平成22年版男女共同参画白書

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第7章 生涯を通じた女性の健康

本章のポイント


  • 乳児死亡率等の母子保健関係指標については低下傾向にある。
  • 平成20年の新規HIV感染者数は過去最高。感染が報告された年齢をみると30歳代の割合が高い。
  • 肥満者の割合は,男性は30~60歳代では約3割,女性も60歳以上で割合が高い。女性は若年層を中心に必要以上の減量を行う人も多い。
  • 女性の医療施設従事医師,同歯科医師,薬局・医療施設従事薬剤師の割合は年々増加しているが,医師・歯科医師は薬剤師に比べかなり割合が低い。

(低下傾向にある母子保健関係指標)

女性は,妊娠や出産をする可能性もあり,生涯を通じて男性とは異なる健康上の問題に直面する。

母子保健関係の主要な指標の昭和50年から平成20年までの動向をみると,いずれの指標も総じて低下している(第1-7-1図)。

第1-7-1図 母子保健関係指標の推移 別ウインドウで開きます
第1-7-1図 母子保健関係指標の推移

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(危険が伴う高齢出産)

母の年齢別周産期死亡率をみると,19歳以下の場合に平均より高いほか,30歳代以降は年齢とともに増加する傾向にあり,高齢出産にはある程度の危険が伴うことが分かる(第1-7-2図)。

第1-7-2図 母の年齢別周産期死亡率(平成20年) 別ウインドウで開きます
第1-7-2図 母の年齢別周産期死亡率(平成20年)

▲CSVファイル [Excel形式:1KB]CSVファイル

(総数では減少傾向にある人工妊娠中絶件数)

人工妊娠中絶件数及び人工妊娠中絶実施率(15歳以上50歳未満女子人口千対)の昭和50年から平成20年度までの動向をみると,総数では件数,実施率ともに総じて減少傾向にある(第1-7-3図)。また,20歳未満の件数の全年齢に占める割合は,昭和50年には1.8%だったのが,平成14年度に13.7%となった後,減少傾向にあり,20年度には9.4%となった。

第1-7-3図 年齢階級別人工妊娠中絶の推移 別ウインドウで開きます
第1-7-3図 年齢階級別人工妊娠中絶の推移

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(若年での感染が多いHIV感染者)

HIV感染者とは,HIV(ヒト免疫不全ウィルス)に感染している者を指す。一方,AIDS患者とは,HIV感染によって免疫不全が生じ,ニューモシスティス肺炎等の日和見感染症や悪性腫瘍が発生した者を指す。

凝固因子製剤による感染例を除いて,平成20年末までに我が国において報告されたHIV感染者及びAIDS患者の累計数は,HIV感染者数10,552人,AIDS患者数4,899人となっている。

平成20年に新規で感染が報告されたHIV感染者は1,126人(第1-7-4図),AIDS患者は431人で,過去最高の報告数となった。HIV感染者の推定感染地域をみると,全体の87.3%(983件)が国内感染となっている。

感染が報告された時点の年齢で年代別に新規で感染が報告された感染者数をみると,20歳代が全体の29.6%を占めているのに対し,30歳代が38.0%を占めており,30歳代での感染が多い。

第1-7-4図 HIV感染者の推移(性別・年代別) 別ウインドウで開きます
第1-7-4図 HIV感染者の推移(性別・年代別)

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(女性のがん)

女性特有のがんとして子宮がん,乳がんなどがあり,これらのがんの総患者数を厚生労働省「患者調査」(平成20年)でみると,子宮がんは5.7万人,乳がんは17.7万人となっている。

国民生活基礎調査(平成19年)によると,我が国における女性のがん検診の受診率は,子宮がん検診においては20歳以上で21.3%,乳がん検診においては40歳以上で20.3%であり,欧米諸国と比べて低い状況にある。がんは早期発見が重要であることから,より一層,がん検診の受診の必要性について広く周知していく必要がある。

(健康増進に必要な適切な自己管理)

健康増進や生活習慣病予防のためには,自ら健康管理を行うことが重要である。厚生労働省「平成20年国民健康・栄養調査結果の概要」をみると,肥満者の割合は,男性では,40歳代が35.9%と最も高く,次いで50歳代が32.4%,30歳代が29.5%となっている。女性では,年齢とともに肥満の割合が高くなる傾向にあり,60歳代以上では約4人に1人となっている。一方,低体重(やせ)の割合は,女性では,20歳代が22.5%と最も高く,次いで30歳代が16.8%となっている。年次推移をみると,20歳代女性の低体重(やせ)の割合は約2割と横ばいで推移している。

また,体重を減らそうとする者・しない者の割合をみると,肥満者の男性では約3割が体重を減らそうとしていない。一方,低体重(やせ)の女性の約1割が体重を減らそうと思っている。

健康に生活するための自己管理について,より一層適切な情報提供が求められる。

(喫煙率の動向)

平成4年から20年の喫煙率の推移を男女別にみると,男性は50.1%から36.8%に低下しているが,女性は9.0%から9.1%とほぼ横ばいで推移している。年代別にみると,ここ数年20歳代男性の喫煙率が低下傾向にある(第1-7-5図)。

喫煙は,肺がんや循環器疾患等のリスクの上昇などにより喫煙者自身の健康に悪影響を及ぼすだけでなく,受動喫煙によって非喫煙者にも影響を及ぼすことが指摘されている。平成15年5月には健康増進法(平成14年法律第103号)が施行され,病院や劇場,百貨店,事務所,官公庁施設,飲食店その他多数の者が利用する施設には,受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずる努力義務が課された。これにより,公共の場での受動喫煙の機会が減少することが期待されるが,家庭などでの受動喫煙によって,非喫煙妊婦の低出生体重児出産の発生率が上昇するという研究報告もあり,更に喫煙の健康への悪影響について広く周知していく必要がある。

第1-7-5図 喫煙率の推移(性別・年代別) 別ウインドウで開きます
第1-7-5図 喫煙率の推移(性別・年代別)

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(上昇を続ける女性医師等の割合)

女性の高学歴化に伴い,医師等の専門職に進出する女性も増加しており,医療施設等で働いている医師,歯科医師,薬剤師における女性の割合はいずれも増加傾向にある。しかし,薬剤師に比べ医師,歯科医師における女性の割合はかなり低いものとなっている(第1-7-6図)。

また,医師を取り巻く状況をみると,多くの女性医師は,慢性的な長時間労働,夜勤や当直等不規則な勤務形態により育児,介護等と仕事との両立が難しく,長期休業や勤務形態等を限定的にするなどの変更を迫られている。また,育児等が一段落しても,第一線に戻って活躍するためには,その間の医療技術の進歩へのキャッチアップ等,多くの課題を乗り越える必要がある。医師不足が社会問題となっている中で,特に,産婦人科医,小児科医については,女性医師の割合が,新規に医師になる者の多い20歳代でそれぞれ68.1%,48.8%となっていることをかんがみれば,こうした状況を放置すると一層深刻な問題となるおそれがある(第1-7-7図)。このため,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進や女性が能力を発揮しやすい環境の整備を積極的に進める必要がある。

第1-7-6図 女性の医療施設従事医師,同歯科医師,薬局・医療施設従事薬剤師の割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-7-6図 女性の医療施設従事医師,同歯科医師,薬局・医療施設従事薬剤師の割合の推移

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第1-7-7図 年齢階級別医師数の男女比(産婦人科,小児科) 別ウインドウで開きます
第1-7-7図 年齢階級別医師数の男女比(産婦人科,小児科)

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