第3節 行政分野における女性の参画の拡大

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第3節 行政分野における女性の参画の拡大

1 国の政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

(1)女性国家公務員の採用・登用等の促進

第3次基本計画においては,女性国家公務員の採用について,国家公務員採用試験からの採用者に占める女性の割合を,試験の種類や区分ごとの女性の採用に係る状況等も考慮しつつ,平成27年(2015年)度末までに,政府全体として30%程度とすることを目標とすることを盛り込んでいる。女性国家公務員の登用については,27年(2015年)度末までに政府全体として,国の地方機関課長・本省課長補佐相当職以上に占める女性の割合について10%程度,国の本省課室長相当職以上に占める女性の割合について5%程度,国の指定職相当に占める女性の割合について3%程度とするよう努め,女性職員の登用を積極的に進めることとしている。その際,各府省において,女性職員の人数,割合等の現状やこれまでの採用及び人材育成の取組の進捗等を考慮して,できる限りそれぞれの割合が高まるよう取り組むこととしている。

これまで,人事院は,第3次基本計画を踏まえ,「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に関する指針」を策定(平成23年1月改定)し,これに基づき,各府省は平成27(2015)年度までの目標を設定した「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定し,具体的な取組を進めてきたところである。

平成26年6月,国家公務員法(昭和22年法律第120号)の改正を踏まえた「採用昇任等基本方針」(平成21年3月閣議決定)の改定が閣議決定され,女性職員の採用・登用の拡大や職員の仕事と生活の調和を図るための取組の促進が盛り込まれた。また,同月,内閣官房内閣人事局長と全府省の事務次官級で構成する「女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会」を設置した。同年10月,この協議会において,「働き方改革」,「育児・介護等と両立して活躍できるための改革」及び「女性の活躍推進のための改革」という三つの改革を柱とした「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」(以下「取組指針」という。)を策定・公表した。取組指針は,第3次基本計画の定める目標の達成に向けた取組とともに,平成32(2020)年度末までを視野に入れた取組内容について定めている。各府省は,取組指針に基づき,女性国家公務員の登用に関する27年度末までの新たな目標数値等を盛り込んだ取組計画を策定・公表し,総合的かつ計画的な取組を進めることとしている。

人事院では,公務に優秀な女性を確保するという観点から,平成26年度において,各府省の第一線で活躍する女性行政官が重要な政策課題について講演し,併せて女性の立場から公務の魅力等を伝える「女性のためのトークライブ」を都内の大学で7講演,女子学生等に対し国家公務員の業務内容,仕事のやりがい,ワーク・ライフ・バランスなど,公務の魅力を伝える「女性のための公務研究セミナー」を全国で3回実施したほか,女性向け募集パンフレットを作成するなど,女性を公務に誘致するための活動を行った。また,これまで採用者数の多かった法律や経済といった専攻分野以外の分野からも,公務に期待される能力を有する女性を幅広く採用できるよう,多様な受験者が受験しやすいものにする観点から,28年度より,国家公務員採用総合職試験「政治・国際」区分における専門試験の試験内容を見直すこととし,26年12月に具体的な見直しの内容を公表した。

内閣官房内閣人事局及び人事院では,共同で,各府省における女性国家公務員の採用・登用の拡大等の取組状況についてのフォローアップを実施し,その結果を平成26年9月及び12月に公表した。また,内閣官房内閣人事局では,26年9月1日現在の指定職における女性国家公務員の登用状況及び同年10月1日現在の国家公務員採用総合職試験による女性の採用内定状況を取りまとめ,同年10月に公表した。

内閣府では,「女性の政策・方針決定参画状況調べ」において,国家公務員における女性の登用状況等について取りまとめて公表するとともに,内閣府ホームページ上で,国家公務員の府省別の女性の参画状況について分かりやすい形式で公表を行っている。

(2)研修の機会の充実及び女性のロールモデルの発掘等

女性職員登用に向けた環境整備の一環として,人事院では,平成13年度から,女性職員を対象とした研修を実施しており,26年度においては,相互啓発等による業務遂行能力の伸長を図る機会を付与するとともに,マネジメント能力開発や人的ネットワーク形成の機会の付与等を図ることを目的とした研修を本府省及び地方機関の係長級女性職員等を対象として16回実施した。また,26年度から,女性職員が働きやすい勤務環境を整備するため,各職場における人事管理・人材育成の責任を有する管理職員の意識啓発を図ることを目的とした「女性職員登用推進セミナー」を,本府省及び地方機関の課長級以上の管理職員を対象に10回実施した。さらに,近い将来,本府省の管理職員として行政運営を担うことが期待される課長補佐級の女性職員を対象に25年度に試行的に実施した「行政研修(課長補佐級)女性管理職養成コース」について,その成果を踏まえて26年度に本格的に実施した。加えて,先輩職員として,女性職員を含む後輩職員に対して助言,指導するメンターとなることが予定されている職員を対象に,メンターに関する基本的な知識とコミュニケーション・スキルを習得させる目的で,「メンター養成研修」を13回実施した。

