第3節 行政分野における女性の参画の拡大

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第3節 行政分野における女性の参画の拡大

1 国の政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

(1)女性国家公務員の採用・登用等の促進

内閣官房内閣人事局及び各府省は,内閣官房内閣人事局長と全府省の事務次官級で構成する「女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会」において平成26年10月に策定された「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき,女性国家公務員の採用・登用に関する目標数値等を盛り込んだ取組計画を策定・公表し,総合的かつ計画的な取組を進めている。

人事院では,公務に優秀な女性を確保するという観点から,平成27年度において,各府省の第一線で活躍する女性行政官が重要な政策課題について講演し,併せて女性の立場から公務の魅力等を伝える「女性のためのトークライブ」を都内の大学で6講演,女子学生等に対し国家公務員の業務内容,仕事のやりがい,ワーク・ライフ・バランス等,公務の魅力を伝える「女性のための公務研究セミナー」を全国で3回実施したほか,女性向け募集パンフレットを作成するなど,女性を公務に誘致するための活動を行った。なお,人事院は,第4次基本計画が閣議決定されたことを踏まえ,各府省において女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けた具体的取組が進むよう「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けて」(平成27年12月人事院事務総長通知)を発出した。

内閣官房内閣人事局では,女性の志望者拡大に向けて,民間企業が主催する就職活動関連イベントに12回参加したほか,「女子学生霞が関インターンシップ」の実施,ホームページ,パンフレット等においてワーク・ライフ・バランスに関する取組や活躍している女性職員を紹介することなどにより,公務の魅力を積極的に発信した。また,各府省における女性国家公務員の採用・登用の拡大等の取組状況についてフォローアップを実施し,その結果を平成27年4月及び12月に公表した。

内閣府では,「女性の政策・方針決定参画状況調べ」において,国家公務員における女性の登用状況等を取りまとめて公表した。

(2)研修の機会の充実及び女性のロールモデルの発掘等

人事院では,女性職員登用に向けた環境整備の一環として,平成13年度から,女性職員を対象とした研修を実施しており,27年度においては,本府省及び地方機関の係長級女性職員等を対象に実施している「女性職員キャリアアップ研修」の実施地域,回数及び内容を拡充し,18回実施した。また,近い将来に本府省の管理職員として行政運営を担うことが期待される課長補佐級の女性職員を対象に「行政研修(課長補佐級)女性管理職養成コース」を実施した。これにより,女性職員の相互啓発等による業務遂行能力の伸長を図る機会,マネジメント能力開発,人的ネットワーク形成の機会の付与等を図り,本府省や地方機関の管理職員となり得る女性職員の人材の層を拡大していくこととしている。さらに,女性職員登用推進施策の一環として,職場単位で女性職員の登用を阻害する要因を見直し,女性職員登用のための環境を整備するため,本府省及び地方機関において各職場における人事管理・人材育成の責任を有する管理職員を対象に,「女性職員登用推進セミナー」を11回実施した。加えて,先輩職員として,女性職員を含む後輩職員に対して助言,指導するメンターとなることが予定されている職員等を対象に「メンター養成研修」を11回実施した。

内閣官房内閣人事局では,女性職員の活躍と男女双方のワーク・ライフ・バランスに資する取組を率先して行う管理職を増やすため,平成28年1月から3月にかけて本府省及び地方機関の職員を対象とした「女性活躍・ワークライフバランス推進マネジメントセミナー」を実施し,管理職に対する意識啓発を行った。また,女性職員が将来のキャリアをイメージしつつ,出産,育児等のライフイベントを経た後も成長する意欲を持つことができるよう,28年1月に各府省の若手女性職員を対象とした「若手女性職員キャリアセミナー」を実施した。さらに,様々な分野で活躍する女性職員をロールモデルとして採り上げ,これまでのキャリアパスや働き方,仕事と家庭の両立の状況等にも触れつつ,その活躍ぶりについて紹介する「女性国家公務員のワークスタイル事例集」を作成・公表した。

そのほか,各府省は,女性職員の意識・意欲の啓発・増進及び能力向上のための研修の実施に努めるとともに,人事院及び内閣官房内閣人事局の実施する研修への参加機会の確保に努めた。また,女性職員の様々な働き方やキャリア形成に応じたロールモデル,活躍事例を紹介するなどの取組を推進している。

