平成23年版男女共同参画白書

本編 > 第2部 > 第11章 > 第2節 多様な選択を可能にする教育・学習機会の充実

第2節 多様な選択を可能にする教育・学習機会の充実

1 生涯学習の推進

(1) リカレント教育の推進

文部科学省では,大学等における編入学の受入れ,社会人入試の実施,昼夜開講制の推進,夜間大学院の設置,公開講座・履修証明プログラムの実施等により,大学等の生涯学習機能の拡充とともに,キャリアアップを目指す社会人の受入れ体制の整備を図っている。


(2) 放送大学の整備等

放送大学では,多彩な300の科目を提供するとともに,地域活動や社会貢献活動など様々な分野で一定の科目群を体系的に学んだ学生に対して,学位以外の履修証明を与える「科目群履修認証制度(放送大学エキスパート)」の充実を図っている。

専修学校は,社会の要請に即応した実践的な職業教育機関として着実に発展してきており,平成22年5月現在,3,311校に約63万8,000人の生徒が学んでいる。そのうち,約6万7,000人が社会人であり,社会人の学習機会の提供において大きな役割を果たしている。

また,学習歴や生活環境などが多様な者が高等学校教育を受けられるよう,単位制高等学校の配置が進んでおり,平成22年度までに928校が設置されている。

文部科学省では,学校法人や公益法人の行う通信教育のうち,社会教育上奨励すべきものについて認定を行い,その普及・奨励を図っている。


(3) 学校施設の開放促進等

文部科学省では,地域住民の学習機会や子どもたちの活動拠点(居場所)づくりなどを推進するため,学校施設を,子どもたちの安全確保に十分配慮しつつ,放課後や週末等に開放し,多様な活動の場として提供する取組を支援している。また,地域コミュニティの拠点としての学校施設,クラブハウス,屋外運動場照明,水泳プール,武道場など,学校開放諸施設の整備を支援している。


(4) 青少年の体験活動等の充実

文部科学省では,次代を担う青少年の育成を図るため,自然体験活動の指導者養成に取り組むとともに,青少年の様々な課題に対応した体験活動を実施した。

また,独立行政法人国立青少年教育振興機構において,全国28か所にある国立青少年教育施設における青少年の体験活動の機会と場の提供や指導者の養成,民間団体が実施する体験活動等に対する「子どもゆめ基金」による助成等を通して,青少年の体験活動を推進した。


(5) 民間教育事業との連携

文部科学省を始めとした府省庁等が連携して実施している「子ども見学デー」においては,平成22年8月18日,19日を中心に,各参加機関の業務説明や職場見学などを行うとともに,民間教育事業者等の協力を得ながら,子どもたちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会を提供した。

また,文部科学省では,生涯学習に係る活動を実践する場を全国的な規模で提供するとともに,官民協働の生涯学習活動を通じて社会的課題の解決を図ることを目的として全国生涯学習フォーラムを開催しており,平成22年度は,11月20日から11月22日にかけて高知県において実施した。


(6) 高度情報通信ネットワーク社会に対応した教育の推進

文部科学省では,インターネットを活用して自宅や学習施設などにおいて手軽に動画等により学習ができる「エル・ネット」(教育情報通信ネットワーク)を通じて,様々なジャンルの学習コンテンツなどがいつでも視聴できる「オンデマンド配信」及び,地方公共団体や社会教育施設等の研修,会議などに遠隔地においてリアルタイムで参加できる「ライブ配信」を行い,学習機会の提供の充実に努めた。また,ICTを活用した先導的な生涯学習支援に関する調査研究を実施するとともに,優れた生涯学習コンテンツを制作・配信等することにより多様な生涯学習の機会の提供を図った。


(7) 現代的課題に関する学習機会の充実

文部科学省では,行政だけではなく,市民やNPOなどの民間が主体となって課題解決に取り組むことが期待されるテーマを具体的に指定して,地域の課題解決に役立つ仕組みづくりのための実証的共同研究等を行い,地域が課題を解決する力の強化を図る「社会教育による地域の教育力強化プロジェクト」を実施している。


(8) 学習成果の適切な評価

文部科学省では,様々な学習活動の成果が適切に評価され,その成果の評価の社会的通用性の向上が図られるよう,「検定試験の評価の在り方に関する有識者会議」において,検定試験の質の向上や信頼性の確保について検討を行い,検定試験の評価手法や評価の視点・内容,情報公開が望まれる項目等について示した「『検定試験の評価に関するガイドライン(試案)』について(検討のまとめ)」を取りまとめ,公表した。また,大学等において,各大学等の判断により,専修学校での学修などの成果を単位として認定することを可能としている。


2 エンパワーメントのための女性教育・学習活動の充実

(1) 女性の生涯にわたる学習機会の充実

文部科学省では,女性が主体的に働き方・生き方を選択できるよう,若い時期から結婚,妊娠,出産といったライフイベントを視野に入れ,長期的な視点で自らの人生設計を行うことを支援するための学習機会の提供を促進している。


