平成24年版男女共同参画白書

本編 > 第2部 > 第5章 > 第2節 非正規雇用における雇用環境の整備

第2節 非正規雇用における雇用環境の整備

1 同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の取組の推進

(1) パートタイム労働法に基づく均等・均衡待遇の推進と事業主の取組への支援

厚生労働省では,パートタイム労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。以下「パートタイム労働法」という。)に基づく是正指導や均衡待遇・正社員化推進プランナーによる相談・支援のほか,パートタイム労働者等の雇用管理の改善に取り組む事業主に対して「均衡待遇・正社員化推進奨励金」を支給する等,正社員との均等・均衡待遇の確保,正社員転換の実現のための取組を推進している。


(2) 有期契約労働者,派遣労働者の待遇の均衡等の検討

有期労働契約については,雇用の安定と公正な待遇を確保するため,有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に,労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みの導入等を内容とする,労働契約法の一部を改正する法律案を第180回国会に提出している。

第174回国会に提出した「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「労働者派遣法改正法案」という。)において,派遣労働者の賃金等の決定に当たり,同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮する旨の規定を盛り込んだが,労働者派遣法改正法案は継続審議となっていた。第180回国会において,同改正法は一部修正の上,成立した。


(3) 同一価値労働同一賃金の実現に向けた取組方法の検討

非正規労働者が増加し,その雇用の不安定さ,処遇の低さ等が問題となっている状況を踏まえ,同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進を検討するため,学識経験者から成る「雇用形態による均等処遇についての研究会」を開催した。平成23年7月に報告を取りまとめ,正規・非正規労働者間の不合理な処遇格差を禁止する法制を始めとして,EU諸国における関係法制の概要及びその運用の実態を研究し,併せて我が国における正規・非正規労働者間の不合理な処遇格差を是正するための仕組みづくりへの示唆を行った。


(4) 国家公務員における非常勤職員制度の改善

育児・介護を行う非常勤職員の職業生活と家庭生活との両立を支援するため,平成23年4月に,非常勤職員についても育児休業等をすることができるよう制度の整備が図られるとともに,人事院及び各府省においては,リーフレット等を通じてその周知を図り,職場環境の整備に努めている。


(5) 地方公務員における非常勤職員制度の改善

育児・介護を行う非常勤職員の職業生活と家庭生活の両立を支援するため,平成23年4月に,非常勤職員についても育児休業等をすることができるよう,制度の整備が図られた。

2 パートタイム労働対策の総合的な推進

(1) パートタイム労働者の適正な労働条件の確保

厚生労働省では,パートタイム労働法に基づく是正指導や事業主を支援するための「均衡待遇・正社員化推進奨励金」の活用等,正社員との均等・均衡待遇の確保,正社員転換の実現のための取組を推進している。さらに,平成23年2月から「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」を開催し,今後のパートタイム労働対策について検討を行い,同年9月に報告書が取りまとめられた。同月からは,労働政策審議会で検討を行っている。


(2) パートタイム労働者の雇用の安定

厚生労働省では,パートタイム雇用に関する職業紹介サービス等を提供するパートバンクを設置し,パートタイム雇用に係る円滑な需給調整を推進している。


(3) パートタイム労働者への年金制度の適用

現状,所定労働時間が正社員の4分の3未満(週30時間未満)の者は,被用者であっても社会保険(厚生年金・健康保険)の適用を受けていない。

被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられない非正規労働者に社会保険を適用することで社会保険における「格差」を是正するとともに,社会保険制度における,働かない方が有利になるような「壁」を除去することで女性の就業意欲を促進する,という観点から「短時間労働者への社会保険の適用拡大」を盛り込んだ「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案」を第180回国会に提出した(平成24年3月30日)。

具体的な適用基準は,(ア)週20時間以上(イ)月額賃金7.8万円以上(年収94万円以上)(ウ)勤務期間1年以上(エ)学生は適用除外(オ)従業員501人以上としており,法律施行後3年以内に適用対象を拡大することとしている。

3 労働者派遣事業に係る対策の推進

厚生労働省では,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号)に基づき,適正な事業運営が確保されるよう派遣元事業主,派遣先等に対し,制度の周知及び指導の徹底を図るとともに,派遣労働者等からの相談に対応している。

また,継続審議となっていた労働者派遣法改正法案は,第180回国会において,一部修正の上,成立した(本節1(2)参照)。