内閣官房内閣人事局では,様々な分野で活躍する女性職員をロールモデルとして採り上げ,これまでのキャリアパスや働き方,仕事と家庭の両立の状況等にも触れつつ,その活躍ぶりについて紹介する活躍事例集を作成・公表した(平成23年度から25年度までは総務省において作成・公表)。

そのほか,各府省は,女性職員の意識・意欲の啓発・増進及び能力向上のための研修の実施に努めるとともに,人事院の実施する当該研修への参加機会の確保に努めた。また,女性職員の様々な働き方やキャリア形成に応じたロールモデル,活躍事例を紹介するなどの取組を推進している。

(3)仕事と生活の調和の推進

内閣官房内閣人事局及び各府省は,取組指針や取組計画を踏まえ,「働き方改革」及び「育児・介護等と両立して活躍できるための改革」によるワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んでいる。

人事院は,育児・介護を行う職員の職業生活と家庭生活との両立を支援することが必要であるとの認識に立ち,両立支援制度の拡充及びそれを活用するための職場環境の整備に努めている。

育児休業については,「新成長戦略」(平成22年6月閣議決定)等を踏まえて,平成32(2020)年までに,政府全体として男性職員の育児休業取得率が13%となることを目指している。また,取組指針により,男性職員の配偶者出産休暇や育児参加のための休暇についても,全ての男性職員が両休暇合計5日以上取得することを目指している。

人事院では,各府省の育児休業等両立支援の取組を促進するため,平成27年2月には,「仕事と育児・介護の両立支援に関する連絡協議会」を開催するとともに,25年に育児休業を取得しなかった男性職員を対象として実施した意識調査を踏まえ,男性職員が利用可能な両立支援制度を周知するための資料を作成して各府省に配付し,男性職員及び幹部職員への周知及び意識啓発を依頼した。

内閣官房内閣人事局では,男性職員の育児休業等の取得について,男性職員本人や職場の上司・同僚等の理解を深め,その取得を考えている男性職員の後押しをするため,育児休業を取得した男性職員等による講演会の開催,体験談等をまとめたパンフレット及び有識者のアドバイスや制度解説等を掲載したハンドブックの作成・配布を行った。また,育児休業を取得した各府省の女性職員を対象として,育児休業後の職員の円滑な職務復帰とその後のキャリア形成に資することを目的とした研修を試行的に実施した。

超過勤務の縮減について,人事院では,平成26年8月の人事院勧告時の報告において,恒常的な超過勤務は,職員の健康保持のみならず,ワーク・ライフ・バランス,人材の確保等に影響を及ぼすものであり,できる限り超過勤務を行わない働き方に転換していくことは,女性の活躍推進に向けた環境整備を図る上でも極めて重要であることについて言及した。

また,政府全体として,超過勤務の縮減及び年次休暇の計画的使用の促進に取り組んでおり,毎年10月1日からの1週間,「国家公務員超過勤務縮減キャンペーン週間」を実施し,内閣官房内閣人事局では,啓発講演会の開催,ポスター及びリーフレットの作成を通じて,広く職員の意識向上を図っている。

(4)国の審議会等委員における女性の参画の拡大

国の審議会等における女性委員の割合については,第3次基本計画において,平成32年までに40%以上60%以下とするよう努めるという目標が設定されている。また,専門委員等に占める女性の割合も,32年までに30%となるように努めることとされており,各府省は目標達成に向けて取組を進めている。

内閣府では,「国の審議会等における女性委員の参画状況調べ」を毎年実施し,国の審議会等委員に占める女性の参画状況について調査分析し公表を行っている。また,各府省が国の審議会等の女性委員の人材情報を収集する際の参考とするため,女性人材データベースを運用している。さらに,内閣府ホームページ上で,府省別の国の審議会等委員に占める女性の割合について,分かりやすい形式での公表を行っている。

