第2節 高齢男女の健康と自立

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第2節 高齢男女の健康と自立

(機能・障害における性差)

手段的日常生活動作(IADL:電話の使い方,買い物,家事,移動,外出,服薬の管理,金銭の管理等)や移動における障害決定要因を見ると,女性は男性に比べて手段的日常生活動作における障害を持ちにくい一方で,移動における障害を持ちやすい傾向にある。同時に,所得や配偶状況,社会関係資本といった要因も障害の発生に影響を与えることに留意する必要がある(第1-4-6図)。

第1-4-6図 障害を持つ要因 別ウインドウで開きます
第1-4-6図 障害を持つ要因

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うつ状態になる割合の予測因子を見ると,男女間で違いが見られる。男性では,離婚した者はうつ状態に移行する確率が有配偶者の3.1倍となるが,教育水準や所得,住んでいる地域の社会関係資本(地域社会とのかかわり等)のレベルについては,統計学的には有意な関係が見られない。一方,女性でも,離婚している者は有配偶者よりもうつ状態に移行する可能性は高いが,統計学的に見て差がなく,所得や教育水準が高いこと,社会関係資本の高い地区に居住していることが,うつ状態に対して予防的に作用している。つまり,男性ではうつ状態に移行するかどうかは主に世帯内の要因(配偶関係)に左右されるのに対して,女性では社会経済的要因や地域内でのつながり等地域社会における資源の質に左
右されやすいことがうかがわれる(第1-4-7図)。

第1-4-7図 うつ状態の予測因子(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-4-7 図 うつ状態の予測因子(男女別)

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(介護の状況)

介護を必要とする高齢者(要支援1-2及び要介護1-5の受給者総数)は,平成24年上半期平均で,女性が320.3万人と男性の130.4万人の約2.5倍となっている。女性は長寿ゆえに一人暮らしになる可能性が高いなどの理由により,高齢女性の介護は重要な課題である。
他方,介護の担い手としての女性を取り巻く状況を見ると,家族内の主な介護者の7割は女性である(第1-4-8図)。介護時間が「ほとんど終日」の同居の主な介護者を見ると,全体の約4分の3が女性であり,また,全体の3分の1以上を要介護者の妻が占めており,男性の方が平均寿命が短いことなどを背景に,配偶者間の老老介護の負担が女性に偏っている状況がうかがえる。また,介護に当たっている者の立場を見ると,女性では「子の配偶者」が17.2%いるが,男性では「子の配偶者」は0.3%にとどまっており,仕事と介護の両立という意味でも,女性の方が難しい立場に置かれる傾向にある(第1-4-9図)。

第1-4-8図 要介護者等から見た主な介護者の続柄 別ウインドウで開きます
第1-4-8 図 要介護者等から見た主な介護者の続柄

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第1-4-9図 介護時間が「ほとんど終日」の同居の主な介護者割合(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-4-9 図 介護時間が「ほとんど終日」の同居の主な介護者割合(男女別)

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こうした介護負担は特に女性の労働供給に影響を与えている可能性がある。総務省「労働力調査(詳細集計)」を見ると,完全失業者のうち,前職の離職理由を「介護・看護のため」とした割合は,男性で最近やや上昇しているものの,女性の方が一貫して高くなっている(第1-4-10図)。

第1-4-10図 介護・看護を理由に前職を離職した完全失業者の割合(男女別) 別ウインドウで開きます
第1-4-10 図 介護・看護を理由に前職を離職した完全失業者の割合(男女別)

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