男女共同参画白書(概要版) 平成27年版

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第3節 地域における男女の仕事と暮らし

1.就業と労働時間の状況

(女性の就業意欲は実際の有業率よりも地域差が少ない)

女性の生産年齢人口(15~64歳人口)に占める有業者の割合(以下「有業率」という。)を都道府県別に見ると,71.3%(福井県)から56.8%(奈良県)まで,15%ポイント近くの違いが見られ,男性と比較して都道府県による差が大きい。

有業者に,無業者のうち就業希望者を加えた人数が生産年齢人口に占める割合を都道府県別に見ると,上記でみた15%ポイント近くの差が8%ポイント弱まで縮小する(I-特-16図)。女性の就業意欲は,実際の有業率よりも地域差が少なく,有業率の低い地域ほど,女性の力をまだ生かし切れていない可能性があると言える。

I-特-16図 都道府県別生産年齢人口(15~64歳人口)に占める有業者及び就業希望者の割合(男女別,平成24年)

(女性の有業率が高い地域は正規雇用も多い)

女性の15~64歳有業者に占める正規雇用の割合と女性の有業率の関係を見ると,正規雇用割合が高い都道府県で有業率も高くなる傾向が見られる。この傾向は,未就学児の育児をしている25~44歳の女性に限定してみても,同様に見られる。

女性の有業率が高い地域では,正規雇用により,子育て期も含めた安定的な就業の継続が図られている可能性が示唆される。

(男女の働き方の地域差には性別役割分担意識が影響している可能性)

年間就業日数200日以上の雇用者のうち週間就業時間が60時間以上の者の割合(平成24年。以下「長時間労働者の割合」という。)を都道府県別に見ると,男性は19.1%(京都府)から11.1%(島根県)まで,都道府県間の差が大きい。

また,男性の長時間労働者の割合が高い都道府県では,女性の有業率が低い傾向にある。

男性の長時間労働や女性の有業率と,男女の様々な意識との関係を見たところ,「自分の家庭の理想は,『夫が外で働き,妻は家庭を守る』ことだ」という考え方を肯定する者の割合が高い都道府県で,男性の長時間労働者の割合が高く,また,女性の有業率が低い傾向が見られる(I-特-20図)。

女性がその希望に応じた就業を実現できるようにするためには,同時に男性の家事や育児への参画意識を高め,男性の長時間労働の是正を図ることが重要と考えられる。

I-特-20図 性別役割分担意識と男性の長時間労働及び15~64歳女性の有業率の関係

2.子育てと地域活動の状況

(合計特殊出生率は,東京圏,大阪圏等で低い)

都道府県別に合計特殊出生率(平成25年)を見ると,東京圏や大阪圏,北海道等で低く,男性の長時間労働が多い地域や女性の有業率が低い地域と重なる傾向が見られる。

(子育てを女性だけの負担にしないことが,理想の子供数を実現するために重要)

理想の子供数が1人以上である者のうち,現実の子供数が理想を下回る者の割合(平成27年)は,全都道府県平均で62.3%となっている。理想の子供数を実現するために必要な(必要だった)ことを見ると,男女とも費用負担の面を挙げる者が最も多いが,それ以外では,女性は,夫や親からの協力のほか,「自分自身が,育児と両立可能な仕事についていること」,「地域の子育て環境(保育園など)が充実していること」等を男性よりも多く挙げている(I-特-22図)。

子育てを女性だけの負担とせず,家族や職場,社会がサポートできる仕組みを整えていくことが,理想の子供数の実現につながっていくと考えられる。

I-特-22図 理想子供数を実現するために必要なこと(男女別)

(地域での活動は女性に多く担われている)

平成22年10月~23年10月にボランティア活動に従事した者の数(行動者数)は,男性より女性が多い。女性のボランティア行動者の半数以上が,ふだん主に家事を行っている者となっている。

都道府県別に見ると,男性のボランティア行動者率が高い都道府県は,男性の長時間労働者の割合が全国平均を下回るところが多くなっている。男性の長時間労働の是正は,地域活動の活性化にもつながる可能性がある。

3.人口移動の状況

(東京圏への人口移動は女性が男性を上回る)

東京圏への転入超過数は,平成21年以降,女性が男性を上回っている(I-特-26図)。

平成26年の東京圏への転入超過数の年齢階級別内訳を見ると,男女とも15~34歳が大半を占めており,東京圏への人口流入は若年層が中心となっている。

I-特-26図 圏域別の転入超過数の推移(男女別,昭和60→平成26年)

(現役世代の女性の就業拡大は東京圏で進む)

平成16年から26年にかけて,15~64歳の女性の就業者は,東京圏で62万人増加したのに対して,東京圏以外で33万人減少しており,現役世代の女性の就業の場の拡大は,東京圏に集中してきた。

(地域とのつながりが女性の居住意向に影響)

都市部又は地方に住むことを理想とする理由について男女別に見ると,都市部及び地方のいずれにおいても,女性は男性と比較して,「近くに親族や知人が多いから」を挙げる者の割合が高い(I-特-30図)。

地域のつながりを生かしつつ,女性の就業意欲の高まりに対応できる就業の場の拡大が地方で進めば,地方は女性にとってより魅力ある場所となると考えられる。

I-特-30図 住むことを理想とする理由(男女別,理想とする地域別)