第2節 多様なライフスタイルに対応した子育てや介護の支援

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第2節 多様なライフスタイルに対応した子育てや介護の支援

(1) 総合的な子育て支援の推進

子どもと子育てを応援する社会の実現に向けて,平成22年度から26年度までの5年間で目指すべき施策内容と数値目標を盛り込んだ,少子化社会対策基本法(平成15年法律第133号)に基づく「少子化社会対策大綱」(平成22年1月閣議決定。以下「子ども・子育てビジョン」という。)に基づき,総合的な子育て支援を推進している。

社会保障・税一体改革においては,社会保障に要する費用の主な財源となる消費税の充当先が,現在の高齢者向けの3経費(基礎年金,老人医療,介護)から,子育てを含む社会保障4経費(年金,医療,介護,子育て)に拡大されることとなった。

この子育て分野の受け皿となる,新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度の構築については,「子ども・子育てビジョン」においても検討することとされ,政府は,子ども・子育て関連3法案を第180回国会に提出した。その後,国会の審議過程で認定こども園制度の改善等の修正等がなされ,平成24年8月10日,子ども・子育て関連3法(子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号),就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第66号),子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成24年法律第67号))が成立し,同月22日に公布された。

子ども・子育て関連3法に基づく新たな子ども・子育て支援制度では,「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に,幼児期の学校教育・保育,地域の子ども・子育て支援を総合的に推進することとしている。具体的には,(ア)認定こども園,幼稚園,保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設,(イ)認定こども園制度の改善,(ウ)地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実を図ることとしている。実施主体は基礎自治体である市町村であり,地域の実情等に応じて幼児期の学校教育・保育,地域の子ども・子育て支援に必要な給付・事業を計画的に実施していくこととしている。

さらに,地方公共団体においては,次世代法に基づき,地域における子育て支援や母性,乳幼児の健康の確保・増進等を内容とする地域行動計画が策定され,これに基づく取組が進められている。

地域行動計画は,5年を1期として全ての地方公共団体に策定が義務付けられており,都道府県及び市町村においては,平成21年度中に策定した「後期行動計画」に基づき,取組が進められた。


(2) 経済的な子育て支援の充実

子育て世帯に対する現金給付については,児童手当法の一部を改正する法律(平成24年法律第24号)が,衆議院における一部修正の上,平成24年3月に成立し,同年4月1日から新しい児童手当制度が施行された。これにより,所得制限額(例:夫婦・児童2人世帯の場合は年収960万円)未満の者に対して,3歳未満と,3歳から小学生の第3子以降については児童一人当たり月額1万5,000円,3歳から小学生の第1子・第2子と,中学生については児童一人当たり月額1万円の児童手当が支給されることになった。また,所得制限額以上の者に対しては,特例給付として,当分の間,児童一人当たり月額5,000円が支給されることになった(所得制限は平成24年6月分から適用)。なお,施設入所等児童についても,児童手当が支給されることになった。


(3) 保育サービスの整備等

厚生労働省では,平成24年度において,「安心こども基金」を積み増すとともに,事業実施期限を25年度末まで更に延長し,保育所の整備,認定こども園等の新たな保育需要への対応及び保育の質の向上のための研修等を実施し,子どもを安心して育てることができるような体制整備を進め,保育等の充実・拡充を行っている。さらに,待機児童解消の取組を加速するため,24年度補正予算により,保育士確保施策の拡充,保育士の資格取得と継続雇用の強化,保育士の処遇改善等を行い,従来より一層踏み込んだ取組を推進している。

このほか,平成23年度から実施している「国と自治体が一体的に取り組む待機児童解消『先取り』プロジェクト」に沿って,内閣府では,待機児童解消に積極的に取り組む地方公共団体の「待機児童ゼロ計画」を採択している。また,厚生労働省では,同計画を採択された地方公共団体のうち,一定の基準を満たした場合に保育所整備等の補助率かさ上げ等を実施している。