(3)仕事と生活の調和の推進

内閣官房内閣人事局及び各府省は,取組指針や取組計画を踏まえ,「働き方改革」及び「育児・介護等と両立して活躍できるための改革」によるワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んでいる。

人事院では,各府省において育児休業等両立支援制度の取得促進を図るため,平成28年1月に,休暇や休業取得の意思決定に大きな影響を与えると考えられる,管理職員及び人事担当者を対象としたシンポジウムを開催し,部下である男性職員の育児に対する管理職員等の理解を醸成した。また,両立支援制度の計画表のひな形を各府省に提供し,管理職員等がきめ細かく男性職員の状況を把握し,育児休業等の取得を呼び掛けることを依頼した。さらに,育児休業の承認に係る期間が1か月以下の育児休業を取得した職員について,期末手当と同様に,当該育児休業により勤勉手当が減額されないよう,勤勉手当の勤務期間から当該育児休業期間を除算しないこととするため,人事院規則9-40(期末手当及び勤勉手当)の改正を行い,平成28年3月に公布した(同年4月施行)。

内閣官房内閣人事局では,男性職員の育児休業等の取得について,男性職員本人や職場の上司・同僚等の理解を深め,その取得を考えている男性職員の後押しをするため,有識者のアドバイスや制度解説等を掲載したハンドブック(「イクメンパスポート」)の作成・配布を行った。また,育児休業を取得した各府省の女性職員を対象として,育児休業後の職員の円滑な職務復帰とその後のキャリア形成に資することを目的とした「女性セミナー(育児休業取得者対象)」を平成27年7月及び28年3月に実施した。

超過勤務の縮減について,人事院では,平成27年8月の人事院勧告時の報告において,公務における超過勤務の縮減は,近年,ワーク・ライフ・バランスの推進,人材の確保等が重視される中で,職員の健康保持のみならず,これらの観点からもその重要度が増していることについて言及した。

また,政府全体として,毎年10月に実施していた「国家公務員超過勤務縮減キャンペーン週間」を改組して,平成27年7月及び8月を「ワークライフバランス推進強化月間」とし,働き方改革を具体化し,超過勤務縮減,「ゆう活(夏の生活スタイル変革)」等の取組による早期退庁の推進,テレワークの推進や休暇の取得促進等を集中的に実施した。また,国家公務員の働き方改革によるワーク・ライフ・バランスの推進を図るため,同年11月に「ワークライフバランス職場表彰」を実施し,同月間中に業務の効率化や職場環境の改善に向けた創意工夫を活かした取組を行った職場のうち,特に優秀なものについて表彰した。

(4)国の審議会等委員における女性の参画の拡大

内閣府では,「国の審議会等における女性委員の参画状況調べ」を毎年実施し,国の審議会等委員に占める女性の参画状況について調査し,府省別の参画状況等について,内閣府ホームページで公表している。また,各府省が国の審議会等の女性委員の人材情報を収集する際の参考とするため,女性人材データベースを運用している。

(5)独立行政法人,特殊法人及び認可法人における女性の参画の拡大

内閣府では,独立行政法人,特殊法人及び認可法人における女性の採用・登用状況及び女性の採用・登用の拡大に向けた取組状況について,毎年調査を行っている。また,「独立行政法人等における女性登用状況等『見える化』サイト」において,各法人の女性役員及び管理職の登用に関する目標設定の状況や現状値,採用者数,職員数,育児休業取得数等について一覧で調査結果を公表している。

2 地方公共団体の政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

(1)女性地方公務員の採用・登用の促進

内閣府では,平成28年2月,地方公共団体に対して,女性地方公務員の採用・登用推進のための取組や将来指導的地位へ成長していく人材の層を厚くするための取組等,政策・方針決定過程への女性の参画拡大に向けた取組の推進について, 各地方公共団体の実情に即し,主体的に数値目標を設定するなど積極的な取組を推進するよう,要請を行った。

