第3節 地域における男女の仕事と暮らし

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第3節 地域における男女の仕事と暮らし

1.就業と労働時間の状況

(女性の有業率は北陸地方で高い傾向)

地域における男女の就業状況の違いを見るため,総務省「就業構造基本調査」(平成24年)により,生産年齢人口(15~64歳人口)に占める有業者13の割合(以下「有業率」という。)を都道府県別に見ると,男性の有業率は,おおむね8割前後(全国平均81.4%)となっている(I-特-16図)。

一方,女性の有業率(全国平均63.1%)を都道府県別に見ると,71.3%(福井県)から56.8%(奈良県)まで,15%ポイント近くの違いが見られ,男性と比較して都道府県による差が大きい。女性の有業率が7割を超えているのは,福井県,石川県,山形県及び富山県であり,北陸地方に多い。反対に,女性の有業率が6割を下回るのは,奈良県,兵庫県及び大阪府であり,いずれも大阪圏である。次いで北海道及び沖縄県で低くなっているが,東京圏でも,埼玉県,神奈川県及び千葉県は,全国平均を下回っている。

I-特-16図 都道府県別生産年齢人口(15~64歳人口)に占める有業者及び就業希望者の割合(男女別,平成24年)別ウインドウで開きます
I-特-16図 都道府県別生産年齢人口(15~64歳人口)に占める有業者及び就業希望者の割合(男女別,平成24年)

I-特-16図 [CSV形式:4KB]CSVファイル

コラム4 関西発!「女性起業家応援プロジェクト」始動!

13「有業者」は,ふだん収入を得ることを目的として仕事をしており,調査日(平成24年10月1日)以降もしていくことになっている者及び仕事は持っているが現在は休んでいる者をいう。なお,ふだんの就業状態がはっきり決められない場合は,おおむね1年間に30日以上仕事をしている場合を「有業者」としている。

(女性の就業意欲は実際の有業率よりも地域差が少ない)

女性の就業状況について,実際に就業している者だけでなく,いま就業していないが就業を希望している者も含めた「就業意欲」を見るため,上記で見た有業者に,無業者14のうち就業希望者15を加えた人数が生産年齢人口に占める割合を見ると,上記で見た15%ポイント近くの差が8%ポイント弱まで縮小する(I-特-16図参照)。このことから,女性の就業意欲は,実際の有業率よりも地域差が少なく,有業率の低い地域ほど,女性の力をまだ生かし切れていない可能性があると言える。

14「無業者」とは,ふだん全く仕事をしていない者及び臨時的にしか仕事をしていない者。

15「就業希望者」は,無業者のうち就業希望のある者。

(女性の有業率が高い地域は正規雇用も多い)

女性の有業者の就業状態をさらに詳細に見ると,女性の15~64歳有業者に占める正規雇用の割合は,都道府県により,49.2%(富山県)から35.0%(埼玉県)まで,大きな差が見られる。そこで,女性の有業者に占める正規雇用の割合と女性の有業率の関係を見ると,正規雇用割合が高い都道府県で有業率も高くなる傾向が見られる(I-特-17a図)。この傾向は,未就学児の育児をしている25~44歳の女性に限定してみても,同様に見られる(I-特-17b図)。

家庭や育児の都合,柔軟な働き方をしたいなどの理由により,自ら非正規雇用を選択する女性もいるが,女性の有業率が高い地域では,正規雇用により,子育て期も含めた安定的な就業の継続が図られている可能性が示唆される。

I-特-17図 女性の正規雇用割合と有業率の関係(平成24年)別ウインドウで開きます
I-特-17図 女性の正規雇用割合と有業率の関係(平成24年)

I-特-17図 [CSV形式:7KB]CSVファイル

(男性の長時間労働は東京圏や大阪圏等に多い)

総務省「就業構造基本調査」(平成24年)により,男女の長時間労働の状況を見ると,年間就業日数200日以上の雇用者のうち週間就業時間が60時間以上の者の割合(以下「長時間労働者の割合」という。)は,男性が15.8%,女性が5.3%となっており,男性は女性の約3倍となっている(I-特-18図)。

都道府県別に見ると,男性は19.1%(京都府)から11.1%(島根県)まで,都道府県間の差が大きく,特に割合が高いのは,京都府,北海道,東京都,奈良県,埼玉県,千葉県等となっている。なお,東京圏及び大阪圏は,兵庫県を除く全ての都府県で全国平均以上となっている。

