第2節 多様なライフスタイルに対応した子育てや介護の支援

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第2節 多様なライフスタイルに対応した子育てや介護の支援

1 全ての子育て家庭に向けた子育て支援策の充実

(1)総合的な子育て支援の推進

政府は,「少子化社会対策大綱」(平成27年3月閣議決定)に基づき,結婚・妊娠・出産・子育ての各段階に対応した総合的な少子化対策を推進している。

内閣府は,地域少子化対策強化交付金を活用し,地域の実情に応じた先駆的な少子化対策の取組を行う地方公共団体を支援した。

また,新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度として平成27年4月から本格施行された子ども・子育て支援新制度(以下「新制度」という。)では,「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に,(ア)認定こども園,幼稚園,保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設,(イ)認定こども園制度の改善及び(ウ)地域の実情に応じた子供・子育て支援の充実を図ることとしている。実施主体は基礎自治体である市町村であり,地域の実情等に応じて幼児期の学校教育・保育及び地域の子供・子育て支援に必要な給付・事業を計画的に実施していくこととしている。

その後,消費税率の引上げが延期される中にあって,「量的拡充」はもちろん,消費税率10%への引上げを前提とした「質の向上」を全て実施するために必要な予算を確保した上で,平成27年4月から新制度が本格施行された。施行後は各地方公共団体において直面している運営上の課題等に関する情報交換・意見交換等を行い,状況の把握に努めるとともに,パンフレットやQ&Aの作成,説明会の開催等を通じて,保護者や事業者,地方公共団体等の関係者に新制度の周知を図り,制度の円滑な運用に努めている。

また,新制度の施行にあわせて,内閣府に「子ども・子育て本部」を設置し,認定こども園,幼稚園,保育所に対する共通の給付や小規模保育等への給付等の財政支援を内閣府に一本化するとともに,一方で,学校教育法体系及び児童福祉法体系との整合性を確保する観点から,文部科学省及び厚生労働省と引き続き密接な連携を図りながら事務を実施していくこととしている。

さらに,子ども・子育て支援の提供体制の充実を図るため,事業所内保育業務を目的とする施設等の設置者に対する助成及び援助を行う事業を創設するとともに,一般事業主から徴収する拠出金の率の上限を引き上げる等の措置を講ずるため,平成28年3月,子ども・子育て支援法の一部が改正された。

加えて,地方公共団体は,次世代法に基づき,地域における子育て支援や母性,乳幼児の健康の確保・増進のほか,子供の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備等を内容とする市町村行動計画等を策定することができることとされており,子ども・子育て支援事業計画と併せて,これに基づく取組が進められている。

(2)経済的な子育て支援の充実

子育て世帯に対し,児童手当法(昭和46年法律第73号)に基づき,平成24年4月から新しい制度による児童手当が支給されている。なお,所得制限額以上の者に対しては,当分の間,特例給付が支給されている。

(3)保育サービスの整備等

厚生労働省では,喫緊の課題である待機児童の解消に向け,平成25年4月に策定した「待機児童解消加速化プラン」により,待機児童解消に意欲的に取り組む地方公共団体に対しては,その取組を全面的に支援することとしている。

子ども・子育て支援新制度では,質の高い保育・教育の提供を行うこととしている。平成27年4月1日時点の待機児童数は,23,167人で5年ぶりに増加する中,保育の受け皿拡大は喫緊の課題となっている。政府においては,待機児童の解消を目指し,「待機児童解消加速化プラン」に基づき,25年度から29年度末までに約40万人分の保育の受け皿を確保することとしており,25・26年度の2か年で合計約21.9万人分の保育の受け皿拡大を行った。また,29年度までの5か年の整備量は約45.6万人分を見込んでいる。

今後,女性の就業が更に進むことを念頭に,待機児童解消加速化プランに基づく平成29年度末までの保育の整備量を40万人から50万人へと上積みすることとしており,その実現に当たっては,保育所等の施設整備費の上積みや,新たに小規模保育の施設整備補助を創設するなど,保育の受け皿拡大を推進することとしている。

(4)放課後子ども総合プランの推進

共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに,次代を担う人材を育成するため,平成26年7月に策定された「放課後子ども総合プラン」では,一体型を中心とした放課後児童クラブ及び放課後子供教室の計画的な整備等を進めることとしている。

平成27年度においては,文部科学省の「放課後子供教室」は全国1万4,392か所(27年8月現在)で,厚生労働省の「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)」は全国2万2,608か所(27年5月現在)でそれぞれ実施している。

また,放課後児童クラブの質の向上については,放課後児童クラブの運営の多様性を踏まえつつ,放課後児童クラブにおいて集団の中で子供に保障すべき遊び及び生活の環境や運営内容の水準を明確化し,事業の安定性及び継続性の確保を図っていくため「放課後児童クラブ運営指針」を策定し,児童が安心して過ごせる生活の場としての一定の水準の質の確保及び向上を図るとともに,保護者の利用意向を反映して18時半を超えて事業を行う放課後児童クラブに賃金改善経費の上乗せに係る補助を行う「放課後児童支援員等処遇改善等事業」を拡充し,常勤職員を配置するための追加費用の補助を実施することで,更なる質の向上を図った。

