平成24年版男女共同参画白書

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第6節 人身取引対策の推進

人身取引対策に関する関係省庁では,「人身取引対策行動計画2009」に基づき,関係行政機関が緊密な連携を図りつつ,人身取引の防止・撲滅と被害者の適切な保護を推進している。平成23年7月には,人身取引対策に関する関係省庁連絡会議において,被害者の保護に関して,被害者保護のための着眼点及び関係行政機関において講ずべき措置について整理した「人身取引事案の取扱方法(被害者の保護に関する措置)」を申し合わせた。また,同年11月,人身取引対策に関する関係省庁連絡会議として,「女性に対する暴力をなくす運動」に合わせ,人身取引に係る政府広報を実施した。

「人身取引対策行動計画2009」の検討課題を省庁横断的に検討するために設けたワーキンググループにおいて,男性被害者等の保護施策について検討している。

警察では,人身取引の被害者である外国人女性が,風俗営業や性風俗関連特殊営業において売春の強要等の搾取を受けている状況を改善するため,平成17年に風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律を改正し,人身売買の罪等を犯した者であることを風俗営業の許可の欠格事由に加えること,接待飲食等営業を営む者等に接客従業者の生年月日,国籍,就労資格等の確認を義務付けることなどの措置を採ったところであるが,同法を適切に運用するとともに,様々な法令を適用して人身取引事犯の取締りを推進している。

法務省入国管理局では,人身取引が重大な人権侵害である等の認識の下,被害者である外国人に対しては,関係機関と連携して身体の保護を確実なものとする一方,被害者本人の意思に配慮しつつ,入管法の規定に基づき保護措置を講じ,不法残留等の入管法違反の状態にある外国人被害者に対しては在留特別許可を付与し,在留期間の更新申請や在留資格の変更申請があった場合においても,その者が置かれている状況等に十分配慮してこれを許可するなど,被害者の法的地位の安定を図っている。

なお,平成17年から23年までの7年間で,入国管理局が保護又は帰国支援した人身取引被害者は300人であり,そのうち不法残留等入管法違反の状態であった136人全員に対し,在留特別許可を付与している。

内閣府では,女性に対する暴力をなくしていく観点から,関係省庁,地方公共団体等と連携・協力して,国民一般に対し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施している。

警察では,女性と児童の人身取引を防止するため,関係法令による適切な取締りを始め,被害女性の保護等の総合的な対策を,関係省庁,関係団体と連携して推進する一方で,日本国民による海外での児童買春等の問題については,児童買春・児童ポルノ禁止法に基づく取締りを推進するとともに,東南アジア各国の捜査関係者等を招いて,児童の商業的・性的搾取対策に関する取組について意見交換を行う会議の開催等により,外国捜査機関等との情報交換の緊密化や連携強化に取り組んでいる。さらに,警察庁では,在京大使館,関係NGO等との間で,コンタクトポイントを設置して人身取引に関する情報交換を行っている。また,少年の福祉を害する犯罪や人身取引事犯の被害者となっている子どもや女性の早期保護等を図るため,警察庁の委託を受けた民間団体が,市民から匿名による事件情報の通報を電話又はインターネットで受け,これを警察に提供して捜査等に役立てようとする「子どもや女性を守るための匿名通報事業」を運用している。

厚生労働省では,婦人相談所が実施する人身取引被害女性の保護において,通訳雇上げや,被害女性の医療(他の法律・制度が利用できない場合に限る。)に係る支援を行っている。

また,平成22年度から,通訳・ケースワーカー(外国人専門生活支援者)の派遣を民間団体等に依頼することにより,婦人保護施設に入所する人身取引被害者に対する支援の強化を図ったところである。

独立行政法人国立女性教育会館では,平成17年度から22年度まで人身取引に関する調査を実施するとともに,研究成果を取りまとめたパネルやブックレットを作成した。23年度は,このパネルやブックレットを貸し出したりホームページへ公開することにより,広く国民に情報提供を行っている。

我が国は,政府協議調査団をこれまでにフィリピン,タイ,コロンビア,米国,ロシア,ウクライナ,ルーマニア,フランス,インドネシア,ラオス,カンボジア,オーストリア,韓国に派遣し,先方政府やNGO等の関係機関との協力を促進するとともに,人身取引に関連した地域間会合等への参加や人身取引の防止等に関して国際的な支援を行うなど積極的な取組を行っている。

外務省では,人身取引被害者の安全な帰国及び社会復帰のため,IOM(国際移住機関)の「人身取引被害者帰国・社会復帰支援事業」への拠出を平成17年度より開始し,被害者の帰国(平成24年4月1日までに総計233人)や帰国後の社会復帰を支援している。