女性は,男性と比較して全般に地域差は少ないが,東京都,京都府,福岡県,北海道,神奈川県等で長時間労働者の割合が高く,男性と同じような地域的傾向が見られる。

I-特-18図 都道府県別年間就業日数200日以上の雇用者のうち週間就業時間60時間以上の者の割合(男女別,平成24年)別ウインドウで開きます
I-特-18図 都道府県別年間就業日数200日以上の雇用者のうち週間就業時間60時間以上の者の割合(男女別,平成24年)

I-特-18図 [CSV形式:44KB]CSVファイル

コラム5 配偶者が転勤しても働き続けられるネットワークづくりの試み

(男性の長時間労働が多い地域では女性の有業率が低い傾向)

ここまで見てきた就業や労働時間の状況をあわせて見ると,女性の有業率が全国平均より低く,かつ男性の長時間労働者の割合が全国平均より高い都道府県は,東京都を除く東京圏及び大阪圏の各府県,北海道並びに福岡県となっており,大都市を抱える都道府県やその近隣に多い。一方,男性の長時間労働者の割合が少ない島根県,秋田県,鳥取県及び岩手県では,いずれも女性の有業率が高くなっている。また,北陸地方及び東海地方では全県で,男性の長時間労働者の割合が全国平均を下回り,女性の有業率が全国平均以上となっている。

男性の長時間労働者の割合と,女性の有業率の関係を見ると,一定の相関が認められ(I-特-19図),男性の長時間労働が多い都道府県では女性の有業率が低い傾向にあると言える。

I-特-19図 男性の週間就業時間60時間以上の雇用者割合と15~64歳女性の有業率の関係(平成24年)別ウインドウで開きます
I-特-19図 男性の週間就業時間60時間以上の雇用者割合と15~64歳女性の有業率の関係(平成24年)

I-特-19図 [CSV形式:45KB]CSVファイル

(男女の働き方の地域差には性別役割分担意識が影響している可能性)

男性の長時間労働や,女性の有業率の地域差には,働き方や家庭の持ち方に関する意識の地域差が影響していることも考えられる。そこで,「女性活躍意識調査」により得られた男女の様々な意識に関する地域差との関係を見たところ,「自分の家庭の理想は,『夫が外で働き,妻は家庭を守る』ことだ」という考え方を肯定する者の割合が高い都道府県で,男性の長時間労働者の割合が高く,また,女性の有業率が低い傾向が見られる(I-特-20a,b図)。

女性がその希望に応じた就業を実現できるようにするためには,同時に男性の家事や育児への参画意識を高め,男性の長時間労働の是正を図ることが重要と考えられる。

I-特-20図 性別役割分担意識と男性の長時間労働及び15~64歳女性の有業率の関係別ウインドウで開きます
I-特-20図 性別役割分担意識と男性の長時間労働及び15~64歳女性の有業率の関係

"I-特-20図 [CSV形式:2KB]CSVファイル

2.子育てと地域活動の状況

(合計特殊出生率は,東京圏,大阪圏等で低い)

総務省「人口推計」によると,我が国は平成20年をピークとして人口減少局面に入っているが,少子化による人口減少は,地域経済の縮小を招くおそれのある極めて重要な問題である。そこで,地域別の現状を見るため,都道府県別に合計特殊出生率(平成25年)を見ると,東京圏や大阪圏,北海道等で低くなっており,これまで見てきた男性の長時間労働が多い地域や女性の有業率が低い地域と重なる傾向が見られる(I-特-21図)。

I-特-21図 都道府県別合計特殊出生率(平成25年)別ウインドウで開きます
I-特-21図 都道府県別合計特殊出生率(平成25年)

I-特-21図 [CSV形式:1KB]CSVファイル

なお,「女性活躍意識調査」16により,東京圏,大阪圏及び北海道の各都道府県における現実の子供数の平均値17(1.19人)を見ると,全都道府県平均(1.33人)を下回っており,合計特殊出生率と同様の傾向となっている。これらの地域では,理想の子供数の平均値(2.05人)も全都道府県平均(2.20人)を下回っていることから,もともと理想とする子供数が少ないことが,現実の子供数に影響している可能性も考えられる。

16「女性活躍意識調査」は,各都道府県500人の男女に対して調査をしているため,その集計結果は各都道府県の単純平均値であり,各都道府県の人口比に応じて調査した全国集計とは異なる点に留意が必要である。

17理想と現実の子供数の平均値は,理想・現実の子供数を「0人」と回答した場合には「0」,「1人」の場合「1」,「2人」の場合は「2」,「3人」の場合は「3」,「4人」の場合は「4」,「5人以上」の場合は「5」として,回答者の人数を掛け合わせて,平均値を算出している。

(子育てを女性だけの負担にしないことが,理想の子供数を実現するために重要)

