コラム9 国際機関による相次ぐ提言

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コラム9

国際機関による相次ぐ提言


国際社会においては,ここ数年,女性の活躍を各国の経済成長の原動力にしようとの議論が活発に行われているが,とりわけ2012(平成24)年は国際機関やその幹部が日本経済の再生の観点からも女性の活躍を一層推進すべきことを指摘する機会が目立った。

OECDは2012(平成24)年4月に「日本再生のための政策 OECDの提言」を公表し,日本の将来にとって最も重要な分野の一つに男女格差の是正を挙げて,子どもを持つ全家庭に質が高く負担可能な保育サービスを提供し,両親が育児休業を平等にとれるようにすること,夫婦双方にとって働くことがメリットをもたらすよう税制度を改革すること,官民双方で女性管理職の割合に係る現実的かつ測定可能な目標を設定することなどを提言した。アンヘル・グリア事務局長は提言の公表に際して,「女性を社会に参画させなければ,日本は急速に衰退していくであろう」,「女性が社会復帰に魅力を感じるようにしなければならない。これは日本にとっての最優先課題」などと語った。

10月には,IMF・世界銀行年次総会が東京で開催された。これに合わせて来日したクリスティーヌ・ラガルド専務理事は,年次総会に合わせて開催されたセミナーや出演したテレビ番組の中で,日本社会の発展に向けた処方箋として,以下のようなポイントを力説した。

・ 働く女性を増やすことで,日本の抱えている問題である多額の政府債務や深刻な労働力不足に十分対処でき,結果的に社会全体が恩恵を受けること

・ 女性のリーダーを増やすことが大切であり,女性リーダーがけん引役となって他の女性も引き上げること

・ 出産後に多くの女性が仕事を辞めているが,女性も仕事が続けられるようにするためのよりよい保育施設,支援,受け入れる文化があれば,それこそが日本経済を最良にすること

次いで11月には,ミチェル・バチェレ国連事務次長兼ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women51)事務局長(当時)が来日した。バチェレ事務局長は,内閣総理大臣や内閣府特命担当大臣(男女共同参画)との会談,講演等の機会を通じて,労働における男女格差を縮小することは生産性の上昇等の経済的利益をもたらすこと,日本の経済成長と再生のためにはより多くの女性労働者が必要であり,女性の参画促進を政策の優先課題とすることで経済活性化と社会の団結という2倍の配当がもたらされることなどを強調した。

512011年1月に発足した国連機関で,世界,地域,国レベルでのジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けた活動をリード,支援,統合する役割を果たしている。