(2) 女性の能力開発の促進

文部科学省では,大学・短期大学・高等専門学校・専修学校が教育研究資源や職業教育機能を活用し,産業界や関係団体等と連携することなどにより,新たなチャレンジを目指す社会人(子育て等により就業を中断した女性を含む。)等のニーズに応じた専門的・実践的教育プログラムを開発・実施することを支援し,学び直しの機会の充実を図っている。

さらに,大学病院における女性医師・看護師に対する臨床現場定着や出産・育児等による離・退職後の復帰支援など,人材育成の取組を支援している。


(3) 女性の学習グループの支援

文部科学省では,教育委員会や女性教育団体等が行う女性教育指導者の研修を奨励し,学習活動の企画・運営への女性の参画の促進を図るよう促している。

また,独立行政法人国立女性教育会館では,利用者のニーズに応じた研修プログラムの作成を支援するとともに,職員の専門性をいかし男女共同参画や女性教育等に関する積極的な情報提供を行っている。


(4) 独立行政法人国立女性教育会館の事業の充実等

独立行政法人国立女性教育会館は,女性教育のナショナルセンターとして,基幹的女性教育指導者の育成,女性のキャリア形成支援や配偶者等からの暴力被害者支援に関する研修,女性の科学技術分野への参画支援など喫緊の課題への対応,アジア太平洋地域等の女性のエンパワーメント支援,男女共同参画社会形成に資する多様なニーズに応じた情報提供サービス等を行っている。

また,平成20年6月に開設した女性アーカイブセンターでは,男女共同参画に関する理解の促進を図り,学習・研究支援を行うため,女性教育の振興や男女共同参画社会の形成に向けて顕著な業績を残した女性や女性教育・男女共同参画の行政施策に関する史・資料を収集し,展示や閲覧,所蔵資料データベースである女性デジタルアーカイブシステム(http://w-archive.nwec.jp/)等を通じて提供している。

そのほか,平成22年度は新たに「大学・研究機関のための男女共同参画推進研修」や大学との連携授業等を試行的に実施し,男女共同参画の視点に基づくキャリア教育プログラムの共同開発等に取り組んでいる。

3 進路・就職指導の充実

中学校及び高等学校においては,性別にとらわれることなく,生徒が自らの生き方を考え,自分の意志と責任で進路を選択・決定する能力・態度を身に付けることができるよう,進路指導の充実に努めている。

特に,平成23年3月卒の高校新卒者の就職状況(23年1月末現在)については,就職内定率が前年同期を上回ったものの,女子の就職内定率が男子に比べて低いなど,全体的に厳しい状況である。こうした状況を踏まえ,進路指導主事等と連携して,組織的・継続的に就職を希望する生徒に対する就職相談・支援を行い,また求人企業の開拓などを行う「高等学校就職支援教員(ジョブ・サポート・ティーチャー)」を配置するなど,きめ細やかな就職指導を展開している。

一方,高校生を始めとする若者を取り巻く厳しい就職環境については,学校を卒業しても就職も進学もしない者の増加やフリーター志向の高まり,就職しても早期に離転職する者の増加など,若者の勤労観,職業観の希薄化を指摘する声も少なくない。このため,文部科学省では,児童生徒が勤労観・職業観を身に付け,主体的に進路を選択・決定し,社会人・職業人として自立していくことができるようにするキャリア教育の推進に取り組んでいる。平成22年度においては,自治体における小・中学校における進路指導を体系的・一貫的に実施するための取組や,普通科高校等における中核カリキュラムの推進等に向けた取組を支援する「生徒指導・進路指導総合推進事業」を実施するとともに,中学校の教員を対象としたキャリア教育の指導資料を作成し,全国の教育委員会及び中学校等に配布した。また,23年1月14日には,キャリア教育の普及・啓発と推進に資することを目的として「平成22年度キャリア教育推進フォーラム」を開催するとともに,キャリア教育の充実に顕著な功績が認められる教育委員会及び学校,企業,PTA団体等を表彰する「キャリア教育優良教育委員会・学校,企業及びPTA団体等文部科学大臣表彰」を実施した。

また,大学生に対する就職支援として,全国就職指導ガイダンスや各種会議において,企業に対して,学生の就職機会の拡充や,女子学生の男子学生との機会均等の確保に努めるよう要請するとともに,各大学等に対して,全ての学生にきめ細かな就職指導や就職相談体制の充実を行うよう要請している。

中央教育審議会においては,平成23年1月,「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」の答申が行われた。同答申では,人々の生涯にわたるキャリア形成を支援する観点から,(ア)幼児期の教育から高等教育に至るまでの体系的なキャリア教育の推進,(イ)実践的な職業教育の重視と職業教育の意義の再評価,(ウ)生涯学習の観点に立ったキャリア形成支援(生涯学習機会の充実,中途退学者などの支援)の3つの基本的方向性に沿った具体的な方策が提言されている(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1301877.htm/)。

厚生労働省では,女子学生等が的確な職業選択を行うことができるような啓発資料を作成し,大学や高等学校を通じて配布することにより,意識啓発を図っている。

総合科学技術会議では,「人材の活用に関する改革の方向として,女子生徒・学生が自然科学系の分野に進む意欲をかき立てるように進路指導の充実を図るとともに,身近なロールモデルを整備すること,大学等において進路選択等の悩みに関する相談体制を整備することを奨励している。