第6節 女性の活躍による経済社会の活性化

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第6節 女性の活躍による経済社会の活性化

(1)女性の活躍の推進基盤の構築

平成27年8月には女性活躍推進法が成立し,国・地方公共団体,常時雇用する労働者数が301人以上の一般事業主(民間企業等)は,女性の採用・登用等の状況を自ら把握し,課題を分析した上で,その結果を踏まえ,数値目標の設定を含めた行動計画を策定・公表することや,女性の活躍状況に関する情報を公表することなどが義務付けられた(常時雇用する労働者数が300人以下の一般事業主は努力義務)。

その後,同年9月25日に,女性の職業生活における活躍の推進に関する基本的な方向等について定める「女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針」を閣議決定したほか,内閣府では,同年11月20日,関係省庁とともに,事業主行動計画の策定に当たってのガイドラインとなる「事業主行動計画策定指針」を告示した。

厚生労働省では,平成28年4月の女性活躍推進法の全面施行に向けて,自社の女性活躍の状況把握,課題分析,行動計画策定を簡易に行える「一般事業主行動計画策定支援ツール」を作成し,事業主の取組の支援を行っている。

また,企業における女性の活躍を推進していくため,女性の活躍に積極的に取り組む企業に対する助成金制度を創設したほか,ポジティブ・アクション等に積極的に取り組む企業に対する「均等・両立推進企業表彰」を実施している。

(2)女性の活躍状況の「見える化」の推進

女性の活躍推進に向けた企業の取組を,投資家,就業希望者,消費者等から「見える」ようにすることは,当該企業の取組が市場で評価されることを通じ,他の企業にも自主的な取組が波及する好循環が期待される。

内閣府では,「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月閣議決定)を踏まえ,平成27年8月,各金融取引所に対し,各上場企業が提出する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」において,企業における役員,管理職への女性の登用状況や登用促進に向けた取組を記載するよう,同報告書記載要領の見直しを要請6した。

また,同報告書での役員への女性の登用状況等の開示状況や女性の活躍情報を中心とした非財務情報の投資における活用状況等について調査を行い,その結果を平成28年3月に公表した。

さらに,平成26年1月から「女性の活躍『見える化』サイト」を開設し,上場企業1,190社(全上場企業の33.5%)について,役員・管理職の女性比率や女性登用に関する目標のほか,男女別の平均勤続年数,新入社員の定着率,育児休業の取得者数・復職率,月平均残業時間,有休取得率等15項目のデータを公表してきたが,28年2月末には,当サイトの情報を厚生労働省のウェブサイトに移管した。

厚生労働省では,個別企業に対し,企業が自社のポジティブ・アクションの取組状況や,仕事と家庭の両立支援に係る情報を掲載できる「女性の活躍・両立支援総合サイト」を整備している。また,当該サイトと内閣府の「女性の活躍『見える化』サイト」とを統合し,新たに「女性の活躍推進企業データベース」を立ち上げ,女性活躍推進に関する個別企業の情報が一覧性をもってより解りやすく提供されるよう見直しを行った。「女性の活躍推進企業データベース」を活用した女性の活躍状況の情報開示を働きかけるとともに,「ポジティブ・アクション情報ポータルサイト」によりポジティブ・アクションに関する総合的な情報提供を行っている。

内閣府では,女性の登用に関する取組及び実績並びにそれらの情報開示において顕著な功績があった企業を対象として「女性が輝く先進企業表彰」を実施し,平成27年12月に内閣総理大臣表彰2社,内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰5社の合計7社を表彰した。

経済産業省では,平成24年度以降,女性をはじめ多様な人材の能力を活かして,イノベーションの創出,生産性向上等の成果を上げている企業を「ダイバーシティ経営企業100選」として表彰し,ダイバーシティ経営のすそ野の拡大を図っている。27年度は,「働き方改革」等の重点テーマを設定し,「新・ダイバーシティ経営企業100選」として,28年3月に34社(大企業20社,中小企業14社)を表彰した。

また,平成24年度以降,東京証券取引所と共同で,「女性活躍推進」に優れた上場企業を,「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄(「なでしこ銘柄」)として選定している。27年度は,28年3月に45社を発表した。

6要請を受け,平成27年10月,各金融取引所によりコーポレートガバナンス報告書の記載要領が改訂された。

(3)女性が活躍できるようにするための環境整備

内閣府では,女性のライフステージや個々の希望に応じた支援情報が実施機関ごとに点在しているなど,必要な情報にアクセスしにくい状況を踏まえ,様々な支援情報を集約・整理し,分かりやすく案内する「女性応援ポータルサイト」を内閣府ホームページに掲載している。

また,平成27年4月及び28年3月,企業の経営トップ等が策定・公表した「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」行動宣言の賛同者による,組織内外での取組の紹介や情報交換等を目的としたミーティングが開催された。内閣府では,行動宣言の賛同者を募るとともに,男性経営者による取組の好事例を事例集,広報誌,Facebook等で情報発信した。

女性が活躍できるようにするためには,安価で安心な家事支援サービスを利活用できる環境整備を図ることも重要である。経済産業省では,平成27年1月に品質確保に向けた家事支援サービス事業者の取組指針となる「家事支援サービス事業者ガイドライン」を策定し,27年度以降,2年間かけて当ガイドラインを活用した事業者評価の検討を行っている。28年2月には,事業者が当ガイドラインにおける担保すべき項目を満たしていることを確認できる「家事支援サービス事業者自己診断ツール」を作成した。

文部科学省では,一旦離職した地域の女性が学びを通じて社会参画することを促進するため,女性が学びを通じて様々な分野で活躍したグッド・プラクティスの収集を行い,平成28年3月にはその普及と情報交換,発信のための「女性の学び応援フェスタ」を実施した。

女性の参画が少ない分野での就業等を支援するため,国土交通省では,自動車運送事業等における女性活用に向けた取組として,「新しいタクシーのあり方検討会」や「自動車整備人材の確保・育成に関する検討会」等を立ち上げ,女性が働きやすい職場環境の整備にむけた課題抽出等を行った。

また,トラック運送業においては,荷主,運送事業者等を構成員とする協議会を立ち上げ,取引環境の改善及び長時間労働の抑制に向けた議論を本格化するとともに,女性が働きやすい職場環境の整備に向けて,ITを活用して複数人で長距離運送を分担する中継輸送の実証実験を行い,その導入促進に向けた課題抽出等を行った。さらに,国土交通省のホームページに開設した「トラガール促進プロジェクトサイト」等を活用して,経営者への啓発強化に取り組んだ。

建設業においては,平成26年8月に官民共同で策定した「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」の下,5年以内に女性の技術者・技能者の倍増を目指して様々な取組を行っている。27年度には,地域ぐるみで女性活躍を支える全国12の事業を支援,先進的な企業の事例を集めた「建設業女性の活躍応援ケースブック」を作成したほか,建設業での女性活躍推進について初の実態調査を実施した。

そのほか,女性トイレの行列解消や快適性・清潔性の向上,授乳・調乳,おむつ替えスペースの設置等について検討するため,平成27年6月に「女性が輝く社会づくりにつながるトイレ等の環境整備・利用のあり方に関する協議会」を設置した。

国立女性教育会館では,企業の管理職等を対象に,女性の活躍事例等を取り上げた「企業を成長に導く女性活躍促進セミナー」及び「ダイバーシティ推進リーダー会議」を実施した。