(4) 放課後子どもプランの推進

文部科学省と厚生労働省が連携し,地域社会の中で,放課後等に子どもたちの安全で健やかな居場所づくりを推進するため,放課後子ども教室と放課後児童クラブが連携して実施する「放課後子どもプラン」を平成19年度に創設し,推進を図っている。平成24年度においては,文部科学省の「放課後子ども教室事業」は全国1万98か所(平成24年6月現在)で,厚生労働省の「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)」は全国2万1,085か所(24年5月現在)でそれぞれ実施している。


(5) 地域における子育て支援の拠点等の整備

文部科学省では,幼稚園教育要領に基づき,幼稚園の標準の教育時間(4時間)の前後や長期休業期間中等に行われる,いわゆる「預かり保育」や,子育て相談や子育てに関する情報提供,保護者同士の交流の機会の提供等,幼稚園における子育て支援活動を推進している。

平成24年度においては,全国の幼稚園の教員等を対象に,幼稚園教育要領等の趣旨の理解を推進するための協議会を開催し,幼稚園における子育て支援の更なる推進を図っている。また,公立幼稚園については,地方交付税により,私立幼稚園については,私学助成等により,預かり保育や子育て支援活動を支援している。

幼稚園,保育所等のうち,(ア)就学前の子どもに教育・保育を提供する機能(保育に欠ける子どもも欠けない子どもも受け入れて教育・保育を一体的に行う機能),(イ)地域における子育て支援を行う機能(全ての子育て家庭を対象に,子育て不安に対応した相談や親子のつどいの場の提供等を行う機能)を備える施設について,都道府県知事等が認定する認定こども園制度が平成18年10月から開始された。この認定こども園の認定件数は,25年4月1日現在,全国で1,099件となっている。認定こども園制度の普及促進のため,20年度に認定こども園における課題について議論を進め,21年3月に報告を取りまとめるとともに,報告書において指摘された課題について対応してきた。24年8月に関連法が成立した「子ども・子育て支援新制度」においては,「幼保連携型認定こども園」を学校及び児童福祉施設としての法的位置づけを持つ単一の施設として認可・指導監督権限を一本化し,認定こども園・幼稚園・保育所に共通する給付(施設型給付)を創設して財政支援を一本化することなどにより,認定こども園制度の更なる普及促進を図ることとしている。

また,幼児教育の振興を図る観点から,幼稚園に通う園児の保護者に対する経済的負担の軽減や,公・私立幼稚園間における保護者負担の較差の是正を図るため,入園料や保育料等を減免する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,その所要経費の一部を幼稚園就園奨励費補助金により補助している。当該補助金は,兄弟姉妹の同時就園を条件に,第1子に対して,第2子以降の園児の保護者負担を軽減する優遇措置を講じており,平成18年度及び20年度に保護者負担の一層の軽減を図るため優遇措置の対象となる園児を拡大し,24年度は私立幼稚園における補助単価を引き上げた。


(6) 地域住民等の力を活用した子育て環境の整備,交流の促進

厚生労働省では,身近な場所に子育て中の親子が気軽に集まって,相談や交流を行う地域子育て支援拠点の設置を推進しており,平成24年度は5,968か所で実施されている。また,保護者の通院や社会参加活動,又は育児に伴う心理的・身体的負担の軽減のため,保育所や駅前等利便性の高い場所で就学前の児童を一時的に預かる一時預かり事業の取組を推進しており,同年度は7,656か所で実施されている。乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として,保育施設までの送迎や放課後の預かり,病児・病後児の預かり等の相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進しており,同年度は699か所で実施されている。

