する暴力被害者のための官官・官民連携促進事業」を実施し,地域における関係者の連携事例や先進的な取組の共有・意見交換等を通じ,官官・官民の更なる連携強化等を図った。

警察では,配偶者暴力防止法に基づき,裁判所から保護命令を発した旨の通知を受けたときは,配偶者暴力相談支援センターと連携し被害者の安全の確保を図るとともに,被害者に防犯上の留意事項を教示するなど,事案に応じた必要な措置を講じている。保護命令違反を認めたときには,検挙措置を講ずるなど厳正かつ適切に対処している。

また,各都道府県の被害者支援連絡協議会の下に設置されている性犯罪被害者支援分科会やDV・ストーカー被害者支援分科会,警察署レベルでの被害者支援地域ネットワーク等を通じて,関係機関相互の連携を強化している。

法務省の人権擁護機関は,関係機関との情報交換等を通じて,被害女性の救済に向けた連携の強化を図っている。

法務省入国管理局では,地方入国管理局等の総務課に関係機関等との窓口となるDV(配偶者からの暴力)対策事務局を設置するなどの体制を構築し,関係機関等との連携強化を図るとともに,外国人被害者の保護に努めている。

厚生労働省では,配偶者からの暴力被害者の保護及び自立支援について,婦人相談所と関係機関等との連携の強化を図っている。具体的には,各都道府県による,婦人相談所と福祉事務所,民間シェルター等関係機関との定期的な連絡会議・事例検討会議の開催や関係機関の情報を掲載したパンフレット等の作成を促進している。

2 相談体制の充実

内閣府では,配偶者暴力相談支援センターにおいて,被害者に配慮した相談対応が行われるようにするため,相談員等に研修を実施している。

警察では,各都道府県警察の相談窓口の利便性を向上させ,被害者からの事情聴取に当たっては,プライバシーの保護に配意されたソフトな雰囲気の相談室等で行うなどして,被害者が相談・申告しやすい環境の整備を図っている。

法務省の人権擁護機関では,法務局等における人権相談所,「女性の人権ホットライン」及びインターネットによる人権相談受付窓口において,配偶者からの暴力を含めた相談に応じているほか,被害者の申告等により,配偶者からの暴力事案を認知した場合は,速やかに所要の調査を行い,必要に応じて,配偶者暴力相談支援センター,警察等と連携を図りながら,被害者に必要な助言,一時保護施設への紹介等の援助をし,加害者に対しては,事案に応じて,改善を求める説示等の措置を講じている。

厚生労働省では,婦人相談所におけるDV等に関する相談・援助等において,弁護士等による法的な調整や援助を得る「法的対応機能強化事業」を実施している。

3 被害者の保護及び自立支援

内閣府では,地方公共団体及び民間団体等の配偶者暴力被害者支援の関係者を対象としたワークショップにおいて,被害者の自立支援に関する情報提供を行っている。

また,社会内における加害者更生プログラムに関する現在の課題や今後の在り方等について考察するため,「配偶者等に対する暴力の加害者更生に係る実態調査研究」を実施した。

警察では,女性に対する暴力の被害者に対して,加害者の検挙の有無にかかわらず,事案に応じた必要な自衛措置等暴力による被害の発生を防止するための措置について指導及び助言を行っている(本章第1節3参照)。

また,ストーカー事案や配偶者からの暴力事案等の被害者等が相談に訪れた際,事案の危険性や被害の届出及び警察の執り得る措置を図示しながら分かりやすく説明する「被害者の意思決定支援手続」等を実施しているほか,危険性・切迫性の高い被害者等の安全を確保するため,緊急・一時的に被害者等を避難させる必要がある場合にホテル等の宿泊施設への一時避難にかかる費用について,公費負担を行う措置を講じている。

婦人相談所では,被害者及び同伴する家族の一時保護を実施するとともに,厚生労働大臣が定める基準を満たす民間シェルター等に一時保護を委託している。また,厚生労働省では,婦人相談所一時保護所及び婦人保護施設において配偶者からの暴力被害者等の心のケア対策を行う心理療法担当職員や同伴児童へのケアを行う指導員の配置を促進している。

国土交通省では,被害者の居住の安定確保のため,地域の実情を踏まえた地方公共団体の判断による公営住宅への優先入居や目的外使用を行うことができるよう措置している。

法務省入国管理局では,配偶者からの暴力の被害者である外国人を認知した場合,関係機関と連携して被害者の身体の保護を確実なものとする一方,被害者からの在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請や,配偶者からの暴力に起因して不法残留等の入管法違反状態となっている被害者について,個々の事情に十分配慮の上,事案に応じ,人道上適切に対応している。

4 関連する問題への対応

(1)児童虐待への適切な対応

厚生労働省では,児童虐待の発生予防から自立支援までの一連の対策の更なる強化を図っている(第4章第3節1参照)。

(2)交際相手からの暴力への対応

配偶者暴力相談支援センターでは,交際相手からの暴力被害を受けた者からの相談に対応している。

警察では,交際相手からの暴力について,被害者等の生命・身体の安全の確保を最優先に,刑罰法令に抵触する事案については,検挙その他の措置を講じ,刑罰法令に抵触しない事案についても,被害者に対する防犯指導,加害者への指導警告等事案に応じた措置を講じている。

婦人相談所では,恋人からの暴力の被害女性についても,売春防止法(昭和31年法律第118号)に基づく運用により,一時保護を含め,支援の対象としている。

(3)ストーカー行為等への厳正な対処等

警察では,ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号。以下「ストーカー規制法」という。)その他の法令を積極的に適用したストーカー行為者の検挙を行っているほか,同法に基づき,つきまとい等に対する警告,禁止命令等の行政上の措置を適切に講じている。

また,ストーカー規制法その他の刑罰法令に抵触しない事案についても,防犯指導,関係機関の教示等や,必要に応じて相手方に対する指導警告を行うなど,被害女性の立場に立った対応に努めている。

さらに,「被害者の意思決定支援手続」の実施等の取組を推進している(本節3参照)ほか,ストーカー規制法に基づき,自衛措置の教示等の警察本部長等による援助を被害者からの申出内容に応じて的確に実施している。

加えて,関係機関・団体,関係事業者等との連携を強化するとともに,警察庁ウェブサイト内にポータルサイトを開設するなどの広報啓発活動,ストーカー事案の実態把握やストーカー加害者に対する精神医学的・心理学的手法に関する調査研究,ストーカー対策実務担当者の教育等を進めている。

その他,「すべての女性が輝く政策パッケージ」(平成26年10月10日すべての女性が輝く社会づくり本部決定)中で「ストーカー対策の抜本的強化につき総合対策をとりまとめる」とされたことを受け,内閣府と共催している関係省庁会議において「ストーカー総合対策」(平成27年3月20日ストーカー総合対策関係省庁会議)を取りまとめた。「女性活躍加速のための重点方針2015」では,同対策に基づく取組の確実な実施を図ることとされた。