第2節 配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進

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第2節 配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等の推進

1 関係機関の取組及び連携に関する基本的事項

平成25年6月,配偶者暴力防止法が改正されたことに伴い,同法に基づく「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針」(平成20年内閣府,国家公安委員会,法務省,厚生労働省告示第1号)を改正し,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本的な方針」(平成25年内閣府,国家公安委員会,法務省,厚生労働省告示第1号。以下「基本方針」という。)を告示した。同法及び同法に基づく基本方針は,平成26年1月3日に施行され,関係府省では,これらに沿って,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策を積極的に推進している。

全国の都道府県等には,配偶者暴力防止法に基づいて,238か所(平成26年3月現在)の配偶者暴力相談支援センターが設置されており,配偶者からの暴力に係る相談,カウンセリング,一時保護(婦人相談所のみ),自立支援等の業務を実施している。また,このうち市町村における配偶者暴力相談支援センターの数は65か所(平成26年3月現在)となっており,第3次基本計画における平成27年までに100か所という目標に向けて設置を促している。

男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会では,配偶者からの暴力の防止等に関する対策の実施状況のフォローアップを行っている。

内閣府では,配偶者からの暴力の被害者支援に役立つ法令,制度及び関係機関についての情報等を収集し,内閣府のホームページを通じ,外国語版も含め提供している。

また,地方公共団体及び民間団体等の関係者(配偶者暴力相談支援センター長,事業の企画等を担当する職員,相談員等)を対象としたワークショップ等を行う「女性に対する暴力被害者のための官官・官民連携促進事業」を実施し,地域における関係者の連携事例や先進的な取組の共有・意見交換等を通じ,官官・官民の更なる連携強化等を図った。

警察では,配偶者暴力防止法に基づき,裁判所から保護命令を発した旨の通知を受けたときは,配偶者暴力相談支援センターと連携し被害者の安全の確保を図るとともに,被害者に防犯上の留意事項を教示するなど,事案に応じた必要な措置を講じている。保護命令違反を認めたときには,検挙措置を講ずるなど厳正かつ適切に対処している。

また,各都道府県の被害者支援連絡協議会の下に設置されている性犯罪被害者支援分科会やDV・ストーカー被害者支援分科会,警察署レベルでの被害者支援地域ネットワーク等を通じて,関係機関相互の連携を強化している。

法務省の人権擁護機関は,関係機関との情報交換等を通じて,被害女性の救済に向けた連携の強化を図っている。

法務省入国管理局では,地方入国管理局等の総務課に関係機関等との窓口となるDV対策事務局を設置するなどの体制を構築し,関係機関等との連携強化を図るとともに,外国人被害者の保護に努めている。

厚生労働省では,配偶者からの暴力被害者の保護及び自立支援について,婦人相談所と関係機関等との連携の強化を図っている。具体的には,各都道府県において,婦人相談所と福祉事務所,民間シェルター等関係機関との定期的な連絡会議や事例検討会議を開催するとともに,事例集や関係機関の情報を掲載したパンフレットを作成・配布している。

2 相談体制の充実

内閣府では,配偶者からの暴力について相談できる窓口を知らない被害者を相談機関につなぐため,自動音声で最寄りの配偶者暴力相談支援センター等の相談窓口を案内する「DV被害者のための相談機関電話番号案内サービス(DV相談ナビ)」16を実施している。

16DV被害者のための相談機関電話番号案内サービス(DV相談ナビ)ナビダイヤル0570-0-55210(全国共通)

警察では,各都道府県警察の相談窓口の利便性を向上させ,被害者からの事情聴取に当たっては,加害者から離れた静かな場所で行うなどして,被害者が相談・申告しやすい環境の整備を図っている。

法務省の人権擁護機関では,法務局等における人権相談所,専用相談電話である「女性の人権ホットライン」及びインターネットによる人権相談受付窓口を設け,配偶者からの暴力を含めた相談に応じているほか,被害の申告等により,配偶者からの暴力事案を認知した場合は,速やかに所要の調査を行い,必要に応じて,配偶者暴力相談支援センター,警察等と連携を図りながら,被害者に必要な助言,一時保護施設への紹介などの援助をし,加害者に対しては,事案に応じて,改善を求める説示等の措置を講じている。