男女が理想とする子供数を実現できるようにしていくことは重要な課題であるが,「女性活躍意識調査」によると,理想の子供数が「0人」である者の割合は全都道府県平均で9.8%にとどまり,9割以上の者が1人以上の子供を欲しいと思っている一方で,理想の子供数が1人以上である者のうち現実の子供数が理想を下回る者の割合は,全都道府県平均で62.3%となっている。

理想の子供数を実現するために必要な(必要だった)ことが何かを見ると18,男女とも費用負担の面を挙げる者が最も多いが,それ以外では,男性は「配偶者が,育児と両立可能な仕事についていること」や「配偶者が,子供を産むことに同意すること」等,女性側の事情を挙げる者が比較的多い。一方,女性は「配偶者が,家事や子育てを分担すること」や「父母(又は義父母)が,家事や子育てに協力してくれること」等,夫や親からの協力のほか,「自分自身が,育児と両立可能な仕事についていること」,「地域の子育て環境(保育園など)が充実していること」等を男性よりも多く挙げている(I-特-22図)。

これらのことから,子育てを女性だけの負担とせず,家族や職場,社会がサポートできる仕組みを整えていくことが,理想の子供数の実現につながっていくと考えられる。

I-特-22図 理想子供数を実現するために必要なこと(男女別)別ウインドウで開きます
I-特-22図 理想子供数を実現するために必要なこと(男女別)

"I-特-22図 [CSV形式:2KB]CSVファイル

18脚注16に同じ。

(地域での活動は女性に多く担われている)

地域で無償で行われる様々な活動も,地域社会の活性化に重要な役割を果たしている。

総務省「社会生活基本調査」(平成23年)により,平成22年10月20日~23年10月19日の1年間にボランティア活動19に従事した者の数(行動者数)を見ると,女性が1,634万人,男性が1,361万人となっており,男性より女性が多くなっている(I-特-23図)。女性のボランティア行動者の就業状態を見ると,半数以上が,ふだん主に家事を行っている者となっている。

同調査により,ボランティア活動に従事した者の割合(行動者率)を活動内容別に男女で比較すると,女性は,子供や高齢者,障害者等を対象とする活動で,男性よりも行動者率が高い(I-特-24図)。

都道府県別の動向を見ると,男性のボランティア行動者率は,島根県,山形県等で4割近い一方で,大阪府,東京都及び神奈川県では2割を下回るなど,都道府県間のばらつきが大きい(I-特-25図)。なお,男性のボランティア行動者率が高い都道府県は,男性の長時間労働者の割合が全国平均を下回るところが多くなっている(I-特-18図参照)。男性の長時間労働の是正は,地域活動の活性化にもつながる可能性がある。

女性のボランティア行動者率は,岐阜県,岩手県及び鹿児島県の順に高くなっているが,全般に男性より都道府県間の差が小さくなっている。

I-特-23図 ボランティア活動行動者数(男女別,平成23年)別ウインドウで開きます
I-特-23図 ボランティア活動行動者数(男女別,平成23年)

I-特-23図 [CSV形式:1KB]CSVファイル

I-特-24図 ボランティア活動内容別行動者率(男女別,平成23年)別ウインドウで開きます
I-特-24図 ボランティア活動内容別行動者率(男女別,平成23年)

I-特-24図 [CSV形式:2KB]CSVファイル

I-特-25図 都道府県別ボランティア活動行動者率(男女別,平成23年)別ウインドウで開きます
I-特-25図 都道府県別ボランティア活動行動者率(男女別,平成23年)

"I-特-25図 [CSV形式:1KB]CSVファイル

コラム6 主婦の育児サークル活動が発展して地域の子育て支援の充実に

19同調査において「ボランティア活動」とは,報酬を目的としないで,自分の労力,技術,時間を提供して地域社会や個人・団体の福祉増進のために行う活動をいう(交通費程度の実費は報酬とみなさない)。

3.人口移動の状況

(東京圏への人口移動は女性が男性を上回る)

ここまで見てきた中で,東京圏については男性の長時間労働が多く,女性の有業率が低いこと,合計特殊出生率が低いこと等,様々な特徴が見られたが,他方で東京圏には,他の地域からの人口流入が多いという特色も見られる。

総務省「住民基本台帳人口移動報告」により,都道府県間の転入・転出数を見ると,男女とも東京圏への転入超過が長期的に続いている。また,東京圏への転入超過数は,平成10年以降はおおむね男女同数の状況が続いていたが,21年以降は,女性が男性を上回るようになり,26年には,女性が約6万人,男性が約5万人となっている(I-特-26図)。