また,経済産業省では,被災地における様々な社会的課題(高齢者の介護・福祉,買い物支援,まちづくり・まちおこし等)をビジネスの手法を用いて解決するソーシャルビジネスを振興することで,被災地の高齢者や女性等の社会進出を促進し,被災地における新たな産業や雇用の創出による地域活性化を図った。また,ソーシャルビジネス事業者の資金調達ニーズに対しては,日本政策金融公庫を通じた地域活性化・雇用促進資金(社会貢献型事業関連)の活用によりソーシャルビジネス事業者に対する融資を実施することで,資金調達の円滑化に向けた環境整備を進め,事業活動の促進を図った。

文部科学省では,身近な地域において,全ての親が家庭教育に関する学習や相談ができる体制が整うよう,家庭教育支援チームの組織化等による相談対応,保護者への学習機会や親子参加行事の企画・提供等の家庭教育を支援する活動を推進している。

また,地域住民,学校,行政,NPO,企業等の協働による社会全体での家庭教育支援の活性化を図るため,効果的な取組事例等を活用した全国的な研究協議を行っている。平成24年度においては,23年度に取りまとめられた家庭教育支援の推進に関する検討委員会報告書「つながりが創る豊かな家庭教育」の提言の趣旨を踏まえ,埼玉県と鳥取県において研究協議会を開催し,全国的な啓発を行った。

さらに,家庭教育の基盤となる,食事や睡眠等を始めとする子どもの基本的な生活習慣の定着を図るため,「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進しており,企業や働く保護者向けの啓発資料として「企業と家庭で取り組む早寝早起き朝ごはん」パンフレットを作成し,全国の公民館や教育関係機関,労働関係機関等に配布して全国的な啓発を行った。独立行政法人国立女性教育会館では,家庭教育の重要性に鑑み,男女共同参画の視点を踏まえた社会全体で担う子育て支援の在り方等を学ぶための「家庭教育・次世代育成指導者研修」を実施した。


(7) 子育てのための生活環境の整備

国土交通省では,子育てに適したゆとりある住宅・居住環境を確保するため,良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を促進するとともに,住宅金融支援機構の証券化支援事業の枠組みを利用した融資等により,良質な持家の取得を支援している。

また,公的賃貸住宅における保育所等の子育て支援施設の一体的整備や,子育て世帯の居住の安定確保を図る民間事業者等による先導的な取組を支援しているほか,地方公共団体においても,地域の実情を踏まえ,子育て世帯に対し当選倍率を優遇するなどの対応を行っている。さらに,職住近接で子育てしやすい都心居住,街なか居住を実現するため,住宅の供給や良好な住宅市街地等の環境整備を行っている。

加えて,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備,無電柱化,交通安全施設等の整備を実施しているほか,安全で安心して利用ができる幼児送迎サービスを提供するための個別輸送サービス(STS:スペシャル・トランスポート・サービス)の普及を推進している。また,高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー法」という。)に基づく取組も行っている(第9章第2節2参照)。

警察では,子ども連れでも安心して歩くことができるよう,生活道路等において,最高速度時速30キロメートルの交通規制や信号機等の交通安全施設等の整備を行い,通過交通の進入抑制や速度抑制,外周となっている幹線道路における交通流円滑化等の道路交通環境の整備に努めた。

また,子育て支援の効果をも有する交通安全対策として,幼稚園・保育所等と連携したチャイルドシートの正しい使用方法に関する講習会や幼児二人同乗用自転車の安全利用に関する自転車教室を開催したほか,地方公共団体等が実施している各種支援制度の活用を通じて,チャイルドシートや幼児二人同乗用自転車の普及促進に積極的に取り組んだ。

さらに,高齢運転者や妊娠中の運転者等による駐車を支援するため,高齢運転者等専用駐車区間制度を運用した。

このほか,文部科学省,国土交通省,警察庁では,集団登校中の児童等が巻き込まれる重大な交通事故が連続して発生したことを受け,全国の公立小学校等の通学路について,学校,教育委員会,道路管理者,警察が連携し,保護者,地域住民等との協力も得て緊急合同点検を実施し,必要な対策を講ずるなど,通学路における交通安全の確保に向けた対策を推進した。