第6章 生涯を通じた女性の健康

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第6章 生涯を通じた女性の健康

本章のポイント


  • 乳児死亡率等は低下傾向。
  • 平成23年の新規HIV感染者の報告数は減少,エイズ患者の報告者数は増加し,HIV感染者は過去4位,エイズ患者は過去最多。年齢では,HIV感染者は20歳代,30歳代に集中。
  • 肥満者の割合は,男性は40歳代が最も高く34.8%,次いで50歳代が33.4%。女性は年代とともに上昇。女性は若年層を中心に必要以上の減量を行う人も多い。
  • 女性の医療施設従事医師,同歯科医師の割合は年々上昇しているが,薬局・医療施設従事薬剤師の割合はここ数年横ばい。

(乳児死亡率等は低下傾向)

女性は,妊娠や出産をする可能性もあり,生涯を通じて男性とは異なる健康上の問題に直面する。

母子保健関係の主要な指標について昭和50年から平成23年までの動向を見ると,いずれも総じて低下(改善)傾向となっている(第1-6-1図)。

第1-6-1図 母子保健関係指標の推移 別ウインドウで開きます
第1-6-1図 母子保健関係指標の推移

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(年齢別周産期死亡率)

母の年齢別周産期死亡率を見ると,19歳以下の場合に全年齢の平均より高いほか,30歳代以降は年齢とともに増加する傾向にある(第1-6-2図)。

第1-6-2図 母の年齢別周産期死亡率(平成23年)別ウインドウで開きます
第1-6-2図 母の年齢別周産期死亡率(平成23年)

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(総数では減少傾向にある人工妊娠中絶件数)

人工妊娠中絶件数及び人工妊娠中絶実施率(15歳以上50歳未満女子人口千対)について昭和50年から平成23年度までの動向を見ると,総数では件数,実施率共に総じて減少傾向にある(第1-6-3図)。また,20歳未満の件数の全年齢に占める割合は,昭和50年の1.8%から,平成14年度には13.7%となり,それ以降減少傾向にあったが,22年度以降2年連続で増加し,23年度には10.3%と,前年に比べ0.8ポイント上昇した。

第1-6-3図 年齢階級別人工妊娠中絶の推移 別ウインドウで開きます
第1-6-3図 年齢階級別人工妊娠中絶の推移

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(若年での感染が多いHIV感染者10

凝固因子製剤による感染例を除いて,平成23年末までに我が国において報告されたHIV感染者及びエイズ患者の累計数は,HIV感染者数1万3,704人,エイズ患者数6,272人となっている。

平成23年に新規で感染が報告されたHIV感染者は1,056人(第1-6-4図),エイズ患者は473人で,前年に比べてHIV感染者の報告数は減少し,エイズ患者の報告数は増加した。HIV感染者は過去4位,エイズ患者は過去最多であった。HIV感染者の推定感染地域を見ると,全体の87.2%(921件)が国内感染となっている。

感染が報告された時点の年齢で年代別に新規で感染が報告された感染者数を見ると,20歳代が全体の31.2%,30歳代が34.8%を占めており,HIV感染者は20歳代,30歳代に集中している。

第1-6-4図 HIV感染者の推移(男女別・年代別) 別ウインドウで開きます
第1-6-4図 HIV感染者の推移(男女別・年代別)

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10HIV感染者とは,HIV(ヒト免疫不全ウィルス)に感染している者を指す。一方,エイズ患者とは,HIV感染によって免疫不全が 生じ,ニューモシスティス肺炎等の日和見感染症や悪性腫瘍が発生した者を指す。

(女性のがん)

女性特有のがんとして子宮がん,乳がん等があり,これらのがんの総患者数を厚生労働省「患者調査」(平成23年)11で見ると,子宮がんは5.5万人,乳がんは19.2万人となっている。

がんは早期発見が重要であるが,厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成22年)によると,我が国における女性のがん検診の受診率(過去2年間)は,子宮がん検診においては20歳以上で32.0%,乳がん検診においては40歳以上で31.4%であり,欧米諸国と比べて低い状況にある。

11宮城県の石巻医療圏,気仙沼医療圏及び福島県を除いた数値。

(健康増進に必要な適切な自己管理)

健康増進や生活習慣病予防のためには,自ら健康管理を行うことが重要である。厚生労働省「平成23年国民健康・栄養調査」によると,肥満者の割合は,男性では,40歳代が34.8%と,他の年齢階級に比べて最も高く,次いで50歳代が33.4%となっている。女性では,年齢とともに肥満の割合が高くなる傾向にあり,60歳代以上では約4人に1人となっている。一方,低体重(やせ)の割合は,女性では,20歳代が21.9%と最も高く,次いで30歳代が13.4%となっている。

また,厚生労働省「平成22年国民健康・栄養調査」によると,生活習慣病の予防・改善を目的とした生活習慣の改善に取り組んでいる者の割合は,男性48.2%,女性55.2%である。

生活習慣病の予防・改善のために普段の生活で心がけている内容で最も多いものは,男性では「食べ過ぎないようにしている」(45.4%),女性では「野菜をたくさん食べるようにしている」(55.5%)である。一方,生活習慣病の改善に取り組んでいない理由は,男女とも「病気の自覚症状がない」と回答した者が最も多く,男性では51.6%,女性では50.9%である。運動習慣のある者の割合は,「平成23年国民健康・栄養調査」によると, 男性で35.0%,女性で29.2%と平成22年と比べて変わらない。年代別に見ると,男性は70歳以上が,女性は60歳以上が最も高く,それぞれ約5割,約4割で,男性では50歳以下では30歳代を除くといずれも2割代,女性では,年代が下がるごとに低くなり,20歳代では9.5%となっている。

(喫煙率の動向)

喫煙率の推移を男女別に見ると,男性は平成15年に46.8%だったものが23年には32.4%に低下しているが,女性は15年に11.3%だったものが23年には9.7%とほぼ横ばいで推移している。年代別に見ると,ここ数年20歳代男性の喫煙率が低下傾向にある(第1-6-5図)。

第1-6-5図 喫煙率の推移(男女別・年代別) 別ウインドウで開きます
第1-6-5図 喫煙率の推移(男女別・年代別)

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(上昇を続ける女性医師等の割合)

女性の高学歴化に伴い,医師等の専門職に進出する女性も増加しており,医療施設で働いている医師,歯科医師に占める女性の割合は引き続き上昇傾向にある。女性医師の割合は昭和51年の9.4%から平成22年の18.9%まで上昇を続けている。薬局・医療施設従事薬剤師に占める女性の割合は14年まで上昇していたが,それ以降は横ばいとなっている(第1-6-6図)。

第1-6-6図 女性の医療施設従事医師,同歯科医師,薬局・医療施設従事薬剤師の割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-6-6図 女性の医療施設従事医師,同歯科医師,薬局・医療施設従事薬剤師の割合の推移

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医師を取り巻く状況を見ると,慢性的な長時間労働,夜勤や当直等不規則な勤務形態により女性医師の中には,育児,介護等と仕事との両立が難しい者もおり,医師不足が社会問題となっている中で,特に,産婦人科医,小児科医については新規に医師になる者の多い20歳代でそれぞれ67.7%,49.6%となっている女性医師の割合が,年齢が上がるにしたがって低くなる傾向がうかがえ,こうした状況を放置すると一層深刻な問題となるおそれがある(第1-6-7図)。

第1-6-7図 年齢階級別医師数の男女比(産婦人科,小児科) 別ウインドウで開きます
第1-6-7図 年齢階級別医師数の男女比(産婦人科,小児科)

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