平成24年版男女共同参画白書

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第9章 高齢者,障碍者,外国人等が安心して暮らせる環境の整備

第1節 高齢者が安心して暮らせる環境の整備

1 高齢男女の就業促進,能力開発,社会参画促進のための支援

(1) 定年の引上げ,継続雇用制度導入等による65歳までの雇用の確保等

厚生労働省では,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)に基づき,65歳までの段階的な定年の引上げ,継続雇用制度の導入等の高年齢者雇用確保措置が着実に実施されるよう事業主への指導・支援に取り組んでいる。

また,中高年齢者を試行的に雇用する事業主に対する支援等により,高年齢者の再就職の促進を図っている。


(2) 高齢者向けジョブ・カードによる再就職支援の推進等

厚生労働省では,職業キャリアが長い高年齢者等の再就職に資するため,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第17条に基づく求職活動支援書として活用が可能な「職業キャリアが長い方向けのジョブ・カード」を公共職業安定所において積極的に周知している。


(3) シルバー人材センターの支援等

厚生労働省では,定年退職後等の高年齢者に対し,地域の日常生活に密着した臨時的かつ短期的又は軽易な就業を,確保・提供するシルバー人材センターを通じて,高年齢者の多様なニーズに応じた就業の促進に努めている。


(4) 学習機会の整備等

文部科学省では,総合型地域スポーツクラブの全国展開を推進し,子どもから高齢者まで誰もがスポーツに身近に親しむことができる環境整備を支援している。

また,「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」において,高齢者の生涯学習及び社会参画の現状と課題について整理し,「長寿社会における生涯学習の在り方について」を取りまとめた。

独立行政法人国民生活センターでは,消費者問題の専門家を全国各地に派遣し,高齢者等に対し公民館や学校等の施設や集会場において消費者問題を分かりやすく説明する出前講座を開催することにより,消費生活や消費者問題に関する学習機会の提供を図っている。


(5) 高齢男女の社会参画の促進

政府は,基本的かつ総合的な高齢社会対策の指針として,「高齢社会対策大綱」(平成13年12月閣議決定)を策定し,これに沿って関係行政機関が連携・協力を図りつつ,施策の一層の推進を図っている。平成23年度においては,新しい大綱の策定に向けた検討を開始し,24年3月には,大綱見直しのために開催された,有識者から成る「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」の報告書を公表した。

内閣府では,年齢にとらわれず自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る高齢者や社会参加活動を積極的に行っている団体等を全国から募集し,「高齢社会フォーラム」等を通じて広く紹介している。

厚生労働省では,自治体における高齢者の生きがい・健康づくりの推進や老人クラブの活動への支援を行っているほか,全国健康福祉祭(ねんりんピック)に対する支援を行っている。

さらに,雇用対策法(昭和41年法律第132号)の改正により,平成19年10月から,労働者の募集・採用における年齢制限が原則として禁止され,厚生労働省では,その着実な施行に取り組んでいる。


2 高齢男女の生活自立支援

法務省では,判断能力の低下した高齢者等を対象として財産管理等のためのシステムである成年後見制度を導入し,高齢期における資産の活用を可能としている。

経済産業省では,ITを活用した多職種の持続的な連携(医療・介護・福祉分野の連携)により,各地域に居住する高齢者を始めとした住民の見守り等を推進するための調査事業を行った。

政府は,「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」(平成20年3月バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する関係閣僚会議決定)に基づき,ハード・ソフト両面にわたる社会のバリアフリー・ユニバーサルデザインの推進に取り組んだ。国土交通省においては,バリアフリー法に基づく取組を行っている(本章第2節2参照)。

3 良質な医療・介護基盤の構築等

(1) 生活習慣病・介護予防対策の推進

厚生労働省では,平成20年から「適度な運動」,「適切な食生活」,「禁煙」に焦点を当てた新たな国民運動として「すこやか生活習慣国民運動」を展開するなど,生活習慣病対策の一層の推進を図っている(第11章第1節4(2)参照)。

介護保険制度については,平成12年4月に施行されてから10年が経過し,高齢期の国民生活を支える制度として順調に定着しつつある。その一方で,高齢化が一層進展する中で「制度の持続可能性」を確保するとともに,認知症の高齢者の増加等の新たな課題に対応できる制度とするため,介護保険制度全般にわたる見直しを行った,介護保険法等の一部を改正する法律(平成17年法律第77号)が17年6月に成立し,18年4月から本格施行された。

