第3節 子供の健やかな成長と安全で安心な社会の実現

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第3節 子供の健やかな成長と安全で安心な社会の実現

1 子供に対する暴力・虐待への総合的な対策

児童虐待については,発生予防から自立支援までの一連の対策の更なる強化を図るため,平成27年12月21日に開催された第4回子どもの貧困対策会議において,「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト」が決定された。本プロジェクトには,「児童虐待防止対策強化プロジェクト」が盛り込まれており,今後は同プロジェクトに記載されている施策を着実に実施していく必要がある。

厚生労働省では,(ア)虐待の発生予防として,地域社会から孤立している家庭へのアウトリーチ支援を積極的に行うことを含め,妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を通じて,妊娠や子育ての不安,孤立等に対応し,児童虐待のリスクを早期に発見・逓減する,(イ)発生時の迅速・的確な対応として,児童虐待が発生した場合に,児童の安全を確保するための初期対応が確実・迅速に図られるよう,児童相談所の体制整備や要保護児童対策地域協議会の機能強化等を行う,(ウ)被虐待児童への自立支援として,被虐待児童について,親子関係の再構築を図るための支援を強化するとともに,施設入所や里親委託の措置が採られることとなった場合には,18歳到達後や施設退所後等も含め,個々の児童の発達に応じた支援を実施し,自立に結びつけるなどの対策を進めていくこととした。

また,平成16年から「児童虐待防止推進月間」(11月)において,児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図るため広報・啓発活動を実施している。あわせて,民間団体(認定特定非営利活動法人児童虐待防止全国ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボン運動」を後援している。

さらに,児童相談所全国共通ダイヤルについて,より広く一般に周知し,児童虐待を受けたと思われる子供を見つけた時等にためらわずに児童相談所に通告・相談ができるように,平成27年7月1日から,これまでの10桁番号(0570-064-000)から3桁番号(189)に変更し,運用を開始した。

内閣府では,本3桁番号を広く周知するため,新聞等を活用した政府広報を実施したほか,「児童虐待防止月間」を前に,児童虐待防止対策について,政府広報テレビ番組(BS)(「児童虐待防止対策」)を活用した政府広報を実施した。

警察では,各種活動を通じて児童虐待の早期把握に努めるとともに,児童相談所,学校,医療機関等の関係機関との緊密な連携を保ちながら,厳正な捜査や被害児童の支援等,児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした対応の徹底を図っている。また,「安全・安心まちづくり推進要綱」(平成26年8月一部改正)に基づき,防犯カメラの整備を促進するなど,児童が犯罪被害に遭いにくいまちづくりを積極的に推進している。

さらに,従来の検挙活動や防犯活動に加え,性犯罪等の前兆とみられる声掛け,つきまとい等の段階で行為者を特定し,検挙・警告等の措置を講じる活動(先制・予防的活動)の積極的な推進により,子供や女性を被害者とする性犯罪等の未然防止に努めている。

法務省の人権擁護機関では,子供の人権問題に関する専用相談電話「子どもの人権110番」を設置し,全国一斉「子どもの人権110番」強化週間(平成27年度は,6月22日から同月28日まで)を実施するほか,相談用の便箋兼封筒「子どもの人権SOSミニレター」を小中学生に配布したり,子供向けのインターネット人権相談受付窓口(子どもの人権SOS-eメール)を開設するなどして相談体制の充実を図っている。また,全国各地で講演会等の開催,啓発冊子の配布等,各種啓発活動を積極的に推進するとともに,人権相談,人権侵犯事件の調査処理を通じて,児童虐待の問題に取り組んでいる。

文部科学省では,平成27年7月31日に初等中等教育局長通知「一時保護等が行われている児童生徒の指導要録に係る適切な対応及び児童虐待防止対策に係る対応について」を発出し,虐待等の理由により児童相談所等で一時保護等が行われている児童生徒について,当該児童生徒が学習を行っている場合は「出席扱い」が認められること,学習を行っていない場合は欠席日数としない,いわゆる「公欠扱い」とすることを示した。