(5)地域における子育て支援の拠点等の整備

文部科学省では,「幼稚園教育要領」に基づき,幼稚園の標準の教育時間(4時間)の前後や長期休業期間中等に行われる,いわゆる「預かり保育」や,子育て相談や子育てに関する情報提供,保護者同士の交流の機会の提供等,幼稚園における子育て支援活動を推進している。

預かり保育や子育て支援活動については,私立幼稚園については私学助成により支援するとともに,公立幼稚園については,地方財政措置が講じられている。

また,幼児教育の振興を図る観点から,保護者の所得状況や子供の数に応じた経済的負担の軽減等を図る「幼稚園就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,その所要経費の一部を幼稚園就園奨励費補助金により補助している。平成27年度は,市町村民税非課税世帯の保護者負担額を月額9,100円から3,000円に引下げるとともに,市町村に対する補助の重質を図った。

就学前の教育・保育への多様なニーズに対応するため,平成18年10月から開始した認定こども園制度については,新制度で認可・指導監督権限や財政支援を一本化するなどにより,更なる普及促進を図っている。

(6)地域住民等の力を活用した子育て環境の整備,交流の促進

厚生労働省では,身近な場所に子育て中の親子が気軽に集まって,相談や交流を行う「地域子育て支援拠点」の設置や,子育て家庭や妊産婦が,教育・保育施設や地域子ども・子育て支援事業,保健・医療・福祉等の関係機関を円滑に利用できるよう,身近な場所での相談や情報提供,助言等必要な支援をするとともに,関係機関との連絡調整,連携・協働の体制づくり等を行う「利用者支援事業」の推進,保護者の通院や社会参加活動,又は育児に伴う心理的・身体的負担の軽減のために児童を一時的に預かる「一時預かり事業」を推進している。

また,乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として,子供の送迎や預かり等の相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進している。

文部科学省では,身近な地域において,全ての親が家庭教育に関する学習や相談ができる体制が整うよう,家庭教育支援チームの組織化等による相談対応,保護者への学習機会や親子参加行事の企画・提供等の家庭教育を支援する活動を推進している。

また,家庭訪問等により,個別に情報提供や相談を行い,学びの場や地域社会への参加を促す「家庭教育支援における訪問型アウトリーチ支援手法」の実証研究を行うとともに,「家庭教育支援手法等に関する検討委員会」を開催し,訪問型家庭教育支援を行うためのマニュアル及び人材育成講座の開発を行った。

このほか,地域住民,学校,行政,NPO,企業等の協働による社会全体での家庭教育支援の活性化を図るため,効果的な取組事例等を活用した全国的な研究協議を行っている。

さらに,家庭教育の基盤となる,食事や睡眠等をはじめとする子供の基本的な生活習慣の定着を図るため,「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進するとともに,中高生を中心とした子供の自立的な生活習慣づくりを推進するため,家庭と学校,地域の連携による生活習慣改善のための実証研究(中高生を中心とした生活習慣マネジメント・サポート事業)を全国の7つの地方公共団体で実施した。

(7)子育てのための生活環境の整備

国土交通省では,子育てに適したゆとりある住宅・居住環境を確保するため,良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を促進するとともに,住宅金融支援機構の証券化支援事業の枠組みを利用した融資等により,良質な持家の取得を支援している。

また,公的賃貸住宅における保育所等の子育て支援施設の一体的整備や,子育て世帯の居住の安定確保を図る民間事業者等による先導的な取組を支援したほか,地方公共団体においても,地域の実情を踏まえ,子育て世帯に対し当選倍率を優遇するなどの対応を行っている。さらに,職住近接で子育てしやすい都心居住,街なか居住を実現するため,良質な住宅供給や良好な住宅市街地等の環境整備を行っている。

加えて,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備,無電柱化,交通安全施設等の整備を実施しているほか,安全で安心して利用ができる幼児送迎サービスを提供するための個別輸送サービス(STS)の普及を推進している。また,高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー法」という。)に基づく取組(第9章第2節2参照)のほか,公共交通機関や公共施設等におけるベビーカー利用がしやすい環境づくりに向けた検討を行い,ベビーカー利用に関する統一的なマーク(ベビーカーマーク)の掲出を行い,ベビーカー利用にあたっての「お願い」の周知や,普及・啓発を図るキャンペーン等を実施した。

警察では,子供連れでも安心して歩くことができるよう,最高速度30キロメートル毎時の区域規制や通行禁止等の交通規制及び信号機等の交通安全施設等の整備を図るとともに,外周となっている幹線道路における交通流の円滑化対策を実施するなど,道路交通環境の整備に努めている。

また,チャイルドシートや幼児二人同乗用自転車について,安全利用に関する講習会等を開催したほか,地方公共団体等が実施している各種支援制度の活用を通じた普及促進に積極的に取り組んだ。

さらに,高齢運転者や妊娠中の運転者等を支援するため,高齢運転者等専用駐車区間の整備に努めた。

このほか,文部科学省,国土交通省及び警察庁では,通学路における交通安全の確保に向け,学校,教育委員会,道路管理者,警察等の関係機関が連携して交通安全対策を実施するとともに,地域における定期的な合同点検の実施や対策の改善・充実等による継続的な取組を支援している。

2 多様なライフスタイルに対応した介護支援策の充実

厚生労働省では,介護支援策の充実を図るため,介護予防対策の推進や介護・福祉サービスの基盤整備,介護サービスの質の確保を図るとともに,介護従事者の処遇改善や人材の養成・確保対策を推進している(第9章第1節3参照)。