なお,平成26年の東京圏への転入超過数の年齢階級別内訳を見ると,男女とも15~34歳が大半を占めており,東京圏への人口流入は若年層が中心となっている(I-特-27図)。

I-特-26図 圏域別の転入超過数の推移(男女別,昭和60→平成26年)別ウインドウで開きます
I-特-26図 圏域別の転入超過数の推移(男女別,昭和60→平成26年)

I-特-26図 [CSV形式:2KB]CSVファイル

I-特-27図 東京圏の年齢階級別転入超過数(男女別,平成26年)別ウインドウで開きます
I-特-27図 東京圏の年齢階級別転入超過数(男女別,平成26年)

I-特-27図 [CSV形式:1KB]CSVファイル

(現役世代の女性の就業拡大は東京圏で進む)

地方から東京圏への人口流入が続く中,東京圏と東京圏以外で,平成16年から26年にかけて生産年齢人口にどのような変動が生じたかを見ると,15~64歳の男性は,全国的に生産年齢人口の減少が進む中,東京圏及び東京圏以外のいずれにおいても,就業者数及び非就業者数が共に減少している(I-特-28図)。

一方,15~64歳の女性は,就業者が東京圏で62万人増加したのに対して,東京圏以外で33万人減少しており,現役世代の女性の就業の場の拡大は,東京圏に集中してきたことがわかる20

なお,就業形態別に見ると,男性及び東京圏以外の女性は,正規雇用や自営業等が減少し,非正規雇用が増えているが,東京圏の女性は,正規雇用及び非正規雇用がいずれも増加している。年齢階級別に見ると,特に25~44歳の女性で,東京圏での就業者の増加が大きくなっている。

I-特-28図 年齢階級別にみた圏域別・就業状態別の人口増減(男女別,平成16→26年)別ウインドウで開きます
I-特-28図 年齢階級別にみた圏域別・就業状態別の人口増減(男女別,平成16→26年)

I-特-28図 [CSV形式:3KB]CSVファイル

20なお,65歳以上人口は大幅に増加しており,65歳以上の女性の就業者数は,東京圏で28万人,東京圏以外で60万人増えている。

(地域とのつながりが女性の居住意向に影響)

次に,「女性活躍意識調査」により,意識の面で,都市部と地方のどちらに住むことを理想とするかを男女別に見ると21,現在の居住地域が東京圏の者及び東京圏以外の者のいずれにおいても,男性より女性の方が,都市部に住むことを理想とする者が多くなっている(I-特-29図)。

そこで,都市部に住むことを理想とする者について,その理由を男女別に見ると22,女性は「交通機関や商業・娯楽施設が充実しているから」(27.8%),「豊かな文化や流行に触れられるから」(14.4%)といった,生活・文化面を理由に挙げる者が多いが,次いで「近くに親族や知人が多いから」を挙げる者の割合が高く(10.1%),男性(5.6%)との差も大きくなっている。「仕事の機会が充実しているから」を挙げる者の割合は,女性9.8%,男性17.6%であり,女性は男性の半分程度となっている(I-特-30図)。さきに見たように,女性の就業拡大は東京圏で進んできたものの,女性は必ずしも都市部で仕事をすることにあこがれているわけではなく,生活のためや地方の就業機会が少ないこと等によりやむを得ず都市部で就業している可能性もうかがわれる。

他方,地方に住むことを理想とする者についても,その理由を見ると,男女とも「自然環境がよいから」とする者が最も多いが,女性はそれに次いで「近くに親族や知人が多いから」が多く(20.4%),男性(11.4%)との差も大きくなっている。都市部か地方かにかかわらず,地域とのつながりが女性の居住意向に影響を与えている可能性がある。

地域のつながりを生かしつつ,女性の就業意欲の高まりに対応できる就業の場の拡大が地方で進めば,地方は女性にとってより魅力ある場所となると考えられる。

I-特-29図 住むことを理想とする地域(男女別,圏域別)別ウインドウで開きます
I-特-29図 住むことを理想とする地域(男女別,圏域別)

"I-特-29図 [CSV形式:1KB]CSVファイル

I-特-30図 住むことを理想とする理由(男女別,理想とする地域別)別ウインドウで開きます
I-特-30図 住むことを理想とする理由(男女別,理想とする地域別)

I-特-30図 [CSV形式:2KB]CSVファイル

21「女性活躍意識調査」は,各都道府県500人の男女に対して調査をしているため,その集計結果は各都道府県の単純平均値であり,各都道府県の人口比に応じて調査した全国集計とは異なる点に留意が必要である。

22脚注21と同じ。