第2節 障害者が安心して暮らせる環境の整備

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第2節 障害者が安心して暮らせる環境の整備

1 総合的な障害者施策の推進

障害の有無にかかわらず国民の誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を実現するため,政府は,現在,障害者基本法(昭和45年法律第84号)に基づき平成25年9月に策定された「障害者基本計画(第3次)」等に基づき,障害者施策を総合的かつ計画的に推進している。

また,全ての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け,障害者差別の解消を推進することを目的として平成25年6月に成立した障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)の施行(平成28年4月)に向け,政府における施策の基本的な方向などを示す「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」について,障害者政策委員会でのヒアリング,議論等を経て27年2月24日に閣議決定したほか,全国8か所で「障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム」等を開催し,各地における取組の促進と気運の醸成を図った。

さらに,平成25年4月以降,障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)の改正が段階的に施行されている。具体的には,基本理念の規定の創設や障害者の範囲の拡大(難病等の追加)などの改正が25年4月から施行されるとともに,障害程度区分から障害支援区分への見直しや重度訪問介護の対象拡大の改正が26年4月から施行されている。

内閣府では,「共生社会」の理念の普及を図るため,「障害者週間」(12月3日から同月9日まで)を中心に,幅広い啓発・広報活動を行っている。平成26年度の「障害者週間」行事では,「障害者フォーラム2014」において,全国から募集した「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の最優秀作品の内閣総理大臣表彰等を行うなど多様な事業を実施した。

平成26年1月に我が国が批准し,同年2月に発効した「障害者の権利に関する条約」では,特に,障害を持つ女性が複合的な差別に直面することがあるとの認識から,第6条に「障害のある女子」として,締約国が,障害のある女子が全ての人権及び基本的自由を完全かつ平等に享有することを確保するための措置をとること,女子の完全な能力開発,向上及び自律的な力の育成を確保するための全ての適当な措置をとるべきこと等が定められている。

2 障害者の自立を容易にするための環境整備

文部科学省では,障害のある児童生徒等に対する乳幼児期から成人期に至るまでの一貫した支援を行うため,早期からの教育相談・支援体制の構築,高等学校等における発達障害のある生徒へのキャリア教育の充実,発達障害に関する教職員の専門性向上に取り組むほか,障害特性に応じた教材等の在り方等についての実践的研究等を行っている。また,独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の発達障害教育情報センターにおいて,発達障害に関する正しい理解や支援等に関する様々な教育情報等を,インターネットを通じて提供し,厚生労働省とも連携をしながら,必要なコンテンツ等の充実を図っている14

政府は,「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」に基づき,障害者,高齢者,妊婦や子供連れの人を含む全ての男女が社会の活動に参加・参画し,社会の担い手として役割と責任を果たしつつ,自信と喜びを持って生活を送ることができるよう,ハード・ソフト両面にわたる社会のバリアフリー・ユニバーサルデザインの推進に取り組んでいる。

また,高齢者や障害者等の自立を支援し,介護者の負担軽減を図るため,福祉機器の開発のための実用化支援,情報バリアフリー環境の整備,高齢者等にやさしい住まいづくり,まちづくり,都市公園,交通機関,道路交通環境等高齢者や障害者等が自立しやすい社会基盤の整備を推進している。

さらに,バリアフリー法に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(最終改正平成23年国家公安委員会,総務省,国土交通省告示第1号)や交通政策基本法(平成25年法律第92号)に基づく交通政策基本計画(平成27年2月閣議決定)により,関係省庁が,住まいづくり,まちづくり,都市公園,公共交通機関及び道路交通環境の整備を推進している(II-9-1表)。

II-9-1表 高齢者や障害者等の自立を容易にする社会基盤の整備別ウインドウで開きます
III-9-1表 高齢者や障害者等の自立を容易にする社会基盤の整備

14国立特別支援教育総合研究所発達障害教育情報センター http://icedd.nise.go.jp/

3 雇用・就労の促進

文部科学省では,障害のある子供が自立し社会参加するために必要な力を培うため,特別支援学校高等部等において職業教育に係る取組を推進している。

近年の障害者雇用状況は,雇用障害者数が11年連続で過去最高を更新するなど,着実に進展している。一方,中小企業を中心に更なる障害者雇用の取組を推進する必要があることから,厚生労働省では,平成26年度においては,中小企業向けの就職面接会等を実施するなど,中小企業に重点を置いた,雇用率の達成に向けた指導を実施した。

また,精神障害等の多様な障害がある者については,ハローワークと福祉,教育,医療等の関係機関とが連携し,就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」を実施するとともに,求職者へのカウンセリング業務や企業への意識啓発を行う「精神障害者雇用トータルサポーター」をハローワークに配置するなど,障害特性に応じたきめ細かな支援を実施した。

さらに,福祉,教育から雇用への一層の促進に向けて,地域で就労と生活の両面の支援を一体的に行う「障害者就業・生活支援センター」を拡充するとともに(平成25年度319センター→26年度325センター),その機能強化を図るなど,雇用施策と福祉施策が一体となった取組を行った。