また,被害者となった児童生徒の相談等に適切に対応できるよう,学校における相談体制の充実を支援している。

2 メディア・リテラシーの向上

内閣府では,青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)及び「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第3次)」(平成27年7月子ども・若者育成支援推進本部決定。以下「青少年インターネット環境整備基本計画(第3次)」という。)に基づき,関係省庁や民間団体等と連携して,青少年及び保護者等に対する広報啓発活動や国内外の調査等の施策を実施している。

総務省では,放送分野における青少年のメディア・リテラシー(メディアからの情報を主体的に読み解き,自ら発信する能力)の向上を目的として開発した小・中・高校生向けの教材や,小・中学校教員向けの授業実践パッケージを,「放送分野におけるメディア・リテラシー」サイト3等を通じて広く公開している。また,インターネット,携帯電話等の情報通信分野におけるメディア・リテラシーの育成のため,教材4やトラブル事例集5をウェブサイト上に公開し,普及を図るとともに,地域における啓発講座等において活用している。

特に青少年のスマートフォン利用が進む中,「青少年がインターネットを安全に安心して活用するためのリテラシー指標(ILAS)」を活用して,リテラシー能力を測定するためのテスト及びアンケートを実施・分析し,その結果を平成27年11月に公表した。

総務省及び経済産業省では,関係者と連携し,フィルタリング等に関する情報提供・普及啓発活動を実施して,保護者や青少年のインターネットを適切に活用する能力の向上及びフィルタリングの普及を行っている。

3総務省 「放送分野におけるメディア・リテラシー」サイト
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/hoso/kyouzai.html

4総務省 ICTメディア・リテラシーの育成
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/media_literacy.html

5総務省 インターネットトラブル事例集
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/jireishu.html

3 児童ポルノ対策の推進

児童ポルノの排除に向け,関係省庁が連携して,国民運動の推進,画像等の流通・閲覧防止対策等を推進している(第10章第4節2参照)。

4 児童買春対策の推進

関係省庁において,児童買春の取締りの推進,被害児童に対する支援,相談体制等の充実の支援等を進めている(第10章第4節3参照)。

5 「人身取引対策行動計画2014」の積極的な推進

人身取引対策に関する関係省庁では,「人身取引対策行動計画2014」(平成26年12月犯罪対策閣僚会議決定)に基づき,子供も被害者となる人身取引対策の取組を進めている(第10章第6節参照)。

6 安心して親子が生活できる環境づくり

文部科学省では,幼児期から高等教育まで切れ目のない教育費負担の軽減のための取組を行っている(第8章第2節2参照)。

また,障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち,障害の状態等に応じ,通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校といった連続性のある「多様な学びの場」等において,特別の教育課程の編成や少人数学級の編制,特別な配慮をもって作成された教科書,専門的な知識経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備等を活用して,適切な指導及び支援を行う特別支援教育を推進している。

さらに,いじめや不登校,児童虐待等,課題を抱え孤立しがちな家庭への地域人材によるサポート体制の構築のため,国と地方公共団体等が共同して実証的研究を実施した。

厚生労働省では,子供が地域において,いつでも安心して医療サービスを受けられるよう,小児医療体制の充実を図っている(第11章第2節2参照)。

7 社会全体で子供を支える取組

文部科学省では,学校,家庭,地域住民等が地域全体で教育に取り組む体制づくりを推進する「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」を引き続き実施するとともに,平成26年度より地域の多様な経験をもつ人材や企業等の協力を得て実施する「土曜日の教育活動」を推進している。

また,平成27年4月の中央教育審議会への諮問を受け,同年12月に「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」とする答申が取りまとめられた。本答申では,地域と学校が連携・協働して,地域全体で未来を担う子供たちの成長を支え,地域を創生する地域学校協働活動を推進する新たな体制(地域学校協働本部)を全国的に整備することが提言されている。さらに,文部科学省では,本答申等の内容を推進していくため,具体的な施策と工程表をまとめた「『次世代の学校・地域』創生プラン」を28年1月に策定した。