また,厚生労働省では,婦人相談所におけるDV等に関する相談・援助等において,弁護士等による法的な調整や援助を得る法的対応機能強化事業を実施している。

3 被害者の保護及び自立支援

内閣府では,「配偶者からの暴力の被害者の自立支援スタートアップマニュアル」を作成し,官民の配偶者暴力被害者支援の関係者を対象としたワークショップ等において活用している。

警察では,女性に対する暴力の被害者に対して,加害者の検挙の有無にかかわらず,事案に応じた必要な自衛措置等暴力による被害の発生を防止するための措置について指導及び助言を行っている(本章第1節3参照)。また,新たな取組として,ストーカー事案や配偶者からの暴力事案等の被害者等が相談に訪れた際,事案の危険性や被害の届出及び警察の執り得る措置を図示しながら分かりやすく説明する「被害者の意思決定支援手続」を実施しているほか,ストーカー事案や配偶者からの暴力事案の被害者から,被害者本人や加害者の性格等に関する項目についてアンケート方式で聴取し,危険性判定を行う「危険性判断チェック票」等を導入し,その判定結果を警察が事案の危険性判断を行う際の参考資料としている。

婦人相談所では,被害者及び同伴する家族の一時保護を実施するとともに,厚生労働大臣が定める基準を満たす民間シェルター等に一時保護を委託している。また,厚生労働省では,婦人相談所一時保護所及び婦人保護施設において配偶者からの暴力被害者等の心のケア対策を行う心理療法担当職員や同伴児童へのケアを行う指導員の配置を促進している。

国土交通省では,被害者の居住の安定確保のため,事業主体において,地域の実情を踏まえた公営住宅への優先入居や目的外使用を行うことができるよう措置している。

法務省入国管理局では,DV被害者である外国人に対しては,関係機関と連携して被害者の身体の保護を確実なものにする一方,DV被害のために別居を余儀なくされたり,提出資料が用意できない被害者から,在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請があった場合には,被害者本人の意思及び立場を十分考慮しながら,個々の事情を勘案し,人道上の観点から適切に対応している。

また,DV被害を要因として不法残留等の入管法違反となっている場合も,個々の事情を勘案し,人道上の観点から適切に対応している。

4 関連する問題への対応

(1) 児童虐待への適切な対応

児童虐待は,子どもの心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与えるため,児童虐待の防止に向け,(ア)虐待の「発生予防」,(イ)虐待の「早期発見・早期対応」,(ウ)虐待を受けた子どもの「保護・自立支援」に至るまでの切れ目のない総合的な支援体制の整備・充実を図っている(第4章第3節1参照)。


(2) 交際相手からの暴力への対応

配偶者暴力相談支援センターでは,交際相手からの暴力被害を受けた者からの相談に対応している。

警察では,交際相手からの暴力について,被害者等の生命・身体の安全の確保を最優先に,刑罰法令に抵触する事案については,検挙その他の措置を講じ,刑罰法令に抵触しない事案についても,被害者に対する防犯指導,加害者への指導警告等事案に応じた措置を講じている。

婦人相談所では,恋人からの暴力被害者についても,売春防止法(昭和31年法律第118号)に基づく運用により,従来から一時保護を含め,支援の対象としてきたところである。


(3) ストーカー行為等への厳正な対処等

警察では,ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号。以下「ストーカー規制法」という。)その他の法令を積極的に適用したストーカー行為者の検挙を行っているほか,ストーカー規制法を適切に運用し,つきまとい等に対する警告,禁止命令等の行政上の措置を講じている。また,ストーカー規制法その他の刑罰法令に抵触しない事案についても,防犯指導,関係機関の教示等や,必要に応じて相手方に対する指導警告を行うなど,被害女性の立場に立った対応に努めている。

なお,平成25年6月にはストーカー規制法の改正が行われ,電子メールの連続送信行為の規制や禁止命令等をすることができる公安委員会等の拡大,婦人相談所その他適切な施設によるストーカー被害者支援等が追記された。

また,「被害者の意思決定支援手続」の実施や「危険性判断チェック票」等の導入等の新たな取組を推進している(本節3参照)ほか,ストーカー規制法に基づき,自衛措置の教示等の警察本部長等による援助を被害者からの申出内容に応じて的確に実施している。

さらに,関係機関・団体,関係事業者等との連携を強化するとともに,広報啓発活動の推進に努めているほか,ストーカー事案の実態把握を進めている。あわせて,ストーカー対策実務担当者の教育を実施し,ストーカー行為等に対して厳正に対処している。