(5)独立行政法人,特殊法人及び認可法人における女性の参画の拡大

内閣府では,独立行政法人,特殊法人及び認可法人(以下,これらを併せて「独立行政法人等」という。)における女性の女性の採用・登用状況及び女性の採用・登用の拡大に向けた取組状況について,毎年調査を行っている。平成26年3月には,独立行政法人等における役員及び管理職の女性登用の全体目標を設定し,各府省を通じて独立行政法人等における女性登用に係る目標の設定を要請し,その上で調査を実施した。同年10月には,内閣府ホームページに「独立行政法人等における女性登用状況等『見える化』サイト」を開設し,調査結果を公表した。

2 地方公共団体の政策・方針決定過程への女性の参画の拡大

(1)女性地方公務員の採用・登用の促進

第3次基本計画では,地方公共団体の政策・方針決定過程への女性の参画の拡大を進めるため,各種施策の総合的な実施を通じ,都道府県の地方公務員試験(上級試験)からの採用者に占める女性の割合は平成27年度末までに30%程度,都道府県の本庁課長相当職以上に占める女性の割合は27年度末までに10%程度,地方公務員の男性の育児休業取得率については32年までに13%とするよう努めることとしている。

内閣府では,平成26年6月,地方公共団体に対して,女性地方公務員の採用・登用の促進等,政策・方針決定過程への女性の参画拡大に向けた取組の推進について要請を行った。

総務省では,地方公共団体に対して,地方公務員法(昭和25年法律第261号)の定める平等取扱いと成績主義の原則に基づき,女性地方公務員の採用,登用,職域拡大等に積極的に取り組むよう要請を行っている。

消防庁では,消防組織における女性消防職員の更なる積極的な採用と職域の拡大等について推進するため,各消防本部に対し,男女の区別ない平等な受験機会の提供,警防業務における職域の拡大,女性職員のための仮眠室やトイレ等の環境整備等に積極的に取り組むよう要請を行っている。また,女性消防団員のいない市町村に対して積極的な取組を求めるとともに,様々な媒体を通じて,消防団への参加を呼びかける広報を行った。さらに,意見交換会や交流を通じて女性消防団員相互の連携を深めるため,平成26年11月に全国女性消防団員活性化大会を開催した。

警察では,女性の視点を一層反映した警察運営を進めているところであり,全国で警察署長,機動隊副隊長,警察署の刑事課長等として活躍するなど,女性警察官の登用を進めている。また,各都道府県警察において,定員に占める女性警察官の割合を平成35(2023)年4月時点で約10%(全国平均)とすることなどを盛り込んだ計画が策定されているところ,今後,更に前倒しで数値目標を達成できるよう,女性に向けた情報発信活動を強化するなど女性警察官の採用の拡大を図っている。さらに,都道府県警察の幹部職員を対象とした研修の機会に,男女共同参画に関する施策についての教育を実施している。

(2)仕事と生活の調和の推進

内閣府では,平成26年6月に,地方公共団体に対して,地方公務員の男性職員の育児休業取得率の向上等,仕事と生活の調和の推進について,積極的に取り組むよう要請を行った。

総務省では,地方公共団体に対して,年次有給休暇の取得促進のほか,育児休業制度の活用や時間外勤務の縮減等に関し,助言や情報提供を行っている。

(3)地方公共団体の審議会等委員への女性の参画の拡大

内閣府では,地方公共団体に対して,各都道府県・政令指定都市が設定している審議会等委員への女性の参画に関する数値目標や,これを達成するための様々な取組,女性割合の現状等を調査し取りまとめて提供を行った。また,平成26年6月に,地方公共団体に対し,審議会等委員等における女性の参画拡大に関する要請を行った。

さらに,地方公共団体に対し,地方防災会議への女性の参画拡大等を働きかけている(第15章第4節1参照)。

3 行政分野における男女共同参画の推進方策

内閣府では,女性の参画状況の「見える化」(可視化)を進めるための取組の一つとして,府省ごとの国家公務員採用試験からの採用者や管理職(本省課室長相当職以上)に占める女性割合,男性職員の育児休業取得率及び審議会等委員に占める女性割合を分かりやすい形式で内閣府ホームページ上で公開するとともに,地方議会の議員に占める女性割合,地方公務員の管理職に占める女性割合,都道府県防災会議の女性委員割合等について「都道府県別全国女性の参画マップ」を作成し,内閣府のホームページに掲載している。

総務省では,地方公共団体に対して,地方公務員法の定める平等取扱いと成績主義の原則に基づき,女性地方公務員の採用,登用,職域拡大等に積極的に取り組むよう要請を行っている。