総務省では,女性活躍推進法に基づいて,全ての地方公共団体が実効性のある行動計画を円滑に策定できるよう,関係府省とともに,事業主行動計画策定指針を定めた。また,行動計画策定に向けての説明会の開催や行動計画(市町村)策定例の提示等により,女性地方公務員の活躍の意義や,採用・登用等人事管理面での変革と働き方の改革を車の両輪として推進すべきことなどについて必要な助言・情報提供を行った。また,第4次基本計画の成果目標においては,都道府県・市町村について,課長以上の幹部職員のみならず,その前段階の,課長補佐・係長といった人材プールの形成を意識した女性職員の登用の数値目標を設定し,内容の周知に努めた。

消防庁では,平成27年7月,地方公共団体に対して,消防本部における女性消防吏員の更なる活躍に向けた取組の推進について通知を発出した。27年4月1日現在2.4%の消防吏員の女性比率を,38年度当初までに5%に増加させることを全国の目標とし,消防本部等に対し,数値目標の設定による女性消防吏員の計画的な増員のほか,適材適所を原則とした職域の拡大,ライフステージに応じた配慮,浴室,仮眠室等の計画的な整備等,ソフト,ハード両面の職場環境整備に取り組むよう要請を行った。また,女性消防団員のいない市町村に対して積極的な取組を求めるとともに,様々な媒体を通じて,消防団への入団を呼びかける広報を行った。さらに,女性消防団員等の技術の向上と士気の高揚を図るため,27年10月に全国女性消防操法大会を開催するとともに,パネルディスカッションや活動事例報告等を通じて女性消防団員相互の連携を深めるため,同月に全国女性消防団員活性化大会を開催した。

警察では,女性の視点を一層反映した警察運営を進めているところであり,全国で警察署長,機動隊副隊長,警察署の刑事課長等として活躍するなど,女性警察官の登用を進めている。また,各都道府県警察において,定員に占める女性警察官の割合を平成35年4月時点で約10%(全国平均)とすることなどを盛り込んだ計画が策定されているところ,女性に向けた情報発信活動を強化するなど女性警察官の採用の拡大を図っている。さらに,都道府県警察の幹部職員を対象とした研修の機会に,男女共同参画に関する施策についての教育を実施している。

(2)仕事と生活の調和の推進

内閣府では,平成28年2月に,地方公共団体に対して,地方公務員の男性職員の育児休業取得促進や仕事と生活の調和の推進等について,各地方公共団体の実情に即し,主体的に数値目標を設定するなど積極的な取組を推進するよう,要請を行った。

総務省では,夏の「ゆう活」について,各地方公共団体に対してそれぞれの地域の先頭に立って積極的に取り組むよう要請した。その結果,41都道府県,16指定都市,114市町村において「ゆう活」が実施され,そのほかにも,「ゆう活」の趣旨を踏まえた取組を実施した団体が多数に上るなど,柔軟な働き方改革に向けての意識改革につながるものとなった。また,国の動きを受けて,地方公共団体における「フレックスタイム制」の拡充に向けて,積極的に助言・情報提供を行っている。さらに,地方公共団体に対して,年次有給休暇の取得促進のほか,育児休業制度の活用,特に男性職員の育児休業取得の促進,時間外勤務の縮減等に関し,助言や情報提供を行っている。

(3)地方公共団体の審議会等委員への女性の参画の拡大

内閣府では,各都道府県・政令指定都市が設定している審議会等委員への女性の参画に関する数値目標や,これを達成するための様々な取組,女性割合の現状等を調査し公表を行った。また,平成28年2月に,地方公共団体に対し,審議会等委員等における女性の参画拡大について,地域の実情に応じて主体的に数値目標を設定するなどし,具体的な取組が進むよう,要請を行った。

3 行政分野における男女共同参画の推進方策

内閣府では,「女性の政策・方針決定参画状況調べ」の中で,国家公務員の府省別国家公務員採用試験採用者に占める女性割合や府省別の女性職員の登用状況,府省別の審議会等委員に占める女性の割合等について毎年調査し,取りまとめて公表を行っている。また,地方議会の議員に占める女性割合,地方公務員の管理職に占める女性割合,都道府県防災会議の女性委員割合等について「都道府県別全国女性の参画マップ」を作成し,内閣府のホームページに掲載している。