第2節 妊娠・出産等に関する健康支援

本編 > II > 第1部 > 第11章 > 第2節 妊娠・出産等に関する健康支援

第2節 妊娠・出産等に関する健康支援

1 妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目のない支援と経済的負担の軽減

厚生労働省では,日常生活圏において,妊娠・出産・子育てまで一貫して,健康診査,保健指導・相談対応等のサービス等が受けられるようにするための施策の推進を図っている。具体的には,妊婦健診に対する支援については,妊婦が必要な回数(14回程度)の健診を受けられるよう,市町村による公費負担が行われている。これについては,従来基金事業として行われてきたが,平成25年度以降は,基金事業が一般財源化され,地方財政措置が講じられている。また,出産直後の母子に対する心身のケア等を行う産後ケア事業を含め,各地域の特性に応じた妊娠から出産,子育て期までの切れ目ない支援を行うためのモデル事業を実施した。

さらに,21世紀における母子保健分野の国民運動計画である「健やか親子21」を計画的に推進し,母子保健サービスの一層の充実を図っている。「健やか親子21」が平成26年に終期を迎えることを踏まえ,「健やか親子21」の最終評価報告等に関する検討会において,平成25年11月には「『健やか親子21』の最終評価報告書」を,さらに26年4月には,「『健やか親子21(第2次)』について検討会報告書」を取りまとめた。第2次計画(27~36年度)では新たな指標及び目標を設けており,引き続き達成に向けた取組を進めていく。

出産育児一時金については,引き続き,支給額を原則42万円とし,妊産婦の経済的負担を軽減している。

2 周産期医療や救急医療体制,小児医療体制の充実

厚生労働省では,リスクの高い妊産婦や新生児等に高度な医療が適切に提供されるよう,周産期医療の中核となる総合周産期母子医療センター及びそれを支える地域周産期母子医療センターを整備し,地域の分娩施設との連携体制の確保等を図っている。また,「妊娠と薬情報センター」(国立成育医療センター(現独立行政法人国立成育医療研究センター)に平成17年度設置)において,薬が胎児へ与える影響等最新のエビデンス(研究成果等)を収集・評価し,その情報に基づいて,これから妊娠を希望している人や妊婦の方の相談を行っている。

さらに,安心して産科医療が受けられる環境整備の一環として,平成21年1月から,産科医療補償制度が開始されており,分娩に関連して重度脳性麻痺となった児及びその家族の経済的負担を速やかに補償するとともに,原因の分析を行い,同じような事例の再発の防止に資する情報を提供することなどにより,紛争の防止・早期解決及び産科医療の質の向上を図っている。

また,小児用医薬品・ワクチンの使用情報を収集,解析,評価し,安全対策の更なる推進を図るため,平成24年度から独立行政法人国立成育医療研究センターに「小児と薬情報センター」を設置して小児医療機関ネットワークを活用した情報収集システムの開発に向けた検討を行うとともに,国立感染症研究所においてワクチン接種と乳幼児突然死症候群との因果関係の検証のための疫学調査を進めている。

3 不妊治療に関する経済的支援,不妊専門の相談体制の充実等

厚生労働省では,不妊で悩む者が正しく適切な情報に基づきその対応について自己決定できるよう,不妊に関する多面的な相談・情報提供の充実を図ることとしており,平成26年度においても全国62ヵ所の不妊専門相談センターにおいて取組を実施した。また,不妊治療に関する調査研究を推進するとともに,高額の医療費がかかる配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成する特定不妊治療費助成事業を実施しており,不妊治療に係る近年の医学的知見を踏まえ,より安心・安全な妊娠・出産に資する適切な支援の観点から助成対象範囲を見直し,26年度から一部施行した。

4 性に関する指導・相談の実施と科学的な知識の普及

厚生労働省では,女性健康支援センターにおいて,女性の心身の健康に関する相談指導や情報提供等の支援を行っている。また,保健所等においてもHIV感染症を含む性感染症に関する相談・検査を通じて支援を行っている。

文部科学省では,学校における性に関する指導について,学習指導要領にのっとり,児童生徒の発達段階を踏まえるとともに,保護者や地域の理解を得ながら学校全体で共通理解を図って行うよう,学校関係者等に対し周知徹底を図っている。また,平成19年度から,各学校において適切な性に関する指導が実施されるよう,各地域における指導者への研修会を開催している。