また,一部の広域的な介護サービス事業者による悪質かつ組織的な不正事案が発生したため,このような不正事案を防止し,介護事業運営の適正化を図るため,介護サービス事業者に対する規制の在り方について見直すことを内容とした介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律(平成20年法律第42号)が平成20年5月に成立し,21年5月から施行された。

さらに,高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう,医療,介護,予防,住まい,生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」を構築するため,介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成23年法律第72号)が平成23年6月に成立し,24年4月から施行された。


(2) 介護基盤の構築と安定的医療提供体制の整備

介護・福祉サービスの基盤整備に当たっては,身近な生活圏域で介護予防から介護サービスの利用に至るまでの必要なサービス基盤を整備していく必要があることから,厚生労働省では,地方公共団体が創意工夫し,整備を行うことができるよう,地方公共団体が策定する整備計画に対する助成制度である地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金により,総合的な支援を行っている。

また,平成21年度第1次補正予算において,介護基盤緊急整備等臨時特例基金(各都道府県に設置)を創設し,23年度までの介護施設や地域介護拠点の緊急整備を支援している(22年度において,更なる整備促進のため,助成単価の引上げを実施。また,同基金の実施期限を24年度までに1年間延長。)。

近年の介護サービスをめぐっては,介護従事者の離職率が高く,人材確保が困難であるといった状況にあるため,第169回国会で「介護従事者等の人材確保のための介護従事者の処遇改善に関する法律」(平成20年法律第44号)が成立し,平成21年4月にプラス3.0%の介護報酬改定を行い,21年度第1次補正予算において,23年度までの間,介護職員一人当たり平均月額1.5万円の賃金引上げに相当する介護職員処遇改善交付金を創設し,介護職員の処遇改善に取り組んできた。24年度においても介護報酬改定により,これまでの処遇改善の取組が確実に継続されるよう,「介護職員処遇改善加算」を創設するなど,引き続きこれらの取組を実施し,介護従事者の処遇改善を図っている。

医療提供体制の整備に当たっては,いつでも,だれでも,必要な医療を受けられる社会を実現するため,医師の不足や地域・診療科における偏在の問題や,救急医療・周産期医療に対する不安の解消等に取り組んでいる。

医師の不足・偏在については,医学部定員の増員を図るとともに,平成23年度からは,医師不足医療機関の医師確保を支援する「地域医療支援センター」の設置に対する財政支援を開始するなどの取組を行っている。また,救急医療・周産期医療の充実を図るため,重篤な救急患者を24時間受け入れる救命救急センターや地域の周産期医療の中核となる総合周産期母子医療センター等への財政支援を行っている。

また,平成22年度補正予算において拡充した地域医療再生基金(各都道府県に設置)も活用し,都道府県単位での様々な医療課題の解決のための取組を支援している。

経済産業省では,高齢者や障害者等の自立を支援し,介護者の負担軽減を図るため,福祉機器開発のための実用化支援を行っている(第2-9-1表)。


(3) 介護サービスの質の確保等

厚生労働省では,高齢者が介護サービスを適切に選択し,利用できるような環境づくりを進めるため,介護サービス事業者の運営基準の適切な運用を図るとともに,介護サービス事業者の参入促進,福祉用具の開発・普及等の施策を推進している。また,利用者の介護サービスの選択に資するため,平成18年4月から「介護サービス情報の公表」制度を施行し,都道府県が行う事業所調査,情報の公表等の総合的な支援を行っている。


(4) 高齢者介護マンパワーの養成・確保対策の推進

厚生労働省では,介護福祉士,介護支援専門員及び訪問介護員について,養成研修や資質の向上のための研修等を実施するとともに,その内容の充実等を図っている。また,全国の主要なハローワークに「福祉人材コーナー」を設置し,きめ細かな職業相談,職業紹介,求人者への助言,指導等を行うとともに,「福祉人材コーナー」を設置していない主要なハローワークにも相談体制を整備し,福祉分野の職業相談・職業紹介,職業情報の提供及び「福祉人材コーナー」への利用勧奨等の支援を行っている。

福祉人材センターにおいては,福祉・介護人材の求職・求人に係る情報提供,職業相談,職業紹介等を実施している。

さらに,介護労働者の雇用管理改善のため,労働環境の整備に資する介護福祉機器を導入する事業主への助成や,介護労働安定センターによる雇用管理改善のための相談援助を行っている。加えて,介護サービスの高度化・多様化に対応した教育訓練の積極的な実施を図っている。


4 世代間で公平かつ多様なライフスタイルに中立的な税制・社会保障制度の構築等

社会保険制度を働き方に中立的な制度とするため,「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案」を第180回国会に提出した(第3章第1節3参照)。